不動産投資はキャッシュフローが鍵!仕組みやマイナス時にすべきこと

「キャッシュフロー」とは不動産投資におけるお金の流れです。 安定したキャッシュフローを確保することで、ローン返済や突発的な支出にも柔軟に対応でき、結果的に不動産投資の成功へと繋がります。

本記事では、不動産投資におけるキャッシュフローの基本的な仕組みや計算方法、マイナス時に取るべき対策について詳しく解説します。

本記事を読んでわかること
  • キャッシュフローの意味や帳簿上との概念の違い
  • 不動産投資でキャッシュフローが重要な4つの理由
  • キャッシュフローの仕組み・計算方法(3パターン紹介)
  • キャッシュフローをプラスにするために購入前後ですべきこ
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不動産投資の「キャッシュフロー」って何?

キャッシュフローは物件運用中に動くお金の流れのことで、不動産投資を成功させるために欠かせない1つの指標です。 物件の購入から運用、売却に至るまで、すべてのシーンでキャッシュフローを把握・管理することが求められます。

まずは、キャッシュフローの定義や実際の収支と帳簿上の金額の違いについて説明します。

キャッシュフローとは キャッシュフローとは、

物件の運営により得られる「収入」と「支出」の差額を指します。 具体的な収入、支出は以下のものがあります。

収入
  • 家賃
  • 共益費(管理費)
  • 駐車場代
  • 礼金
  • 更新料
支出
  • ローン返済分
  • 管理委託料
  • 修繕費、メンテナンス費
  • 広告料(仲介手数料)
  • 保険料
  • 税金

上記の収入と支出の差額がプラスであれば、物件の運営が黒字であることを示し、投資が成功している状態といえます。

一方で、キャッシュフローがマイナスになる場合は、収入よりも支出が上回っていることを意味し、オーナーにとっては警戒すべき状況です。

実際のキャッシュフローと帳簿上の金額は異なる

「帳簿上」のキャッシュフローと、「実際の現金」の流れが一致しないことがあります。

これは、減価償却費などの非現金支出や、一時的な出費、例えば修繕費用が発生するためです。帳簿上の利益が出ていても、実際にはキャッシュフローがマイナスになることもあり、オーナーはこれをしっかりと管理する必要があります。

特に、予期せぬ支出がある場合には、実際のキャッシュフローを適切に把握しておくことが重要です。

減価償却では「デッドクロス」に要注意

また、注意しておきたいのが減価償却費の計上をしている期間の「デッドクロス」です。

減価償却を行うことで帳簿上が赤字になるなど節税メリットがありますが、減価償却は年々計上できる金額が減少していきます。減価償却費が少なくなる、これはつまり帳簿上の利益が増える状態になり、課税される税金が増えるということです。

手元に入る実際の収入はこれまでと変わらないのに、所得が増加したとみなされ税金が増えてしまいます。デッドクロスになると、帳簿上の金額では黒字になっているのに、実際にはマイナスで破綻に陥ることがあるので注意が必要です。

デッドクロスの回避策には、融資期間を長くする、耐用年数の長い物件を選ぶなどの方法があります。

不動産投資を始める前にこの知識があると、ローン戦略や物件選びがまた変わってくるでしょう。


不動産投資のキャッシュフローの計算方法と例

不動産投資におけるキャッシュフローの計算は「収入 – 支出」と単純ですが、毎月プラスを出すには内訳を把握したうえで、事前の戦略立てが鍵を握ります。

具体的なキャッシュフローの計算方法と計算例を紹介します。

不動産投資のキャッシュフローの計算式

キャッシュフローの計算式は、以下のとおりです。

キャッシュフロー=家賃収入-(経費 + ローン返済額 + 税金)

購入時の仲介手数料、司法書士報酬、印紙代などは経費に含めることができるので、初年度はキャッシュフローがマイナスになるケースが多いです。

また、先述したように減価償却期間中は、帳簿上では赤字、実際の手元は黒字になるケースもあります。

1棟経営の場合は、防蟻工事や外壁工事、屋根の防水工事などで一時的に大きなマイナスが出ることもあります。

不動産投資の計算例

前項の計算式をもとに、以下の条件で毎月のキャッシュフローの計算例を解説します。

パターン①:基準条件として試算

パターン②:①の金利を-0.5%した試算

パターン③:①の頭金を200万円多く準備した試算

それぞれ見ていきましょう。

パターン①

【物件詳細】

・区分マンション

・物件価格(諸経費含):2,000万円(自己資金400万円、借入額1,600万円)

