
「管理会社に払う手数料がもったいない。」
そう考えて、自分で物件を管理することを選んだオーナー様は少なくありません。
令和元年に国土交通省が実施した「賃貸住宅管理業務に関するアンケート調査」でも、所有する賃貸住宅を「業者に任せず、全て自ら管理している」と答えた家主は約2割にのぼりました。
およそ5人に1人は、何らかの形で自主管理を選んでいる計算になります。
ただし、実際に自主管理を数年続けたオーナーに話を聞くと、「管理費は支払っていないのに、想像していたほど利益が残っていない。」という声によく出会います。
管理費を浮かせたはずなのに、一体なぜそうなるのでしょうか。
今回は、その理由を「手残り額」という切り口で整理してみます。管理費という分かりやすい数字だけを見るのではなく、空室期間や修繕費、対応にかかる時間まで含めて考えると、見え方はかなり変わってきます。
「管理費を削ること」ではなく「最終的にいくら残るのか」。今の管理方法が本当に合っているのか気になる方は、お気軽にご相談ください。
| この記事でわかること |
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なぜ自主管理を選ぶオーナーが多いのか
自主管理を選ぶオーナーには、それぞれ理由があります。
その中でも多いのは、「自分でできることに、わざわざ管理費を払う必要はない」という考えです。
管理手数料を払わずに済む
理由として、私たちが業務中に最も多く耳にするのが「管理手数料」の節約です。
管理手数料は家賃の3〜5%前後に設定されていることが多く、これを払わずに済むなら、その分がそのまま利益にできると考えるのは自然な発想です。
【管理手数料の例】 ※家賃8万円の場合
| 管理手数料の割合 | 毎月の管理手数料 |
| 3%の場合 | 2,400円 |
| 5%の場合 | 4,000円 |
この例では、年間にすると約2.9万~4.8万円浮く計算になります。
また、管理委託費は、部屋の家賃だけで計算されるとは限りません。
駐車場代などがある場合は、それらを含めた賃料の合計額に3〜5%をかけて計算するケースもあります。
そのため、戸数が多かったり、駐車場を複数台貸していたりすると、年間で見るとそれなりの金額になります。
物件の状況を自分の目で把握したい
管理会社を挟むことで、入居者が実際にどんなことで困っているのか、直接話を聞けないことにもどかしさを感じるオーナーもいます。
「入居者の顔が見えない」「管理会社に任せきりでいいのか分からない」そうした不安から、自分の目できちんと確認したいと考えるのは大切なことです。
また、修繕や原状回復のたびに管理会社を通すことを避けたい、というオーナーもいます。自分で業者を探して直接依頼した方が安く済むのではないか、管理会社を通すことで余計な費用がかかるのではないか、と考えるためです。
特に修繕費は、内容によって数万円、数十万円とかかることもあります。「業者も費用も自分で選びたい」という理由から、自主管理を選ぶ方もいます。
戸数が少ないうちは「自分でもできそうだ」と思えることも大きいでしょう。1〜2戸であれば、家賃の入金確認や入居者対応も、本業の合間にこなせる範囲に収まります。
最初のうちは、それで実際にうまくいくケースも多く、自主管理という選択そのものが失敗というわけではありません。問題が表面化してくるのは、たいてい数年が経ってからです。
自主管理で見落としがちな「見えないコスト」

自主管理の落とし穴は、管理業務には「時間」という、家計簿には出てこないコストが積み上がっていくことにあります。
①深夜・休日のトラブル対応を抱え込む
夜間に入る連絡は、水漏れや設備の故障など、そのまま朝まで待つのが難しい内容が多くあります。
管理会社であれば、営業時間外は提携業者につなぐなど、夜間や休日にも対応できる体制を取っているところがあります。
自主管理では、こうした連絡を受けるのもオーナー自身です。しかし、夜中に毎回電話に出られるとは限りません。
その時間から対応できる業者を探し、状況を説明して手配するとなれば、想像以上に労力とお金がかかります。
②修繕のたびに業者探しから始まる
修繕が必要になったとき、管理会社には普段から付き合いのある協力業者がいます。
水回りならここ、電気ならここ、と決まった依頼先が何社かあるので、トラブルが起きるたびに一から業者を探す必要がありません。
また、管理会社は年間を通して一定量の工事を発注します。そのため、クロスの張り替えなら「1㎡あたり○円」といった単価をあらかじめ取り決めていることもあり、一般のオーナーが単発で依頼するより安く発注できる場合があります。
