不動産投資で家賃収入を得ているオーナーの中には、賃貸の直接契約ができるかどうか知りたいと考えている人もいるのではないでしょうか。一口に直接契約と言っても、物件の管理形態による違いもあります。また、形態によってはオーナー自身が行わなくてはいけない業務も出てきます。
そこで本記事では、オーナーが覚えておきたい「直接賃貸契約」について詳しく解説していきましょう。直接契約によるメリット・デメリットや注意点まで、幅広く紹介します。
本記事を読んでわかること |
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目次
- 賃貸オーナーは入居者と直接契約できる?
- 賃貸オーナーと入居者は仲介会社無しで直接契約が可能
- 直接契約が可能かどうかは管理形態による
- 直接賃貸契約をする際にオーナーが行う業務は何がある?
- ①入居者募集
- ②物件案内
- ③入居審査
- ④賃貸借契約締結
- ⑤入居準備
- ⑥物件管理
- ⑦家賃集金
- ⑧退去手続き
- ⑨原状回復工事
- オーナーが直接賃貸契約をするメリット
- ①ランニングコスト(管理委託料)を抑えられる
- ②修繕業者の比較ができる
- ③賃貸契約時に仲介手数料がかからない
- ④建物管理のスキルアップができる
- ⑤入居者と直接交渉などコミュニケーションがとれる
- オーナーが直接賃貸契約をするデメリット
- ①賃貸管理に時間・手間がかかる
- ②法律や建築など専門的な知識が必要
- ③リスク・トラブル発生時に相談できる人がいない
- オーナーが直接賃貸契約をする際の注意ポイント
- ①対応が困難な場合は管理委託を検討する
- ②契約内容を書面で細かく残す
- ③家賃保証会社を導入する
- ④問題発生時の相談先を探しておく
- まとめ
賃貸オーナーは入居者と直接契約できる?
賃貸契約には様々な方法がありますが、一般的には、不動産会社を介して契約を締結します。しかし、中にはオーナーと借主が「賃貸の直接契約」を行うこともあります。
不動産投資をして家賃収入を得るうえで、覚えておきたい賃貸の直接契約について見ていきましょう。
賃貸オーナーと入居者は仲介会社無しで直接契約が可能
賃貸のオーナー(貸主)と、入居人(借主)は、不動産会社を通さずに直接賃貸契約を結ぶことは可能です。一般的に借主が賃貸物件を探すときは、不動産ポータルサイトを閲覧し、気になる物件を見学したうえで契約締結という流れになります。
物件を管理している不動産会社を通すものだと思われがちなのですが、契約そのものはオーナーと入居者が賃貸の直接契約をすることが可能です。物件の管理を不動産会社へ委託している場合でも、貸主は直接契約を選択できるケースがあります。
直接契約が可能かどうかは管理形態による
賃貸の直接契約ができるかどうかは、物件における管理形態の違いが大きく関係します。
例えば、所有物件の管理を全て不動産会社に任せているものを「全部委託」と言います。部分的に管理を任せていることを「一部委託」、オーナーが自身で管理するものを「自主管理」と言い、主な管理形態はこの3種類です。
本章では3種類それぞれ、どのような違いがあるのか説明します。
①全部委託
全部委託は、ほぼすべての業務を管理会社に委託する方法です。オーナーにとって最も負担の少ない不動産投資の方法としても知られています。本業を持ちながら不動産投資をする人は、仕事や子育てで忙しいため、全部委託を選択するケースが多いです。
入退去手続きやクレーム対応、設備の維持管理業務などのすべての業務を担当してくれます。管理委託手数料は、家賃収入の5%程度が相場です。分譲マンションでは多く見られる管理方法としても知られています。
②一部委託
一部委託は、数ある管理業務の中で一部のみを委託することを言います。管理会社の業務外の管理は、自ら行う必要があります。委託する範囲は業者によっても変わってきますが、その分委託費用を安く抑えることが可能です。
管理業務の負担をどのように解消するのかによっても変わりますが、不動産会社へ物件管理を一任しないからこその安心感もあります。コストダウンにも繋がるため、建築関係に知識を持っている人や、ある程度時間に余裕のある人にはおすすめです。
一部委託は、不動産投資の中では少数派です。
③自主管理
自主管理とは、オーナー自ら管理している物件のことを言います。家賃や共益費の徴収、滞納の督促、入居募集から契約手続き、退去精算、清掃管理、設備点検など業務内容は多岐に渡ります。
清掃業務なども業者とのやりとりが必要になるため、管理面で時間を作れるオーナー向きです。これらの業務を自分たちで行う場合は、管理会社を通す必要はありません。コストを抑えたいオーナーにとって、自主管理は利点が多いでしょう。
直接賃貸契約をする際にオーナーが行う業務は何がある?
