
「一般媒介と専任媒介、どちらを選べば早く高く売れるの?」
「できれば早期売却をしたいのだけど、一般媒介と専任媒介はどっちがおすすめ?」
不動産の売却をするときに、多くの人が最初につまずくのが「一般媒介契約と専任媒介契約はどちらを選べば良いのか?」という点ではないでしょうか。
結論からお伝えすると、基本的には「専任媒介契約」をおすすめします。
なぜならば、1社の不動産会社とだけ媒介契約をする「専任媒介契約」のほうが、不動産会社の営業マンが熱意をもって売却活動してくれるため、スピードが高まるからです。実際に早く売れた事例の多くは「専任媒介契約」で進められています。
ただし、すべての人や物件で専任媒介が適しているわけではありません。物件の特性や売主の事情によっては、一般媒介契約が有効なケースもあります。
そこで本記事では、一般媒介・専任媒介・専属専任媒介の違いを図解でわかりやすく解説しながら、
・専任媒介契約のほうが基本的におすすめな理由
・例外的に一般媒介契約がおすすめのケース
・どのような順番で契約を進めると失敗しないか
・信頼できる会社をどう見つけるか
といった実践的なポイントを丁寧にご紹介していきます。
「早く高く売りたい!」「失敗したくない!」という方にこそ読んでほしい内容です。ぜひ最後までご覧ください。
目次
- 1. 一般媒介と専任媒介(専属専任媒介を含む)の違い
- 1-1. 依頼できる会社の数【一般は複数OK・専任と専属専任は1社のみ】
- 1-2. レインズ登録義務【専任は7日以内・専属専任は5日以内】
- 1-3. 売却活動の報告義務【専任媒介は2週間に1回以上・専属専任媒介は週に1回以上】
- 1-4. 自己発見取引【一般と専任はできる・専属専任は禁止】
- 2. 一般媒介・専任媒介・専属専任媒介の特徴まとめ
- 2-1. 一般媒介契約:自由度は高いが、売却活動の見えにくさに注意
- 2-2. 専任媒介契約:一番バランスがよい選択肢【おすすめ】
- 2-3. 専属専任媒介契約:自分でも動きたい人には使いにくい
- 3. 一般媒介と専任媒介はどちらが選ばれている?調査結果を解説
- 3-1. 実際には「一般媒介契約」が一番多く選ばれている
- 3-2. 早く売れたのは「専任媒介契約」のほう
- 4. 早く売るには「一般媒介」より「専任媒介契約」がおすすめな理由
- 4-1. 自社で決めてもらえるため積極的に売却活動を進めてくれる
- 4-2. レインズ登録義務があるため多くの不動産会社が買主を探してくれる
- 4-3. 売却活動の進捗がわかりやすく、改善提案も受けやすい
- 5. ただし専任媒介契約にはデメリット・注意点もある
- 5-1. 売却力のない業者に依頼すると売却が進まないことがある
- 5-2. 契約期間中(一般的には3カ月)は他社に依頼できない
- 5-3. 囲い込みが起こる可能性がある
- 5-4. 売却方針の変更や比較がしにくい
- 5-5.【専属専任媒介の場合】自分で買主を見つけても売買契約が必須
- 6.【状況別】専任媒介と一般媒介どちらを選ぶべきか
- 6-1. 信頼できる不動産会社がある:専任媒介契約がおすすめ
- 6-2. 早く売りたい:専任媒介契約がおすすめ
- 6-3. 遠方に住んでいて売却活動を任せたい:専任媒介契約がおすすめ
- 6-4. 1社に絞るのが難しい:一般媒介契約も検討(例外)
- 6-5. 人気エリアや需要の高い物件:一般媒介契約も検討(例外)
- 6-6. 売りづらい物件:一般媒介契約も検討(例外)
- 7. 専任媒介契約で売却を成功させるためのステップ
- 7-1. ステップ1:複数社に査定依頼して相性・信頼性を見極める
- 7-2. ステップ2:まずは一般媒介契約で複数社に依頼する
- 7-3. ステップ3:2〜3週間で各社の動きを観察・比較する
- 7-4. ステップ4:信頼できる1社に絞り、専任媒介契約に切り替える
- 7-5. ステップ5:契約後も定期報告と戦略調整を続ける
- 8. 売却を成功させるには「不動産会社選び」が何よりも重要
- まとめ
1. 一般媒介と専任媒介(専属専任媒介を含む)の違い
不動産を売却する際には、「媒介契約」と呼ばれる契約を不動産会社と結んで、売却活動を正式に依頼する必要があります。この媒介契約は主に3つの種類があり、それぞれの違いを理解することが納得のいく売却の第一歩となります。
媒介契約の種類には、「一般媒介契約」「専任媒介契約」「専属専任媒介契約」の3つがあります。
※「専属専任媒介契約」は「専任媒介契約」の一種ですが、自己発見取引が禁止されているという特徴があります。
