「家賃収入を確定申告していない」リスクや罰則と節税も含めた対処法

「家賃収入を確定申告していないけれど、これって大丈夫なのかな?」

そのような不安を抱えていたら、できるだけ早く正しい対処をすることをおすすめします。

「税金を払って、損をするのが嫌だ」という気持ちで確定申告を怠ると、思わぬリスクや罰則に直面する可能性が高いためです。

 

賃貸経営で、持続的に高収益を維持していくためには、正しい税務処理は欠かせません。

節税対策をすれば、法のルールに則りながら、手元に残すキャッシュを増やすことも可能です。

本記事では、「そもそも、どのラインから確定申告が必要なのか?」という必要性の基礎知識から、申告を怠った場合のリスクや節税方法まで、全体像をわかりやすく解説します。

正しい知識を身につけ、安心して不動産収入を得るための一歩を踏み出しましょう。

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1. 家賃収入で確定申告が必要なケースとは?

最初に、どのようなケースで家賃収入の確定申告が必要となるのか、確認していきましょう。

1-1. 確定申告が必要なケースと不要なケース

下表のいずれかに当てはまる場合に、確定申告が必要となります。

表だけではわかりづらいので、この後に詳しく解説しますが、まずは全体像としてご確認ください。

出典:国税庁「確定申告が必要な方」より作成

「給与所得がある場合」と「ない場合」で、要件が大きく異なります。以下でそれぞれ解説します。

1-1-1. 給与所得がある場合

まず、会社などに勤務していて、給与所得を得ている人の場合、
「各種の所得金額(給与所得、退職所得を除く。)の合計額が、20万円を超える方」
は、確定申告が必要となります。

【給与所得がある場合の確定申告】・給与の年間収入金額が2,000万円を超える方
・給与を1か所から受けていて、かつ、その給与の全部が源泉徴収の対象となる場合において、各種の所得金額(給与所得、退職所得を除く。)の合計額が20万円を超える方
(例) 給与を1か所から受けていて公的年金等に係る収入金額が80万円(65歳以上の方(昭和33年1月1日以前に生まれた方)は130万円)を超える場合
・給与を2か所以上から受けていて、かつ、その給与の全部が源泉徴収の対象となる場合において、年末調整をされなかった給与の収入金額と、各種の所得金額(給与所得、退職所得を除く。)との合計額が20万円を超える方
※ 給与所得の収入金額の合計額から、所得控除の合計額(雑損控除、医療費控除、寄附金控除及び基礎控除を除く。)を差し引いた金額が150万円以下で、更に各種の所得金額(給与所得、退職所得を除く。)の合計額が20万円以下の方は、申告は不要です。
・同族会社の役員やその親族などで、その同族会社から給与のほかに、貸付金の利子や資産の賃貸料などを受け取っている方
・災害減免法により所得税等の源泉徴収税額の徴収猶予や還付を受けた方
・在日の外国公館に勤務する方や家事使用人の方などで、給与の支払を受ける際に所得税等を源泉徴収されないこととなっている方
出典:国税庁「令和4年分 確定申告特集」

文中に出てきた、“各種の所得金額(給与所得、退職所得を除く。)” に該当する所得は、以下のとおりです。

(1)事業所得
(2)雑所得
(3)配当所得
(4)不動産所得
(5)その他の所得(譲渡所得、山林所得、一時所得、利子所得など)

参考:国税庁「給与所得以外の所得の種類等(令和5年分) 」

家賃収入は、上記の不動産所得に該当します。所得は、総収入金額から必要経費を控除した後の金額となります。詳しくは後述します。

1-1-2. 給与所得がない場合

フリーランスや個人事業主など、給与所得がない人の場合は、不動産所得を含む各種の所得金額の合計額が、所得控除額を超えた場合に、確定申告が必要となります。

【給与所得がない場合の確定申告】各種の所得金額の合計額(譲渡所得や山林所得を含む。)から、所得控除を差し引き、その金額(課税される所得金額)に所得税の税率を乗じて計算した税額から配当控除額を差し引いた結果、残額のある方は、確定申告書の提出が必要です。
出典:国税庁「令和4年分 確定申告特集」

“所得控除額” は、給与所得者の「20万円」とは異なります。所得控除額がいくらあるかは、状況によって異なりますので、それぞれ調べる必要があります。

まず、どの人にも適用される「基礎控除」の金額は、以下のとおりです。

納税者本人の合計所得金額控除額
2,400万円以下48万円
2,400万円超2,450万円以下32万円
2,450万円超2,500万円以下16万円
2,500万円超0円

