
「親の土地があるから、そこに建てよう」
そう考えて進め始めると、思いのほかいろんな話が絡んできます。
- 税金
- 住宅ローン
- 名義
- 将来の相続
どれかひとつでも対処を誤ると、あとになって大きなコストやトラブルに化けることがあります。
この記事では、親の土地への建築を考えている方が「何を確認すればいいか」を整理しました。制度の話もありますが、できるだけ実態に即した話をしていきます。
土地の名義や権利関係は、建てた後より“建てる前”の方が整理しやすいものです。少しでも不安がある方は、早い段階でぜひ一度弊社までご相談ください。
| この記事で分かること |
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目次
- 親の土地に建てる一番のメリット
- 知っておきたいデメリット4つ
- 住宅ローンのために親の土地に抵当権が設定される
- ローンを完済するまで名義を変えられない
- 相続時に兄弟間で揉めやすい
- 親から干渉を受けやすくなる
- 税金はケース次第で全然違う|4パターン早見表
- 無償で借りる場合
- 有償で借りる場合
- 生前贈与で譲り受ける場合
- 相続で取得する場合
- 住宅ローンで失敗しないための3点
- 抵当権の設定には親の協力が不可欠
- 親が連帯保証人を求められることがある
- 返済中の名義変更は要注意
- 建てる前に確認しておきたい3つの実務
- 「分筆」が必要かどうか
- 建築基準法・用途地域の確認
- インフラの引き込み状況
- 親が元気なうちにやっておきたい相続対策
- 親の土地に家を建てる時のよくある失敗事例
- 離婚したのに住宅ローンだけが残った
- 親が認知症になって、すべてが止まった
- 無償・有償・贈与…どのパターンが自分に合うか
- まとめ
親の土地に建てる一番のメリット

親の土地に家を建てる最も大きなメリットは、土地代がかからないこと。
エリアによっては、土地代が総費用の半分以上を占めることもあります。その分をまるごと建物に使えるなら、断熱性能を上げる、キッチンにこだわる、外構をおしゃれにするといった選択肢が広がります。
住宅ローンの面でも有利です。借りる金額が建物分だけで済むので、月々の返済が軽くなります。
また、金融機関からすれば「土地という担保がある」状況です。これにより審査で好意的に見られやすくなり、頭金が少なくてもローンが通るケースも実際にあります。
それ以外にも、親が近くにいることで子育てや介護の面で助け合えるという、数字にならないメリットもあります。
- 急な残業のときに子どもを見てもらえる
- 親が高齢になっても様子を見に行きやすい
生活の安心感という意味では、これが一番大きいと感じる方も多いです。
知っておきたいデメリット4つ

メリットばかりに目がいきがちですが、親の土地だからこそ起きやすいトラブルもあります。これは事前に知っておくだけで、ほとんどは回避できます。
住宅ローンのために親の土地に抵当権が設定される
親名義の土地に家を建てて住宅ローンを借りる場合、金融機関から土地にも抵当権の設定を求められるのが一般的です。
そのため、土地所有者である親の同意や署名・押印が必要になります。
もしも親が認知症などで判断能力を失っている場合や、担保提供に同意しない場合は、ローン審査や融資実行が進まない可能性があります。
「建てる直前に話せばいい」と考えず、計画の早い段階で親の意思を確認しておくことが大切です。
ローンを完済するまで名義を変えられない
返済中の土地は抵当権が設定されているため、原則として、完済するまで名義変更できません。
返済途中で親が亡くなった場合、相続手続きと銀行対応が重なって話が複雑になります。
- 兄弟間で「土地を誰が相続するか」で意見が割れる
- 銀行から追加書類や相続関係説明図の提出を求められる
- 相続登記が終わるまで手続きが進みにくい
- 建て替えや売却をしたくても、相続人全員の協力が必要になる
たとえば、上記のように家族間と銀行対応の両方で負担が増えるケースがあります。
「そのときになったら考えよう」と先送りしていると、動けるタイミングを逃します。
相続時に兄弟間で揉めやすい
親の土地に自分だけ家を建てているという状況は、兄弟姉妹の目にはどう映るでしょうか。住んでいる本人に悪気はなくても、兄弟姉妹から見ると、「実家の土地を実質的にひとりで使っている」と映ることがあります。
さらに厄介なのが、長年その状態が続くことで、“既成事実化”してしまう点でしょう。親としては、「空いている土地だから使わせているだけ」という感覚かもしれません。
しかし、ほかの兄弟側が、
- 「どうせその土地を相続する前提なんでしょ」
- 「親も今さら反対できない空気になっている」
- 「自分たちは実家を自由に使えないのに不公平」
と感じているケースも。
実際には、親が亡くなって相続の話が具体化した瞬間に、長年積み重なっていた不満が一気に表面化することもあります。
「土地は親のものだから大丈夫」と考えていた結果、相続時に家族関係がぎくしゃくしてしまうかもしれません。
親から干渉を受けやすくなる
「土地を使わせてあげている」という意識は、親の側に自然と生まれます。
最初は些細なことでも、
- 「親の部屋も作ってほしい」
- 「将来同居できる間取りにしてほしい」
- 「駐車場は実家と共有にしてほしい」
- 「二世帯住宅にした方がいい」
- 「子どもの面倒を見るから鍵を預かりたい」
など、家づくりや暮らし方に対して意見が増えていくことがあります。もちろん、親に悪気があるわけではありません。
ただ、土地代がかかっていない負い目もあり、「それは嫌」と強く言いにくくなる人は多いようです。
また、家が近すぎることで、
- 突然訪問される
- 子育てへの口出しが増える
- 夫婦間のことまで意見される
といった距離感のストレスにつながるケースもあります。“親との距離感”まで含めて考えておかないと、後悔につながることもあるでしょう。
税金はケース次第で全然違う|4パターン早見表