一方、1棟だけ、あるいは数戸を所有しているオーナーの場合、そこまで業者との関係をつくるのは簡単ではありません。
いざ水漏れや設備故障が起きてから業者を探し、電話をかけても、「今日は埋まっています」「最短で○日後です」と言われることもあります。
③客付けルートが限られ空室が長引く
賃貸仲介会社の仕事は、部屋を紹介して終わりではありません。申し込み後は、入居審査や契約条件の確認、書類のやり取り、鍵渡しまで続きます。
だからこそ、何度も取引している管理会社の物件は扱いやすいものです。「申し込み後もスムーズに進む」と分かっているからです。
一方、取引のない個人オーナーでは、審査や契約をどう進めるのか、仲介会社側も勝手が分かりません。
物件そのものに強い魅力があれば別ですが、似た条件の物件が並んでいれば、普段から取引のある管理会社の物件が選ばれることもあります。
空室が1か月延びれば、家賃1か月分の収入がなくなります。年間数万円の管理委託費を浮かせても、これだけで収支が逆転する可能性があります。
④クレーム対応の初動の遅れが信頼を損なう
入居者からの連絡に、仕事の都合ですぐ対応できないことも出てきます。
一度や二度なら仕方ないと思ってもらえるかもしれませんが、対応の遅さが重なると、入居者側の信頼は失われていきます。
緊急性の高いクレームの場合、オーナー側では「今業者を探しているから、今日中にはなんとかなるはず」と思っていても、入居者はそれまで水が使えない、お湯が出ないといった状態で過ごさなければなりません。
対応が遅れれば管理への不満が残り、それが退去を考えるきっかけになることもあります。
⑤法律や規約まわりの知識不足がリスクになる
賃貸借契約には、更新料や原状回復の範囲、退去時の敷金精算など、細かいルールがいくつもあります。
管理会社であれば、こうした知識は日常業務・トラブル事例から少しずつ蓄積されていますが、自主管理では、その都度自分で調べながら最適な対応をしなければなりません。
判断を誤ると、入居者との間で「言った言わない」のトラブルに発展し、最終的に弁護士への相談が必要になるケースもあります。
相談料や訴訟費用まで含めれば、浮かせたはずの管理費を軽く上回ってしまうことも十分にあり得ます。
しかも、こうしたトラブルは一度こじれると解決までに数か月かかることも珍しくなく、その間の精神的な負担は数字には表れません。
手残り額で比較するとどうなるか
言葉だけではピンとこないと思うので、簡単な例で見てみましょう。築20年、家賃8万円の1室を想定します。
自主管理のケース
管理委託費はかかりません。ただし、客付けルートの限界から空室期間は平均2か月かかったとします。
加えて、業者探しに時間がかかったことで対応が遅れ、突発的な修繕対応で年間8万円ほどの追加費用が発生したと仮定します。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 年間家賃収入(満室時) | 96万円 |
| 空室損失(2か月分) | −16万円 |
| 修繕費 | −8万円 |
| 年間手残り | 72万円 |
管理委託のケース
家賃の5%、月4千円の管理委託費がかかります。年間で4.8万円です。一方で、募集の工夫や協力業者による迅速な対応で、空室期間は平均1か月に抑えられたとします。
修繕についても、業者ネットワークを活用することで、費用は年間5万円程度に収まったとしましょう。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 年間家賃収入(満室時) | 96万円 |
| 空室損失(1か月分) | −8万円 |
| 管理委託費(11ヶ月分) | −4.4万円 |
| 修繕費 | −5万円 |
| 年間手残り | 78.6万円 |
※管理手数料の計算方法や空室時の取り扱いは管理会社によって異なります。
差が生まれる本当の理由
この例では、数字だけを見ると、管理委託の方が年間で6.6万円ほど手残りが多い計算です。
この差を生んでいるのは、管理費の有無そのものではなく、空室期間の長さと修繕費の効率です。
管理費というコストは目に見えやすい分、真っ先に削りたくなります。しかし実際に手残りを左右しているのは、その裏側にある対応スピードだったり、経営判断だったりします。
もちろん物件の立地や築年数、オーナー自身がどれだけ時間を割けるかによって結果は変わりますが、「管理費を払わない=得」とは限らない、という点は覚えておいて損はありません。
また、この試算には含めていない要素もあります。オーナー自身が費やした時間です。
