
「初めてのマンション売却、何をすればいいのかわからない」
「段取りがよくわからなくて、不安がある」
そのような方へ、この記事ではマンション売却の流れを8つのステップに分けて解説します。
マンション売却は、多くの方にとって初めての体験です。知識不足ゆえに、振り返れば後悔の残る結果となるケースも少なくありません。
その原因は、ひとえに「最初に全体像が見えていないこと」にあります。全体の流れが最初に見えていれば、多くの失敗は回避できるのです。
【この記事を読むと得られるメリット】
- マンション売却の全体的な流れがわかる
- 各段階でやるべきことや注意点が把握できる
- 売却にかかる費用や税金の流れも理解できる
マンション売却という人生の大きなイベントが、後悔のないものになるように、本記事をご活用ください。
目次
- 1. 最初に知っておきたい「マンション売却の流れ」全体像
- 1-1. ステップ1:相場を調べて不動産会社に相談する
- 1-2. ステップ2:不動産会社を選び媒介契約を結ぶ
- 1-3. ステップ3:売り出し価格を決めて販売を開始する
- 1-4. ステップ4:購入希望者の内覧に対応する
- 1-5. ステップ5:購入申し込みを受けて条件を交渉する
- 1-6. ステップ6:売買契約を結ぶ
- 1-7. ステップ7:住宅ローンを完済し物件を引き渡す
- 1-8. ステップ8:利益が出たら確定申告をする
- 2. 【準備編】売却活動を始める前にやるべきこと3つ
- 2-1. まずは自分の家の価値を無料で査定してもらう
- 2-2. 住宅ローンがいくら残っているか正確に把握する
- 2-3. 部屋を整理し必要に応じて修繕・クリーニングする
- 3. 【不動産会社選び編】成功を左右するパートナーの見つけ方
- 3-1. 複数の会社に査定を依頼し担当者を見極める
- 3-2. 媒介契約3種類の特徴を理解して最適なものを選ぶ
- 3-3. 囲い込みをしない信頼できる会社か確認する
- 4. 【売却活動編】マンションを高く早く売るための3つのコツ
- 4-1. 内覧の第一印象を良くする
- 4-2. 内覧希望にはできる限り柔軟に対応する
- 4-3. 購入希望者からの価格交渉に冷静に対応する
- 5. 【住み替え編】マンション売却と購入の最適なタイミング
- 5-1. 「売り先行」は資金計画が立てやすいが仮住まいが必要
- 5-2. 「買い先行」は理想の家をじっくり探せるがリスクが高い
- 5-3. 売却と購入のスケジュールは不動産会社と綿密に練る
- 6. 【ローン完済・引き渡し編】スムーズな決済のための重要な準備と手続き
- 6-1. 住宅ローン完済の手続きと必要書類を事前準備する
- 6-2. 引っ越し・退去を決済日前に完全に終わらせる
- 6-3. 決済当日の流れと必要な持参書類を確認する
- 7. 【費用・税金編】流れの中でいつ何にいくらかかるか
- 7-1. 売却活動を開始したとき:清掃や修繕にかかる準備費用
- 7-2. 売買契約を締結したとき:仲介手数料と印紙税
- 7-3. 決済・引き渡し時:残りの仲介手数料と住宅ローン完済手数料
- 7-4. 翌年の確定申告時:譲渡所得税
- 8. まとめ
1. 最初に知っておきたい「マンション売却の流れ」全体像
まずは、大まかな全体像の把握から始めましょう。以下は国土交通省のサイトで紹介されている不動産取引の流れの図解です。
出典:国土交通省「建設産業・不動産業:<消費者の皆様向け>不動産取引に関するお知らせ」
ここではよりかみ砕いて、以下の8つのステップに分けて解説します。
- ステップ1:相場を調べて不動産会社に相談する
- ステップ2:不動産会社を選び媒介契約を結ぶ
- ステップ3:売り出し価格を決めて販売を開始する
- ステップ4:購入希望者の内覧に対応する
- ステップ5:購入申し込みを受けて条件を交渉する
- ステップ6:売買契約を結ぶ
