みなさんは、不動産の「囲い込み」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。
不動産業界における囲い込みとは、特定の仲介業者が売却物件の情報を独占し、購入希望者が適切な情報を得られないようにする行為を指します。
本記事では、不動産の囲い込みによって買いたい物件が手に入らないケースに焦点を当て、その具体的な影響や対策について詳しく解説します。適切な仲介業者の選び方や市場リサーチの重要性にも触れつつ、納得のいく不動産取引の方法をご紹介します。
本記事を読んでわかること |
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目次
- 不動産業界の「囲い込み」って何?
- 1.囲い込みとは
- 参考:専任媒介契約とは?メリット・デメリットや他の媒介との違いを解説
- 2.囲い込みは違法ではない
- 物件が買えない!囲い込みが横行する背景とは
- 1.両手取引
- 2.片手取引
- 不動産の囲い込みで生じるデメリットとは
- 1.売却活動が長引いてしまう
- 2.価格交渉が入ってしまう
- 不動産の囲い込みで買えない事例2選
- 事例1.依頼したかった仲介業者から買えなかった
- 事例2.気に入った物件が買えなかった
- 囲い込みをされているのか調べる方法はある?
- 不動産会社から囲い込みをされたらどうする?
- 1.締結中の媒介契約を中途解約をする
- 2.悪質なケースは専門機関に相談する
- 不動産の囲い込みで買えないを無くそう!有効な3つの対策とは
- 1.信頼のできる仲介業者を選定する
- 2.一般媒介契約を締結する
- 3.媒介契約書に特約を入れる
- まとめ
不動産業界の「囲い込み」って何?
不動産の囲い込みのよくある例は、売主から売却依頼を受けている業者が、購入希望者から依頼を受けている別の業者に、物件情報を提供しないケースです。その結果、売主・買主双方にとって公正な取引を妨害してしまいます。
では、以下で具体的に解説していきましょう。
1.囲い込みとは
囲い込みとは先述の通り、1つの不動産会社がお客様の物件情報を囲い込む行為です。
通常、売却依頼を受けた不動産業者は、売主との間で「媒介契約」を締結します。
3種類の媒介契約のうち「専属専任媒介」もしくは「専任媒介」を締結した場合、指定流通機構が運営する情報ネットワークシステム「レインズ」に情報を登録する義務があります。
参考:専任媒介契約とは?メリット・デメリットや他の媒介との違いを解説
本来であれば、レインズへ公開した情報を基に他の不動産会社が購入希望者に物件を紹介しますが、問い合わせに対して「商談が入っている」「申し込みが入っている」などと嘘をつき、紹介させないようにしているのです。実際にはこれが本当なのか嘘なのか、囲い込みを行っているのかどうかを第三者では判断ができないので、また厄介なのです。
また、そもそも希少性が高い物件をレインズで情報開示したくないという理由から、規定の期日内にレインズへ登録をしない不動産会社もいます。
不動産会社に確実にレインズへ物件を登録してもらうには、物件が登録されると業者に発行される「登録証書」をもらうようにしましょう。
これによって、公開する物件情報が間違っていないかといった確認もできます。
2.囲い込みは違法ではない
このような行為をされると、売主は早期の売却が難しくなったり、買主は買いたいのに買えなかったりと、双方に不利益が生じます。
しかし、宅建業法や国土交通省のガイドラインには囲い込みに関する特別な規定は存在せず、現状は不動産会社への罰則自体も設けられていません。
そのため、残念ながら囲い込みは日常茶飯事の状態で、会社の大小規模を問わずに業界内で横行しています。
ただし、専属専任媒介・専任媒介を締結しているのにも関わらず、規定の期日内にレインズへ登録をしていない場合は、宅建業法違反に該当します。
物件が買えない!囲い込みが横行する背景とは
では、なぜ多くの不動産業者が囲い込みをするのでしょうか。それには、「自社利益の最大化」が大きく関係しているのです。
本章では、囲い込みの原因となる動産業者の「両手取引」と「片手取引」の違いについて解説していきます。
まず、前提として、不動産売買における仲介手数料は、以下のように決められています。
売買価格 | 仲介手数料の上限(税抜) |
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400万円超 | 売買価格×3% 以内 |
200万円超400万円以下 | 売買価格×4% 以内 |
200万円以下 | 売買価格×5% 以内 |
それぞれの部分を段階的に計算するのは大変なので、一般的には速算式として「売買価格3%+6万円」という算出法が用いられています。
