
「地震保険にはもちろん入っている。でも、もしもの時、どこまで補償される?」
契約はしたものの、細かな補償内容まで理解していないオーナー様もいるでしょう。
実際に被害を受けたとき、保険金だけでは修繕や建て替えの費用をまかなえない場合があります。
地震保険は支払われる金額に上限があり、「入っていれば安心」という単純なものではありません。今回は、地震保険で受け取れる金額を具体例で計算し、修繕や建て替えにいくら不足するのかを見ていきます。
| この記事でわかること |
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【結論】地震保険だけでは修繕・建て替え費用が不足しやすい

2016年の熊本地震後、熊本市は被災した住宅について調査しました。賃貸アパートのオーナーに限った調査ではありませんが、被災した住宅の再建費用と、資金繰りの難しさが見えてきます。
| 自治体による住宅の 被害区分 | 建て替え・補修などの 平均費用 | 100万円を超えた割合 |
|---|---|---|
| 一部損壊 | 68万円 | 13.5% |
| 半壊 | 842万円 | 32.1% |
| 大規模半壊 | 1,784万円 | 36.9% |
| 全壊 | 1,219万円 | 22.4% |
| 全体 | 385万円 | 21.5% |
(出典:熊本市「平成28年熊本地震にかかるアンケート調査報告書」(2016年10月調査))
※費用には実際にかかった金額と見積額を含みます。
同調査では、住宅再建にめどが立った世帯は28.9%でした。一方、41.1%は計画を考えている途中か、調査段階では見通しが立っていない状況でした。
再建が進まない理由の多くに、資金不足や融資を受けられないことが挙がっています。建物を直したくても、お金のめどが立たずに動けない。そんな被災後の状況が見えてきます。
地震保険はいくらおりるのか

まず押さえておきたいのが、地震保険は「実際にかかった修繕費用」が支払われる保険ではない、という点です。地震保険は単独では契約できず、火災保険にセットして加入します。
地震保険で受け取れる金額はどう決まる?
先ほどの表にある「全壊・半壊」は、自治体による被害の区分です。地震保険では別の基準を使い、損害を「全損・大半損・小半損・一部損」の4段階で判定します。
受け取れる保険金は、その判定結果と契約した地震保険金額によって決まります。
- 全損:地震保険金額の100%(時価額が上限)
- 大半損:地震保険金額の60%(時価額の60%が上限)
- 小半損:地震保険金額の30%(時価額の30%が上限)
- 一部損:地震保険金額の5%(時価額の5%が上限)
そもそも地震保険金額は、セットになっている火災保険金額の30〜50%の範囲でしか設定できません。
たとえば8戸のアパートで、建替え費用に見合う火災保険金額を8,000万円で契約していれば、地震保険は2,400万〜4,000万円の範囲でしか組めません。
この時点で「全損=建て替え費用が全額戻る」という感覚とはズレが出てきます。
全損・半損はどうやって判断されるのか
建物の損害は、主要構造部の損害額などをもとに判定します。主要構造部の損害額で見る場合の目安は、次のとおりです。
- 時価額の50%以上の損害 → 全損
- 時価額の40%以上50%未満 → 大半損
- 時価額の20%以上40%未満 → 小半損
- 時価額の3%以上20%未満 → 一部損
- 3%未満 → 保険金支払いなし
支払額を左右するのは、主要構造部の損害がどの区分に当てはまるかです。門や塀、給排水設備など主要構造部に含まれない部分だけが壊れても、この判定には反映されません。
そのため、実際の震災では「保険に入っていたのに、思ったより支払われなかった」というケースが多くあります。
【事例】8,000万円のアパートで見る!地震保険で足りなくなる費用

