不動産を買うなら、投資用でもマイホーム用でも「資産価値が高い物件」を選ぶことが大切です。なぜなら、資産価値が高い物件は、将来売却するときにも高値がつきやすく、家賃収入も安定しやすいからです。
逆に、資産価値を考えずに物件を選んでしまうと、「売りたくても売れない」「想定以上に損をしてしまう」といったリスクも。
この記事では、「資産価値ってそもそも何?」という疑問から、具体的にどんな物件が狙い目なのかまで、初心者でも分かりやすく解説します。後悔しない物件選びをするために、評価額や市場価値といった基礎知識をしっかりと身につけ、資産価値を高める方法やその維持についても理解を深めていきましょう。
この記事で分かること |
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目次
- 資産価値とは
- 「資産価値」と「リセールバリュー」のちがい
- 不動産は「土地」と「建物」で価値を考える
- 資産価値を維持できる物件が希少な理由
- 資産価値の測り方
- 不動産査定で使用される評価基準
- 資産価値の計算方法
- 資産価値の評価基準を調べる方法
- 資産価値が下がりにくい土地の条件
- 1.交通利便性が良い
- 2.商業施設やインフラが整備されている
- 3.都市計画や再開発が進んでいる
- 4.自然災害のリスクが低い
- 5.地域の人口が増加傾向にある
- 6.法律や規制に適合する
- 7.整形地である
- 資産価値が下がりにくい建物の条件
- 戸建ての場合
- マンションの場合
- 資産価値を維持するために不可欠なこと
- 定期的なメンテナンスを行う
- 最新の設備を導入する
- 周辺環境の変化を見逃さない
- 需要に合ったリフォームを行う
- まとめ
資産価値とは
「資産価値」とは、その不動産がどれだけの価値を持っているかを表すものです。これは、物件を購入したり売却したりするときだけでなく、所有している間の運用や管理にも大きく関わります。資産価値が高い物件は、将来売却する際に高い価格で売れる可能性があり、賃貸に出しても安定した家賃収入を得やすいというメリットがあります。
では、この資産価値は何によって決まり、どうやって判断すればよいのでしょうか。以下で、詳しく解説していきます。
「資産価値」と「リセールバリュー」のちがい
資産価値とリセールバリューはとても似た概念で、どちらも不動産の価値を考えるうえでは非常に重要です。ただし、それぞれに少し違う側面があります。
資産価値 | 家賃収入や建物の管理状況など、所有中の運用面も含むため、リセールバリューより幅広い概念。 |
リセールバリュー | その不動産を将来売却した際に得られる再販価格に焦点を当てた価値。 |
たとえば、駅近のマンションは一般的に資産価値が高く、リセールバリューも期待できます。ただし、資産価値は家賃収入や建物の管理状況など、所有中の運用価値も含む点で少し範囲が広がります。
どちらも不動産選びの際に押さえておきたい重要な視点であり、両方を意識することでより良い判断ができるでしょう。
不動産は「土地」と「建物」で価値を考える
不動産の資産価値は、「土地」と「建物」に分けて考えます。
資産
土地の価値 | 一般的に、土地は年数が経過しても劣化することがなく、その価値が下がりにくいのが特徴です。特に、交通の利便性や周辺環境が整っている地域では、土地の価値が資産価値全体を大きく支えることがあります。 |
建物の価値 | 建物は築年数に比例して価値が下がっていきますが、構造によって耐久性や劣化のスピードが異なります。また、耐震性や断熱性能、メンテナンス具合も影響を与えます。 |
このように、土地と建物それぞれの特性を理解することで、より正確に資産価値の判断が可能です。将来的に売却を検討している場合や、賃貸物件として運用する場合には、この視点がとても重要です。
資産価値を維持できる物件が希少な理由
現在、不動産市場では資産価値を維持できる物件は、全体の1割程度と言われています。その背景にあるのが、不動産の三極化です。
これは、不動産価格が「上がり続ける物件」「緩やかに下がっていく物件」「ほとんど価値がない物件」の3つの層に分かれている現状を指します。不動産価格が三極化し、資産価値を維持できる物件(価格が上がり続ける物件)は全体の1割にとどまるというデータもあり、しっかりとした目利きが必要です。
資産価値の測り方
「どんな物件を選ぶべきか」「売却時に損をしないためにはどうすればいいのか」
不動産購入で失敗を防ぐための判断材料となるのが、資産価値です。