- ステップ7:住宅ローンを完済し物件を引き渡す
- ステップ8:利益が出たら確定申告をする
なお、詳細の補足解説は後ほど行いますので、ここではざっくりとした流れをつかむことを意識しながら、読み進めてください。
1-1. ステップ1:相場を調べて不動産会社に相談する
マンション売却の第一歩は、自分のマンションの市場価値を把握することです。その理由は、相場を知らないまま進めると、適切な価格設定や交渉ができないからです。
まず国土交通省の「不動産情報ライブラリ」や、不動産流通機構の「不動産取引情報提供サイト」で周辺の類似物件の取引事例を調べ、大まかな相場感をつかみます。
その後、複数の不動産会社に査定を依頼して、具体的な評価額を確認しましょう。
この段階では、信頼できる不動産会社と担当者を見つけることも重要なポイントです。「どの会社なら、マンション売却を任せられるだろうか?」という視点を持って、やりとりしましょう。
不動産会社に相談する際は、ルーム・スタイルにもお気軽にお問い合わせください。どのようにマンション売却を進めていくべきか、具体的なアドバイスをご提供できます。
1-2. ステップ2:不動産会社を選び媒介契約を結ぶ
次に、査定を受けた不動産会社の中から売却を依頼する会社を選び、媒介契約を締結します。媒介契約には一般・専任・専属専任の3種類があり、それぞれ依頼方法と制約が異なります。
簡単にいえば、一般媒介は複数社への同時依頼が可能で、専任・専属専任は1社集中で手厚いサポートを受けられる仕組みです。
出典:国土交通省「建設産業・不動産業:<消費者の皆様向け>不動産取引に関するお知らせ」
自分の売却方針と、不動産会社の特徴を考慮して、最適な契約形態を選択します。
1-3. ステップ3:売り出し価格を決めて販売を開始する
媒介契約を締結した後は、売り出し価格を決定して、本格的な販売活動に入ります。
“売り出し価格をいくらにするか?” は、慎重によく検討しなければなりません。売り出し価格の設定を失敗すると、マンション売却がうまくいかなくなるリスクがあるからです。
高すぎると長期間売れ残ってしまいますし、安すぎれば本来得られたはずの利益を逃すことになります。
価格が決定したら、不動産会社による不動産流通機構(レインズ)への登録、大手ポータルサイトへの掲載、不動産会社のネットワークを活用した営業活動が始まります。
1-4. ステップ4:購入希望者の内覧に対応する
不動産会社の販売活動によって、物件に興味を持つ人が現れると、「実際にマンションを見せてほしい」という内覧の希望が入ります。
売主は、内覧に備えて清掃や整理整頓を行い、物件の魅力を最大限に演出する必要があります。
というのは、内覧では、第一印象がきわめて重要だからです。明るく清潔な印象を与えることが、成約率の向上につながります。
内覧当日は、換気をして照明をすべて点灯し、カーテンを開けて明るい空間を作ります。十分な見学時間を確保して、納得いくまで確認してもらいましょう。
1-5. ステップ5:購入申し込みを受けて条件を交渉する
内覧した購入希望者の購入意思が固まると、「購入申込書」が提出されます。
購入申込書には希望価格や引き渡し時期などの条件が記載されているので、これをもとに売買条件を調整します。
交渉では価格だけでなく、買主の信用力や引き渡し条件なども総合的に判断します。
調整する条件の一例
・売買価格
・手付金の額
・引渡しの時期
・契約不適合責任の期限
・土地の実測を行うか否か
・土地の実測を行う場合は、実際の面積に応じた売買代金の精算を行うか否か
・建物や設備の補修を行うか否か
・古家がある場合は撤去するか否か
・公租公課(固定資産税や都市計画税)などの精算方法や金額
※それぞれを調整するだけではなく、複数の条件を合わせて調整することもあります。
出典:不動産ジャパン「条件交渉と契約の準備~不動産基礎知識:売るときに知っておきたいこと」
