【賃貸経営を検討中の方へ】サブリースとマスターリースの違いを徹底解説

「サブリースとマスターリースってどう違うの?」
「サブリースとマスターリースはどちらを選べばいいの?」

と考えていませんか?

サブリースとマスターリースの違いは「契約相手が異なる」ことです。
下記の図のように、マスターリース契約の場合は、オーナーと不動産会社が賃貸借契約を結びます。

一方で、サブリース契約の場合は不動産会社と入居者が賃貸借契約を結びます。

こうしたことからわかるように、厳密にいうと、物件のオーナーは不動産会社と「サブリース契約」ではなく「マスターリース契約」を締結することになります。

そもそもマスターリース契約は、不動産会社がオーナーから物件をまるごと借り、物件の管理や運営もまるごと不動産会社が担うという契約。マスターリース契約は物件の管理委託の一種であり、それ以外にも、実は「一般管理契約」というものがあります。

【物件の管理業務を委託する契約は2種類ある】 
マスターリース契約
不動産会社がオーナーから物件をまるごと借り、物件の管理や運営もまるごと不動産会社が担うという契約。

 一般管理契約
オーナーが不動産会社に対して、物件の管理業務の代行を依頼するときに行う契約。オーナーと入居者は直接、賃貸借契約を締結し、そのうえで、オーナーは管理業務を代行してもらうために、不動産会社と一般管理契約を結ぶ。物件の管理業務の一部を代行してもらう(一部委託)、もしくはすべてを代行してもらう(全部委託)ことができる。

賃貸の管理業務を委託したいと考えている人すべてがマスターリース契約に向いているわけではなく、人によっては一般管理契約のほうが合うこともあります。

もし、マスターリース契約に向いていないのに契約に締結してしまうと、

・オーナー自身で賃料やリフォーム内容を決めたかったのに決められない
・短期間で利益を上げたかったのにできない
・大きく稼ぎたいのにできない

といったように、思っていたような結果にならず、マスターリース契約したことを後悔することになりかねません。

またマスターリース契約が合わないからといって、契約を解除しようとしても、多くの場合スムーズに契約を解除するのは難しいため、不満を持ちながらマスターリース契約を続けることになってしまうおそれがあります。

こうしたことから、オーナー自身がマスターリース契約を選んで失敗しないよう、総合的にしっかり選択を判断する必要があります。

そこでこの記事ではサブリースとマスターリースの違いだけでなく、

・マスターリースのメリット、デメリット
・マスターリースに向いている人、向いていない人

を丁寧に解説します。

本記事の内容は以下のとおりです。

【本記事の内容】 
◆サブリースとマスターリースの違い
◆不動産オーナーが契約する「マスターリース」とは
◆マスターリースのメリット
◆マスターリースのデメリット
◆マスターリースに向いている人・向いていない人
◆マスターリースを利用しないで管理を依頼したい場合は一般管理契約を選ぼう

この記事を読むことで、サブリースとマスターリースの違いが理解できるようになります。

それだけでなく、賃貸管理を委託する場合において、マスターリース契約をオーナー自身が締結するべきなのか、一般管理契約にするべきなのかを冷静に判断できるようになります。

ぜひ最後までお読みください。

 

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依頼すべき理由

1.サブリースとマスターリースの違いは「契約相手が異なる」こと

サブリースとマスターリースの大きな違いは「契約相手」です。

下記図のように、サブリースは「不動産会社と入居者」の間で結ばれる賃貸借契約(※)であり、マスターリースは「物件のオーナーと不動産会社」の間で結ばれる賃貸借契約です。

【簡単に解説!「マスターリース」「サブリース」とは?】 
マスターリース
不動産会社がオーナーから物件を「一括借り上げ」する契約です。不動産会社が第三者(入居者)へ転貸することを目的とし、オーナーから物件を借ります。運営に関する実際の管理業務は不動産会社が行うため、オーナーが行う業務はほとんどなく、賃料による収益を受け取るのみになります。 

