
近年の土地価格の高騰を受けて、不動産転売を考えている人も増えているのではないでしょうか。
不動産転売は、大きな利益を生むチャンスがある一方で、法律や税金の知識が不可欠な分野です。違法行為と見なされるケースや、転売益にかかる税金の仕組みを知らずに参入すると、思わぬリスクを抱えることになりかねません。
この記事では、不動産転売のリアルな実態を解説し、成功するためのポイントや注意点について詳しく紹介します。
この記事で分かること |
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目次
- 不動産転売の概要
- 不動産転売に違法性はない
- 不動産転売では銀行融資が受けられない
- 個人の不動産転売は難易度が高い
- 不動産転売と宅建業法の関係
- 短期間で転売を繰り返すなら宅建業免許が必要
- 免許なしで継続売買は宅建業法違反になる
- 不動産転売は税金(譲渡所得税)に注意
- 譲渡所得税は所有期間によって変わる
- 特例や控除を活用できる場合もある
- 令和の不動産転売が儲かりづらい要因
- 1.税金や手数料が高い
- 2.金利下落がおこりづらい
- 3.宅建業法の厳格化
- 4.不動産情報の透明化
- 投資としてみる不動産転売の特性を分析
- 不動産転売はハイリスク・ハイリターン
- 流動性が低く長期運用が基本
- インフレ耐性がある
- 不動産転売を成功させるポイント6選
- 1.短期間で価値が上がりそうな物件を見極める
- 2.購入価格が重要!相場より安く仕入れる
- 3.長期譲渡になるタイミングまで待つ
- 4.高く売れる時期に売り出す
- 5.購入時に売却戦略まで考える
- 6.経験者や不動産会社の人脈を作る
- 個人の不動産転売は投資に不向き(まとめ)
不動産転売の概要
不動産転売とは、物件を購入して価値を高めたうえで第三者に売却し、利益を得る投資手法です。
転売の多くは、リフォームやリノベーションを施して資産価値を向上させたり、相場価格の変動を活用したりして売買差益を狙っています。
適切な物件選びと市場分析が成功の鍵を握るため、しっかりとした知識と戦略が求められます。
不動産転売に違法性はない
不動産を購入し、適切な手続きを経て第三者に売却すること自体は、法律で禁止されているわけではなく、一般的な投資手法の一つとされています。
しかし、転売の方法や取引の頻度によっては、法律に抵触する可能性があるため注意が必要です。
特に、営利目的で継続的に転売を行う場合には、一定の条件を満たすと宅建業が必要であるとみなされることがあるため、事前に確認しておくことが重要です。
不動産転売では銀行融資が受けられない
不動産の転売自体は違法ではなく、銀行が融資を行うことも法的には問題ありません。
しかし、現在では転売目的での個人の融資はほとんど受けられないのが実情です。
転売が流行した1980年代後半、業者や資産家たちが転売を繰り返して地価を吊り上げました。この人たちのことを「土地ころがし」と呼びます。結果として市場が混乱し、銀行の融資姿勢が厳しくなり、金融機関の経営にも影響を与えました。
この反省から、現在の銀行は転売目的の不動産購入に対する融資を厳しく制限しています。そのため、不動産転売を考える場合は、自己資金を活用するか、ノンバンク系の融資や民間の不動産担保ローンを検討する必要があります。
個人の不動産転売は難易度が高い
大手ディベロッパーのような企業が行う土地開発とは異なり、個人が不動産転売に参入するには高いハードルがあります。
その大きな理由が、「土地を安く仕入れることの難しさ」です。優良物件の情報は、市場に出回る前に不動産業者や投資家の間で水面下で取引されることが多く、一般の個人にはなかなか回ってきません。
特に、本当に条件の良い土地や割安な物件は、信頼関係のある業者や資金力のある投資家に優先的に紹介され、市場(ポータルサイト)に出る前に売れてしまうケースがほとんどです。たとえ出回ったとしても、不動産業界の営業職の人々や、不動産に精通した投資家が常にポータルサイトをチェックしているため、魅力的な物件はすぐに目をつけられ、あっという間に売れてしまいます。
そのため、不動産転売を成功させるには、業界の人脈を築き、優良な物件情報をいち早く入手するスキルや経験が求められます。
不動産転売と宅建業法の関係
先述のとおり、不動産の転売自体は違法ではありませんが、取引の頻度や規模によっては宅地建物取引業(宅建業)に該当し、宅建業法の規制を受ける可能性があります。
本章では、個人で宅建業免許が必要となる転売は、どのような行為を指すのかを具体的に解説します。
短期間で転売を繰り返すなら宅建業免許が必要