基本的には不動産会社の担当者を通じて交渉を進め、双方が納得できる条件を見つけていきます。冷静な判断により、建設的な条件調整を目指しましょう。
1-6. ステップ6:売買契約を結ぶ
条件交渉がまとまると、正式な売買契約を締結します。契約当日は買主が不動産会社から重要事項説明を受けた後、売主・買主が契約書への署名・捺印を行います。これで、法的に拘束力のある売買契約の成立となります。
出典:国土交通省「建設産業・不動産業:<消費者の皆様向け>不動産取引に関するお知らせ」
契約時には、契約書の署名・捺印のほか、手付金の受領や印紙税の負担分の支払いなども行われます。
手付金の金額は、売買価格の5〜10%前後が相場です。契約成立の証拠金としての意味もあり、買主より契約時に受領します。
また、多くの場合、不動産会社への仲介手数料は、契約時に半金、決済時に半金で支払います。
売買契約により売却が確定しますので、ここからは決済日に向けた最終準備段階に入ります。住宅ローンの完済手続きや引っ越し準備などを、計画的に進めることが重要です。
1-7. ステップ7:住宅ローンを完済し物件を引き渡す
契約で定めた決済日に、残代金の受領と物件の引き渡しを同時に実施します。
決済日当日は、売主は受領した代金で住宅ローンを完済し抵当権抹消したら、所有権移転登記によって買主へ所有権を移転します。
決済は、買主の住宅ローン取扱銀行や不動産会社などで行われ、売主・買主・司法書士・銀行担当者などが同席します。抵当権抹消や所有権移転登記の手続きは、司法書士に委託するのが通常の流れです。
また、固定資産税や管理費などは、引き渡し日を基準として日割り計算で清算します。すべての手続き完了後、鍵と関連書類を買主に引き渡します。
不動産会社への仲介手数料も、決済日に全額を支払い完了します。
参考:不動産ジャパン「不動産を引き渡す~不動産基礎知識:売るときに知っておきたいこと」
1-8. ステップ8:利益が出たら確定申告をする
売却によって利益(譲渡所得)が発生した場合は、翌年の確定申告で申告・納税する必要があります。
課税譲渡所得金額は、売却価格から取得費と譲渡にかかった費用(仲介手数料など)や特別控除額を差し引いて計算します。
マイホームの売却には3,000万円特別控除などの有利な税制特例が用意されているため、適用要件を確認しましょう( 参考:国税庁「No.3302 マイホームを売ったときの特例」)。
なお、特例を適用すると納税が不要となる場合でも、確定申告は必要です(確定申告によって、特例の適用を申請します)。
売却に関する書類は大切に保管し、売却した翌年の2月16日から3月15日までの確定申告期間内に、手続きを完了させましょう。
2. 【準備編】売却活動を始める前にやるべきこと3つ
ここからは、とくに重要なポイントについて、掘り下げて取り上げていきます。まず、実際にマンションを売り出す前の準備段階の流れを見ていきましょう。
- まずは自分の家の価値を無料で査定してもらう
- 住宅ローンがいくら残っているか正確に把握する
- 部屋を整理し必要に応じて修繕・クリーニングする
2-1. まずは自分の家の価値を無料で査定してもらう
先にも述べたとおり、マンション売却では、現在の物件価値を正確に把握することがきわめて重要です。適正な売却価格を知らないままでは、安く売りすぎたり高すぎて売れ残ったりするリスクが高まります。
国土交通省の「不動産情報ライブラリ」、不動産流通機構の「不動産取引情報提供サイト」、不動産ポータルサイト(SUUMO・アットホーム・HOME’Sなど)を使って、自分でもある程度、調査を進めましょう。
そのうえで、不動産会社による査定サービスを利用してください。専門家の視点から、客観的な価格の目安を教えてもらえます。
2-2. 住宅ローンがいくら残っているか正確に把握する
住宅ローンが残っている場合は、正確な残債額と金融機関の完済手続きの流れを、事前に把握しておく必要があります。