・その他:金利2.0%、ローン期間30年、ボーナス返済無し

この条件で試算すると、毎月の返済額は59,138円になります。

上記の物件を家賃9万円で設定し、賃貸するとしましょう。

管理費が10,000円、修繕積立金が13,000円だった場合、毎月発生する固定費で23,000円発生することになります。

また、専門業者へ物件の管理をお願いする場合は、管理委託料が発生します。相場である賃料の5%として算出すると、月々4,500円です。

キャッシュフロー=90,000円 – ( 10,000円 + 13,000円 + 4,500円 + 59,138円)= 3,362円

毎月の手残りが上記の金額になります。意外と少ないと感じる方もいるかもしれません。

パターン②

次は、同条件で金利を下げた例を紹介しましょう。

【物件詳細】

・区分マンション

・物件価格(諸経費含):2,000万円(自己資金400万円、借入額1,600万円)

・その他:金利1.5%、ローン期間30年、ボーナス返済無し

パターン①から金利-0.5%下げた1.5%にすると、毎月の返済額は55,219円になります。

キャッシュフロー=90,000円 – ( 10,000円 + 13,000円 + 4,500円 + 55,219円)= 7,281円

金利が0.5%違うだけで、手残りが一気に増えるのが分かります。

パターン③

もう1つ、今度は金利をそのままで、自己資金を多く入れた場合の例を紹介します。

【物件詳細】

・区分マンション

・物件価格(諸経費含):2,000万円(自己資金600万円、借入額1,400万円

・その他:金利2.0%、ローン期間30年、ボーナス返済無し

上記の条件では、キャッシュフローは以下のとおりです。

キャッシュフロー=90,000円 – ( 10,000円 + 13,000円 + 4,500円 + 51,746円)= 10,754円

自己資金を多くして借入額を下げると、パターン①の約3倍の手残りが残ります。

パターン①・②の場合、税金や突発的な経費、家賃下落が発生すると赤字になることが懸念されます。

しかし、頭金を多く入れたパターン③の場合は、気持ちに少し余裕が持てるでしょう。


不動産投資でキャッシュフローが重要な理由

キャッシュフローがプラスであることは、金銭的にも精神的にもオーナーにとって多くのメリットがあります。

  1. ローン返済に負われずに済む
  2. 急な出費があっても生活資金からの手出しが不要
  3. 次の投資物件の融資承認を得やすい
  4. 売却査定の価格アップが見込める

本章では、上記4つのメリットを具体的に紹介します。

1.ローン返済に負われずに済む

キャッシュフローがプラスであれば、毎月のローン返済を家賃収入で賄えるので、自己資金を使う必要がありません。不動産投資において最も理想的な状態です。

これにより、毎月の経済的な負担が軽減され、安心してローン返済を続けられます。

ローン返済が滞る心配がないのは、オーナーのメンタル面でも大きな安心感を得ることができます。

2.急な出費があっても生活資金からの手出しが不要

予期せぬ修繕費用や空室期間が発生した場合でも、キャッシュフローがプラスであれば、生活資金を切り崩さずに対応できます。

これにより、日常生活に影響を与えることなく、物件の運用が続けられます。特に、複数の物件を所有している場合、キャッシュフローがプラスであることは非常に重要です。

3.次の投資物件の融資承認を得やすい

キャッシュフローが安定してプラスだと、金融機関からの信頼が高まり、次の投資物件を購入する際の融資承認を得やすくなります。

キャッシュフローがプラスであることは、オーナーが健全な資産運用を行っている証拠になるため、再投資によって資産の拡大が可能になります。

プラスが続いているからと言って、安易にその手元資金に手を出すことは禁物です。

4.売却査定の価格アップが見込める

不動産経営が順調でも、まとまった資金が必要になるなど、売却を考えることがあるでしょう。その際にも、キャッシュフローが安定している物件は、売却時の査定価格が上がるメリットがあります。

投資物件はその収益性が売却時の価格に反映しやすく、プラスのキャッシュフローが見込める物件は高い評価を受けやすくなります。


不動産投資におけるキャッシュフローのマイナスは問題?