一般媒介契約・専任媒介契約・専属専任媒介契約の3つは、以下のように、(1)依頼できる会社の数、(2)レインズへの登録義務、(3)依頼主への売却活動の報告、(4)自己発見取引ができるかが異なります。
まずはそれぞれの特徴を、4つの観点でわかりやすく解説します。
1-1. 依頼できる会社の数【一般は複数OK・専任と専属専任は1社のみ】
媒介契約の種類のうち、もっとも大きな違いは、売却にともなう業務を依頼できる会社の数です。
一般媒介契約は複数の不動産会社に同時に販売を依頼可能ですが、専任媒介および専属専任媒介は、1社のみに限定して依頼する契約です。
一般媒介契約は、いわば「オープンな募集」に近く、「どの会社でも構わないので買主を見つけてください」というスタイルです。一方で、専任媒介契約および専属専任媒介契約は、売却活動を1社にのみ任せる形式の独占的な媒介契約であり、不動産会社の営業責任が明確になるという特徴があります。
より多くの会社に同時に声をかけて間口を広げたい方には一般媒介契約が向いていますが、1社に絞って責任を持って動いてもらいたい方には、専任媒介契約または専属専任媒介契約の選択が有効です。
1-2. レインズ登録義務【専任は7日以内・専属専任は5日以内】
3つの媒介契約の種類によって、不動産会社に「レインズ(REINS)」というシステムへの登録義務があるかどうかが異なります。
一般媒介契約ではレインズに登録するかどうかは不動産会社の判断に任されており、登録されないこともあります。一方で、専任媒介は媒介契約締結の翌日から7日以内に、専属専任媒介は翌日から5日以内に、かならずレインズに登録しなければならない「登録義務」があります。
「レインズ(REINS)」とは、不動産会社同士が物件情報を共有できる全国共通の専用ネットワークです。売却物件がレインズに登録されると、媒介契約をしていない他の不動産会社の営業マンにも物件情報が伝わるため、より多くの買主候補に届きやすくなります。
一般媒介契約ではレインズ登録義務がないため、業者が登録してくれなかった場合、物件情報が狭い範囲にしか届きません。早期売却を目指したい場合には、専任媒介・専属専任媒介が有効な選択肢となります。
1-3. 売却活動の報告義務【専任媒介は2週間に1回以上・専属専任媒介は週に1回以上】
不動産会社に自分の物件の売却活動を任せたあとに「実際どんなふうに動いてくれているか」が見えるかどうかは、売主にとって非常に気になるところです。この「売却活動の報告」の義務があるかどうかも、媒介契約の種類によって違いがあります。
一般媒介契約では、宅建業法においての報告義務は定められていません。一方で、専任媒介契約の場合は2週間に1回以上、専属専任媒介なら1週間に1回以上の報告が必要となります。
売却活動の報告とは、不動産会社が売却活動を始めてから「どのように物件を広告しているのか」「問い合わせは何件あったのか」「内見した人の反応はどうだったか」などの報告を指します。
専任媒介契約や専属専任媒介契約では、不動産会社から定期的に売却活動の報告が来るため、状況を把握しやすく対策も立てやすいメリットがあります。
1-4. 自己発見取引【一般と専任はできる・専属専任は禁止】
自己発見取引(自分が見つけた買主との売買契約)ができるかどうかにも違いがあります。
「自己発見取引」とは、売主自身が買主を見つけた場合に、媒介契約を結んだ不動産会社を通さずに売買契約を締結することを指します。
一般媒介と専任媒介では、自分で買主を見つけた場合に、媒介契約を締結した不動産会社を通さずに直接売買契約を結ぶことが可能です。
一方、専属専任媒介では、自分で見つけた場合でもかならず媒介契約を締結した不動産会社を通して、売買契約を結ばなければなりません。つまり、自分で買主を見つけてきても、不動産会社に仲介手数料を支払う必要があるということです。
専属専任媒介は、1社としか媒介契約ができず、かつ自己発見取引も禁止されているため、かなり制約が大きい契約方法となります。ただし、その分、業者からするともっとも熱意が入りやすい媒介契約の種類といえます。
2. 一般媒介・専任媒介・専属専任媒介の特徴まとめ
1章で解説したように、媒介契約には一般媒介契約・専任媒介契約・専属専任媒介契約の3つがあり、主に以下のように4つの点での違いがあります。
【一般媒介・専任媒介・専属専任媒介の違い】
一般媒介 | 専任媒介 | 専属専任媒介 | |
依頼できる会社の数 | 複数OK | 1社のみ | 1社のみ |