一括返済の手続き方法や必要書類は、金融機関によって異なります。住宅ローンを借り入れている金融機関に早めに相談をして、段取りを確認しておきましょう。
とくに、繰り上げ返済手数料の有無や、抵当権抹消書類の準備について、しっかり確認しておきます。
2-3. 部屋を整理し必要に応じて修繕・クリーニングする
売却するマンションの室内を整えることは、内覧時の印象を大きく左右する重要な準備です。購入希望者にできる限り良い印象を持ってもらい、早く高く売れるように、工夫しましょう。
具体的には、キッチンの油汚れや浴室のカビ・水垢、トイレの汚れなどをしっかりと除去します。修繕が必要な部分に対応し、不要な物は前に処分しましょう。これは、室内や収納スペースに余裕を持たせ、広く見せるためです。
清掃については自分たちで行うだけでなく、プロにハウスクリーニングも検討の価値があります。費用はかかりますが(2LDK〜3LDKで5万円〜10万円程度)、その分、高額で売れると思えば、必要な投資です。
3. 【不動産会社選び編】成功を左右するパートナーの見つけ方
マンション売却の成功は、どの不動産会社を選ぶかにかかっているといっても過言ではありません。あなたの資産価値を最大限に引き出してくれる、信頼できるパートナーの見つけ方を解説します。
- 複数の会社に査定を依頼し担当者を見極める
- 媒介契約3種類の特徴を理解して最適なものを選ぶ
- 囲い込みをしない信頼できる会社か確認する
3-1. 複数の会社に査定を依頼し担当者を見極める
不動産会社の査定依頼は、単に価格を知るだけでなく、担当者の能力や会社の姿勢を見極める機会としても、重要です。
査定価格の妥当性だけでなく、説明の論理性や提案力、対応の丁寧さなども総合的に評価する必要があります。
査定は1社だけではなく、複数社(最低でも3社以上)に依頼してください。なぜなら、1社だけでは判断材料が不足し、適正な評価や担当者の質を客観視できないからです。複数社を比較すると、それぞれの特徴や強みが明確に見えてきます。
査定根拠を明確に説明でき、なぜその価格になったのか、どの取引事例を参考にしたのかを論理的に解説してくれる担当者は信頼できます。また、担当エリアの取引動向や競合物件の状況を詳しく把握し、的確な販売戦略を提案してくれるかも重要な判断材料となります。
3-2. 媒介契約3種類の特徴を理解して最適なものを選ぶ
媒介契約には一般媒介、専任媒介、専属専任媒介の3種類があり、それぞれ異なる特徴を持っています。
出典:一般媒介と専任媒介の選び方!後悔しないために違いを理解しよう
各契約のメリット・デメリットを理解せずに選択してしまうと、本来得られるはずの販売機会を逃したり、十分なサポートを受けられなかったりするリスクがあります。契約内容によって不動産会社の義務や制約が大きく変わるためです。
ぜひ、「一般媒介と専任媒介の選び方!後悔しないために違いを理解しよう」にも目を通していただき、媒介契約の違いを理解したうえで契約を結びましょう。
3-3. 囲い込みをしない信頼できる会社か確認する
不動産業界には「囲い込み」と呼ばれる行為が存在し、売主にとって大きな不利益をもたらす可能性があります。
これは売却依頼を受けた会社が、他社からの購入希望者の紹介を意図的に断り、自社だけで買主を見つけて両手取引(売主と買主の双方から仲介手数料を受け取る取引)を狙う行為です。
囲い込みが行われると、本来なら早く高値で売却できたはずの物件が長期化したり、値下げを余儀なくされたりするリスクが高まります。
〈売主や買主の利益を損なう可能性があり、市場の公正を害するもの〉として、国土交通省が対策の強化に乗り出しているものです。
媒介契約を締結する際には、念のため「囲い込みは行っていませんか?」と確認するとよいでしょう。
また、「レインズ」という不動産ネットワークのステータス管理機能を使うと、物件の取引状況を把握できるので、囲い込みの防止に役立ちます。
詳しくは国土交通省が発行している「売主の皆様向け リーフレット」をご確認ください。