キャッシュフローの一時的なマイナスは、必ずしも大きな問題ではありません。
しかし、毎月慢性的にマイナスが発生している場合は、早急に改善が必要となるケースが多いです。

以下では、一時的なマイナスと慢性的なマイナスの違い、またそれぞれに対して取るべき行動について解説します。

一時的なマイナスは改善に急を要さない

設備故障による修繕、保険の更新などで一時的にキャッシュフローにマイナスが発生する月がありますが、これらは特段の対応を急ぐ必要はありません。

不動産経営をするうえで避けられない出費は、計画的に資金管理ができていれば、問題ないということです。

問題が一時的であるかを確認し、長期的な視点で改善策を考えるようにしましょう。

慢性的なマイナスは早急に改善が必要

一方で、キャッシュフローに慢性的なマイナスが出ている場合は、要因を突き止め、早急な改善が必要です。

物件の収益性が低い、ローン返済が重すぎるなどの原因が考えられます。

慢性的なマイナスは貯蓄の切り崩しが続き、最終的には破綻に繋がるリスクがあります。

早期に問題点を洗い出し、支出の削減や家賃の見直しなどの対策を講じなくてはなりません。


不動産投資でキャッシュフローをプラスにするには(購入前)

不動産投資の直結に不可欠なキャッシュフローの黒字化。

頭金の準備やローン条件の見直し、物件選びなど、購入前に行うべきステップを押さえておくことで、購入後のリスクを軽減し、安定したキャッシュフローを確保できます。

この章では、購入前に行うべき具体的な対策について解説します。

1.なるべく多く頭金を準備する

まずは、多くの自己資金を準備することです。

先述の計算例でも紹介した通り、頭金を多く準備することで借入額を減らし、毎月のローン返済額を抑えることが可能です。これにより、キャッシュフローをプラスにしやすくなります。

また、頭金が多いほど融資審査にも有利に働きやすく、低金利での借入ができる可能性が高まります。

2.低金利で借入する

固定費となるローン金利も、キャッシュフローに大きく関わります。

低金利で借入を行うことで、毎月のローン返済額を抑え、キャッシュフローをプラスにしやすくなります。

特に高額な借入をする場合、手残りに大きな差が生じます。

例えば、アパート経営で6,000万円の借入を25年で返済する場合、金利2.0%とすると毎月の返済額は254,310円です。しかし、金利2.5%とすると毎月の返済額は269,168円に上昇します。

アパート経営は借入額が大きくなりやすいので、わずかな金利差でも返済額に大きく影響してしまいます。

そのため、購入前に金融機関の金利を比較し、できる限り有利な条件での借入を目指しましょう。

3.ローンの返済期間を長くする

ローンの返済期間を長く設定することで、毎月の返済額を抑えることができ、キャッシュフローをプラスにする効果があります。

先述の条件では、6,000万円の借入を金利2.0%、期間25年で返済する場合、毎月の返済額は254,310円でした。この期間を30年に長くすると、毎月の返済額は221,769円になります。

返済額が低くなることにより、毎月のキャッシュフローに余裕が生まれます。

ただし、返済期間が長くなる分、総返済額が増えることにも考慮が必要です。返済期間の設定は、キャッシュフローの安定性と将来的なリスクバランスをよく考えて決めましょう。

4.管理会社の比較をする

物件管理を依頼する管理会社の選定は、キャッシュフローに直接的な影響を与えます。

特に、管理費用やサービス内容は複数の会社を比較し、知識・実績ともに豊富で信頼できる管理会社を選ぶことが大切です。インターネットの口コミ評価などを参考にしてみるのもおすすめです。

信頼できる管理会社を選ぶことで、修繕やメンテナンスの費用も適正価格で行われ、予期せぬ出費を抑えることができます。

管理委託契約を締結すると、契約解除したいと思っても違約金が高くなる可能性がありますので、管理会社選びは慎重に決定しましょう。

5.中古の投資物件を購入する

投資物件で中古物件を選択することは、キャッシュフローをプラスにするための効果的な方法です。

新築物件に比べて購入価格が低いため、頭金や借入額を抑えられ、初期費用の負担が軽減されます。

不動産投資に関する調査データでも、新築より中古物件は利回りが高いことが公表されています。


不動産投資でキャッシュフローをプラスにするには(購入後)