レインズ登録義務 | 義務なし 登録は任意 | 義務あり 媒介契約締結の翌日から7日以内 | 義務あり 媒介契約締結の翌日から5日以内 |
依頼主への売却活動の報告 | 義務なし 任意 | 義務あり 2週間に1回以上 | 義務あり 1週間に1回以上 |
自己発見取引自分で見つけた買主との直接取引 | できる | できる | できない 不動産会社を通す必要がある |
違いを知ったうえで、あらためて、一般媒介・専任媒介・専属専任媒介の特徴をまとめます。
2-1. 一般媒介契約:自由度は高いが、売却活動の見えにくさに注意
一般媒介契約では、複数の不動産会社に同時に売却を依頼することができ、自分で買主を見つけた場合にも自由に売買契約を締結できます。このため、自由度が非常に高いのがメリットです。
しかし、不動産会社にとっては「他社に先を越される可能性のある物件」となり、広告・営業活動に十分なリソースを割きにくくなる傾向があります。加えて、レインズ登録の義務もなければ、進捗状況の報告義務もないため、売却活動の内容が見えづらいのがデメリットです。
「とりあえず様子を見たい」「複数の会社を比較したい」という初期段階の売主には有効な選択肢ですが、スピードと確実性を重視する場合には不向きな面もあります。
2-2. 専任媒介契約:一番バランスがよい選択肢【おすすめ】
専任媒介契約では、売却を1社の不動産会社に限定して依頼します。
不動産会社には以下の義務が発生するため、売主も「いまどうなっているのか」を把握しやすくなります。
・レインズ登録義務(媒介契約締結の翌日から7日以内)
・売却活動の報告義務(2週間に1回以上)
専任媒介契約では「自己発見取引が可能」なので、売主が自分で買主を見つけたときに不動産会社を通さずに売買契約を締結することが可能です。不動産会社が責任をもって動いてくれる契約であり、かつ、自分で買主を見つけた場合にも対応できるバランスがとれた契約といえます。
そのため、「信頼できる会社に任せて早く売りたい」「でも自分でも売却先を見つける可能性がある」という方には、専任媒介契約がもっともおすすめです。
2-3. 専属専任媒介契約:自分でも動きたい人には使いにくい
専属専任媒介契約は、専任媒介契約に「自己発見取引を禁止する特約」を加えた、より制限の強い契約です。
・レインズ登録義務は、媒介契約締結の翌日から5日以内
・売却活動の報告義務は、1週間に1回以上
・自分で買主を見つけた場合でも、不動産会社を通して売買契約を結ぶ必要があり、かならず仲介手数料を支払うことになる
つまり、たとえ知人などを通じて自分で売却先を見つけた場合でも、専属専任媒介契約を結んだ不動産会社に「仲介手数料」を払わなければならないというデメリットがあります。ただし、個人間での売買契約はリスクが高いですし、実務上、売買契約を安全に進めるには不動産会社の関与が不可欠です。これはそれほど大きなデメリットとは言いづらいのが現実です。
一方で、不動産会社にとっては「自社で必ず契約できる物件」となるため、営業優先度が上がり、より積極的に動いてくれる可能性が高まります。
「自分では買主を探すつもりはない」「自分で買主を見つけても、売買契約は安心して任せたい」という方にとっては、専属専任媒介契約も有効な選択肢となります。
ただし、専属専任媒介契約を結んだ場合は、契約期間中(最長3カ月)は他の不動産会社に依頼することができないため、業者選びに失敗すると売却が長引いてしまうおそれがあります。そのため、信頼して任せられる不動産会社と出会えた場合に限って、専属専任媒介契約は有効な選択肢となるでしょう。
「囲い込み」について誤解されがちなこと インターネット上では、「専任媒介契約だと囲い込みが起こりやすい」といった説明を見かけることがあります。しかし実際のところ、囲い込みが発生するかどうかは、媒介契約の種類よりも、不動産会社のモラルや営業方針によるところが大きいのが実態です。 ■ 囲い込みとは? ■ 囲い込みは「契約形態」ではなく「会社の体質」の問題 ■売主ができる対策は? 不動産会社を選ぶときは、契約形態だけでなく、「囲い込みをせず、売主の利益を優先して動いてくれる会社かどうか」という観点で見ることが大切です。 |
3. 一般媒介と専任媒介はどちらが選ばれている?調査結果を解説
2章までで、媒介契約には「一般媒介契約」「専任媒介契約」「専属専任媒介契約」の3つがあること、そして信頼できる不動産会社にしっかり動いてもらいたい方には、専任媒介契約または専属専任媒介契約が基本的におすすめであることをお伝えしました。
では、実際にはどの媒介契約が多く選ばれているのでしょうか?