本章では、不動産の査定に使われる基準や計算の仕方、手軽に資産価値を調べる方法について解説します。少し専門的な話になりますが、物件選びで後悔しないために、ぜひ目を通してみてください。
不動産査定で使用される評価基準
不動産は土地や建物の状態、周辺環境など、さまざまな要素をもとに評価されますが、その際にはいくつかの基準が活用されます。主な評価基準は次の3つです。
- 公示価格
国土交通省が公表する土地価格の指標で、市場価格に近い値を反映しています。不動産取引の目安としてよく使われます。 - 実勢価格
実勢価格は、実際の市場で売買が成立した価格を指します。市場の需給や取引のタイミングによって変動し、公示価格や路線価とは異なり、現実の取引を反映した価格です。 - 路線価
国税庁が毎年公表する価格で、相続税や贈与税を計算する際の基準となります。おおよそ公示価格の80%程度を目安としています。 - 固定資産税評価額
市区町村が固定資産税や都市計画税を計算するために用いる価格で、公示価格の約70%程度と言われています。
これらの基準はそれぞれ目的が異なるため、物件の実際の市場価値を判断する際には、複数の基準を参考にすることが重要です。
資産価値の計算方法
資産価値を計算する際には、次の計算式がよく使われます。
土地の資産価値 | 「路線価 × 土地面積」、「路線価 × 土地面積」 |
建物の資産価値 | 「建築費用 × 築年数による減価償却率」 |
上記を基準に、売却や購入の際の適正価格を見極めることができます。
【土地の資産価値の計算例】
路線価を使った計算例
路線価(1㎡あたり) × 土地面積(㎡)
例: 路線価が20万円/㎡で、土地面積が100㎡の場合
→ 20万円 × 100㎡ = 2,000万円- 公示価格を使った計算例
公示価格(1㎡あたり) × 土地面積(㎡)
例: 公示価格が25万円/㎡で、土地面積が100㎡の場合
→ 25万円 × 100㎡ = 2,500万円
【建物の資産価値の計算例】
建物の資産価値は、建築時の費用から築年数による減価償却を考慮して算出します。
【法定耐用年数】
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計算式
建築費用 × (1 – 築年数 ÷ 耐用年数)
耐用年数は、建物の構造によって異なります。計算例(木造住宅)
建築費用: 2,000万円
築年数: 10年
耐用年数: 22年
→ 2,000万円 × (1 – 10 ÷ 22) = 約1,090万円
築年数が進むと価値が下がるため、資産価値は築浅物件の方が高く評価されます。
資産価値の評価基準を調べる方法
忙しい方や初めて不動産を調べる方でも、以下の方法で簡単に資産価値を確認できます。
- オンラインの不動産査定ツール
- オンラインで公示価格、路線価、実勢価格をチェック(不動産情報ライブラリ)
- 不動産会社への相談
これらの方法を組み合わせて調べることで、資産価値の全体像をより正確に把握できるでしょう。特に、国土交通省や国税庁の公式サイトで公表されている公示価格や路線価は、公的機関が提供する情報として信頼性が高く、安心して参考にできます。
資産価値が下がりにくい土地の条件
土地の価値は、交通の利便性や周辺施設の充実度、都市計画や法令など、さまざまな要因に左右されます。
この章では、資産価値が下がりにくい土地の具体的な条件について、詳しく解説します。
1.交通利便性が良い
駅やバス停までのアクセスが良い土地は、資産価値が下がりにくいと言われています。特に、徒歩圏内に主要な駅がある場所は、多くの人にとって魅力的です。
たとえば、「徒歩5分以内に駅がある土地」と「バスで20分かかる土地」では、後者の需要が低いため、資産価値に大きな差が出ます。
2.商業施設やインフラが整備されている
スーパーやコンビニ、病院、学校などが近くに揃っている土地は生活しやすく、多くの人に選ばれやすいです。
ただし、求められる施設や環境は、単身者とファミリー層で異なります。
単身者 | 徒歩圏内にコンビニや飲食店、クリーニング店など、日常的に利用できる店舗が充実している |
ファミリー層 | スーパー、保育園や学校、総合病院、公園など、子育てや家族の生活に直結する施設が求められる |
そのため、土地のターゲットを明確にし、エリアの環境がそのニーズに合っているかを分析することが重要です。
3.都市計画や再開発が進んでいる
都心部の再開発エリアや、郊外で新しい都市計画が進んでいる地域は、将来的に周辺環境が良くなるため、資産価値が上昇する可能性があります。
特に、都市計画では住みやすい街や効率的な都市の発展を目指し、住宅地や商業地、道路、公園、公共施設の整備などがエリア一帯で計画されます。中には、数年のうちに急激に資産価値が上昇するエリアもありますので、敏感に最新情報を追っていくことが大切です。