参考:NHK「マンション 売却依頼を受けた仲介業者の情報共有の義務 範囲拡大 是正指示や業務停止などの処分も 国交省」
このように、マンション売却においては不動産会社選びが非常に重要となります。マンションをしっかり売却する実力があり、信頼できる不動産会社をお探しの方は、ぜひルーム・スタイルへお問い合わせください。
4. 【売却活動編】マンションを高く早く売るための3つのコツ
いよいよ売却活動がスタートしたら、不動産会社だけでなく、売主であるあなた自身の行動も、売却の行方を左右します。3つのポイントを押さえましょう。
- 内覧の第一印象を良くする
- 内覧希望にはできる限り柔軟に対応する
- 購入希望者からの価格交渉に冷静に対応する
4-1. 内覧の第一印象を良くする
準備のプロセスでも触れたポイントですが、内覧の第一印象は成約するかどうかに大きく影響します。
購入希望者に「この家に住みたい!」と感じてもらうために、清潔で明るい空間づくりに努めましょう。以下を忘れずに行ってください。
- すべての部屋の換気をしっかりする。
- 部屋ににおいがある場合は、消臭剤を置くなどして対応する。
- すべての照明をつけて、部屋を明るく見せる。
- すべての収納は開けて見られることを前提にして、中を片付けておく。
- 玄関の靴は、靴箱にすべて入れておく。
- 浴室・トイレ・キッチンは一通り掃除しておく。
- バルコニーの不用品を片付け、洗濯物も干さずに取り込んでおく。
人は “物件を見た瞬間” の印象で、購入意欲が左右されるともいわれます。汚れや散らかりが目につくと評価が下がってしまいますので、しっかり準備して内覧者をお迎えしましょう。
また、マンションの管理状況を評価するために、共用部分のチェックをする内覧者も多くいます。ゴミ置き場や自転車置き場などが乱雑になっていないか、確認しておくことも大切です。
4-2. 内覧希望にはできる限り柔軟に対応する
内覧希望は、非常に貴重な売却のチャンスです。できる限り多くの人に物件を見てもらうことが、成約率向上の鍵となります。
内覧希望があっても日程が合わずに先送りしていると、その間に他物件で成約したり、内覧希望者の気が変わったりするケースは多くあります。とくに平日夜間や休日の対応可否は、成約の分かれ目です。
内覧希望の連絡があったら、できるだけ早い日程で調整し、内覧希望者の興味が冷めることを防ぎましょう。不動産会社に鍵を預けておけば、売主が不在でも対応してもらえます。
4-3. 購入希望者からの価格交渉に冷静に対応する
内覧を経て、購入申し込みが入ると、多くの場合、価格交渉が発生します。
ここで冷静な対応ができないと、せっかくの売却チャンスを逃したり、あるいは必要以上の安値で売却したりと、失敗する原因となります。
どのような交渉が入ったとしても、冷静に対応することをまず心がけてください。
実際の交渉は不動産会社の担当者を通じて行うため、専門家のアドバイスを参考にしながら、戦略的に進めていきましょう。
5. 【住み替え編】マンション売却と購入の最適なタイミング
マンションを売却して、新しく購入した新居に移る「住み替え」では、その成功はタイミングの組み立て方で決まります。「売り先行」と「買い先行」、それぞれのメリットとデメリットを理解して、ご自身の状況に最も適した進め方を見つけましょう。
- 「売り先行」は資金計画が立てやすいが仮住まいが必要
- 「買い先行」は理想の家をじっくり探せるがリスクが高い
- 売却と購入のスケジュールは不動産会社と綿密に練る
5-1. 「売り先行」は資金計画が立てやすいが仮住まいが必要
売り先行とは、現在のマンションを先に売却してから新居を購入する方法です。
売却代金でローンを完済し、残った資金を新居購入に充てるため、資金不足のリスクを回避できます。資金面での安全性が高い方法ですので、通常は「売り先行」での売却をおすすめします。