キャッシュフローをプラスに保つためには、繰り上げ返済や金利交渉、物件の管理改善など、物件購入後も継続的な努力が必要です。

本章では、購入後に行うべき具体的な対策について解説します。

1.繰り上げ返済をする

繰り上げ返済は、キャッシュフローをプラスにする有効な方法です。

ローンの元金を早めに返済することで、毎月の返済額が減少し、キャッシュフローが改善されます。余裕資金がある場合は、積極的に繰り上げ返済を検討すると良いでしょう。

また、元金を減らすことで、将来的な金利負担も軽減されるため、長期的に見ても投資の収益性が向上します。

ただし、繰り上げ返済には手数料がかかる場合もあるため、事前に確認してから行うことが重要です。

2.金利交渉や借り換えを検討する

ローンの金利交渉や借り換えを検討することで、毎月の返済額をさらに抑え、キャッシュフローをプラスに保つことができます。

世間の金利動向に合わせるなど、適切なタイミングで金融機関との交渉を検討してみてください。金利の交渉を有利にするためには、返済に滞りがないことが大切です。

また、他の金融機関に借り換えることで、さらに低金利のローンに切り替えることができる場合もあります。ただし、その場合も借り換えにかかる手数料など、総合的な金額を見て決めましょう。

3.家賃の値上げを検討する

物件の収益性を高めるためには、家賃の値上げを検討することも重要です。

  • 周辺の賃貸市場価格が高まっている
  • リフォームや新設備の導入

これらの適切なタイミングで家賃の改定を行うことで、収入を増加させることができます。

既存入居者の家賃を上げる場合は、原則として入居者からの承諾が必要です。家賃値上げは、入居者入れ替えのタイミングで行うとスムーズでしょう。

4.資産価値の向上に努める

物件の資産価値の向上は、長期的にキャッシュフローをプラスに保つために重要な投資戦略です。

資産価値を高めるためには、定期的なメンテナンスやリフォームの実施が効果的でしょう。

また、最新設備の導入、建物まわりの美化など物件全体の魅力を高める取り組みも大切です。


キャッシュフローがプラスの時の活用法

キャッシュフローがプラスになった場合、不動産投資ではその収益をどのように活用するかが次のステップです。

以下で、具体的な3つの活用法を紹介します。

1.リスクに備えて貯蓄する

キャッシュフローがプラスに転じた場合、まず考えるべきはリスクに備えるための貯蓄です。

プラスになったキャッシュフローをすぐに消費するのではなく、将来起こり得るさまざまなリスクに対処できるように貯蓄しておいてください。

2.経費に充当する

プラスのキャッシュフローを適切に経費に充当することも、1つの方法です。

例えば、物件の維持管理費や修繕費にキャッシュフローを充てることで、物件の資産価値を保ち、入居者満足度を高めることができます。

経費にキャッシュフローを充当する際には、「どの部分に優先的に資金を投入するか」を見極め、効率的に資金運用しましょう。

3.再投資の頭金にする

キャッシュフローがプラスの場合、その資金を次の投資物件に再投資することがお勧めです。

次に購入する投資物件の頭金として活用することで、収益源を増やせます。

再投資を行う際は、次の物件の選定や融資条件を慎重に検討するようにしましょう。

 


まとめ

不動産投資におけるキャッシュフローは、オーナーが理解・把握すべきお金の流れです。

購入前の適切な準備や購入後の継続的な努力により、キャッシュフローをプラスに保つことができます。

また、キャッシュフローがプラスになっても手を付けてはいけません。プラス分はリスクに備えるための貯蓄や資産拡大のために使うことで、長期的な収益を確保することができます。

不動産投資を成功させるためには、キャッシュフロー管理を徹底し、常に先を見据えた資産運用を心掛けましょう。

※本記事の試算は、みずほ銀行公式サイト「住宅ローンシミュレーション」にて行っております。

シミュレーションはボーナス返済無しとし、返済期間中の利上げは考慮しておりません。

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