4.自然災害のリスクが低い
自然災害リスクが低い土地は、安全性の観点から需要が高く、資産価値を保ちやすいです。反対に、以下のようなエリアには注意が必要です。
- 河川の近く
- 海岸沿い、干拓地
- 低地や湿地
- 急な斜面や山間部
- 地震の揺れやすいエリア(軟弱地盤)
これらのリスクを避けた土地は、安全性が高く需要も安定しているため、資産価値が下がりにくい特徴があります。
5.地域の人口が増加傾向にある
地域の人口動向は、資産価値を保つ上で非常に重要なポイントです。日本全体では、今後の人口減少が避けられず、これにより多くの不動産が「少しずつ価値が下がる物件」や「ほとんど価値がなくなってしまう物件」に分類されてしまいます。それでも、人口が増え続ける地域では住宅や商業施設への需要が高まり、活発な開発工事も行われていくため、資産価値が安定しやすいという大きなメリットがあります。
人口動向を把握するには、自治体の公式サイトの確認や、国立社会保障・人口問題研究所のデータを活用することが有効です。
6.法律や規制に適合する
土地の用途制限や建築基準に問題がない土地は、長期的に価値を維持しやすいです。
- 建ぺい率や容積率に余裕がある
- 用途地域が幅広い
- 用途地域の変更が可能
- 再建築が可能
- セットバックが不要(前面道路の接道義務が満たされている)
7.整形地である
整形地とは、四角形や長方形などの形が整った土地のことです。このような土地は建物を建てやすく、無駄なスペースが少ないため、資産価値を保ちやすいです。
旗竿地や斜面地は、同じ広さの整形地と比べて利便性や使い勝手が劣るため、資産価値が下がる傾向があります。一般的には、旗竿地は整形地と比べて10~20%程度、斜面地は20~30%程度価値が低くなる場合があります。
これらの土地は建築プランに制約が生じやすいことや、駐車場や庭などのスペースが有効活用しづらいことが主な要因です。土地の形状は資産価値に大きく影響するため、購入時には慎重な検討が必要です。
資産価値が下がりにくい建物の条件
建物の価値は、構造の性能や管理状態、立地との相性など、さまざまな要素に影響されます。資産価値を保つためには、建物自体の品質はもちろん、維持管理がしやすいことや将来的な需要を見越した選択が重要です。
ここでは、戸建てとマンションそれぞれの資産価値が下がりにくい条件について詳しく解説していきます。
戸建ての場合
- 耐震性能が高い
最新の耐震基準を満たしている、または耐震等級が高い建物は、地震に強い安心感があるため、購入者からの信頼も得られやすいです。1981年5月31日以前の旧耐震物件は、耐震性能が低いうえ、金融機関からの評価が得られず、融資付けが難しくなるので注意しましょう。 断熱性能が高い
高性能な断熱材や窓を採用した住宅は、省エネ効果が期待でき、快適な住環境を提供することができます。そのため、長期的にも価値を保ちやすいです。断熱性能が高い有名ハウスメーカーの注文住宅などは、その点を評価してもらえる場合があります。躯体のメンテナンスがされている
外壁や屋根のリフォームが適切に行われている物件は、見た目が良く、購入後に修繕費がかさむ心配が少ないため、安心して選ばれやすいです。木造であれば防蟻工事なども高い評価につながります。日当たり・風通しがいい
日当たりが良く、風通しの良い戸建ては、住む人に快適な環境を提供できるため、需要が高く資産価値が維持されやすいです。特に、南向きの敷地や窓の配置が工夫されている住宅は、明るく開放的な住環境を実現できるため、多くの購入希望者に選ばれやすい特徴があります。駐車場や庭が使いやすい
広い駐車スペースや手入れが行き届いた庭を備えた住宅は、特にファミリー層からの需要が高く、価値を維持しやすい特徴があります。
マンションの場合
管理状態が良好
管理費や修繕積立金が適正で滞納履歴がなく、共用部分の清掃が行き届いているマンションは、住民全体の満足度が高いため、価値が下がりにくいです。「マンションは管理を買う」とも言われており、とても重要なポイントです。- 大手施工会社が建てている
大手施工会社が建設したマンションは、施工技術や品質に信頼があります。売却時にも「大手の物件だから安心」と選ばれやすく、資産価値が下がりにくい傾向があります。アフターサービスや保証が充実していることが多く、住む人にとってのメリットも大きいです。 - 築年数が浅い、または大規模修繕済み
