2018年に発覚したスルガ銀行の不正融資による「アパマン問題」。あれから7年経った2025年12月、解決金を支払うことが発表されました。
ただし、その対象物件は全体の3分の1に満たず、多くのオーナーがいまなお重い現実と向き合っています。
本記事では、2025年12月15日に公表された共同声明の内容を軸に、問題の経緯、解決の内実、そして不動産投資に何が求められるのかを整理します。
いま投資を考えている方も、すでに物件を保有している方も、「この判断で本当に良かったのか」と立ち止まりたいタイミングは必ず訪れます。そう感じたときは、ぜひ一度、弊社までお気軽にご相談ください。
| この記事で分かること |
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目次
- 2025年12月15日の共同声明|何が決まったのか
- 東京地裁の調停勧告を全面受諾
- 605物件のうち194物件に解決金121億円
- 「不法行為を全面的に認めない」まま解決を選択した理由
- スルガ銀行の不正融資問題とは|2018年発覚から現在まで
- 融資審査過程で行われていた不正問題
- 銀行側の説明:「放置していたわけではない」
- 「かぼちゃの馬車」事件からなぜ解決が遅れたのか
- かぼちゃの馬車問題はすでに解決済み
- 「アパマン問題」が長期化した理由
- 残り410物件は包括的解決の対象外
- 具体的な支援策の内容
- 「救済されない=切り捨て」ではない
- あの時、オーナーは本当はどう判断すべきだったのか
- スルガ銀行から不正融資を受けた人たちの声
- あの時オーナーはどのポイントで立ち止まるべきだったのか
- 不動産投資市場への影響と教訓
- 金融機関の融資審査が厳格化
- 投資家自身のデューデリジェンスの重要性
- 不動産業界全体の自浄作用への期待
- まとめ
2025年12月15日の共同声明|何が決まったのか
2025年12月15日、スルガ銀行は「シェアハウス以外の投資用不動産向け融資に関する当社対応状況」と題した公式資料を公表しました。この発表により、長期化していた投資用アパート・マンション向け不正融資問題が大きな節目を迎えることになりました。
東京地裁の調停勧告を全面受諾
スルガ銀行は、東京地裁が2025年10月21日に示した最終的な調停勧告を「全面的に受け入れる」ことを正式に表明しました。これは銀行側が「争わない」姿勢を明確にしたことを意味し、報道で伝えられる以上に重要な転換点となっています。
スルガ銀行は公式資料の中で、「対象となるお客さまの不安・負担に真摯に寄り添う」「早期解決に誠意を尽くす」と表明。長年の対立姿勢から、解決を優先する方向へと舵を切ったことが読み取れます。
605物件のうち194物件に解決金121億円
調停の対象となった605物件は、裁判所によって以下のように分類されました。
- グレー案件:194物件(不法行為成立の可能性があると裁判所が判断)
- 白案件:410物件(全体の約7割、不法行為が成立しないことを前提)
グレー案件194物件については、総額121億円の解決金を支払うことで合意。実際の解決金額は物件ごとに異なりますが、1件あたり平均約6,232万円という計算になります。
白案件の残り410物件については、解決金の対象外となりますが、スルガ銀行は「個別事情に寄り添った解決」を目指すとしています。
「不法行為を全面的に認めない」まま解決を選択した理由
重要なのは、スルガ銀行側が「不法行為を全面的に認めたわけではない」としながらも、訴訟リスクを踏まえて解決を選択したという点です。
このニュアンスは、銀行の法的責任を考える上で非常に重要な意味を持ちます。
銀行が不法行為を全面的に認めてしまうと、他の案件への波及リスクや株主への説明責任が生じる可能性があります。そのため、「争えば勝てる可能性もあるが、早期解決を優先する」という立場を維持しているわけです。
調停勧告を受けて、2025年12月5日には銀行側と被害者弁護団の代表が直接協議を実施。この協議を経て、同月15日の公式発表に至りました。
裁判所の調停勧告が、長年の対立を解きほぐす「触媒」として機能したことは間違いありません。
スルガ銀行の不正融資問題とは|2018年発覚から現在まで
スルガ銀行の不正融資問題は、2018年1月に女性専用シェアハウス「かぼちゃの馬車」を運営するスマートデイズ社が経営破綻したことから表面化しました。
本来あってはならない、不動産会社と銀行による組織的な不正でした。