ここでは、不動産・住宅情報サイト「LIFULL HOME’S」の調査データをもとに、解説していきます。
3-1. 実際には「一般媒介契約」が一番多く選ばれている
「LIFULL HOME’S」によるインターネット調査の結果(2019年9月調査)を見ると、過去2年以内に不動産の売却をした方で、一般媒介契約・専任媒介契約・専属専任媒介契約のうち、もっとも多く選ばれたのは「一般媒介契約」でした。
【一番多く選ばれている媒介契約は何?】
媒介契約の種類 | 選んだ人の割合(%) |
一般媒介契約 | 44.8% |
専任媒介契約 | 38.9% |
専属専任媒介契約 | 9.5% |
わからない・その他 | 6.8% |
※出典:LIFULL HOME’S「専任媒介と一般媒介、早く高く売れたのはどっち?違いをアンケートで解説」
ただし、一般媒介契約が44.8%に対して、専任媒介契約も38.9%と、拮抗する割合となっています。逆に「専属専任媒介契約」を選んだ人の割合は1割以下と少ないことが分かります。
つまり、通常は「一般媒介契約」または「専任媒介契約」を選ぶことが多いようです。
3-2. 早く売れたのは「専任媒介契約」のほう
同調査の結果をさらに見ていくと、一番多く選ばれるのは「一般媒介契約」ですが、実際により早く売却できたのは専任媒介契約を選んだ人たちのほうでした。
最初に不動産会社に連絡をしてから実際に買主との売買契約が完了するまでの期間を聞いたところ、「半年未満で売れた割合」が最も高かったのは専任媒介契約(46%)で、一般媒介契約は35.3%でした。
早期売却を実現できる可能性が高いのは、専任媒介契約のほうであることが分かります。
「複数の不動産会社に同時に頼んだ方が早く売れそう」と思われがちな一般媒介契約ですが、実際の調査結果を見ると、1社のみに依頼する「専任媒介契約」のほうが早期売却につながりやすいという結果が出ています。
早く売りたいと考えている方は、信頼できる不動産会社を見つけて、専任媒介契約で任せるのが効果的といえます。
4. 早く売るには「一般媒介」より「専任媒介契約」がおすすめな理由
「複数の不動産会社に頼んだ方が、たくさんの人に紹介されて早く売れるのでは?」と考えて、一般媒介契約を選ぶ方は少なくありません。
しかし実際には、1社のみに売却を依頼する「専任媒介契約」「専属専任媒介契約」のほうが、早期売却につながるケースが多くあります。
ここでは、なぜ専任媒介契約のほうが早く売れやすいのかを、一般媒介契約との違いに注目しながらご説明します。
4-1. 自社で決めてもらえるため積極的に売却活動を進めてくれる
専任媒介契約がおすすめな理由としては、専任媒介契約のほうが、積極的に売却活動を進めてくれる可能性が高いからです。
専任媒介契約・専属専任媒介契約では、1社の不動産会社とだけ媒介契約を結ぶことになり、その会社が売却活動全体を担うことになります。
他の不動産会社と同時に媒介契約を結ぶことはできないため、不動産会社からすると、自社で売主を見つけたら仲介手数料が入ることが確定している状態です。
ほかの不動産会社に契約を取られる心配がないので、売却活動の熱意が下がらず、売却活動を本気で進めてもらいやすいのです。
一方で、一般媒介契約では複数の会社が同じ物件を扱うため、どの会社も「他社で決まるかもしれない」という前提で動くことになります。結果として、熱心に広告を作ったり営業したりする優先度が下がってしまう可能性があります。
4-2. レインズ登録義務があるため多くの不動産会社が買主を探してくれる
専任媒介契約や専属専任媒介契約を結ぶと、不動産会社には「レインズ(REINS)」というシステムへの登録義務が発生します。
前述したとおり、レインズとは、不動産会社同士が物件情報を共有する全国共通のネットワークで、一度登録すれば、全国の宅建業者がその物件情報を閲覧し、買主を紹介できる仕組みです。
このレインズへの登録により、売主が依頼しているのは1社であっても、他社の営業担当者が自分の顧客に物件を紹介してくれる(買主を探してくれる)可能性が広がります。
レインズ登録によって物件情報が全国の不動産会社に共有されるため、早期に買主が見つかる可能性が高まるというわけです。
一方で、一般媒介契約ではレインズ登録は任意(してもしなくてもよい)なので、登録されなかったときには、かえって売却チャンスを逃す可能性があります。
4-3. 売却活動の進捗がわかりやすく、改善提案も受けやすい