夜間対応や業者探し、入居者とのやり取りにかけた時間を時給換算すれば、実質的な手残りはさらに減っているでしょう。
これらを総合的に考えて、「自主管理」か「管理委託」かを選ぶようにしてください。
「管理費を削ること」ではなく「最終的にいくら残るのか」。今の管理方法が本当に合っているのか気になる方は、お気軽にご相談ください。
自主管理が失敗につながりやすい3つのパターン

実際の相談で目にする典型的なパターンを3つ挙げます。
滞納が長期化するパターン
家賃保証会社を利用していないケース
自主管理で特に注意したいのが、家賃保証会社を利用していないケースです。
家賃の入金がなければ、連絡や督促もオーナー自身で行います。それでも支払いがなければ、内容証明の送付や明渡しに向けた法的手続きまで考えなければなりません。これらには1つずつ踏むべきステップがあり、時系列を整える必要があります。
「来月まとめて払います」と言われれば、もう少し待とうと思ってしまうこともあるでしょう。しかし、その間にも滞納額は積み上がっていきます。
家賃保証に加入しているケース
一方、自主管理でも家賃保証会社に加入していれば、滞納時の家賃を立て替えてもらったり、督促を任せたりできる場合があります。
ただし、保証される金額や期間には上限が設けられています。滞納が長引き、上限を超えれば、その後の家賃は基本的に保証されません。
自主管理となると、「このあと何をするのか」「どのタイミングで次の手続きに進むのか」をサポートしてもらえず、すべて自分で調べながら進めることになります。
滞納への対応だけでも大変なのに、慣れない手続きまで一つずつ確認するとなれば、時間も手間もかかります。
いずれの場合も、自主管理による家賃滞納は、長引くほど対応が難しくなります。
原状回復費を想定どおり回収できないパターン
退去時に難しいのが、原状回復費をどこまで入居者に負担してもらうかの判断です。
たとえば、壁に大きな汚れがあったとして、「クロスの張り替え費用を何割まで請求できるのか」。国土交通省の原状回復ガイドラインを読めば基本的な考え方は示されていますが、実際の部屋を見て金額まで出すには知識と経験がいります。
入居時の記録も重要です。「この傷は最初からあった」と言われたとき、写真がなければ確認できません。
タバコのヤニ汚れや大きな破損があっても、請求額をそのまま受け入れてもらえるとは限りません。管理会社なら過去の対応事例や国土交通省のガイドラインなどをもとに請求の根拠を説明しやすい一方、個人オーナーの場合、「なぜこの金額なのか」と細かく聞かれ、交渉が長引くこともあります。
最近は、SNSやAIを使えば原状回復についてすぐに調べられます。入居者側も「これは本当に自分が払う費用なのか」「この金額は妥当なのか」と調べたうえで話をすることもあるようです。
そのため、オーナー側も請求の根拠をきちんと説明できなければ、話がまとまりにくくなります。
募集条件を変えられず空室が長引くパターン
自主管理では、募集を出したあと「なぜ決まらないのか」の判断に迷うことがあります。
家賃が高いのか、敷金・礼金などの条件なのか、写真がよくないのか。それとも、そもそも仲介会社から入居希望者に紹介されていないのか。問い合わせが来ないという結果だけを見ても、原因まではなかなか分かりません。
たとえば、前回8万円で決まったからと、今回も同じ8万円で募集を続けるケースです。その間に周辺相場が下がっていたり、近くに条件の良い物件が増えていたりすれば、同じ条件では決まりにくくなります。
反対に、家賃を下げれば決まるとも限りません。仲介会社への広告料を見直した方がいいケースもあれば、設備を一つ追加するだけで反響が変わることもあります。
こうした判断ができないまま1か月、2か月と募集を続ければ、その間の家賃収入はゼロです。管理委託費を節約した金額より、空室による損失の方が大きくなることもあります。
「管理費を削ること」ではなく「最終的にいくら残るのか」。今の管理方法が本当に合っているのか気になる方は、お気軽にご相談ください。
自主管理を続けるなら最低限意識したいこと

すぐに委託へ切り替えるつもりはない、というオーナーも多いはずです。
その場合でも、最低限押さえておきたいポイントを紹介します。
緊急連絡先だけは外部に確保しておく
夜間や休日の一次対応まで自分で抱え込むと、いずれ限界がきます。せめて緊急時の駆けつけサービスや、提携できる業者を1〜2社確保しておくだけでも、負担はかなり違います。
管理会社が使っているような緊急サポートサービスは、単体でも契約できる場合があるので、検討してみる価値はあります。
修繕業者は複数確保しておく