「親の土地に建てると贈与税がかかるの?」という質問をよく受けますが、答えは「どういう形で使うか」で変わります。
パターン | 贈与税 | 相続税への影響 | 事前確認ポイント |
無償で借りる(使用貸借) | なし | 自用地評価で高くなる | 手続きはシンプル、相続時に注意 |
有償で借りる(地代あり) | なし | 借地権分が差し引かれる | 地代が安すぎると贈与とみなされる |
生前贈与で譲り受ける | あり | 相続時精算課税との兼ね合いあり | 小規模宅地特例と両立できない |
相続で取得する | なし | 小規模宅地特例で最大80%減 | 同居が要件のひとつ |
【参考:使用貸借に係る土地についての相続税及び贈与税の取扱いについて|国税庁】
無償で借りる場合
親の土地を無償で借りて家を建てることを「使用貸借」といいます。
親子間ではかなり多い方法で、「土地代がかからないなら助かる」と選ばれやすいパターンです。実際、契約もシンプルで、この時点では贈与税もかかりません。
ただし、この方法では土地の名義は親のままです。つまり、将来的にはその土地を相続する前提で住み続ける形になります。
ここで注意したいのが、相続時の土地評価です。使用貸借の土地は、「自用地評価」——つまり、誰にも貸していない土地として評価されます。借地権が設定された土地のように評価額が下がらないため、「思ったより相続税が高い…」と驚くケースがあるようです。
一方で、要件を満たせば「小規模宅地等の特例」で大きく評価額を下げられる可能性もあります。相続対策まで見据えるなら、この制度は必ず事前に確認しておきたいポイントです。
多くの場合は、そのまま親が亡くなった後に土地を相続する流れになります。
有償で借りる場合
親に地代を払いながら土地を借りる方法です。無償ではないため、「きちんと線引きできて安心」と感じる人もいますが、その分、権利関係は少し複雑になります。
このケースでは「借地権」が発生し、将来の売却や相続時に話がややこしくなることがあります。また、親側には地代収入が入るため、所得税の対象になります。
そして、意外と見落とされやすいのが「地代の金額設定」です。たとえば、形式上だけ毎月数千円を払っていても、相場とかけ離れている場合は、「実質的には贈与では?」と判断される可能性があります。
そうなると、差額部分に贈与税がかかる場合があります。「家族間だから適当でも大丈夫だろう」は危険です。
生前贈与で譲り受ける場合
親が元気なうちに土地を譲り受け、自分名義にしてしまう方法です。先に名義を移しておける安心感はありますが、その一方で避けて通れないのが贈与税です。
とはいえ、負担を軽くする制度も用意されています。「暦年課税」は、年間110万円までの贈与なら非課税になる制度です。ただ、土地のような高額資産を少しずつ移すには、かなり長い年月がかかります。
そこで利用されることが多いのが、「相続時精算課税制度」です。60歳以上の親から18歳以上の子への贈与であれば、累計2,500万円まで贈与税を抑えられます。
ただし、この制度には大きな注意点があります。後述する「小規模宅地等の特例」が、原則使えなくなるのです。
「今の贈与税を抑えるか」
「将来の相続税を抑えるか」
どちらが有利かは家庭によってまったく違います。ここは自己判断せず、税理士へ試算を依頼したほうが安心でしょう。
相続で取得する場合
親が亡くなったタイミングで土地を相続する方法です。
【相続で取得した場合の2パターン】
- 親が生きている間は土地を借りず、相続後に自分名義になってから家を建てる
- 生前は親の土地を無償で借りて住み、将来的にそのまま相続する
生前贈与とは異なり、相続で取得する場合には贈与税はかかりません。さらに大きいのが、「小規模宅地等の特例」が使える可能性がある点です。
一定の要件を満たせば、土地評価額を最大80%減額できるため、4つの方法のなかでも相続税を大きく抑えられるケースがあります。
特に多いのが、親の土地を無償で借りて家を建て、そのまま住み続けているケースです。
ただし、前述のとおり生前贈与で「相続時精算課税制度」を利用して土地を先にもらっている場合は、この特例が使えません。
「とりあえず先にもらっておこう」が、結果的に損につながるケースもあるため、制度同士の相性は必ず確認しておきたいところです。
土地の名義や権利関係は、建てた後より“建てる前”の方が整理しやすいものです。少しでも不安がある方は、早い段階でぜひ一度弊社までご相談ください。
住宅ローンで失敗しないための3点