専任媒介契約では、不動産会社から売主に対して、2週間に1回以上の進捗報告義務があります(専属専任媒介契約なら1週間に1回以上)。
そのため、売主は、問い合わせ件数や内見の反応、競合物件の状況などを把握しながら、必要に応じた次の判断ができます。
一方、一般媒介契約ではこうした報告義務がなく、売主が連絡しない限り、進捗がまったく見えないまま時間だけが過ぎてしまうというケースもあります。
「動きがないなら価格を下げる」「写真を差し替える」といった戦略的な見直しをしながら売却を進められるのも、専任媒介契約の強みです。
5. ただし専任媒介契約にはデメリット・注意点もある
専任媒介契約(専属専任媒介契約を含む)は、1つの不動産会社に責任を持って売却活動を進めてもらえる契約であり、早期売却を目指す売主にとっては有効な選択肢となります。
しかしその一方で、任せた会社の営業力や対応が不十分だった場合、売却のチャンスを逃してしまうリスクもあります。ほかの不動産会社には仲介を依頼できないため、業者選びのミスが大きな影響を及ぼすのです。
つまり、専任媒介契約・専属専任媒介契約は「良い業者に頼めば非常に有効」「悪い業者に頼めば遠回りになる」契約ともいえる側面があります。
ここでは、専任媒介契約・専属専任媒介契約を結ぶ際に知っておきたい主な注意点を5つご紹介します。
5-1. 売却力のない業者に依頼すると売却が進まないことがある
1社に絞って責任をもって売却活動を進めてもらおうと考えていても、依頼先に売却力がない場合には、なかなかうまく進まない可能性があります。
専任媒介契約・専属専任媒介契約にはレインズへの登録義務があるため、理論上は他の不動産会社もレインズ経由で情報を見て買主を紹介してくれる可能性があります。しかし、レインズに登録されていても、情報の質が不十分だったり、他社からの問い合わせに対する対応が遅かったりすると、実際には買主が集まりにくい状況になることもあります。
契約期間中は他社に媒介を依頼できないため、営業力や提案力の乏しい会社に任せてしまうと、売却が長期化してしまうリスクがあります。
5-2. 契約期間中(一般的には3カ月)は他社に依頼できない
専任媒介契約・専属専任媒介契約は、1社だけに媒介契約を依頼するものであり、契約期間中には他社に依頼できないという制限があります。
契約期間は最大3カ月で、1カ月や2カ月など3カ月以内の範囲で決めることができますが、一般的には3カ月とするケースが多いでしょう。
専任媒介契約を期間中に解除することは可能ですが、不動産会社に落ち度がなく依頼者都合で中途解除する場合には、それまでにかかった実費を償還請求される可能性があります。
そのため、契約している会社の動きに不満があっても、契約期間が終了するまでは他社に切り替えられないという状態になりやすいデメリットがあります。
5-3. 囲い込みが起こる可能性がある
専任媒介契約や専属専任媒介契約で、モラルの低い会社に依頼してしまうと、他社からの問い合わせに対して情報提供を制限する「囲い込み」が発生する可能性があります。
たとえば、実際には内見の予定すら入っていないのに、他社からの問い合わせに対して「商談中です」と伝えて案内を断るケースがあります。囲い込みが行われてしまうと、結果として売却が長期化したり価格が下がったりして、損してしまう可能性が高まります。
※囲い込みが発生する理由としては、不動産会社が、できれば「両手仲介」で売主・買主の両方から仲介手数料を得たいと考えるからです。 他の不動産会社の買主を受け入れてしまうと、「片手仲介」となり収入が半分になるため、自社の買主でまとめたいという動機から囲い込みが行われることがあります。 |
囲い込みが行われているかどうかを判断するのは難しいですが、囲い込みされないために、レインズへの登録をしたか確認したり、他社からの問い合わせ状況を細かく確認したりして、牽制しておくことも必要に応じて行いましょう。
もっとも重要なのは、囲い込みを行わない誠実な不動産会社を選ぶことです。
5-4. 売却方針の変更や比較がしにくい
専任媒介契約・専属専任媒介契約では、1社としか契約できないため、他社の意見や提案と比較しにくくなります。
複数社に依頼できる一般媒介契約と異なり、専任契約では「その会社の提案や判断が唯一の方針」となります。他社の見積もりや販売戦略を同時に比較しにくいため、「もっと良いやり方があったのでは?」という疑問が残ることもあります。
たとえば、提案された販売価格や広告戦略に納得がいかなくても、契約期間中は他社と新たに媒介契約を結ぶことができません。
