不動産の行き過ぎた節税の危険性|令和8年度税制改正後の判断基準

不動産の行き過ぎた節税の危険性|令和8年度税制改正後の判断基準

相続税対策として、不動産を購入する方法は、これまで多く使われてきました。
現金で持っているよりも、不動産に変えたほうが相続税評価額を下げやすい。さらに借入を使えば、相続財産を圧縮しやすい。こうした仕組みは、資産家や地主の相続対策では一般的なものでした。

しかし、令和8年度税制改正によって、この前提は大きく変わろうとしています。
この記事では、令和8年度税制改正後に不動産の行き過ぎた節税で失敗しないための判断基準を、不動産実務の視点から解説します。

税制改正後は、不動産を買う前に再試算することが大切です。相続税対策として不動産購入や資産の組み換えを検討している方は、まずは当社へお気軽にご相談ください。

この記事でわかること
  • 令和8年度税制改正で見直される不動産節税のポイント
  • 相続直前の不動産購入で注意したい判断材料
  • 改正後の評価額を考えるうえで確認したい数字
  • 東京都内の賃貸マンションを例にした評価額の違い
  • 過去の節税シミュレーションを見直す際の注意点
  • 不動産ポートフォリオを組み換える際の考え方

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令和8年度税制改正で不動産節税の前提が変わる

令和8年度税制改正で不動産節税の前提が変わる

令和8年度税制改正では、貸付用不動産(収益物件)を使った相続税対策に対して、これまでより厳しい見直しが入っています。
まずは、どのような節税対策が問題視されているのかを整理しておきましょう。

行き過ぎた節税対策が見直されている

不動産を活用した相続税対策は、仕組み自体が特別に新しいものではありません。
現金は、原則として額面どおりに相続財産として評価されます。一方、不動産は、土地なら路線価、建物なら固定資産税評価額などをもとに評価されます。
そのため、実際の購入価格や市場価格よりも、相続税評価額が低くなることがあります。この評価差を利用した相続税対策は、不動産を活用した資産承継の手法として広く利用されてきました。

ただし、問題になっているのは、その仕組みを極端に使うケースです。

  • 相続が近いタイミングで高額な賃貸マンションを購入する
  • 多額の借入をして収益物件を買う
  • 長く保有する予定がないのに、節税目的だけで不動産を取得する

こうした対策は、税務上も見直しの対象になりやすくなっています。
財務省の令和8年度税制改正大綱では、貸付用不動産の相続税評価について見直し方針が盛り込まれました。

相続直前の不動産購入は注意が必要

相続直前に不動産を購入する対策は、数字だけを見ると魅力的です。
たとえば、1億円の現金を持っているより、1億円の賃貸不動産に組み換えたほうが、相続税評価額が下がるケースがあります。しかも借入を使えば、債務控除によって相続財産を圧縮できる場合もあります。

これだけを見れば、かなり効率のよい節税に見えます。
ただし、令和8年度税制改正では、相続や贈与の直前に購入した賃貸アパートや賃貸マンションについては、これまでと同じ評価方法が使えなくなる可能性があります。

もっとも、すべての貸付用不動産が時価評価になるわけではありません。一定の場合は、取得価格をベースに評価する仕組みも検討されています。
とはいえ、相続直前に不動産を取得して大幅な評価減を狙う手法には、これまでより厳しい目が向けられそうです。

節税効果だけを期待して不動産を購入する場合は、慎重になるべきでしょう。

これまでの節税試算をそのまま使えない

すでに不動産会社や税理士から節税シミュレーションを受けている方もいるかもしれません。
ただ、その資料が改正前の前提で作られている場合は、注意が必要です。

従来の試算では、購入価格よりもかなり低い相続税評価額が示されていることがあります。そこに借入を組み合わせることで、相続税が大きく減るように見える資料もあります。
しかし、改正後は同じ物件でも評価額が変わる可能性があります。

特に見直したいのは、以下のような試算です。

確認する資料見直しが必要な理由
令和8年度税制改正前の相続税試算改正後の評価方法が反映されていない可能性があるため
相続直前購入を前提にした提案書5年以内取得の見直し対象になる可能性があるため
節税額だけを強調した資料保有中や売却時の損益が見えにくいため
満室想定だけの収支表空室や修繕費で資金繰りが悪化する可能性があるため
出口戦略が書かれていない資料相続後に売却や分割で困る可能性があるため