個人が行う不動産転売は、以下のような場合に宅建業免許が必要とされています。
- 「業」として反復継続的に不動産を売買する場合
- 一定の期間内に複数の物件を転売し、利益を得ている場合
- 転売目的で仕入れを行い、第三者に売却する行為を継続的に行っている場合
特に、短期間で複数の物件を転売する場合は、「営利目的で不動産売買を行っている」と判断されやすく、宅建業免許の取得が求められる可能性が高くなります。
免許なしで継続売買は宅建業法違反になる
宅建業免許を持たずに、上記のような売買を行った場合は宅建業法違反となることがあります。
違反が発覚すると、都道府県知事や国土交通大臣から行政処分を受けることがあり、それが悪質と判断されると刑事罰が科されることもあります。
主な罰則
- 無免許営業の罰則:3年以下の懲役または300万円以下の罰金(宅建業法第12条)
- 行政処分:業務停止命令や指導勧告、場合によっては罰則を伴う措置
不動産転売を行う際は、自分の取引が宅建業に該当するかどうかを慎重に確認し、違反とならないよう注意することが重要です。
不動産転売は税金(譲渡所得税)に注意
不動産転売で得た利益は、そのまますべてが手元に残るわけではありません。不動産転売で利益を得た場合、その利益(譲渡所得)に対して「譲渡所得税」が課されます。
この譲渡所得税は、物件の所有期間によって税率が大きく変わるため、転売のタイミングには注意が必要です。
譲渡所得税は所有期間によって変わる
不動産を売却した際に発生する譲渡所得税は、売却した年の1月1日時点での所有期間が5年以下か、5年を超えているかによって分類され、それぞれ異なる税率が適用されます。
具体的な税率は、以下のとおりです。
短期譲渡(5年以下) | 税率39.63%(所得税30% + 住民税9% + ※復興特別所得税) |
長期譲渡(5年超) | 税率20.315%(所得税15% + 住民税5% + ※復興特別所得税) |
(※復興特別所得税:東日本大震災の復興財源を確保するために導入され、2037年12月31日まで課税されます)
短期譲渡と長期譲渡では適用される約2倍も税率が異なるため、売却のタイミングによって実際の手取り額が大きく変わる点に注意が必要です。短期譲渡の場合、課税率が高いため思った以上に税負担が重くなり、利益が少なくなる可能性があります。
たとえば、3,000万円で購入した物件を3,500万円で売却し、500万円の利益が発生した場合、課される税金はそれぞれ以下のとおりです。(※諸経費は考慮しないものとします)
短期譲渡 | 1,981,500円 (500万円×39.63%) |
長期譲渡 | 1,015,750円 (500万円×20.315%) |
譲渡時の所有期間が4年と5年では、課税額が約97万円も違うことになります。
特例や控除を活用できる場合もある
不動産売却時には特例や控除を活用することで、譲渡所得税の負担を軽減できる場合があります。
代表的なものが、「3,000万円特別控除」と「軽減税率の適用」があります。
- 3,000万円特別控除
マイホーム(居住用不動産)を売却する場合、譲渡所得から最大3,000万円まで控除できる制度です。例えば、譲渡所得が3,000万円以下なら、税金がかからないケースもあります。 - 軽減税率の適用
10年以上保有したマイホームを売却する場合、課税される譲渡所得の一部が低い税率で計算される特例です。具体的には、6,000万円以下の部分は14.21%、6,000万円超の部分は20.315%の税率が適用されます。
ただし、マイホームに適用できる特例や控除制度は、要件として「建物(家屋)があること」が前提で、土地だけの転売では受けられないことがあります。これらの特例を利用できるかどうか、事前に要件を確認しておくことが大切です。
令和の不動産転売が儲かりづらい要因
バブル期にはいわゆる「土地ころがし」と呼ばれる短期転売によって、大きな利益を得ることができました。しかし、令和の現在では、不動産市場の環境が変化し、同じ手法で儲けるのは難しくなっています。
- 税金や取引における手数料の負担
- 低金利の定着
- 税制優遇の制限
これらの要因により、単純な転売で利益を出すのは困難です。ここでは、不動産転売が儲かりづらくなった要因を詳しく解説します。
1.税金や手数料が高い
不動産を売却する際には、譲渡所得税や仲介手数料、登記費用などのコストが発生します。すでに解説したとおり、短期間で転売すると税負担が大きく、思った以上に利益が残りにくくなります。
- 短期譲渡(5年以下)の税率は約39.63%と高く、売却益の約4割が税金として差し引かれる
- 仲介手数料や登記費用など、売買のたびに発生するコストが積み重なる
- 物件の修繕費や維持費もかかり、利益を圧迫する