注意点としては、引き渡し後に新居が決まっていない場合、賃貸物件などで仮住まいすることになります。家賃や引っ越し費用などが追加で必要です。
5-2. 「買い先行」は理想の家をじっくり探せるがリスクが高い
買い先行とは、新居の購入を先に行ってから現在のマンションを売却する方法です。
「新居が見つかってからマンションを売却すればいい」というスタンスのため、時間的な余裕を持って、じっくりと理想の物件を探せるメリットがあります。
一方で、旧居にローンが残っている場合には、一時的に二重ローンを抱えるリスクや資金調達の複雑さがデメリットです。
具体的には、新居を購入した時点で旧居のローンが残っているため、金融機関の審査が厳しくなります。住み替えローンやブリッジローンの利用が必要なケースもあります。
また、万が一、旧居が予定していた価格や期限で売れない場合は、資金繰りに支障をきたすリスクも生じます。買い先行での購入は、こういったリスクに対処する余裕がある場合にしか、おすすめできません。
やむを得ず買い先行になる場合は、「買換特約」(現在の住まいが予定どおり売却できないときに契約を解除できる特約)を付けることが重要です。ただし注意点として、この特約を承諾しない売主も多いため、購入したい物件が購入できない可能性があることを、理解しておく必要があります。
5-3. 売却と購入のスケジュールは不動産会社と綿密に練る
売り先行でも買い先行でも、住み替えを成功させるには、売却と購入のタイミング調整が重要となります。
理想的には、同じ不動産会社にマンションの売却と新居の購入の両方を依頼すると、スケジュール管理がしやすくなります。異なる会社に依頼する場合でも、双方の担当者に住み替えの事情を詳しく伝え、協力してもらいましょう。
売却と購入の各段階で発生する契約日・決済日・引き渡し日などの重要な期日を調整して、うまくやり繰りします。
このようなスケジュール管理は、力量のある不動産会社であれば手慣れているものです。頼りなさを感じる不動産会社は、媒介契約を締結する際に選ばないようにしましょう。
6. 【ローン完済・引き渡し編】スムーズな決済のための重要な準備と手続き
売買契約が無事に完了すると、いよいよ決済・引き渡しに向けた最終段階に入ります。この段階では住宅ローンの完済手続きや引き渡し準備など、複数の重要な手続きを同時に進める必要があります。
- 住宅ローン完済の手続きと必要書類を事前準備する
- 引っ越し・退去を決済日前に完全に終わらせる
- 決済当日の流れと必要な持参書類を確認する
6-1. 住宅ローン完済の手続きと必要書類を事前準備する
決済日には売却代金でローンを完済する必要があるので、事前にローンを借り入れている金融機関と調整しておくことが非常に重要です。
ローンの一括返済の申し込みから抵当権抹消書類の準備まで、複数の手続きを並行して進めていきます。
決済日の2週間前までには、金融機関から指定された必要書類をすべてそろえ、準備完了しておくようにしましょう。
ローンを完済すると、抵当権解除証書・登記済権利証・委任状などの書類が金融機関から発行されます。これを司法書士へ引き渡し、抵当権抹消登記を委任代行してもらうのが通常の流れです。
6-2. 引っ越し・退去を決済日前に完全に終わらせる
物件の引き渡しまでに、引っ越しと清掃を完全に終わらせておく必要があります。決済日には「空っぽで清潔な状態」で買主に引き渡すことが基本的な約束となるためです。
引っ越し業者の手配は決済日の1カ月前には完了させ、引っ越し作業は決済日の数日前までに終わらせます。電気・ガス・水道などの契約解除や料金の精算も行いましょう。
引っ越し後は室内の清掃をしっかり行い、設備の動作確認も実施しましょう。エアコンのリモコンや給湯器の取扱説明書などの付属品も整理して、買主に引き渡せるよう準備します。
6-3. 決済当日の流れと必要な持参書類を確認する