出典:国税庁「No.1199 基礎控除」

合計所得が2,400万円以下の人であれば誰でも、所得が48万円以下なら確定申告の必要がないということです。

所得控除の種類は、以下のとおりです(各リンク先は国税庁Webサイト)。

出典:国税庁「No.1100 所得控除のあらまし」

「家賃収入を確定申告していない」と不安に思っていても、正しく計算すれば、そもそも確定申告が不要だったというケースもあります。

続いて以下では、計算の基準となる「不動産所得」の算出方法を確認しましょう。

1-2. 基準となる「不動産所得」の算出方法

「家賃収入が年間100万円」あったとしても、その金額が不動産所得となるわけではありません。不動産所得は、総収入金額から必要経費を差し引いて計算されます。

【必要経費とは?】必要経費とは不動産収入を得るために必要な費用をいいます。具体的には、賃貸アパートの固定資産税、損害保険料、減価償却費や修繕費等が該当します。
出典:全日本不動産協会「所得税の不動産所得の計算方法について」

また、総収入金額の範囲は、以下をご確認ください。

【総収入金額の範囲】不動産所得の総収入金額には、次のものも含みます。
(1)名義書換料、承諾料、頭金などの名目で受領するもの
(2)敷金や保証金等のうち、返還を要しないもの
(3)共益費等の名目で受け取る電気代、水道代や掃除代等
出典:全日本不動産協会「所得税の不動産所得の計算方法について」

「敷金や保証金として受け取り、返還を要するもの」は、総収入金額に含まれません。一方、共益費などの名目で電気代・水道代・掃除代などを受け取った分は、総収入金額に含まれます。

以下のケースでシミュレーションしてみましょう。

【現在の状況】

  • 年間の家賃収入:100万円
  • 固定資産税:10万円
  • 損害保険料:5万円
  • 減価償却費:15万円
  • 修繕費:30万円

【計算例】

  • 総収入金額:100万円
  • 必要経費:10万円+5万円+15万円+30万円=60万円
  • 不動産所得:100万円-60万円=《40万円》

上記のとおり、不動産所得は40万円と算出されました。

【不動産所得 40万円 の場合】

  • 給与所得がある場合 ⇒ 確定申告が必要
  • 給与所得がない場合 ⇒ 確定申告が不要(合計所得2,400万円の場合)

給与所得がある場合、給与所得・退職所得以外に20万円以上の所得があれば確定申告が必要です。よって、上記例では確定申告が必要となります。

一方、給与所得がない場合、かつ合計所得が2,400万円以下なら、48万円の基礎控除があります。よって、40万円の不動産所得は基礎控除分で相殺され、確定申告不要となります。

なお、上記は解説のためにわかりやすく単純化しています。実際の算出は、個々のケースによって異なりますので、税務署・税理士などの専門家にご相談ください。

最寄りの相談窓口は、税についての相談窓口(国税庁)にて確認できます。


2. 家賃収入を確定申告しなかったらどうなる?

家賃収入を確定申告すべき状況にもかかわらず、申告していなかった場合には、どのようなリスクがあるのでしょうか。

以下で具体的に見ていきましょう。

2-1. 確定申告をしなかった場合に負うペナルティ

確定申告をして所得税を納税するのは、法的に定められた義務です。

税務署から無申告を指摘された場合、「加算税」「延滞税」のペナルティが科せられます。

2-1-1. 加算税

各年分の「無申告加算税」は、原則として、納付すべき税額に対して、

  • 50万円までの部分:15%
  • 50万円を超える部分:20%

の割合を乗じて計算した金額となります。

また、令和5年(2023年)分以降分(納期限が2024年1月1日以降)については、以下のとおり加算税が変わります。

  • 50万円までの部分:15%
  • 50万円を超え300万円までの部分:20%
  • 300万円を超える部分:30%

出典:国税庁「No.2024 確定申告を忘れたとき」

なお、申告を忘れたのではなく「仮装隠蔽があった」と見なされると、「重加算税」が適用されます。重加算税の割合は、《無申告加算税に代えて40%》です。

【参考:加算税の概要】

出典:国税庁「加算税の概要」

上記の「重加算税」部分の注釈を以下に引用します。

(注5)過去5年内に、無申告加算税(更正・決定予知によるものに限る。)又は重加算税を課されたことがあるときは、10%加算する。
(注6)前年度及び前々年度の国税について、無申告加算税(申告が、調査通知前に、かつ、更正予知する前にされたものであるときに課されたものを除く。)又は無申告重加算税を課される者が更なる無申告行為を行う場合には、10%加算する【令和5年度改正】。
出典:国税庁「加算税の概要」