「前に試算してもらったから大丈夫」と思っていても、一度その試算結果を見直してみることをおすすめします。

税制改正後は、不動産を買う前に再試算することが大切です。相続税対策として不動産購入や資産の組み換えを検討している方は、まずは当社へお気軽にご相談ください。


これまでの節税試算と改正後の試算はどう変わるか

これまでの節税試算と改正後の試算はどう変わるか

今回の改正で特に重要なのは、同じ不動産でも評価額の見え方が変わる可能性がある点です。
ここでは、従来の試算と改正後の試算で、どのような違いが出るのかを整理します。

改正前:相続税評価額の圧縮が大きかった

従来の不動産節税では、「実際の購入価格」と「相続税評価額」の差が大きく見えていました。これにより、「相続税評価額を大きく下げられる」という点が、不動産投資を勧めるセールストークの一つになっていました。

たとえば、東京都内の築浅賃貸マンション(土地建物比率6:4、借地権割合70%のエリア、満室稼働)を1億2,000万円で購入した場合を想定します。土地は【路線価×借地権割合×貸家建付地補正】、建物は【固定資産税評価額×(1-借家権割合30%)】で計算すると、相続税評価額が6,000万円前後になるケースがあります。

※エリア・構造・賃貸状況によって大きく変わるため、あくまで一例として参照してください。

  • 購入価格:1億2,000万円
  • 相続税評価額:6,050万円
  • 差額:5,950万円

「この差額部分に30%の税率がかかるとしたら」という限界税率での試算してみます。
この場合、

【 5,950万円 × 30% = 約1,785万円 】

となります。単純計算ではありますが、評価額が下がることで相続税額に約1,785万円の差が生じる計算です。

※実際の相続税は超過累進課税のため、財産総額や法定相続人の数によって税率は変わります。あくまで評価圧縮の効果を感覚的につかむための数字として見てください。

改正後:取得価額の80%相当で評価の可能性

これまでは、路線価・固定資産税評価額などをもとに、購入価格より大きく低い評価額になることがありました。
今回の改正後は、取得価額を基準にした評価が使われる可能性があるため、従来より評価額が高く出る場面が考えられます。

簡単にいうと、こういう違いです。

項目従来の試算イメージ改正後の試算イメージ
購入価格1億2,000万円1億2,000万円
評価の考え方路線価・固定資産税評価額など取得価額を基にした80%相当など
相続税評価額6,050万円9,600万円
購入価格との差5,950万円2,400万円

従来の試算では大きく節税できるように見えても、改正後の評価では圧縮幅が小さくなる可能性があります。
改正後の試算では評価額の差が2,400万円となるため、

【 2,400万円 × 30% = 約720万円 】

となります。単純比較すると、節税効果は約1,785万円から約720万円へ縮小する計算です。
今見るべきなのは、「昔の試算でどれだけ節税できる予定だったか」ではなく、改正後の評価額で見たときに、最終的な手残りがどうなるかです。


行き過ぎた節税で注意したほうがいい人

令和8年度税制改正で影響を受けやすい人

今回の見直しは、すべての不動産所有者に同じ影響が出るわけではありません。
特に、相続対策として短期間で不動産を購入しようとしている方は注意が必要です。

相続対策で急いで不動産を買おうとしている人

「早めに買わないと間に合わない」こう言われると、焦ります。
相続税が高くなるかもしれない。今なら節税できるかもしれない。そう考えると、物件選びが前のめりになります。

しかし、令和8年度税制改正後は、相続直前の購入ほど慎重に見る必要があります。
特に、相続や贈与の前5年以内に取得または新築した一定の貸付用不動産に該当する場合、従来の評価減をそのまま見込めない可能性があります。
焦って購入すると、物件の質を見落としやすくなります。節税効果だけでなく、収益性や売却しやすさも確認しましょう。

高齢の親名義で収益物件を検討している人

高齢の親名義で収益物件を購入するケースも注意が必要です。
相続税対策としては、親の財産を不動産に組み換えることで評価額を下げる狙いがあります。ただし、親の年齢や健康状態によっては、相続発生までの期間が短くなることもあります。
その場合、今回の改正による影響を受けやすくなります。
また、親本人が物件管理に関与できない場合、実際には子どもが判断することになります。購入、管理、修繕、売却。誰がどこまで担うのか決めないまま進めると、相続後に揉める原因になります。