たとえば、個人が3,000万円で購入した不動産を3,500万円で売却する場合、売買における仲介手数料は以下のようになります。
- 購入時:3,000万円 × 3% + 6万円 = 960,000円(税別)
- 売却時:3,500万円 × 3% + 6万円 = 1,110,000円(税別)
※仲介手数料の合計額:2,070,000円(税別)
また、短期譲渡では税金が約198万円発生するため、合計で約405万円が手数料や税金として差し引かれます。さらに「登記費用」や「諸経費」を考慮して売却益を出す必要があるため、短期転売は非常に難しいのです。
2.金利下落がおこりづらい
バブル期の不動産価格上昇を支えた大きな要因の一つが「金利の変動」でした。一般的に、金利が下がると消費者(=買主)はローンを借りやすくなり、不動産市場が活性化します。
当時は金利が高く設定されており、金利が下がることで住宅ローンが借りやすくなり、不動産価格が上昇しやすい環境だったため、転売による利益を得やすかったのです。
しかし、現在はすでに超低金利時代が続いているだけでなく、住宅ローンの金利上昇の兆候が見られており、これ以上の大幅な金利低下は期待できません。
- バブル期:金利が高く、下落することで不動産価格が上昇 → 転売で利益が出やすい
- 令和時代:すでに低金利で、これ以上の下落余地が少ない → 転売で利益が出にくい
また、一部の都市部で地価は高騰していますが、全国的には緩やかな動きにとどまっており、短期間で大幅な値上がりを期待しにくい状況です
3.宅建業法の厳格化
現在は宅建業法の厳格化により、バブル期のように簡単に転売を繰り返すことが難しくなりました。
転売による過去のトラブルから監視体制が強化され、不適切な取引を行えば行政処分の対象となるため、市場の健全性が保たれるようになっています。こうした規制の影響で、短期売買を繰り返すスキームはリスクが高まり、安易に利益を狙うことが難しくなっているのが現状です。
4.不動産情報の透明化
バブル期の不動産取引は、情報が限られた業者や投資家の間でのみ共有されており、現在のようなポータルサイトもなく、一般の人が土地の相場を知ることは困難でした。当時は「不動産を持つこと」が絶対的な信頼を持ち、多少高くても欲しいという心理が働いていたため、価格がどんどん上昇していきました。
しかし、現在は不動産ポータルサイトの普及により、誰でも市場価格を把握でき、購入者も相場を見極めて適正価格で買う時代になっています。かつてのように「高くても売れる」市場ではなくなり、安易な転売で利益を出すことは難しくなっています。
投資としてみる不動産転売の特性を分析
不動産投資は、株式や債券とは異なる特性を持つ投資手法です。物件や市場の状況によって大きく収益が変動するため、リスクとリターンの幅が大きいのが特徴です。
また、売却までに時間がかかるため、即時に資金回収が難しい一方、長期的にはインフレに強い資産としてのメリットもあります。
ここでは、不動産投資の特性について詳しく分析します。
不動産転売はハイリスク・ハイリターン
不動産転売は、一見すると短期間で利益を得られる魅力的な投資手法に思えます。
しかし、現在は融資を受けづらくなっているうえ、不動産取引に関するさまざまな制限が厳格化され、市場の動向も以前より読みづらくなっています。そのため、不動産転売はかつてのように安定した利益を見込めるものではなく、状況次第で大きな利益を得られる一方で、思わぬ損失を抱えるリスクも高い投資手法です。
現在の不動産転売は「ハイリスク・ハイリターンの投資」になっているといえます。
流動性が低く長期運用が基本
不動産は株式のようにすぐに売却できる資産ではなく、流動性が低いため、基本的に長期運用が前提となります。売却する際には買い手を見つけるまでに時間がかかるため、短期的な資金回収は難しく、市場が悪化するとさらに売却が困難になることもあります。
そのため、「資金に余裕があり、大きなリスクを取ってでも高い利益を狙いたい」という方でなければ、一般的な不動産投資で長期運用がおすすめです。
インフレ耐性がある
不動産はインフレに強い資産で、インフレ時に価格や賃料が上昇しやすく、資産価値を維持しやすい特徴があります。
建築コストの上昇や金利の影響も受けるため、これらを総合的に考えてタイミングを見極めた転売戦略が重要です。
不動産転売を成功させるポイント6選
不動産転売で利益を上げるには、単に安く買って高く売るだけではなく、市場の動向を見極め、戦略的に行動することが重要です。
ここでは、不動産転売を成功させるための6つのポイントを紹介します。
1.短期間で価値が上がりそうな物件を見極める