ここからは、被害の場所と大きさによって、保険金と実際の費用がどうズレるのかを見ていきます。
【想定する物件】
- 木造8戸のアパート、築20年
- 建て替え費用:8,000万円
- 火災保険金額:8,000万円
- 地震保険金額:3,000万円(火災保険金額の37.5%)
- 建物の時価額:4,000万円(築年数に応じて下がるため、仮設定)
全損だった場合
主要構造部の損害が時価額の50%以上、つまり2,000万円以上になると全損です。
- 受け取れる保険金:3,000万円
- 建て替え費用:8,000万円
- 不足額:約5,000万円
全損でも、保険金で戻るのは建て替え費用の4割弱です。
半損の場合は「どこが壊れたか」で不足額が変わる
「半損」と聞くと、建て替え費用の半分にあたる4,000万円がかかりそうに思えます。でも、そうとは限りません。
半損の判定は建て替え費用ではなく、時価額の20〜50%の損害が目安です。
- 小半損:損害額が時価額の20%以上40%未満(800万〜1,600万円)
→ 受け取れる保険金は900万円 - 大半損:損害額が時価額の40%以上50%未満(1,600万〜2,000万円)
→ 受け取れる保険金は1,800万円
ただ、同じ小半損でも、壊れた場所によって足りるかどうかは大きく変わります。
【比較的安価な部分の損害で小半損になったケース】
たとえば、屋根材や外壁が広く傷み、主要構造部の損害額が約1,000万円で小半損と判定された場合です。
- 受け取れる保険金:900万円
- 主要構造部の修繕費:約1,000万円
- 不足額:100万円ほど
ここだけ見れば、手出しは比較的少なく済みます。ただし、内装や設備の復旧費は別にかかります。
【高額な部分の損害で小半損になったケース】
次に、基礎のひび割れや建物の傾き、柱・梁の損傷がある場合の事例です。
- 受け取れる保険金:900万円
- 主要構造部の修繕費:1,500万円超
- 不足額:600万円以上
躯体の補強や傾きの復旧は、どうしても工事が大がかりになります。
| 比較項目 | 安価な部分 (屋根・外壁) | 高額な部分 (基礎・躯体) |
|---|---|---|
| 判定 | 小半損 | 小半損 |
| 受け取れる保険金 | 900万円 | 900万円 |
| 主要構造部の修繕費 | 約1,000万円 | 1,500万円超 |
| 不足額 | 約100万円 | 600万円以上 |
同じ小半損で、保険金はどちらも900万円。それでも不足額は数倍に開きます。
【部分修繕】保険金を超える工事費はオーナーの自己負担に?
地震保険の保険金は、判定で決まった金額が、定額で出るだけです。
結論、工事費がそれを上回れば、その差額はオーナーが用意することになります。
しかも、自己負担は工事費の差額だけではありません。
- 工事中は住戸が使えず、その間の家賃収入が止まる
- 入居者の退去や、工事後の再募集にも費用がかかる
- 門・塀・給排水・内装は判定に入らないが、直さないと入居者は住めない
判定に反映されない部分の修繕は、保険金の計算にそもそも入っていません。
それでも復旧しないと部屋は貸せないので、保険金とは別に自分でお金を出すことになります。
「保険金が出たのに、手元にお金がない」。震災後に起こりやすいのは、こういう状況です。
保険以外にできる基本の備え

保険金だけに頼らず、被害そのものを小さくしておく備えも合わせて考えておきたいところです。
- 築年数や工法から自宅・所有物件のおおよその耐震性を把握しておく
- 必要であれば耐震診断を受け、優先度の高い箇所から補強しておく
- 家具の転倒防止や、割れたガラスによる二次被害を防ぐ対策をしておく
- ハザードマップで地盤や液状化リスクを確認しておく
- 建て替え・修繕・売却、いずれの選択肢も取れるよう、生活資金を確保しておく
特に賃貸経営をされている物件では、入居者様の安全にも直結する部分です。
所有する物件の耐震性が気になるなら、被災する前に、補強するか売却するかを考えておきましょう。早めに検討しておくことで、費用や売却条件を比べながら判断できます。
まとめ
「地震保険に入っているから安心」ではなく、「地震保険で戻る金額を把握したうえで、それでも足りない部分にどう備えるか」まで考えておくことが、本当の意味での安心につながります。
あなたの物件、地震への備えは十分ですか?
地震保険で受け取れる金額だけでなく、建物の耐震性や築年数、今後必要になる修繕などを踏まえて、「このまま所有するのか」「修繕・建て替えをするのか」「売却を検討するのか」まで考えておくことが大切です。
「うちの物件ならどう考えればいい?」という方へ。物件の状況を伺いながら、今後の選択肢を一緒に整理します。





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