親の土地に家を建てる場合、住宅ローンも通常のマイホーム購入とは少し事情が変わります。
ここでは、ローン審査や名義の問題でつまずくポイントについて解説します。
抵当権の設定には親の協力が不可欠
デメリットのところでも触れましたが、住宅ローンを借りると親の土地に抵当権が設定されます。親の同意と署名は不可欠です。
また、土地の状況によっては、そもそも住宅ローン審査が難しくなるケースもあります。
たとえば、親が事業資金の借入でその土地をすでに担保に入れている場合、金融機関が「第二順位の抵当権」になることを嫌がり、融資に消極的になることがあります。
ほかにも、
- 親名義のまま複数人で共有されている
- すでに別の抵当権が付いている
- 親族間で名義関係が複雑になっている
といったケースでは、通常より審査が慎重になる傾向があります。
親が連帯保証人を求められることがある
親の土地に家を建てる場合、金融機関によっては親を連帯保証人として求められることがあります。
「土地は親名義・建物は子ども名義」というケースでは、金融機関もかなり慎重です。
これは、金融機関が「万が一返済できなくなったとき、本当に担保処分できるのか」をチェックするためです。
実際には、
- 親が高齢
- 年金収入のみ
- すでに別の保証人になっている
- 意思確認に不安がある
といった理由で、思ったより審査が長引くこともあります。
「土地を貸してもらえるから大丈夫」と先に話を進めるのではなく、親の関与がどこまで必要なのか、早めに金融機関へ確認しておくと安心でしょう。
返済中の名義変更は要注意
住宅ローン返済中に、土地の名義変更(贈与・売買・相続など)を予定している場合は注意が必要です。
ローンが残っている土地には金融機関の抵当権が付いているため、親子間だからといって自由に名義変更できるわけではありません。
実際によくあるのが、親の介護や施設入居でお金が必要になり、「土地を売りたい」という話になるケースです。
ただ、そこに子どもの家が建っていて住宅ローンも残っていると、話は一気に複雑になります。
親は「売って老後資金にしたい」、子どもは「今さら困る」。最初は「とりあえず土地を貸してもらうだけ」のつもりでも、何十年も経つと状況は変わります。悪気があるわけじゃないのに、そこで家族関係がぎくしゃくしてしまうこともあります。
土地の名義や権利関係は、建てた後より“建てる前”の方が整理しやすいものです。少しでも不安がある方は、早い段階でぜひ一度弊社までご相談ください。
建てる前に確認しておきたい3つの実務