サブリース
サブリースとは、不動産会社がオーナーから一括借り上げした物件を、第三者(入居者)に「転貸」する契約です。オーナーから借り上げた物件の管理を行います。

 「マスターリース」「サブリース」を使い分けていない不動産会社も多いのが実情です。マスターリース・サブリースの一連の契約を「サブリース」と呼ぶこともよくあります。

このように、マスターリースとサブリースはどちらも「賃貸借契約」ではあるものの、契約相手が異なるために、契約の呼び名も変わるのです。

サブリースとマスターリースの違いを一覧表にまとめたので、何がどう違うのかを比較して理解しておきましょう。

【サブリースとマスターリースの違い 一覧表】

 マスターリースサブリース
別名称原賃貸借契約転貸借契約
賃貸借契約の締結相手オーナーと不動産会社不動産会社と入居者
賃料の支払い先不動産会社からオーナーへ支払う(手数料を引いた賃料がオーナーへ支払われる)入居者から不動産会社へ支払う(家賃)
説明建物のオーナーから不動産会社が物件を「一括借り上げ」する契約。不動産会社は、第三者(入居者)への転貸を目的に、オーナーから物件を借りる。不動産会社がオーナーから一括借り上げした物件を、第三者(入居者)に「転貸」する契約。不動産会社はオーナーから借り上げた物件の管理を行う。

※賃貸借契約:賃貸物件を貸し借りするときに、貸主と借主の間で締結する契約のこと。


2.不動産オーナーが契約する「マスターリース」とは

マスターリースとサブリースの違いを理解すると、不動産経営を検討中、もしくはすでに経営しているオーナーにとって直接関係のある契約「マスターリース」がどのような内容なのか気になるのではないでしょうか。

マスターリースは先述のとおり、不動産会社に物件を「一括借り上げ」してもらう契約です。

そのためマスターリース契約を締結すると、賃貸物件の管理業務はすべて不動産会社に任せることができます。

具体的には以下のように、すべての管理業務を一括して不動産会社に任せることが可能です。

【マスターリースで一般的に依頼できる管理業務】 
・入居者の募集
・賃貸契約関係手続き(新規および更新)
・賃料回収・滞納への対応(督促など)
・入居者からの苦情・トラブルへの対応
・修繕工事の手配・退去の立ち会い
・共用設備の清掃、メンテナンスなど

 ※具体的な管理業務の内容は、契約する不動産会社によって異なります。

一方で、物件を自主管理する場合は、上記の業務もオーナーが行わなければなりません。

こうしたことからマスターリース契約を締結すると、手間をかけずに不動産経営ができるという大きなメリットを得られます。

(詳しいマスターリース契約のメリットは「3.マスターリースの3つのメリット」で解説しています。)

またマスターリースには、以下2種類の契約方式があります。

【マスターリースの契約方式】

 空室保証型実績連動型
概要物件が満室か空室かに関わらず、一定の賃料収入が保証される契約方式。入居者数、周囲の家賃の市場価格に応じて支払われる額が決定するという契約方式。空室保証はない。
メリット安定的な収入が見込める◎空室対策、家賃滞納などに悩まなくて良い◎賃貸経営をしていくうえで長期的なプランが立てやすくなる◎稼働率(入居者数の割合)が良ければ、空室保証型よりも多くの賃料収入を得られる可能性がある◎相場が上昇すれば、その分賃料収入もアップし、高い賃料収入が得られる可能性がある
デメリット▲満室経営になっても当初契約した金額以上の賃料が入ることはない(一般的には、満室経営時の賃料の15%程度を差し引いた額がオーナーに入る)▲周辺物件の賃料が上昇しても受け取る賃料は変わらない▲契約の改定によって、賃料が引き下げられる場合がある物件が空室になれば、その分賃料収入も減る▲オーナーが得る収益は不動産会社の経営手腕に左右される▲周辺の家賃の市場価格にも左右される