築10年以内の物件や、躯体や共用部の修繕が定期的に行われているマンションは、建物の状態が良く、購入後も安心して住むことができるため、需要が高いです。大規模修繕直後は、修繕積立金が急激に上がることも考えづらいため、その点においても買主側の安心感があります。 共有施設が充実している
宅配ボックス、防犯カメラ、オートロックなどの充実した共用施設は、住む人にとって便利さや快適さを提供し、人気を集めやすいです。加えて、タワーマンションではフィットネスジムやキッズルームなど、これらが付加価値となって高く評価されます。アクセスが良い
駅から徒歩圏内、または商業施設が近くにあるマンションは、その利便性から高い評価を受けることが多いです。特に、マンションを選ぶ人の中には「駅近の戸建ては手が届かないけれど、マンションなら駅近が叶う」という理由でアクセスを重視する層も一定数います。- 眺望が良い
高層階からの眺望が良いマンションは、特に都市部や景観の良いエリアで需要が高く、資産価値の維持につながります。窓からの景色の良さは、日常生活に特別感を与えるだけでなく、購入希望者にも好印象を与えます。眺望の良さはマンションならではの魅力の一つであり、資産価値の維持につながりやすいポイントです。 総戸数が多い
大規模マンションは、修繕積立金が安定して確保されやすく、管理体制も充実している場合が多いため、資産価値の維持につながります。エリアの希少性が高い
マンションが位置するエリアの希少性も、資産価値に大きく影響します。たとえば、都心部や駅近でそもそもの供給数が少ない地域、ファミリー層に人気なエリアで需要が供給を上回る物件は、高い資産価値が見込まれます。また、都内ではワンルーム規制により駅近の築浅ワンルームの希少性が上昇した事例もあります。
資産価値を維持するために不可欠なこと
資産価値を維持するには、購入後の物件管理や周辺環境の変化に注意を払い、適切な対策を講じることが重要です。ここでは、資産価値を保つためにできる具体的な方法について説明します。
定期的なメンテナンスを行う
建物の価値を維持するためには、外壁や屋根の塗装、配管の交換など、定期的なメンテナンスが欠かせません。特に、戸建ての場合は外部の劣化が資産価値に直結しやすいため、10年ごとを目安にメンテナンス計画を立てることが重要です。
マンションの場合も、専有部分だけでなく、管理組合が実施する共用部分の修繕状況を定期的に確認することで、資産価値を保つことができます。管理組合の総会など、意見を言える環境があれば、住民として積極的に意見を発信していくと良いでしょう。
最新の設備を導入する
物件の魅力を高めるためには、時代に合わせた設備を導入することも効果的です。
たとえば、エアコンや給湯器などの省エネ性能が高い設備、スマートホーム化に対応したシステムなどは、購入希望者にとっての付加価値となり、資産価値を高める要因となります。これにより、将来的な売却時にも有利な条件で取引ができる可能性があります。
周辺環境の変化を見逃さない
資産価値を維持するためには、周辺環境の変化に敏感であることが必要です。近隣での再開発や、新駅の開設、商業施設の建設などは、資産価値の上昇につながる場合があります。
一方で、騒音や治安悪化のリスクがある施設ができる場合には、適切な対応策を講じたり、早めに売却を検討したりすることも必要です。
需要に合ったリフォームを行う
資産価値を高めるためには、需要に合わせたリフォームやリノベーションが効果的です。ファミリー層が多い地域であれば、収納スペースを拡充し、子ども部屋を作るなどの工夫が有効です。一方で、単身者向けの地域では、デザイン性を重視した改装や最新家電の導入が人気を集めます。
また、築古物件で「DK」仕様の場合、最近人気で使い勝手の良い「LDK」の間取りに変更することも効果的です。リフォームを行う際には、地域特性やターゲット層を意識することが重要です。
まとめ
この記事では、不動産の資産価値について、基本的な考え方から、価値が下がりにくい物件の条件、さらに資産価値を保つために必要な取り組みまでを分かりやすく解説しました。
不動産を選ぶときには、資産価値が高い物件を見極めることが、将来のリスクを減らす大事なポイントになります。駅からの距離や周辺の商業施設、建物の状態や管理の良さなど、価値を守るための条件をしっかり押さえておくことが大切です。また、購入したあとも、定期的にメンテナンスをしたり、新しい設備を取り入れたりすることで、物件の魅力を保つことができます。
不動産は人生の中でも大きな買い物だからこそ、しっかり準備をして、資産価値を長く守りながら、安心して満足できる選択をしていきましょう。
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