とくに、無申告が常態化している者に対しては、厳しく対処されることがわかります。

2-1-2. 延滞税

確定申告を本来の期限までに行わなかった場合、所得税の納付が、定められた期限よりも遅延することになります。

前述の加算税に加え、法定納期限の翌日から完納する日までの「延滞税」を納付しなければなりません。

この延滞税の割合は、期間によって異なります。

出典:国税庁「延滞税の割合」

令和5年(2023年)中の税率の場合、《延滞期間2ヶ月までは2.4%、それ以降は8.7%》です。

出典:国税庁「納税に関する総合案内」

2-2. 申告漏れはバレる理由

「そもそも、税務署にバレなければ、ペナルティを負わないのでは?」
という声もあります。しかし、それは安易な考えといわざるを得ません。

税務署は、さまざまなルートから申告漏れに目を光らせています。いつ摘発されるか、わからないのです。

たとえば、以下のような書類から、税務署は確定申告漏れの事実を、容易に把握できます。

  • 入居者の確定申告書類(経費として家賃を計上する際に支払先の住所氏名を記載)
  • 取引先(不動産会社や設備会社)の税務書類

また、国税庁のWebサイトには、情報提供フォームが用意されており、徴収漏れに気づいた人が情報提供できるようになっています。

2-3. 申告漏れの時効は原則5年

「いつの分の確定申告分まで、指摘されるリスクがあるのか?」といえば、《原則5年》です。

所得税は国税ですが、国税は徴収権の消滅時効(国税通則法72条)によって、その徴収権は、法定期限から5年間行使しないと、時効により消滅します。

出典:国税庁「第72条関係 国税の徴収権の消滅時効」

逆にいえば、5年前までの申告漏れは、いつ指摘されてもおかしくありません。

5年分の延滞税率(2023年時点の税率なら年8.7%)が加算されるので、非常に大きな金額を請求されることになります。

また、上記の時効は原則です。悪質性が高いと判断されれば、5年より以前までさかのぼって追求されるケースもあります。


3. 家賃収入の確定申告をしていない場合にすべきこと

家賃収入を確定申告しなかった過去がある場合、
「いつ、税務署から摘発が入るのか?」
とビクビクしている方もいるかもしれません。

ビクビクしながら待つよりも、大幅に好ましい対処法がありますので、以下で見ていきましょう。

3-1. 期限後申告をする

その対処法とは、「期限後申告」をすることです。

税務署から指摘を受ける前に、過去にさかのぼって申告することで、仮装隠蔽をする意図はないことを示しましょう。

以下は国税庁のWebサイトからの引用です。

所得税法では毎年1月1日から12月31日までの1年間に生じた所得について、翌年2月16日から3月15日までの間に確定申告を行い、所得税を納付することになっています。
しかし、期限内に確定申告を忘れた場合でも、自分で気が付いたらできるだけ早く申告するようにしてください。この場合は、期限後申告として取り扱われます。
出典:国税庁「No.2024 確定申告を忘れたとき」

3-2. 期限後申告をすると無申告加算税が軽減される

税務署の調査を受ける前に、自主的に期限後申告をした場合は、無申告加算税の税率が《5%》に軽減されます。

無申告加算税は、通常は以下のとおりですから、大幅な軽減となります。

【通常の無申告加算税】

  • 50万円までの部分:15%
  • 50万円を超える部分:20%

(2022年度分までの割合)

また、期限後申告をすることで、無申告加算税が免除されるケースもあります。

具体的には、以下の要件をすべて満たせば、無申告加算税は加算されません。

1 その期限後申告が、法定申告期限から1か月以内に自主的に行われていること。
2 期限内申告をする意思があったと認められる一定の場合に該当すること。
なお、一定の場合とは、次の(1)および(2)のいずれにも該当する場合をいいます。
(1)その期限後申告に係る納付すべき税額の全額を法定納期限(口座振替納付の手続をした場合は期限後申告書を提出した日)までに納付していること。
(2)その期限後申告書を提出した日の前日から起算して5年前までの間に、無申告加算税または重加算税を課されたことがなく、かつ、期限内申告をする意思があったと認められる場合の無申告加算税の不適用を受けていないこと。
出典:国税庁「No.2024 確定申告を忘れたとき」