上記のように、マスターリースの2つの契約方式にはそれぞれ一長一短あるため、メリット・デメリットを比較しながらご自身に合う契約方式を選ぶことが重要です。


3.マスターリースの3つのメリット

「サブリースとマスターリースの違い」「マスターリースの契約内容」について理解したところで、マスターリースのメリットを解説します。

具体的なメリットを知っておくことで、「賃貸管理を委託するうえで、マスターリース契約を選択するべきかどうか」を判断できるようになります。

マスターリースのメリットには、以下3つが挙げられます。

【マスターリースの3つのメリット】 
・不動産経営のノウハウがいらない
・相続税の節税効果が高い
・管理業務の手間がかからない

それぞれ詳しく見ていきましょう。

3-1.不動産経営のノウハウがいらない

1つめのメリットは「不動産経営のノウハウがいらない」ことです。

不動産会社に物件をまるごと貸し出すため、以下のような不動産経営に関する知識・スキルが求められる業務を、不動産会社が行ってくれます。

・入居者募集、広告活動
・空室対策(例:敷金礼金の廃止/家賃の値下げなど)
・物件周辺の家賃相場をリサーチしたうえでの適切な家賃設定

そのため、マスターリース契約を締結すれば、知識・ノウハウがなくても不動産経営ができるのです。

不動産経営初心者でも、オーナーとして賃料収入が得られるというのはマスターリース契約の魅力の一つといえるでしょう。

3-2.相続税の節税効果が高い

2つめは「賃貸物件の相続において、相続税の節税効果が高い」ことです。

なぜなら「賃貸物件の相続税評価額」を計算するにあたって、マスターリース契約が有利に働き、節税効果を最大化できるからです。

※相続税評価額:評価方法に従って計算した財産の額。相続税を申告するときの基準となる金額。

賃貸物件の相続税評価額の計算式を見ながら、マスターリース契約によって節税効果を最大化できる理由を一緒に考えてみましょう。

賃貸物件の相続税評価額の計算式
前提として物件の相続税評価額は、「土地」と「建物」に分けてその評価額を計算します。
土地の評価額の計算式貸家建付地評価額※1  = 自用地※2としての価額×(1-借地権割合×借家権割合×賃貸割合※3 ※1 自用地:所有者以外の他人が利用する権利のない土地のこと※2 貸家建付地評価額:自己所有の土地に賃貸用の建物を建て、第三者に貸している場合の土地。つまり、貸家・賃貸アパート・賃貸マンションなどの賃貸物件が立っている土地のこと※3 賃貸割合:相続時における入居率
建物の評価額の計算式収益物件の建物評価額 =建物の固定資産税評価額×(1-借家権割合×賃貸割合

上記の計算式に登場する「借地権割合」は、エリアによって異なり、30%~90%の値で定められています。また「借家権割合」は、全国一律30%となっています。

上記の計算式の中で、節税効果を高くするポイントは「賃貸割合(相続時における入居率)」にあります。というのも、計算式を見るとわかるように、賃貸割合が高ければ高いほど相続税評価額は低く算出され、節税効果が高くなるのです。

つまり、相続税の節税効果を最大限に高めるためには、相続時に賃貸物件の入居率が100%(満室)になっていることが重要です。

ここでマスターリース契約が効果を発揮します。

マスターリースの場合、オーナーにとっては借主が不動産会社の1人のみ。そのため、不動産会社はオーナーから物件を100%借りていることになり「満室」とみなされるのです。

こうしたことから、マスターリース契約を締結している場合、賃貸物件に空室があったとしても、相続時の賃貸割合は100%となり、節税効果が高くなります。

一方で一般管理契約の場合、相続時に空室が発生する可能性があるため、相続税の節税効果はマスターリースほど高いとは言い切れません。

常に満室の状態ではない賃貸物件を相続する可能性がある場合は、マスターリース契約をしておくのがおすすめです。

3-3.管理業務の手間がかからない

3つめは「管理業務の手間がかからない」ことです。

マスターリース契約の場合、不動産会社が賃貸物件をまるごと借りて賃貸経営を行うため、オーナーが管理業務を行う必要は一切ありません。

一方で、自主管理する場合はすべて自分で賃貸物件の管理業務をこなす必要があるため、

・入居者の募集
・賃貸契約関係手続き(新規および更新)
・賃料回収・滞納への対応(督促など)
・入居者からの苦情やトラブルへの対応
・修繕工事の手配
・退去の立ち会い
・共用設備の清掃、メンテナンス

といった手間が発生します。

一般管理契約を締結する場合、自主管理で行う業務の一部、もしくはすべてを不動産会社に委託することができますが、業務の一部を委託する場合は残った業務をこなす必要があります。