節税効果の大きさだけで物件を選んでいる人

節税効果が大きく見える物件には、理由があります。

  • 評価額が下がりやすい一方で、流動性が低い
  • 築年数が古い
  • エリアの需要が弱い
  • 管理コストが重い

こうした事情が隠れていることもあります。もちろん、すべてが悪いわけではありません。
ただ、「節税額が大きいから良い物件」と考えるのは危険です。不動産は現金と違って、すぐに分けられません。すぐに売れるとも限りません。

相続人が扱いやすい資産かどうかも、重要な判断基準です。

都心の高額物件を所有している人

都心の高額マンションや収益物件を所有している方も、今回の改正の影響を受けやすい可能性があります。
港区、千代田区、渋谷区、中央区などの物件は、市場価格が高く、これまで相続税評価額との差を使った節税対策に利用されることがありました。

しかし、改正後に取得価額の80%相当などで評価される場合、従来より評価額が高くなる可能性があります。
郊外物件に比べて都心の高額物件は購入価格が大きいため、同じ割合で評価額が上がっても税額への影響が大きくなりやすい点に注意が必要です。今後は、節税効果だけでなく、賃貸収益や売却しやすさも含めて見直しておきましょう。

税制改正後は、不動産を買う前に再試算することが大切です。相続税対策として不動産購入や資産の組み換えを検討している方は、まずは当社へお気軽にご相談ください。


節税目的が強い取引は見られやすい

収益性を見込んで長期保有するために買ったのか。家族の資産形成として必要だったのか。それとも、相続税を下げるためだけに急いで買ったのか。
この違いは大きいです。

特に、相続開始が近い時期に高額な不動産を購入している場合節税目的が強い取引として見られやすくなります。物件の収益性や管理実態、購入後の保有方針を説明できないと、税務調査で詳しく確認される可能性があります。

実態のない対策は認められにくい

相続税対策では、形式だけを整えても十分とはいえません。

たとえば、名義上は不動産を購入していても、

  • 実際には本人が物件内容を理解していない
  • 購入後の管理方針がない
  • 家賃収入や修繕対応を誰が行うのか決まっていない

こうした状態では、資産運用としての実態が弱く見られることがあります。
また、家族や相続人が不動産を引き継ぐ準備をしていない場合も注意が必要です。本来、不動産投資は購入して終わりではありません。
入居者対応、管理会社とのやり取り、修繕判断、売却出口の検討が必要です。
こうした実態がないまま、評価額を下げる目的だけが前面に出ると、税務上の説明が難しくなります。

節税対策として不動産を使う場合でも、物件を保有する合理的な理由を整理しておくことが大切です。

税務調査で否認される可能性がある

行き過ぎた節税対策では、税務調査で評価方法や取引の目的を確認される可能性があります。

特に、購入時期が相続直前である場合や、借入額が大きい場合、物件の収益性が低い場合は注意が必要です。税務署から見ると、「通常の資産運用ではなく、相続税を下げるためだけの取引ではないか」と判断される余地が出てきます。

もし申告した評価額が認められなければ、相続税が追加で発生することがあります。さらに、延滞税などがかかる場合もあります。

税制改正後は、不動産を買う前に再試算することが大切です。相続税対策として不動産購入や資産の組み換えを検討している方は、まずは当社へお気軽にご相談ください。


税制改正で不動産マーケットはどう変わるか

2026年の公示地価は全国平均でバブル崩壊後最大の上昇率を記録し、東京都の商業地は前年比12.2%上昇しています。
つまり今回の税制改正は、地価が高止まりしているタイミングで「評価圧縮による節税」に蓋をしにきた、という話です。

「駆け込み」は起きているが質が悪い

令和9年(2027年)1月1日以降の相続では、取得から5年以内の賃貸用不動産について新しい評価ルールが適用されます。そのため、「今のうちに買っておこう」と考える人もいます。
しかし、節税だけを理由に慌てて購入するのはおすすめできません。というのも、ここ数年は地価の上昇に加え、建築費も大きく上がっています。
コロナ禍前と比べると、物件によっては取得コストが5割以上高くなっているケースもあります。

不動産投資は本来、家賃収入や将来の売却価格まで含めて判断するものです。ところが、「節税になるから」という理由だけで高値の物件を購入すると、節税効果よりも、高額な購入価格による損失が上回る可能性があります。
相続対策は大切ですが、まずは物件そのものの収益性や資産価値を見極めることが重要です。