国土交通省の「不動産価格指数」によると、特にマンション価格はこの10年間で急成長しており、地域や物件の選び方次第では大きな利益を得ることができます。
たとえば、2008年~2014年頃に東京23区などのエリアで新築マンションを購入した人は、現在でも築20年未満の物件として高値で売却できるケースが増えています。
(出典:国土交通省「不動産価格指数」)
以下のような物件は、短期間で価値が上がる可能性が高いと考えられます。
- 再開発エリアの物件(商業施設やインフラ整備によりエリア価値が向上)
- 需要の高い都市部の駅近物件(利便性の高さから資産価値が安定)
- リフォーム・リノベーションで付加価値をつけられる物件(物件の魅力を高め、高値売却が可能)
このように、不動産転売をしたい方は土地や戸建てだけに絞らず、市場の動きを分析して将来的に価値が上昇する物件を見極めることが、不動産転売の成功につながります。
2.購入価格が重要!相場より安く仕入れる
令和の不動産転売は、売れる物件を「いかに安く仕入れるか」が重要なポイントになります。
購入価格が高すぎると、売却時の利益が圧迫され、転売の成功率が下がるため、相場より安く仕入れる工夫が必要です。安く仕入れる方法として、以下のような選択肢があります。
- 競売物件・任意売却物件(市場価格より安く購入できるが、手続きが複雑)
- 未公開物件(不動産会社経由で一般に出回る前の情報を入手)
- 早く手放したい私情を持つ売主の物件を狙う(相続や転居などで急いで売却したい物件を安く買う)
ただし、競売物件は専門知識が必要で、初心者にはハードルが高いため注意が必要です。
3.長期譲渡になるタイミングまで待つ
所有期間が5年を超えると長期譲渡所得となり、税率が大幅に下がるため、可能であれば長期譲渡になるまで待つのが得策です。
転売を急ぐと高い税率が適用されるため、税率が下がるタイミングまで待つことが、手元に残る利益を最大化するポイントとなるでしょう。
4.高く売れる時期に売り出す
スムーズな売却を目指すなら、市場の需要が高まるタイミングを狙って売り出すことが重要です。特に、新年度が始まる4月に向けて3月までに引越しを完了したい買主が増えるため、春先は不動産市場が活発になります。
ただし、売却する物件が土地の場合は、購入後に買主が物件を建設する期間を考慮する必要があり、需要のピークと実際の活用時期にズレが生じる可能性があります。築古物件を解体してから売却する場合も、解体工事にかかる期間を見込んで売却計画を立てることが大切です。特に、解体や更地化には一定の時間と費用がかかるため、スケジュールに余裕を持ち、最適なタイミングで売り出せるよう準備しておくことが重要です。
マンションの場合は、買主がリフォームすることも考慮して、11~12月頃の売り出しがよいでしょう。
5.購入時に売却戦略まで考える
出口戦略は物件によって異なりますが、たとえばマンションを業者に買取してもらう場合、市場価格の6~7割程度での売却が一般的です。築古の戸建てはそのままでは買い手がつきにくいため、解体して更地にすると売れやすくなりますが、固定資産税が上がるため維持コストも考慮が必要です。
また、築古物件をそのまま売る場合、「ボロ戸建て投資」をする投資家向けに販売する選択肢もありますが、市場価格より低くなるのが一般的です。
このような点を理解したうえで購入時に売却の方向性を明確にし、どの層に売るのかを考えることにより、土地転売のリスクを抑えた取引ができます。
6.経験者や不動産会社の人脈を作る
成功した投資家の事例や失敗談を聞くことで、市場の動きやリスクを具体的に理解し、より良い判断ができるようになります。
また、不動産会社とのつながりを持つことで、未公開物件や相場より安い物件の情報を得やすくなるため、仕入れのチャンスが広がります。
セミナーや交流会、不動産投資コミュニティなどに積極的に参加し、成功者の知見を取り入れながら、人脈を活用して有利な取引を進めることが、長期的な成功につながるでしょう。
個人の不動産転売は投資に不向き(まとめ)
不動産転売は違法ではありませんが、一定の取引規模になると宅建業の知識や免許が必要になる場合があるため、慎重な判断が求められます。
また、バブル期のように「買ってすぐ売るだけで儲かる」時代ではなく、現在の市場では税金や手数料の負担が大きく、短期売却にはリスクが伴います。安易な転売はリスクが高いため、事前の市場調査と綿密な戦略が欠かせません。
個人で安定した利益を出すのは難しく、特に初心者にはハードルが高いため、不動産転売を考える際は十分な知識と計画を持って慎重に取り組むことが求められます。
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