すべての業務を委託した場合でも、オーナーと入居者で賃貸借契約を締結するため、入居者からの苦情・トラブルに一切関わらないようにするというのは難しいでしょう。

また、金額の設定(家賃・敷金・礼金などオーナーの収入に関わるもの)はすべて自身で設定しなければなりません。金額を自由に設定できるため、物件周辺の家賃相場のリサーチを行うなど、重要な経営判断をする必要があるため、手間をかけないわけにはいきません。

そのため、一切の手間なく不動産経営を行えるという点はマスターリース契約の大きなメリットといえるでしょう。


4.マスターリースの3つのデメリット

次にマスターリースのデメリットをご紹介します。

良い面だけでなく、マイナス面も知っておくことで、マスターリース契約をするべきかを総合的に判断できるようにしておきましょう。

マスターリースのデメリットは、以下3つです。

【マスターリースの3つのデメリット】 
・オーナーは解約されやすく、オーナー側からは解約しにくい
・保証賃料が減額されて収益が減る可能性がある
・リフォーム内容を決められない

4-1.オーナーは解約されやすく、オーナー側からは解約しにくい

1つめのデメリットは「解約されやすく、オーナー側からは解約しにくい」ことです。

というのも、賃貸借契約においては「借地借家法」によって、借主が保護されているためです。

賃貸借契約では、借主はある予告期間を守ることで自由に契約を解除できますが、貸主は簡単には契約を解約できません。

もし貸主が契約を解約したい場合は、立ち退き料の支払いを行う必要があります。

これはマスターリースにも当てはまります。

マスターリースの契約では、不動産会社が「借主」、オーナーが「貸主」です。借主は借地借家法によって保護されているため、オーナーから一方的に契約解除を申し出ることはできません。もしオーナーがどうしても契約を解除したい場合は、正当な事由が必要になります。

たとえば、正当な事由としては、

・建物の売却
・不動産会社から賃料が支払われていない

などが挙げられます。

また、オーナーから契約解除を申し出る場合、違約金が設定されているケースも多く、オーナーにとっては解約のハードルがさらに高くなっています。

マスターリース契約を一度締結してしまうと、このように簡単に解約できないため、「マスターリースに向いているのかどうか」をしっかり吟味しましょう。

また、不動産会社は慎重に選ぶようにしましょう。

4-2.賃料が減額されて収益が減る可能性がある

2つめのデメリットは「賃料が減額されて収益が減る可能性がある」ことです。

これはマスターリース契約が結ばれたあとも、契約内容が永久に不変になっているわけではなく、2〜3年ごとに見直されるためです。

空室率が高まり、不動産会社が予想していた収益を上げることができない場合、オーナーに対して賃料の引き下げを提案することがあるのです。最悪の場合は、解約を提案されることもあります。

マスターリース契約の「空室保証型」であっても同様です。空室保証型では通常、空室があっても賃料の変更ができない「特別契約」が結ばれています。

しかし、経済情勢の悪化など特別な事情が発生した場合、その特別契約があっても賃料が減額されることがあります。そのため、オーナーの収入が予想よりも少なくなるリスクがあるのです。

このようにマスターリース契約では賃料が減額されるリスクがあるという点は、マスターリース契約のデメリットとして知っておきましょう。

4-3.リフォーム内容を決められない

3つめのデメリットは「リフォーム内容を決められない」ことです。

マスターリース契約において、物件のオーナーはリフォーム費用を負担する決まりとなっていることが多い一方で、修繕計画やリフォームに関する権限は、基本的に不動産会社側にあります。リフォームの内容や業者選定に関してはオーナー自身の意向を反映させることができないのです。

リフォーム内容を決められないために失敗してしまう例としては、以下のようなものがあります。

【リフォーム内容を不動産会社に決めてもらうことで失敗してしまう例】 
あるオーナーが所有する物件で大規模なリフォームが必要になりました。不動産会社がコスト削減のために低価格の業者を選定した結果、仕上がりの質がオーナーの期待を下回ってしまいました。 
さらに、不動産会社がオーナーの了解を得ずに高額なリフォーム業者を選定し、その費用をオーナーに請求するケースも存在します。この場合、オーナーは高額な費用負担を強いられてしまいます。

このような事態となった結果、オーナーと不動産会社間でトラブルの原因となることも少なくありません。

こうしたトラブルを避けるため、マスターリース契約を締結する前に不動産会社と修繕・リフォーム費用やリフォームを依頼する業者については、あらかじめ取り決めをしておくことで、デメリットを軽減することができるでしょう。