節税より利回りと換金性が選ばれる

今後のマーケットでは、節税効果よりも、利回りや換金性が重視されやすくなります。

これまでは、節税メリットが大きく見える物件であれば、多少利回りが低くても購入されるケースがありました。いわば、節税効果が価格の高さを支えていた部分があります。

しかし、その前提が弱まれば、投資家の目線は変わります。

見るのは、相続税評価額の下がり方だけではありません。家賃収入が安定しているか。空室が出ても耐えられるか。修繕費を織り込んでも手残りがあるか。必要なときに売却できるか。
かなり現実的な数字です。

判断軸今後重視されやすい理由
実質利回り税効果ではなく収益力そのものが問われるため
空室リスク家賃収入が安定しない物件は選ばれにくくなるため
修繕費長期保有時の負担が収支に直結するため
換金性相続時や納税時に売却しやすいかが重要になるため
手数料水準不動産小口化商品では実質的な手残りに影響するため
運営会社の信用力長期運用では事業者リスクも見られるため

特に相続対策では、納税資金の確保が重要になります。

不動産は現金と違い、すぐに分けられません。すぐに売れるとも限りません。売却価格も市場環境に左右されます。

そのため、今後は「評価額が下がる物件」よりも、「収益が読めて、必要なときに現金化しやすい物件」が選ばれやすくなるでしょう。

不動産小口化商品は「節税商品」としては終わり

任意組合型の不動産小口化商品は、取得時期にかかわらず今後は時価評価となります。節税目的で購入した方にとっては、その前提が崩れることになります。
ただし、商品すべてが無意味になるわけではありません。賃貸需要が強い立地の物件や、分散投資・資産管理の手段として保有している方には、引き続き保有理由があるケースもあります。
見直すべきなのは「節税になるから持っている」という理由だけで保有している場合です。その前提が崩れた今、現物不動産への組み替えも含めて、改めて保有目的を整理する局面に来ています。

本当に問われるのは「5年後も持てるか」

今後の不動産相続対策で重要なのは、5年以上前から所有する土地に建てた物件は従来の路線価評価が維持されるという点です。
つまり今後は「早く・長く持つ」時代へと変わるでしょう。
これは不動産投資を、より事業に近づけます。

  • 入居者が安定しているか
  • 修繕費を織り込んでも手残りが出るか
  • 家族が引き継げる物件か

こうした視点なしに「節税のため」だけで買った物件は、相続後に重荷になるでしょう。
郊外に目を向けると、交通利便性や子育て環境が評価されているエリアでも、実需に裏打ちされた地価上昇が起きています。
都心のタワマンより、賃貸需要が安定した郊外の中規模アパートの方が、長期保有型の相続対策としてむしろ見直される可能性があります。

少額減価償却の拡充は「地味だが使える」

逆風の中で数少ない追い風が、少額減価償却資産の特例拡充です。上限が30万円未満から40万円未満に引き上げられる方向で、エアコン・給湯器・宅配ボックスといった設備更新費用が一括経費化しやすくなります。
大きな話ではありませんが、修繕計画と組み合わせれば、毎年の課税所得を少し抑える効果はあります。

ただし、年間の合計上限額である300万円は、現時点では大きく変わらない見込みです。何でも自由に経費化できるわけではありません。
あくまで、設備投資や修繕計画の中で活用できる制度として考える必要があります。

税制改正後の不動産マーケットでは、節税メリットだけで物件を選ぶ時代から、利回り・換金性・管理しやすさで選ぶ時代へ移っていきます。保有物件の売却や資産の組み換えを検討している方は、当社までお気軽にご相談ください。


まとめ|行き過ぎた節税より改正後の再試算を

まとめ|行き過ぎた節税より改正後の再試算を

令和8年度税制改正が突きつけているのは、シンプルな問いです。「その不動産、節税を抜きにしても持つ理由がありますか」。
5年以内取得の時価評価、不動産小口化商品の見直し、地価・建築コストの高騰。これらが重なった今、改正前の試算をそのまま使い続けるのはリスクがあります。

  • 収益性
  • 換金性
  • 家族が引き継げるかどうか

この3点を軸に、保有物件と購入計画を一度見直すことをおすすめします。

税制改正後は、不動産を買う前に再試算することが大切です。相続税対策として不動産購入や資産の組み換えを検討している方は、まずは当社へお気軽にご相談ください。

 

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