3-3. 期限後申告のやり方は通常の確定申告と同じ

期限後申告のやり方は、通常の確定申告とまったく同じです。

国税庁の「確定申告書等作成コーナー」では、画面の案内に従って金額などを入力すると、確定申告書が作成できます。

作成したデータは、電子申告(e‐Tax)や印刷して税務署に郵送などで提出します。

確定申告のやり方がわからない場合は、国税庁のサイト「所得税の確定申告」にて確認するか、最寄りの税務署や税理士などの専門家に確認しましょう。

最寄りの相談窓口は、税についての相談窓口(国税庁)にて確認できます。

3-4. 期限後申告の注意点

期限後申告で注意したい点は、確定申告期限までの申請が要件となっている控除の適用は、受けられないことです。

その代表的なものが、青色申告特別控除(電子申告などの要件を満たす場合、65万円の控除)です(青色申告の詳細は「No.2072 青色申告特別控除」をご覧ください)。

ただし、このようなデメリットを加味しても、期限後申告はきちんと行い、正しく納税することを優先しましょう。

法令遵守の姿勢としてはもちろんですが、脱税行為となって摘発を受けるよりも、大局的にはメリットが大きいといえます。


4. 家賃収入の確定申告に向けて行いたい節税対策

過去の無申告分の期限後申告を行ったら、次の確定申告では、できる限り節税をできるように準備を進めていきましょう。

そのためのポイントを3つ、お伝えします。

  1. 必要経費を抜け漏れなく計上する
  2. 損益通算や繰越控除をする
  3. 適用できる控除はすべて適用する

4-1. 必要経費を抜け漏れなく計上する

1つめのポイントは「必要経費を抜け漏れなく計上する」です。

不動産所得の計算式を再掲します。

必要経費として計上できる金額が大きくなるほど、不動産所得の金額が下がり、納税額を抑えられます。

必要経費の証拠となる、固定資産税の納税通知書や各種領収書などの書類を保管し、確定申告の際に抜け漏れなく、経費として算入できるようにしましょう。

4-2. 損益通算や繰越控除をする

2つめのポイントは「損益通算や繰越控除をする」です。

「損益通算」とは、対象となる所得の間で、黒字と赤字を相殺できる仕組みです。

【損益通算の対象となる所得の範囲】所得の金額の計算上損失が生じた場合に、損益通算の対象となる所得は次の所得です。
(1) 不動産所得
(2) 事業所得
(3) 譲渡所得
(4) 山林所得
出典:国税庁「No.2250 損益通算」

たとえば、不動産所得(家賃収入)で100万円の利益を得て、事業所得で100万円の損失を出したとします。

両者の損益は通算できるので、所得は0円となり、所得税の納税義務が生じなくなるのです。

「繰越控除」とは、損益通算をしても損失が残った場合に、その損失額を翌年以後最大3年にわたって繰り越せる仕組みです。

わかりやすくいうと、「今年の所得金額と来年の所得金額」を損益通算できるイメージです。

所得税の納税義務が生じなくても、赤字が出たら確定申告をしておくことで、翌年以降の利益を圧縮して節税できるのです。

4-3. 適用できる控除はすべて適用する

3つめのポイントは「適用できる控除はすべて適用する」です。

前述の繰越控除のほかにも、控除にはさまざまな種類があります。

本記事の前半でご紹介した所得控除の種類を、以下に再掲します(各リンク先は国税庁Webサイト)。

出典:国税庁「No.1100 所得控除のあらまし」

また、確定申告のやり方を「青色申告」にすることで、所得金額から最高65万円を差し引くことができます。

国税庁の冊子「はじめてみませんか? 青色申告」にて、節税効果から青色申告の流れまで詳説されています。目を通して、準備を進めていきましょう。


5. まとめ

本記事では「家賃収入の確定申告をしていない」をテーマに解説しました。要点をまとめておきましょう。

家賃収入で確定申告が必要な主要ケースは、以下のとおりです。

  • 給与所得がある場合:給与所得・退職所得以外に20万円以上の所得があれば確定申告が必要
  • 給与所得がない場合:合計所得が2,400万円以下の場合、48万円以上の所得があれば確定申告が必要

確定申告をせずに税務署から指摘を受けると、加算税と延滞税を加算した税金を納税しなければなりません。

時効は5年であり、5年前までさかのぼって追求されるリスクがあります。できるだけ早く「期限後申告」をして、ペナルティを軽減させましょう。

次の確定申告に向けて行いたい節税対策として、以下をご紹介しました。

  1. 必要経費を抜け漏れなく計上する
  2. 損益通算や繰越控除をする
  3. 適用できる控除はすべて適用する

なお、確定申告にかける時間が取れないという場合には、賃貸の管理会社のサポートを得るのもよい方法です。

弊社ルーム・スタイルでは、確定申告のサポートサービスを行っています。詳しくはこちらのお問い合わせページからお問い合わせください。

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