決済当日は多くの関係者が集まり、複数の手続きが同時進行で行われます。売主・買主・不動産会社・司法書士・金融機関の担当者が一堂に会し、残代金の授受・登記手続き・鍵の引き渡しを実行する重要な一日です。
必要な書類などは、不動産会社がリストなどを作成して渡してくれるはずです。それに沿って、しっかり準備をしておきましょう。
以下は参考までに、売主が事前に準備する主要な書類です。
売主が事前に準備する主なもの
●登記関係書類等
・所有権移転登記の関係書類等(登記を書面申請する場合)
登記識別情報または権利証、印鑑証明書(登記申請日時点で発行後3ヶ月以内のもの)、住民票、固定資産評価額証明書、司法書士への委任状など
・抵当権抹消登記に必要な関係書類等
※登記関係書類等は司法書士等の専門家に確認しましょう。また、登記をオンライン申請する場合は準備するものが異なります。
●実印(登記関係書類に押印する)
●登記費用
●実測図や境界確認書(必要な場合のみ)
●残代金や各種精算金等の領収書(口座振込の場合は振込控えで代替する場合もある)
●建築関係書類、物件の鍵等の買主へ引き継ぐべきもの一式
●仲介手数料(媒介契約書の支払条件に基づいて準備する。不動産会社からは領収書を受け取る)
出典:不動産ジャパン「不動産を引き渡す~不動産基礎知識:売るときに知っておきたいこと」
当日の流れは個々のケースによって異なりますが、多いケースを挙げると、買主の住宅ローン取扱銀行で午前中に開始され、数時間かけて各種手続きが完了します。
買主からの代金の支払いが確認された後に、売主の住宅ローンの完済処理を行います。司法書士による登記手続きの準備が整った段階で、鍵と関連書類を引き渡します。これでマンション売却の引き渡しまでが完了となります。
7. 【費用・税金編】流れの中でいつ何にいくらかかるか
最後に、お金の話を整理しましょう。マンション売却では各段階で異なる費用が発生するため、いつ何にいくら必要かを事前に把握することが重要です。
- 売却活動を開始したとき:清掃や修繕にかかる準備費用
- 売買契約を締結したとき:仲介手数料と印紙税
- 決済・引き渡し時:残りの仲介手数料と住宅ローン完済手数料
- 翌年の確定申告時:譲渡所得税
7-1. 売却活動を開始したとき:清掃や修繕にかかる準備費用
売却活動を始める前段階では、物件の魅力を高めるための準備費用が発生します。これらの費用は売却価格や成約期間に影響するため、投資として考えましょう。
【売却活動開始時の費用項目】
- ハウスクリーニング:2LDK〜3LDKで5万円〜10万円程度。プロの技術により見違えるほど美しくなり、内覧時の印象が大幅に向上します。
- 軽微な修繕費用:数千円〜数万円程度。水回りの修理や建具の調整など、気になる箇所を事前に直しておくと価格交渉で不利になりません。
- 不用品処分費用:数万円〜十数万円程度。家具や家電の量により変動しますが、室内をすっきり見せるための重要な投資です。
7-2. 売買契約を締結したとき:仲介手数料と印紙税
売買契約の締結時には、仲介手数料の一部と印紙税の支払いが発生します。
仲介手数料は、媒介契約を締結した不動産会社に支払う成功報酬です。多くの場合、契約時と引き渡し時に半額ずつ支払う方式が採用されます。印紙税は契約書作成時に必要な税金です。
仲介手数料の金額(上限)は、マンションの売買代金によって変動します。以下をご確認ください。
【仲介手数料の早見表】
売買代金 | 仲介手数料(税込) | 計算式 |
---|---|---|
200 万円 | 11.0 万円 | 売買代金の5% +消費税 |
300 万円 | 15.4 万円 | (売買代金の4%+2万円)+消費税 |
400 万円 | 19.8 万円 | (売買代金の4%+2万円)+消費税 |
500 万円 | 23.1 万円 | (売買代金の3%+6万円)+消費税 |
1,000 万円 | 39.6 万円 | (売買代金の3%+6万円)+消費税 |