専任契約に入る前に、複数社の査定や提案を事前に比較し、「納得して任せられる会社」かどうかを見極めることが大切です。
5-5.【専属専任媒介の場合】自分で買主を見つけても売買契約が必須
専任媒介契約のなかでも、自己発見取引が禁止の「専属専任媒介契約」では、たとえ自分で買主を見つけた場合でも、媒介契約を結んでいる不動産会社を通して売買契約を締結しなければなりません。
これは「自己発見取引を禁止する特約」が含まれているためで、売主が知人・親族・SNSなどで買主を見つけても、必ず媒介会社を通して契約しなければならないというルールになっています。
そのため、自分で買主を探しても、契約書の作成や重要事項説明などの業務は不動産会社が行い、仲介手数料が発生することになります。
ただし、実務上は個人で安全に売買契約を進めるのは難しいため、不動産会社に任せたほうが安心であることが多いのも事実です。それほど大きなデメリットには当たらないことも多いでしょう。
6.【状況別】専任媒介と一般媒介どちらを選ぶべきか
ここまでご説明してきたように、専任媒介契約(または専属専任媒介契約)は、1社の不動産会社にしっかりと売却活動を任せる契約であり、スムーズで確実な売却につながる可能性が高い契約です。
とくに「信頼できる不動産会社がいる」場合は、迷うことなく専任媒介契約を選ぶのが基本です。
しかしながら、「まだ信頼できる会社が見つかっていない」「物件が特殊で売りにくい」といった状況であれば、一般媒介契約という選択肢も検討する価値があります。
ここでは、代表的な6つのケースに分けて、それぞれどちらの契約が有利に売却活動を進められるかを丁寧に解説します。
6-1. 信頼できる不動産会社がある:専任媒介契約がおすすめ
すでに信頼できる不動産会社がある場合は、専任媒介契約を選ぶのがもっとも確実です。なぜなら、専任媒介契約では1社に絞ることで、責任を持って売却活動に集中してもらえるからです。
たとえば、実績が豊富で誠実な対応をしてくれる担当者がいるなら、複数の会社に分散するよりも、1社に任せた方が提案もスピーディーで、連絡もスムーズです。
信頼できる会社と良好な関係を築けているなら、専任媒介契約がベストな選択肢となります。
6-2. 早く売りたい:専任媒介契約がおすすめ
できるだけ早く売却したいと考える方には、専任媒介契約が向いています。なぜなら、不動産会社が「必ず自社で成約できる可能性がある」と判断できるため、営業活動に本気で取り組んでくれるからです。
一般媒介契約だと「他社で決まるかもしれない」という前提があるため、それぞれの不動産会社が、広告や案内に力を入れにくくなる可能性があります。
早期売却を希望するなら、専任媒介契約で1社に集中して任せるほうが、スピード感ある対応を期待できます。
6-3. 遠方に住んでいて売却活動を任せたい:専任媒介契約がおすすめ
売却する物件から離れた場所に住んでいる方には、専任媒介契約が非常に便利です。その理由は、1社とだけやりとりすれば済むため、手間や連絡ミスを最小限に抑えられるからです。
専任媒介契約では2週間に1回以上の進捗報告が義務づけられており、現地にいなくても状況が把握しやすくなります。遠方からの売却でも安心して任せられる体制が整っているのが、専任媒介契約の大きなメリットです。
6-4. 1社に絞るのが難しい:一般媒介契約も検討(例外)
「初めての売却で、どの会社を選べばいいかわからない」「1社だけに任せるのは不安」という場合には、例外的に一般媒介契約も検討の余地があります。
理由は、複数の会社に同時に依頼することで、各社の提案内容や対応の違いを比較できるからです。
最初は数社と一般媒介契約を結び、対応を見たうえで、後から最も信頼できる会社と専任媒介契約を結ぶというステップも可能です。
まだ信頼できる1社を決めきれないという段階では、一般媒介契約で様子を見るのも現実的な判断です。
6-5. 人気エリアや需要の高い物件:一般媒介契約も検討(例外)
人気エリアや需要の高い物件を売却する場合には、例外的に一般媒介契約も検討する価値があります。なぜなら、そのような物件は買主からの反響が集まりやすく、複数の不動産会社に同時に声をかけることで、より多くのルートから買主を探すことができるからです。
たとえば、駅近のファミリーマンションやブランド価値のある住宅地の戸建てなど、もともと市場ニーズが高い物件は、不動産会社の営業力に頼らずとも、すぐに問い合わせが入る可能性があります。このような物件であれば、複数の会社に同時に依頼できる一般媒介契約を活用することで、売却のチャンスを最大化できます。