融資審査過程で行われていた不正問題
第三者委員会の調査により、スルガ銀行の融資審査において以下のような不正が組織的に行われていたことが明らかになりました。
- 融資申込書類の改ざん・偽造
- 借り手の年収や自己資金の水増し
- 物件価格の不当な評価
- 審査基準の恣意的な運用
これらの不正により、本来であれば金融機関が定める基準に満たず、融資を受けられないはずの顧客に対しても、多額の融資が実行されていました。
銀行側の説明:「放置していたわけではない」
スルガ銀行は、不正発覚後に内部管理体制とコンプライアンス体制の強化を進めてきたと説明しています。具体的には以下のような対応を行ってきたとしています。
- 2023年4月:「投資用不動産向け融資問題の早期解決方針」を公表
- 2025年5月:金融庁からの報告徴求を受領し、社会的要請の高まりを認識
- 2025年12月1日:特別対応チームを設置
銀行側の公式説明では、「問題を放置していた」のではなく、段階的に対応を進めてきたという立場をとっています。
ただし、被害者側からは「対応が遅すぎた」という批判も根強く残っています。
「かぼちゃの馬車」事件からなぜ解決が遅れたのか
スルガ銀行は公式資料において、今回解決金を支払う「シェアハウス以外の投資用不動産向け融資」を明確に別問題として整理しています。
この区分が、解決の遅れを理解する上で重要なポイントとなります。
かぼちゃの馬車問題はすでに解決済み
女性専用シェアハウス「かぼちゃの馬車」問題については、以下のような形で解決に至っています。
- スルガ銀行がオーナーに解決金を支払い
- 残債権を第三者へ譲渡
- オーナーは物件を引き渡すことで債務を解消する「代物弁済」を実施
- 2022年までに完結
この問題は、運営会社が1社(スマートデイズ)であり、物件の種類も「女性専用シェアハウス」に限定されていたため、比較的一律の解決が可能でした。
「アパマン問題」が長期化した理由
一方、今回の調停対象となったのは、2022年2月に民事調停が申し立てられた「投資用アパート・マンション向け融資」です。
対象は605物件と明記されています。この問題が長期化した背景には、以下のような構造的な違いがありました。
| シェアハウス問題との主な相違点 |
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| 両者の主張の対立 |
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この対立が平行線をたどり、解決が大幅に遅れる要因となりました。銀行自身が「別枠」として整理している点を理解することが、この問題の複雑さを把握する上で重要です。
残り410物件は包括的解決の対象外
グレー案件以外の410物件(白案件)は、調停による包括的解決の対象外となりました。しかし、スルガ銀行は「不法行為が成立しないことを前提」としつつも、個別事情に寄り添った解決を目指すとしています。
スルガ銀行は公式に「無理な差し押さえは行わない」と明言しています。これは、返済が困難になった借り手に対しても、一律に法的手段を取るのではなく、個別の事情を考慮するという姿勢を示したものです。
具体的な支援策の内容
スルガ銀行の公式資料「別紙Ⅱ:個別解決施策の概要」には、以下のような具体策が明記されています。
| 任意売却後の残債返済相談 |
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| 金利引き下げ |
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| 返済期間の延長 |
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| 特別対応チームの設置 |
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「救済されない=切り捨て」ではない
白案件に分類された410物件の借り手の中には、「解決金がもらえない」ことに不満を持つ人もいるかもしれません。
しかし、銀行側の説明では、これらの案件は「不正の度合いが相対的に低い」または「銀行の不法行為が認められない」と判断されたものです。
そのため、解決金という形ではなく、返済支援という形で対応するという整理になっています。