直接賃貸契約をする際に、オーナーが行わなくてはいけない業務は大きく分けて9つあります。
賃貸経営を行う際、運用は管理会社を通すものだと思っているオーナーの中には、何をしたらいいのかイメージ出来ていない人もいるかもしれません。直接賃貸契約をする際にどんな業務があるのか、詳しく見ていきましょう。
①入居者募集
直接賃貸契約をする場合、オーナー自身が入居者を募集しなくてはいけません。やり方はいくつかありますが、絶対に欠かせない方法としてインターネットがあります。
個人オーナーが利用できるサイトやアプリ、SNSを使って入居者を募集します。また、入居者経由で新しい人を紹介してもらう方法もあります。
初めてで不安な事も多く相談できる人が欲しいときは、仲介会社に委託して探してもらう方法もあります。街の賃貸ショップへ出向き、物件を紹介してもらえるように資料を持ってアピールしに行きましょう。この場合は成約時に仲介会社への報酬(広告料)も必要です。
②物件案内
入居希望者に、希望条件を満たしているのか判断してもらうため物件案内を行う必要があります。入居した場合の生活イメージを確認するためにも重要な業務となります。
例えば、当日の内見の対応はもちろん、物件を清掃しておき、良いイメージを持ってもらえるようにします。照明器具やカーテンをつける、空気を入れ替えて換気扇を回しておく、排水溝に蓋をして悪臭を防ぐなどやらなくてはいけないことがたくさんあります。
築年数に限らず、明るく清潔な空間を印象付けられるようにしておきましょう。物件案内は急に必要になることもあるので、定期的にメンテナンスをしておき、いつでも案内できるようにしておいて下さい。
③入居審査
物件の申込が入ったら、次は入居者の審査です。入居者と契約者の名義が異なる場合は、双方の審査が必要になります。
申込書と身分証明書は必ず提出してもらうようにして下さい。申込書には氏名、住所、年齢、性別、電話番号、年収、勤務先名称・住所・電話番号、転居理由などを記入してもらいます。
申込書が届いたら、インターネット上で勤続先の名称・住所を検索し、信頼性などを確認してください。氏名で検索をかけ、過去に事件などへの関与がないかも見ると良いでしょう。
家主との直接賃貸契約でも、家賃保証会社を入れることを推奨します。入居後の滞納手続きはもちろんですが、入居時に保証会社側で独自システムを介した審査を行ってくれるため、オーナー一人での審査よりも安心できそうです。
④賃貸借契約締結
賃貸借契約締結は、物件の貸し借りをするときにオーナーと入居者の間で契約するものです。当事者である片方が物件の使用を相手に許可し、対価として相手方が定められた賃料を支払う約束をすることで効力を発揮します。
記載すべき事項は決められており、建物の名称や所在地、部屋番号、契約期間、賃料、設備や付属設備などの細かな記載も欠かせません。
また、連帯保証人や家賃保証会社なども、トラブルにならないように明記しておくことが必要です。法律に関わる内容になりますので、賃貸借契約書のフォーマットは弁護士などに作成してもらう方が安心でしょう。
ただし、契約ごとに特別な取り決めがある場合、特約として挿入する必要があります。貸主と借主の直接契約では、この点において専門的な知識が求められます。
直接賃貸契約の場合、賃貸借契約では重要事項説明書の取り交わしは不要です。宅建業法で定められた交付義務がないので、オーナーが宅建士でなくても問題ありません。
⑤入居準備
入居審査を経て契約者が決まると、入居準備が必要になります。直近まで入居者がいた場合は、すべての荷物を撤去し、原状回復を行う必要が出てきます。
また、最後の手続きとして不備なく必要書類をそろえる事、敷金・礼金など初期費用を含む契約金の受領が必要です。すべてが完了したあとに鍵の受け渡しを行い、入居の流れとなります。直接賃貸契約の場合は、これらの作業をすべてオーナーが行わなくてはなりません。
⑥物件管理
不動産投資で物件のオーナーになると、入居者からの相談やクレームが入ることもあります。
集合住宅で多いのは、騒音やごみ出し、ペット飼育に関するトラブルなど入居者に対して注意喚起しなくてはいけないことです。設備の不具合に関する相談も多く、修繕するための業者の手配もオーナーの仕事となります。
どのタイミングで起きるかも分からないため、急な対応を求められることも少なくありません。入居者が快適に生活できるかどうかを考え、日々の管理・対応が必要です。