ただし、販売条件や価格設定が会社ごとにバラバラになってしまうと、買主に不信感を与えるリスクもあります。そのため、価格や情報の一貫性を意識しながら、複数の不動産会社と連携を取れるようにしておくことが重要です。
6-6. 売りづらい物件:一般媒介契約も検討(例外)
「古い物件」「立地がよくない」「買い手がつきにくい」といった売却が難しい物件の場合も、例外的に一般媒介契約を選ぶことも検討しましょう。
その理由は、複数の不動産会社に同時に声をかけることで、販路が広がり、買主と出会う可能性を少しでも増やせるからです。それぞれの会社が持つ顧客リストや広告戦略を活かすことで、特定のルートでは拾えない買主にアプローチできることがあります。
売却に苦戦しそうなケースでは、間口を広げる意味で一般媒介契約を利用するのも有効な手段です。
7. 専任媒介契約で売却を成功させるためのステップ
専任媒介契約は、信頼できる不動産会社にしっかりと売却活動を任せることができる点で、大きなメリットがあります。しかし、十分な検討もせず1社に絞ってしまうと、「思ったより動いてくれない」「全然反響がない」といった事態が起きたときに、他社へ切り替えるまで時間がかかってしまうリスクもあります。
そこでおすすめなのが、「まずは一般媒介契約で複数の不動産会社に依頼し、信頼できる1社を見極めてから専任媒介契約に切り替える」という段階的な戦略です。
この章では、売却活動を失敗なく進めるためのステップを、わかりやすくご紹介します。
7-1. ステップ1:複数社に査定依頼して相性・信頼性を見極める
専任媒介契約での売却を成功させたいなら、まずは複数の不動産会社に査定を依頼し、実際の対応を見極めることが重要です。
なぜなら、最初の対応段階で「この会社は信頼できそうか」「こちらの希望に耳を傾けてくれるか」といった相性がある程度判断できるからです。
たとえば、査定価格の根拠を丁寧に説明してくれる会社や、対応が早くて誠実なやり取りができる担当者であれば、専任媒介契約を結んだあとも安心して任せやすいでしょう。逆に、根拠もないのに高額査定結果を提示する会社は、注意が必要です。
専任媒介契約を結ぶ前にこうした比較をしておくことで、業者選びの失敗を防ぎ、スムーズな売却の第一歩を踏み出すことができます。
7-2. ステップ2:まずは一般媒介契約で複数社に依頼する
売却活動の初期段階では、まず一般媒介契約を利用して複数の不動産会社に同時に依頼することをおすすめします。
なぜならば、各社の対応力・営業力・報告姿勢などを比較しながら、自分にとって最も信頼できる会社を見極めることができるからです。
たとえば、レインズへの登録は任意であっても、自主的に登録してくれる会社や、週1回程度で活動報告をくれる会社もあります。こうした対応を通じて「この会社なら任せたい」と感じる1社に出会える可能性が高まります。
まずは2〜3社程度に絞って一般媒介契約を結び、それぞれの営業姿勢を比較することで、失敗しない不動産会社選びにつながります。
7-3. ステップ3:2〜3週間で各社の動きを観察・比較する
一般媒介契約を結んだ後は、各不動産会社がどのように売却活動を進めてくれるかをしっかり観察しましょう。
なぜなら、専任媒介契約を結ぶ会社を選ぶ際に、「実際にどのような動きをしてくれるか」という具体的な実績が判断材料になるからです。
たとえば、スーモやホームズなどのポータルサイトに物件情報が掲載されているか、反響の報告があるか、内見希望がどれくらい入っているかなどを見ることで、各社の積極性が見えてきます。
この期間を通じて、「報告が来ない」「戦略が曖昧」など気になる点があった会社は避け、もっとも信頼できる1社に絞り込んでいきましょう。
7-4. ステップ4:信頼できる1社に絞り、専任媒介契約に切り替える
不動産会社の動きを観察・比較する期間を経て、「ここなら任せたい」と思える不動産会社が見つかったら、専任媒介契約に切り替えましょう。
なぜならば、専任媒介契約を結ぶことで、より積極的に動いてくれるようになるからです。
たとえば、広告費をかけた施策や、買主候補への積極的な提案、条件交渉のサポートなど、専任ならではの深い取り組みが期待できます。
この切り替えによって、「売主・不動産会社ともに本気で取り組む体制」が整い、売却成功の確率が一気に高まります。
7-5. ステップ5:契約後も定期報告と戦略調整を続ける