実際に「切り捨て」ではなく、金利引き下げや返済期間延長といった実質的な負担軽減策が用意されている点は、評価できる部分と言えるでしょう。
いま投資を考えている方も、すでに物件を保有している方も、「この判断で本当に良かったのか」と立ち止まりたいタイミングは必ず訪れます。そう感じたときは、ぜひ一度、弊社までお気軽にご相談ください。
あの時、オーナーは本当はどう判断すべきだったのか
スルガ銀行の不正融資問題を振り返ると、多くのオーナーが「被害者」であることは間違いありません。
ただし同時に、投資判断として何が欠けていたのかを冷静に整理することも、不動産投資を考えるうえでは必要です。この問題は、単純に「銀行が悪い」「不動産会社が悪い」という単純な構図では終わらないからです。
スルガ銀行から不正融資を受けた人たちの声
スルガ銀行の融資によって大きな被害を受けたオーナーたちは、現在も厳しい生活状況や心情を語っています。FRIDAYデジタルの記事からは、次のような悲痛な声が確認できます。
(出典:「家族崩壊」「死んで返すしか…」スルガ問題「被害者」の悲痛な声 | FRIDAYデジタル)
ケース①「想定家賃と現実が違いすぎた」うえ妻が連帯保証人に
FRIDAYデジタルに掲載されたオーナーの一人は、スルガ銀行の融資を受けて約8,800万円の投資用マンションを購入しました。
販売時には「家賃収入で十分に返済できる」と説明されていましたが、実際には家賃収入やレントロールが事実と異なっていたといいます。
- 月々のローン返済額:約46万円
- 実際の家賃収入:約26万円
この差額を埋めるため、毎月の給与から持ち出しで返済を続ける状況に陥りました。
結果として、子どもの教育費や家族の生活費を削らざるを得ない状況に追い込まれたと語られています。
さらに深刻だったのは、妻が連帯保証人になっていたという点です。仮に自分が自己破産をしても、債務は配偶者に残ってしまう。
藁にもすがる思いで親族に1,000万円を借りられたものの、親族からも見放されてしまっているといいます。
このケースが示しているのは、不動産投資の失敗が単なる「お金の問題」にとどまらず、連帯保証という仕組みを通じて、家族全体の人生を狂わせてしまっている現実です。
ケース②高年収世帯だが3棟で年間500万円以上の赤字で家計崩壊
東京都郊外に住む別のオーナーは、2016年にスルガ銀行の融資で大分のアパート2棟と北海道のマンション1棟を購入し、約1億6,000万円の融資を受けました。世帯年収は約2,000万円の高属性世帯でした。
しかし、大分の物件は当初「入居率70%」と説明されていたものの、実際は半分にも満たず、現在は16%程度まで低下。結果として、3棟合計で年間500万円以上の赤字が発生しました。加えて、約1,500万円規模のローン返済が重なり、高年収世帯でも支えきれない状況に陥ります。
損失を指摘すると、担当者からは「既存物件を担保に、新たな物件で回収する」という提案を受けましたが、そこでもレントロールの偽装が判明。さらに、預金残高が約2,000万円水増しされていたことが後に分かります。
最終的に約2億円近い負債が残り、子どもの進学や自宅売却を巡る問題に直面。家族に債務を残さないため、離婚と自己破産を選ばざるを得ない可能性にも言及しています。
この事例は、「高属性だから安全」「銀行が通したから問題ない」という前提が、現実には成り立たないことを示しています。
あの時オーナーはどのポイントで立ち止まるべきだったのか
前章で紹介したケースを丁寧に読み解くと、オーナーたちが見落としていたのは「知識不足」ではなく、判断の前提そのものだったことがわかります。
不動産投資は、ほとんどの方が融資ありきで行います。逆に言えば、融資クリアが大きな障壁になっており、一部では「融資が通ったなら買うべき!」という考えもあります。
しかし、融資の仮審査が無事に通り、金融機関や不動産会社から「絶対に大丈夫です」と言われたとしても、最終的には自ら判断する力が不可欠なのです。
「配偶者を連帯保証人にする」という判断の重さ
まずは、投資の失敗が本人だけで完結しない構造になっていた点です。
配偶者が連帯保証人になることで、自己破産という法的な逃げ道すら封じられ、投資は「撤退できない契約」に変わっていました。
これはリスクを取ったというより、人生単位で選択肢を失う設計だったと言えます。
入居率70%という数字を「結果」としてしか見ていなかった
ケース②では、入居率70%と説明された物件が、最終的に16%まで低下しています。