5.マスターリースに向いている人・向いていない人

マスターリースに関するメリットやデメリットを解説しましたが、まだマスターリース契約にするべきか決めきれない人もいるのではないでしょうか。

そこで4章では、「マスターリース契約を結ぶのに向いているかどうか」を迷うことなく判断するために、「マスターリースに向いている人・向いていない人」を解説します。

以下に概要をまとめました。

【マスターリースに向いている人・向いていない人】

マスターリースに向いている人マスターリースに向いていない人
◆賃貸管理の手間を省きたい人
◆賃貸経営のノウハウがない人
◆賃貸物件を相続する可能性が高い人
◆安定して収益を得たい人
◆短期間で利益を出したい人
◆大きく稼ぎたい人
◆自分で自由にリフォームなどをして物件を作り上げたい人

それでは詳しく見ていきましょう。

5-1.マスターリースに向いている人

まずはマスターリースに向いているケースからご紹介します。

5-1-1.賃貸経営の手間を省きたい人

1つめは「賃貸経営の手間を省きたい人」です。

マスターリース契約では、不動産会社が賃貸物件を全体として借り上げ、賃貸経営に伴うすべての管理業務を代わりに行います。そのため、オーナーは物件の日々の管理や入居者とのやり取りなどに関わることなく、安定した賃料収入を得ることが可能になるのです。

もしマスターリース契約ではなく、自主管理や一般管理契約の締結を行った場合、以下のような手間が発生します。

【自主管理の場合の手間】 
自主管理の場合、オーナーは 
・入居者募集
・契約更新
・賃料回収
・苦情対応
・修繕工事の手配
・共用部のメンテナンス 
など、多岐にわたる業務を自ら行う必要があり、大きな時間と労力が必要です。また自身で賃料設定を含む経営判断を下す必要があるため、市場調査や経営戦略の立案など、不動産経営に関する業務も必要になります。
【一般管理契約の場合の手間】 
一般管理契約の場合、オーナーは賃貸物件の管理業務を不動産会社に委託できます。そのためオーナーは自身で行う必要のある管理業務を軽減できますが、一部の業務だけを委託した場合、その他の管理業務はオーナーが直接行う必要があり、完全な手間の軽減にはなりません。

すべての業務を不動産会社に委託したとしても、賃貸借契約はオーナーと入居者の間で結ばれるため、入居者からの苦情やトラブルへの対応は避けられない場合があります。入居者から直接伝えられた要望に対応することは、オーナーの責任範囲とされるケースが多いのです。管理業務を全て委託したとしても、入居者に対するオーナーとしての責任から完全に解放されるわけではありません。

その一方でマスターリース契約では、こうした管理業務からオーナーを解放し、不動産会社が賃貸経営に必要な全ての業務を担ってくれます。そのため、オーナーは賃貸経営における業務に携わる必要がなくなり、本業や自身の時間を有効に活用できるようになります。

賃貸経営に多くの時間を割けないオーナーにとって、マスターリース契約は手間を最小限にしてくれるため、おすすめです。

5-1-2.賃貸経営のノウハウがない人

2つめは「賃貸経営のノウハウがない人」です。

賃貸経営には多岐にわたる知識が必要とされます。

・市場の動向を把握し、適切な入居者を見つけ出す集客ノウハウ
・賃貸物件の運営・維持管理
・トラブル対応

など、経験や専門的な知識が不可欠です。

しかし、こうした知識や経験がないまま賃貸経営を始めると、空室リスクや運営上のトラブルに直面する可能性が高くなります。とくに賃貸経営のリスクの一つである「空室リスク」は、家賃収入を減らし、オーナーに直接的な損害をもたらす可能性があります。

そのため「賃貸経営のノウハウがないけれど賃貸経営をやりたい」と考えている人にとって、マスターリース契約は適しているといえます。

マスターリース契約では、賃貸経営における集客力や家賃保証の責任は不動産会社が担うため、賃貸経営のノウハウがないオーナーでも安心して賃貸経営を行うことが可能になります。