また、建物全体のメンテナンスや共用部の清掃などの維持管理も業務の範囲となります。
⑦家賃集金
不動産投資のオーナーは、家賃集金(督促)も自分で行うべき業務です。毎月決まった時期に請求し、入居者から家賃が入金されているかどうかを確認して管理する必要があります。
中には入金を忘れてそのままになっている人もいれば、所持金がなく入金できない人もいるかもしれません。保証会社を入れていない場合は、入居者に対して自身で督促を行わなくてはいけなくなります。
⑧退去手続き
オーナー業務は、退去時の手続きも対象です。入居者が退去するときは、家賃や敷金などの精算や、原状回復が必要です。トラブルを減らすためには退去立ち合いをした方が良いですが、立ち合いはある程度の知識を持っていないとできません。
居室全体を調べたうえで、傷や汚れはないか設備面に破損がないかどうかを確認し、必要であれば修繕を行います。
入居者が退去したあとは、業者に依頼して室内のクリーニングやリフォームを行い、次の入居者が問題なく住めるように準備しておきます。次に入居者が決まっている場合は、予定日までに手続きが必要になるため手順良く進めておくようにしましょう。
⑨原状回復工事
前述の通り、原状回復工事もオーナーの業務となります。ハウスクリーニングの手配や立ち合い確認や修繕の範囲が広いときは内装業者探しを行うことも必要になります。
業者によっても費用が変わってきますし、繁忙期は希望通りのスケジュールでできない可能性もあります。原状回復工事にかかる費用を差し引き、敷金を返金する対応も必要です。
オーナーが直接賃貸契約をするメリット
本章では、オーナーが直接賃貸契約を行うメリットを紹介します。
①ランニングコスト(管理委託料)を抑えられる
一番のメリットといえば、ランニングコスト(管理委託料)を抑えられることです。全部委託になると、自分で行う作業が大幅に減りますがその分、高額なランニングコストがかかります。
任せる範囲が多ければ多いほど支払う料金が高くなるのが一般的です。そのため、直接賃貸契約を行うことで少しでも管理費用を抑えて不動産投資ができるようになります。
②修繕業者の比較ができる
オーナーが自分で直接賃貸契約を行うことで、原状回復工事における修繕業者を比較したうえで決めることもできます。
管理会社に任せた状態だと、それぞれ契約している会社があるので、修繕業者を選ぶことはできません。また、実際の工事費用に管理会社が2割程度の利益を乗せてオーナーに請求するケースも多いです。
少しでも条件の良い修繕業者を比較したうえで選べるようになるのもメリットでしょう。
③賃貸契約時に仲介手数料がかからない
オーナーが直接入居者を見つけた場合、賃貸契約を行うときにも仲介手数料がかからないメリットもあります。仲介手数料は不動産屋にとっての利益となる部分です。宅建業法にて1回の取引における仲介手数料の上限を家賃の1.1か月分としています。
直接賃貸契約を行うことで、この仲介手数料を払わずに契約が出来るのはありがたいポイントです。少しでも初期費用を抑えたい、仲介手数料を払いたくない入居者にとってもアピールできるでしょう。
ちなみに、仲介手数料とは別で徴収される広告料もかかりません。
④建物管理のスキルアップができる
管理会社に任せっきりにするよりも、自身が物件管理に関わる事でオーナー業のスキルアップにも繋がります。物件管理を始めたばかりの時は、手探り状態で大変さを感じることもあるかもしれません。
とはいえ、管理委託料を抑えられる点を考えても、長期的に見て大きなアドバンテージとなります。
⑤入居者と直接交渉などコミュニケーションがとれる
不動産会社に管理を委託している場合、オーナーと入居者が関わる機会は思っている以上にありません。
その点、オーナーが直接賃貸契約を行う場合は、入居者とのコミュニケーションがとれるようになります。相談も直接受けられるようになるので、何か困ったことがあればすぐに解決できます。入居者にとっても安心材料となりますし、良心さや管理の丁寧さを見せることで、長く住んでもらえる可能性も高まります。
オーナーが直接賃貸契約をするデメリット
オーナーが直接賃貸契約を行うメリット以外にもデメリットもあります。
具体的にどのようなデメリットがあるのか見ていきましょう。