親の土地に家を建てる計画は、つい「家をどう建てるか」に意識が向きがちです。
ただ実際は、その前段階の実務確認でつまずくケースがかなり多くあります。
「分筆」が必要かどうか
親の土地の一部だけを使う場合、「分筆(土地を正式に分ける登記手続き)」が必要になることがあります。
分筆なしで進めると、担保設定や将来の売却で支障が出ます。
たとえば親と子が同じ敷地内に別々に住む形だと、「どこまでが誰の土地なのか」が曖昧なままになり、あとから相続や売却で揉めるケースも多いです。
家を建てる話が具体的になった段階で、一度整理しておけると安心でしょう。
建築基準法・用途地域の確認
「親の土地だから普通に建てられると思っていた」実は、ここで止まるケースは意外とあります。
たとえば、接道義務を満たしておらず建築不可だったり、再建築はできても希望していた大きさの家が建てられなかったりするケースです。
特に住宅地では、用途地域や建築制限の影響を受けやすく、
- 第一種低層住居専用地域で高さ制限が厳しい
- 北側斜線制限で2階部分の設計が変わる
- 建ぺい率・容積率の関係で想像より小さい家になる
といったことも珍しくありません。
実際、「図面まで進んだのに、あとから希望の間取りが入らないと分かった」というケースもあります。
建築条件は土地ごとにまったく異なります。市区町村窓口やハウスメーカーへ、早めに確認するようにしましょう。
インフラの引き込み状況
親の家に隣接して建てる場合でも、電気・水道・ガスの引き込みが別途必要になることがあります。
引き込み工事は数十万円かかることもあり、状況によっては道路掘削が必要になって想定以上の費用になることもあります。
実際には、建物本体の見積もりには入っておらず、あとから追加費用として出てきて慌てるケースもあるため注意が必要です。
親が元気なうちにやっておきたい相続対策

親の土地に家を建てる時のよくある失敗事例

家を建てる時はうまくいっていても、数年後に思わぬ問題が表面化することがあります。
離婚したのに住宅ローンだけが残った
実はよく揉めるのが、「土地は妻の親名義・建物は夫名義で住宅ローン」というケースです。
結婚当初は、「土地代がかからないなら助かるよね」と前向きにスタートすることがほとんどでしょう。
しかし、離婚話が出た瞬間に、一気に難しくなります。
建物のローンを払っているのは夫。でも土地は義両親のものです。
そのため、「家を売って整理しよう」と思っても、土地所有者である義両親の同意なしでは簡単に進められません。
離婚時には夫婦関係だけでなく、義実家との関係も悪化しているケースも少なくありません。
実際には、「住宅ローンを払っているのに住めない」「出て行ったのにローンだけ残る」といった状態になることがあります。
家を建てる時はうまくいっていても、将来ずっと同じ関係が続くとは限りません。
親の土地に建てる場合は、「もしもの時にどうなるか」まで一度考えておきたいところです。
親が認知症になって、すべてが止まった
「名義のことは、もう少し先でいいよね」
そう話しているうちに、親が認知症を発症してしまうケースは実際によくあります。すると、それまで普通に進んでいた話が、一気に動かなくなります。
たとえば、建て替えのために土地を担保に入れようとしても、親本人の意思確認ができなければ手続きが進められません。名義変更や売却も同じです。
家族としては「親も了承していた」と思っていても、法律上は本人の判断能力が必要になるためです。
実際には、「あと半年早ければ進められたのに」というケースもあります。
「まだ元気だから大丈夫」は、本当によく聞く言葉です。ただ、親の土地に家を建てる場合、この問題だけは突然やってくることを覚えておきましょう。
無償・有償・贈与…どのパターンが自分に合うか
パターン | 向いているケース |
無償で借りる(使用貸借) | 長期間住む前提・手続きをシンプルにしたい |
有償で借りる | 複雑なわりにメリットが薄く、選ばれるケースは少ない |
相続時精算課税を使った生前贈与 | 土地を自分名義にしたい・将来売却の可能性がある |
相続まで待つ | 同居できる・小規模宅地特例を活かしたい |
長く住み続ける前提で手続きをシンプルにしたいなら、使用貸借(無償借用)が選ばれやすいです。
土地を自分の資産にしたい、将来売る可能性があるなら、相続時精算課税を使った生前贈与に検討の余地があります。
ただし小規模宅地特例との兼ね合いがあるため、どちらかを選ぶ前に専門家への相談を挟んでください。
兄弟がいる場合は、どのパターンを選ぶにしても「遺言書」と「家族への事前説明」をセットにしておくことが、後のトラブルを防ぐ一番の現実解です。
まとめ
親の土地に家を建てることは、準備次第で住宅コストを大きく抑えられる選択肢です。
ただし「親の土地だから安心」と思ったまま進めると、税金・ローン・相続のどこかで想定外の問題が出てきます。
「親が元気なうちにしか動けないこと」が多いのが、この話の難しいところです。
遺言書の準備、家族信託の検討、兄弟への説明どれも「後でもできる」と感じますが、親の状況が変わってからでは手が打てなくなる場面が実際にあります。
また、義両親の土地に建てる場合は、夫婦だけでなく義実家との関係性や相続も絡んできます。
家を建てる時は関係性が良好でも、将来的に離婚や売却の問題で揉めるかもしれません。




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