したがって、賃貸経営のノウハウがない人は、家賃収入の安定性と運営の手間を最小限に抑えることができるマスターリース契約に向いているといえるでしょう。

5-1-3.賃貸物件を相続する可能性が高い人

3つめは「賃貸物件を相続する可能性が高い人」です。

というのも「賃貸物件の相続税評価額」を計算するにあたって、マスターリース契約が有利に働き、節税効果を最大化できるからです。

相続税の節税効果を最大限に高めるためには、相続時に賃貸物件の入居率が100%(満室)になっていることが重要。マスターリースではオーナーにとっては借主が不動産会社の1人のみであるため、不動産会社はオーナーから物件を100%借りていることになり「満室」とみなされるのです。

こうしたことから、マスターリース契約を締結している場合、賃貸物件に空室があったとしても、入居率が100%(満室)となり、節税効果が高くなります。

今後、賃貸物件を相続する可能性が高い場合、マスターリース契約をしておくと、相続税の節税効果を最大化できるため、おすすめです。

※マスターリース契約が相続税の節税効果を最大化できる詳しい仕組みについては「3-2.相続税の節税効果が高い」をご覧ください。

5-1-4.安定して収益を得たい人

4つめは「安定して収益を得たい人」です。

マスターリース契約の契約内容によっては、不動産会社が家賃を保証してくれるため、物件に空室が出ても、約束された家賃収入を得ることができます。そのため賃貸経営における最大のリスクの一つである空室リスクによる収入の減少を大幅に抑えられるのです。

そのため、安定して収益を得たい人にとって、マスターリース契約は非常に魅力的な選択肢となります。不動産市場の変動や経済状況に左右されることなく、一定の収入を確保できるため、賃貸経営における収益の安定化を望むオーナーにはマスターリース契約は向いているといえます。

ただし家賃保証がある不動産会社でも、会社の経営状況や物件の状況によっては家賃が減額される可能性があることは知っておきましょう。

5-2.マスターリースに向いていない人

次にマスターリースに向いていない人を3つ解説します。

5-2-1.短期間で利益を出したい人

1つめは「短期間で利益を出したい人」です。

マスターリース契約が提供する家賃収入の安定性は、即時の高収益を期待する投資戦略とは異なります。

マスターリース契約では、不動産会社からの家賃収入が一定であるため、市場の賃料上昇や物件の価値上昇に応じた迅速な利益の増大は期待しにくいのです。また、マスターリース契約は通常、長期契約であるため、短期的な資金回収や利益の実現には不向きといえます。

短期間での利益追求は、高いリスクを伴う場合が多く、サブリース契約特有の安定した収益モデルとは相反するため、そのような目的を持つ人には向いていないといえるでしょう。

5-2-2.大きく稼ぎたい人

2つめは「大きく稼ぎたい人」です。

なぜなら、マスターリース契約ではオーナーが直接入居者から礼金や更新料を受け取ることができないためです。

サブリース契約では、オーナーではなく、不動産会社が入居者からこれらの料金を受け取ります。その結果、オーナーにとっての直接的な収入源が限られることになり、とくに短期間で大きな収益を期待する方には不向きといえます。

マスターリース契約は、賃貸管理の手間を減らし、安定した家賃収入を提供することに焦点を当てています。そのため、礼金や更新料など、追加の収入機会を重視する方には合わないでしょう。

したがって、大きく稼ぎたいと考えている人はマスターリース契約は向かないといえます。

5-2-3.自分で自由にリフォームなどをして物件を作り上げたい人

3つめは「自分で自由にリフォームなどをして物件を作り上げたい人」です。

マスターリース契約では、リフォームに関する計画や決定権が大半の場合、不動産会社側にあります。オーナーがリフォーム費用を負担するものの、実際のリフォーム内容や選定する業者についてオーナーが直接関与することが限られてしまうのです。

リフォーム内容を自由に決めたいオーナーの場合、不動産会社がコスト削減目的で低価格の業者を選んだ結果、期待に満たない仕上がりになるリスクがあります。

また、オーナーの同意なく高額なリフォーム費用が発生し、それがオーナーに請求されることもあり得ます。このような状況は、オーナーと不動産会社間のトラブルの原因となりうるため、リフォームの自由度を重視するオーナーにとってマスターリース契約は適していません。