①賃貸管理に時間・手間がかかる
直接賃貸契約を行いオーナー自身が管理する場合、業務に時間や手間がかかります。賃貸経営において必要になる業務は多く、オーナーがすべて担うのは大きな負担となります。心身ともに辛いと感じるようになってしまうことも。
例えば、毎月の家賃が支払われないケースもあるかもしれません。家賃の対応が確認されたときに督促もオーナーが行うことになります。大きなストレスとなってしまい、心理的な負担が大きいと感じることもあります。
②法律や建築など専門的な知識が必要
賃貸管理には建築や法律などの専門的な知識が必要になることもあります。今まで何かしらの経験があるなら別ですが、全くない状態では一から学ぶ必要も出てきます。
また、重要事項説明書を取り交わす必要こそないものの、資格を持っていないとできない業務もあります。不動産投資でオーナーとして直接賃貸契約を行う場合は、ある程度知識をつけ、何かあったときに相談できる場所を用意しておきましょう。
③リスク・トラブル発生時に相談できる人がいない
直接賃貸契約の場合、オーナーがリスクやトラブルにも対応しなくてはいけなくなります。入居者同士の騒音トラブルはもちろん、水道・電気・ガスなどのライフラインに関わることがクレームになってしまうこともあります。
こうしたトラブルが起きたときに他に相談できる人もおらず、自分で対応しなくてはいけません。相談するとなると有料でお金がかかってしまうこともあり、トラブルが多発している状態だと辛さを感じることもあります。
オーナーが直接賃貸契約をする際の注意ポイント
オーナーが直接賃貸契約を行うときに注意するべきポイントを紹介します。
①対応が困難な場合は管理委託を検討する
オーナーが物件のすべてを管理するのが難しいケースもあります。入居者とのトラブルが続いているケースや、滞納してしまい強制退去が必要となり裁判沙汰になってしまうこともあるかもしれません。
自分たちで手に負えない事態が発生する前に、管理委託の検討をしてみるのも1つの手です。無理に対応しようとしてトラブルを大きくしてしまうことも考えられます。時にはお金をかけて人に頼ることも前向きに考えてみましょう。
②契約内容を書面で細かく残す
直接賃貸契約では、契約内容を書面にて細かく残すのをおすすめします。口頭だけだと、言った・言わないになってしまうこともあります。書面を交わすときは、必ず抜けなく細かく残しておくことでトラブルを防ぐことにもなります。
また、事前に書面での説明を丁寧に行うことで、入居してからのトラブルを減らすことにもなるでしょう。
③家賃保証会社を導入する
賃貸経営をするうえで家賃滞納リスクは、とても大きな問題です。そのようなリスクに備えて、家賃保証会社を利用する方法があります。
一昔前は、入居者に対して連帯保証人を立てる必要がありましたが、今は家賃保証会社を利用する物件がほとんどです。入居者による家賃の支払いが滞ってしまっても保証会社が立て替えてくれるので、大家が安定した収入を得る方法です。
また、保証会社によっては入居者の滞納が続いて裁判に発展した際、オーナーの代わりにこれらの処理を行ってくれるため、導入しておくのをおすすめします。
④問題発生時の相談先を探しておく
何か問題が起きてしまった時のように、相談先を決めておくことも大切です。賃貸契約では、予想外のトラブルも多くいつ起こるかもわかりません。
入居者同士の騒音トラブルも話し合いですぐに解消できることもあれば、状況が改善しないこともあります。オーナーは相談相手がいないことも多いので、問題発生時に誰を頼るのか決めておくと安心です。
- 弁護士
- 税理士
- 消費者センター
- 不動産会社 など
まとめ
本記事では、オーナーが自主管理で直接賃貸経営を行う際の業務内容やメリット・デメリットなどを総合的に解説しました。
直接賃貸契約をオーナーが行う場合、自分で物件管理をできるかどうかしっかりと検討するようにしましょう。不動産会社を通さないことで、自分で経営を学ぶ機会にもなり成長に繋がる部分もあります。
それでもリスクやトラブルはつきものだからこそ、もしものときに頼れる場所があると安心して不動産投資ができるでしょう。本業との兼ね合いもあるため、自分にあったやり方を探してみてください。
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