ここで重要なのは、70%という数字そのものではなく、
- その入居率は「どの家賃水準」で成立していたのか
- サブリースや短期施策で作られた数字ではなかったか
- 周辺エリアの賃貸需要は長期的に維持できるのか
といった背景を検証していなかった点です。数字を信じたのではなく、数字の成り立ちを疑わなかったことが致命的でした。
「エリアの適正家賃」の判別がしづらい物件を購入してしまった
大分や北海道という地方エリアで、本当にその家賃が「普通に住む人に選ばれる水準」だったのか。
不動産会社や銀行の説明を前提にするのではなく、自分がそのエリアで部屋を探す立場なら借りるかという視点が必要です。
しかし、馴染みのないエリアの物件購入は、適正家賃の判別がしづらいのが難点です。
このケースでは「ここで立ち止まるべきだったポイント」を挙げましたが、不動産投資の判断は、物件やエリア、家族構成によって正解が大きく異なります。
だからこそ、「新築」「融資が通った」「大丈夫と言われた」といった表面の安心感だけで判断するのは危険です。
数字や説明をうのみにせず、崩れたときに何が起きるかまで掘り下げて考えることが、投資判断では何より重要だと言えるでしょう。
不動産投資市場への影響と教訓
スルガ銀行の不正融資問題は、不動産投資市場全体に大きな影響を与えました。
明るみになったシェアハウス「かぼちゃの馬車」以外にも、スルガ銀行から不正融資を受けて一棟物件を購入したオーナーがたくさんいます。
この問題から学ぶべき教訓は、今後の不動産投資を考える上で忘れてはいけないとても重要な内容です。
金融機関の融資審査が厳格化
スルガ銀行問題を受けて以降、他の金融機関も投資用不動産向け融資の審査を大幅に厳格化しました。
【具体的な変化】
- 自己資金比率の確認強化(通常20〜30%以上を要求)
- 年収証明書類の厳格なチェック
- 物件評価の第三者機関による検証
- 借り手の返済能力の詳細なシミュレーション
こうした動きにより、投資用不動産を巡る融資環境は全体として健全化が進みつつあります。一方で、自己資金や返済余力が十分でない投資家にとっては、融資のハードルが明らかに高くなりました。
かつて当たり前だったフルローンや自己資金10%前後でも購入できる環境が崩れ、「サラリーマンなら誰でもオーナーになれる」という時代は大きな転換点を迎えています。
従来、多くの不動産投資家は「銀行がOKを出した物件なら大丈夫だろう」という安心感を持っていました。
しかし、今回の不正発覚で、銀行の審査が必ずしも投資家の利益を守るものではないことが明らかになりました。
投資家自身のデューデリジェンスの重要性
デューデリジェンス(Due Diligence)とは、投資や契約を行う前に、その対象(会社、不動産、事業など)についてリスクや価値を詳細に調べ、判断するプロセスのことです。
今後の不動産投資では、投資家自身が以下のようなデューデリジェンスを厳しく確認する必要があります。
| 物件の精査 |
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| 収支計画の検証 |
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| 販売会社・管理会社の信頼性 |
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すでに投資を始めている大家さんの話を聞き、実際の経験に触れることが大切です。
「銀行が貸してくれるから大丈夫」「営業担当者が誠実そうだから安心」と判断するのではなく、自分でも良し悪しを考え、納得して選べる目利き力を身につけていく必要があります。
不動産業界全体の自浄作用への期待
スルガ銀行問題をきっかけに、不動産業界全体でコンプライアンス意識が高まっています。
- 書類の真正性を確保する仕組みの導入
- 投資家への情報開示の充実
- 過度な利回り表示の自粛
- 業界団体による自主規制の強化
スルガ銀行問題は、特定の銀行や一部のオーナーだけの話ではなく、不動産投資に関わるすべての人に突きつけられた警鐘だと言えます。
「誰かが守ってくれる前提」を手放し、自分の判断でリスクと向き合う姿勢こそが、これからの不動産投資に最も求められる力なのではないでしょうか。











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