リフォームに関する具体的な方針や業者選定に自ら関与し、物件に個性を反映させたいオーナーは、マスターリース契約は向いていないといえます。


6.マスターリースを利用しないで管理を依頼したい場合は一般管理契約を選ぼう

これまでの解説から「マスターリース契約を利用しない」と判断した方で、「委託管理は依頼したい」と考えている場合は「一般管理契約」を選ぶことをおすすめします。

一般管理契約とは、オーナーが不動産会社に対して、物件の管理業務の代行を依頼するときに行う契約のことです。以下の業務の一部、もしくはすべてを依頼できます。

【一般管理契約で委託できる業務一覧】 
・入居者募集
・賃貸借契約締結・更新
・賃料回収
・賃料滞納者への督促
・解約手続き
・退去時の立会い
・クレーム処理
・清掃
・法定点検
・室内クリーニング
・リフォーム

一般管理契約は、マスターリース契約よりもオーナーに賃貸管理・賃貸経営の裁量があり、以下はオーナー自身が行う必要があります。

・オーナーの収入にかかわる賃料や敷金、礼金の決定
・賃料決定をするための物件周辺の賃料相場などのリサーチ
・空室対策(※)

そのため、マスターリース契約のようにまるごと不動産会社に賃貸経営を任せてしまうよりも、

「入居者の選定などある程度の管理は自分で行いたい」
「予算に合わせて不動産会社を利用したい」
「リフォーム内容や賃料は自分で決めたい」

という人に向いているのです。

具体的には、一般管理契約には以下のようなメリット・デメリットがあります。

【一般管理契約のメリット・デメリット一覧】

メリットデメリット
◎管理業務を委託するが、賃貸経営自体を委託するわけではないため、オーナーが賃貸経営状況を把握できる
◎賃料や入居募集条件はオーナーの意思が反映できる
◎管理会社に不満がある場合は、解約しやすい(委任契約のため解除はいつでもできる)
▲空室の時に賃料保証がない
▲空室期間の長さは、管理会社の入居者募集力に左右される

※空室対策:賃貸物件に空室を作らないよう、オーナーが行う対策のこと。具体的には、「退去された部屋にできるだけ早く次の入居者を決める対策」「入居者に長く入居してもらうための対策」です。

マスターリース契約ではない契約方法で、管理委託をしたいと考えている人は、一般管理契約を検討してみてはいかがでしょうか。

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マスターリース契約や一般管理契約といった、賃貸管理の委託は、私たちルーム・スタイルにお任せください! ルーム・スタイルの委託管理では、年間入居率98%、入居までの期間は平均1ヶ月と、圧倒的な賃貸管理の結果を残しています。
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加えて、ルーム・スタイルに賃貸管理をおまかせ頂ける場合、管理費用は総家賃の3〜4%となっており、相場よりも委託管理費用としてはお得にご利用頂けます。

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まとめ

この記事ではサブリースとマスターリースの違いやマスターリースのメリット・デメリット、向いている人などを解説しました。

ここで改めて本記事の内容をおさらいしましょう。

サブリースとマスターリースの違い

サブリースとマスターリースの違いは「契約相手が異なる」ことサブリースは「不動産会社と入居者」の間で結ばれる賃貸借契約であり、マスターリースは「物件のオーナーと不動産会社」の間で結ばれる賃貸借契約である。

不動産オーナーが契約する「マスターリース」とは不動産会社に物件を「一括借り上げ」してもらう契約

マスターリースのメリット

・不動産経営のノウハウがいらない
・相続税の節税効果が高い
・管理業務の手間がかからない

マスターリースのデメリット

・オーナーは解約されやすく、オーナー側からは解約しにくい
・保証賃料が減額されて収益が減る可能性がある
・リフォーム内容を決められない

マスターリースに向いている人・向いていない人

マスターリースに向いている人マスターリースに向いていない人
◆賃貸管理の手間を省きたい人
◆賃貸経営のノウハウがない人
◆賃貸物件を相続する可能性が高い人
◆安定して収益を得たい人
◆短期間で利益を出したい人
◆大きく稼ぎたい人
◆自分で自由にリフォームなどをして物件を作り上げたい人
この記事が賃貸の委託管理を検討中のオーナー様に参考になれば幸いです。

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