専任媒介契約を結んだあとは、不動産会社との連携を保ち、状況に応じて戦略を見直していくことが大切です。
売却活動がスタートしたあとも、価格調整や広告戦略の修正などを相談しながら進めていきましょう。
専任媒介契約・専属専任媒介契約であれば進捗報告が義務づけられているため、「内見が少ない」「価格に反応がない」など報告内容によって、売却方針の見直しを不動産会社に相談してみましょう。
専任にしたからといって任せきりにせず、定期的なコミュニケーションを通じて、売却成功に向けた最適な対応をとることが大切です。
8. 売却を成功させるには「不動産会社選び」が何よりも重要
この記事では、一般媒介と専任媒介の違いや、専任媒介契約のメリット・デメリット、そして早期売却を成功させたいのであれば専任媒介契約がおすすめであることを詳しく解説してきました。
ここまでお読みいただいた方ならばわかると思いますが、結局は、どの媒介契約を選ぶかではなく「信頼性と売却力のある不動産会社に依頼できるか」が売却の成否を左右します。
なぜならば、売却活動で実際に動くのは不動産会社の営業担当者であり、魅力的な広告を作れるかや対応の丁寧さ、エリアの不動産市況の理解度などによって、スピードも売却金額も大きく変わってくるからです。
この記事でおすすめしている専任媒介契約を選んでも、囲い込みのような不適切な行為が横行する会社に依頼してしまうと、買主の紹介さえされないまま契約期間が過ぎてしまうこともあります。
そのような失敗を避けるために、以下のような観点で業者を見極めることが大切です。
信頼性と売却力のある不動産会社を見極めるポイント ・査定価格の根拠を丁寧かつ論理的に説明してくれる ・媒介契約の違いを明確に説明し、選ばせてくれる(無理に専任契約をすすめてこない) ・売主の希望条件(価格やスケジュール)を丁寧に聞いてくれる ・できるだけ希望価格に近い価格で売却できるよう努力してくれる ・魅力的な広告を作れる(写真や紹介文の質が高い) ・不動産ポータルサイト(SUUMO・ホームズなど)にしっかり掲載してくれる ・囲い込みを行わない姿勢を明示している、または透明性のある対応をしている ・販売活動の戦略を具体的に提案してくれる ・担当者が知識と経験ともに豊富で、質問にも的確に答えられる ・報告・連絡・相談がしっかりしていて、途中経過をきちんと共有してくれる |
売却は、あなたの資産にかかわる大きな決断です。どの契約を結ぶか以上に、どの不動産会社に依頼するかが、納得のいく売却結果に直結します。
もしも信頼できる不動産会社選びに迷ったら、ぜひ賃貸経営から仲介まで実績豊富なルーム・スタイルにご相談ください。
まとめ
本記事では「一般媒介と専任媒介(専属専任媒介を含む)」の違いや選び方、戦略的な活用方法について解説してきました。最後に、要点を簡単にまとめておきます。
◆一般媒介と専任媒介(専属専任媒介を含む)の違い
・同時に複数社へ依頼できるのは一般媒介契約だけ
・自己発見取引ができるのは、一般媒介契約と専任媒介契約
・レインズへの登録義務や売却活動の報告義務があるのは、専任媒介契約と専属専任媒介契約
◆一般媒介と専任媒介はどちらが選ばれている?
・実際には、一般媒介契約がもっとも多く選ばれている
・早く売れたケースでは、専任媒介契約のほうが多い
◆早く売るには「一般媒介」より「専任媒介契約」がおすすめな理由
・1社が責任を持って売却活動を進めるため、広告にも本気で取り組んでくれる
・レインズに登録されることで他社からも買主が集まりやすくなる
・定期的に進捗報告を受けられるため、状況を把握しやすく改善もしやすくなる
◆ただし専任媒介契約にはデメリット・注意点もある
・売却力のない業者に任せてしまうと進展がない可能性がある
・契約期間中(一般的に3カ月)は他社に依頼できない
・囲い込みが起こる可能性や、売却方針の変更・比較がしづらくなる点にも注意が必要
◆専任媒介契約で売却を成功させる戦略スケジュール
・まずは複数社に査定依頼を行い、相性と信頼性を見極める
・そのうえで2〜3社と一般媒介契約を結び、2〜3週間様子を見てから最も信頼できる1社と専任媒介契約に切り替えるのが有効
・契約後も報告を受けながら、戦略の改善と調整を続けていくことが成功のカギ
売却を成功させるには「不動産会社選び」が何よりも重要です。信頼性と売却力の両方を備えた会社に出会えるかどうかが、納得のいく売却への第一歩となります。
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