いざというときに慌てて業者を探すのではなく、普段から2〜3社の連絡先を控えておくことをおすすめします。
依頼先が1社だけでは、その見積もりが相場に合っているのか判断しにくくなります。複数の業者と付き合いがあれば、費用を比較できるだけでなく、急な修繕でいつもの業者が動けないときにも別の業者へ相談できます。
空室が続くときは募集内容を見直す
同じ条件で募集を出し続けても、反響が伸びないことはよくあります。
空室が長引いていると感じたら、家賃だけでなく、写真や設備情報の掲載内容も見直してみましょう。
募集を出しっぱなしにせず、周辺の競合物件をリサーチしながら定期的に内容をアップデートする姿勢が、空室期間の短縮につながります。
保証会社の内容を比較しておく
自主管理では、家賃滞納が起きたときに頼れる保証会社の存在が大きくなります。
保証会社によって、保証される家賃の上限や期間、滞納後の督促、明渡しまでの対応は異なります。料金だけで決めず、「滞納が長期化したらどこまで保証されるのか」「その後は誰が何をするのか」まで確認しておきましょう。
管理会社を入れないのであれば、なおさら契約内容を比較して選ぶことが大切です。
緊急時にどう動くか決めておく
設備トラブルだけでなく、賃貸管理では「入居者と連絡が取れないので安否確認をしてほしい」「警察から連絡が入った」といったことも起こります。
こうした場面で、オーナーの判断だけで部屋の鍵を開けてよいとは限りません。誰からの依頼なら対応するのか、警察への連絡が必要なのはどんな場合か、室内へ入るときに何を確認するのかなど、緊急時の動き方をあらかじめ整理しておく必要があります。
対応を誤ると、損害賠償などの話にもなりかねません。実際に起きてから調べるのでは遅いケースもあるため、自主管理をするなら一度は確認しておきたいところです。
こうした工夫を重ねても、それでも手残りが思うように伸びない、あるいは負担が大きいと感じるようであれば、そのタイミングが管理委託を検討する目安になるはずです。
管理会社を変えるだけで手残りが改善するケースもある
弊社では、管理会社を切り替えたことで状況が変わった、という事例も実際にあります。
弊社で実際に手残りが改善したケース
- リフォームに費用をかけたものの、賃料アップや空室期間の短縮につながり、長期的に手残りが増えた
- 募集条件を見直したところ、約1年間空室だった部屋が1か月ほどで成約した
- 周辺相場を調べ直し、これまで据え置いていた募集賃料を見直した
- 修繕のたびに交換していた設備を、修理で対応できるものと交換が必要なものに分け、修繕費を抑えた
- 原状回復の内容を精査し、必要な工事だけに絞ることで退去時の支出を抑えた
- 仲介会社への募集方法を見直し、問い合わせや内見につながる窓口を増やした
私たちの役割は、ただ物件を管理することではありません。オーナー様の大切な資産を預かる立場として、「どうすれば今より手残りを増やせるか」を一緒に考えることだと思っています。
目先の管理手数料だけではなく、数年先まで見たときに、オーナー様の手元により多く残る方法を考える。それが、管理を任せていただく私たちの仕事です。
まとめ|「安さ」ではなく「手残り」で判断する
自主管理そのものが悪いわけではありません。所有戸数が少なく、物件の近くに住んでいて、入居者対応や修繕手配に時間を取れるのであれば、自主管理でも十分に運営できます。
一方、戸数が増えてきた、本業が忙しい、遠方に物件があるといった場合は、管理委託も一度検討してみてください。
特に、次のような状態が続いているなら見直すタイミングかもしれません。
- 入居者からの連絡にすぐ対応できない
- 修繕費が適正なのか判断できない
- 空室が長引いている
- 更新や退去精算のたびに調べながら対応している
管理委託費を払わずに済んでいても、空室が長引いたり、修繕費が高くなったりすれば、結果的に手元に残るお金は減ってしまいます。
これは、管理手数料0円や格安の管理サービスを選ぶ場合も同じです。大切なのは「管理費がいくらか」だけではなく、その費用を払うことで空室期間や修繕費、日々の対応がどう変わるのかまで見ることです。
今の管理方法と管理会社へ委託した場合で、年間の収支を一度比べてみるのも一つです。管理費だけを比べるのではなく、空室による損失や修繕費まで入れて計算すると、どちらの方が手残りを増やせるのかが見えてきます。
「管理費を削ること」ではなく「最終的にいくら残るのか」。今の管理方法が本当に合っているのか気になる方は、お気軽にご相談ください。





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