1,500 万円 | 56.1 万円 | (売買代金の3%+6万円)+消費税 |
2,000 万円 | 72.6 万円 | (売買代金の3%+6万円)+消費税 |
3,000 万円 | 105.6 万円 | (売買代金の3%+6万円)+消費税 |
4,000 万円 | 138.6 万円 | (売買代金の3%+6万円)+消費税 |
5,000 万円 | 171.6 万円 | (売買代金の3%+6万円)+消費税 |
6,000 万円 | 204.6 万円 | (売買代金の3%+6万円)+消費税 |
7,000 万円 | 237.6 万円 | (売買代金の3%+6万円)+消費税 |
8,000 万円 | 270.6 万円 | (売買代金の3%+6万円)+消費税 |
9,000 万円 | 303.6 万円 | (売買代金の3%+6万円)+消費税 |
1億円 | 336.6 万円 | (売買代金の3%+6万円)+消費税 |
一方、印紙税も、売買契約書に記載される売買代金によって変わります。令和9年(2027年)3月31日までの間に作成される契約書は軽減税額が適用され、以下のとおりです。
出典:国税庁「No.7108 不動産の譲渡、建設工事の請負に関する契約書に係る印紙税の軽減措置」
契約書は、通常2通作成して売主・買主の双方が原本を保管します。たとえば売買代金が「1,000万円を超え5,000万円以下」のケースでは、売主・買主双方が1万円ずつ負担するのが一般的です。
7-3. 決済・引き渡し時:残りの仲介手数料と住宅ローン完済手数料
決済・引き渡し時には、仲介手数料の残額と登記関連費用、住宅ローン完済手数料などの支払いを行います。
この段階では、買主から売却代金を受領するため、基本的には受け取った資金から各種費用を支払う形となります。
【引き渡し時の費用項目】
- 仲介手数料の残額:契約時に支払った残額を支払います。
- 抵当権抹消登記費用:登録免許税1,000円+司法書士報酬1万円〜3万円程度です。
- 住宅ローン完済手数料:金融機関により数千円〜数万円程度の費用がかかります。一括返済に伴う事務手数料として発生します。
また、固定資産税や管理費の清算金は、引き渡し日を基準とした日割り計算で買主から受け取るのが一般的です。
7-4. 翌年の確定申告時:譲渡所得税
売却により利益が発生した場合は、翌年の確定申告で譲渡所得税を申告・納税する必要があります。
譲渡所得税は「譲渡価額-(取得費+譲渡費用)-特別控除額」で計算され、所有期間により税率が異なります。5年以下の短期譲渡では39.63%、5年超の長期譲渡では20.315%の税率が適用されるため、売却時期により税負担に大きな差が生じます。
所有期間 | 税率 | 計算例(譲渡所得1,000万円の場合) |
---|---|---|
5年以下(短期譲渡) | 39.63% | 約396万円 |
5年超(長期譲渡) | 20.315% | 約203万円 |
ただし、マイホーム売却には税負担を大幅に軽減できる特例制度が用意されており、適切に活用することで税額をゼロにできる場合も多くあります。
詳しくは「不動産売却でかかる税金の節税方法|知って得する特例と対策まとめ」で解説していますので、売却前に目を通しておきましょう。
8. まとめ
本記事では「マンション売却の流れ」をテーマに解説しました。
- 相場を調べて不動産会社に相談する
- 不動産会社を選び媒介契約を結ぶ
- 売り出し価格を決めて販売を開始する
- 購入希望者の内覧に対応する
- 購入申し込みを受けて条件を交渉する
- 売買契約を結ぶ
- 住宅ローンを完済し物件を引き渡す
- 利益が出たら確定申告をする
「初めてマンションを売却する」という方も、流れに沿って一歩ずつ着実に進めればうまくいきます。本記事の情報を活用して、納得のいく売却を実現していただければ幸いです。
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