1.両手取引
両手取引とは、同じ仲介業者が売主と買主の両方を担当する形態を指します。
これは、一つの取引で売買双方から仲介手数料が得られるため、仲介業者にとっては非常に魅力的です。
例えば、物件価格が3,000万円の売買取引をした場合、仲介手数料の上限額は105.6万円となりますが、両手取引となるとこれが2倍になります。
この手数料を売主、買主双方からもらうことができるので、不動産業者や営業マンとしては一番「オイシイ」状態なのです。
この利益を業者が独占したいがために、囲い込みが行われます。
大手不動産会社では営業ノルマが厳しいことも相まって、囲い込みが発生してしまうようですね。
2.片手取引
一方の片手取引とは、2社の仲介業者が売主と買主それぞれを担当する形態を指します。
売主と買主それぞれに仲介業者が付き、双方の事情や利益を考慮して交渉が行われます。
この場合には、売主側の仲介業者は売主から、買主側の仲介業者は買主からそれぞれ仲介手数料をもらうわけです。業界用語では、「分かれ」という呼び方もされています。
通常の取引では、片手取引のように双方に仲介業者が付くことで、お互いの交渉ごとをまとめていく状態が理想的です。
かと言って、両手取引そのものが違法という訳ではありませんので、混同しないようにしてください。
不動産の囲い込みで生じるデメリットとは
囲い込みには業者側は一定のメリットがありますが、顧客にとっては多くのデメリットが存在します。
特に顕著な二点のデメリットを以下で解説しましょう。
1.売却活動が長引いてしまう
囲い込みを行うと、物件の露出が限定されます。
複数の不動産会社に依頼する一般媒介の場合、各社が自社のネットワークや広告媒体を使って物件を広く宣伝します。しかし、専任物件で囲い込みを行うとその範囲が狭まってしまうのです。
これにより、物件を探している多くの潜在的な買主に情報が届かず、結果的に売却活動が長引いてしまう可能性が高まります。
売却活動が長引くことで、売主は時間的なストレスを感じるだけでなく、その間に物件価値が低下するリスクも否めません。長期間市場に出ている物件は、「売れ残り」と見なされ、買主からの評価が下がることがあります。
2.価格交渉が入ってしまう
複数の不動産会社が関与できる一般媒介の場合、買主は他の競争者がいることを意識し、迅速かつ高い価格での購入を検討することが一般的です。
他の買主に取られることを恐れ、価格交渉を行わずに買付申込を入れようとします。
また、両手取引では早く物件を決めようとする傾向にあり、営業担当者も価格交渉による契約のとりまとめに積極的です。
また、価格交渉に時間がかかってしまうと、売却活動がさらに長引くなってしまうことも懸念点でしょう。
不動産の囲い込みで買えない事例2選
囲い込みは土地・建物、また居住用・投資用などは関係なく、どんな不動産にも起こり得る話です。
本章では、実際に囲い込み被害でよくあるパターンを2つ紹介しましょう。
売主側の売れない事例、買主側の買えない事例、それぞれ解説します。
事例1.依頼したかった仲介業者から買えなかった
Aさんは、とても信頼のできる仲介業者を見つけ、不動産投資のための物件探しを依頼しました。
3ヵ月ほど経過したところで理想的な収益物件を見つけたので、仲介業者を介して先方の不動産業者に問い合わせをすると「申込が入ってしまった」と言われたようです。
諦めて次の物件を探そうとしましたが、不動産ポータルサイトでは一向に情報が掲載されたままでした。
そこで、買主が直接問い合わせると「まだご紹介可能です」と言われたといい、直近で申込が入った形跡もなかったようです。先に依頼していた仲介業者へ相談したところ、囲い込みの実態について説明されました。
どうしても購入したい物件だったため、依頼したかった仲介業者ではなく、ポータルサイトで掲載元の業者に依頼するしかなかったとのことです。
事例2.気に入った物件が買えなかった
Bさんはマイホーム購入に向けて物件を探していました。
インターネットで検索していたところ、とても魅力的な新着物件を見つけ、すぐに購入意欲が高まったそうです。しかし、その物件を取り扱っている不動産会社は特定の1社のみでした。
Aさんは知人の不動産会社に連絡し、その物件についての詳細を尋ねましたが、その物件は囲い込みによって他の不動産会社では情報が提供されていなかったと言います。知人の会社からの紹介がなかったため、Aさんは翌日、直接その物件を取り扱っている不動産会社に連絡することにしました。
しかし、連絡を取ると、すでに他の買主が興味を示しており、話が進んでいると言います。Aさんはその物件を非常に気に入っていたため、迅速に動きたかったのですが、囲い込みによって情報が遅れて伝わり、希望の物件を逃してしまいました。
囲い込みをされているのか調べる方法はある?
売主は、販売依頼した自分の物件が囲い込みをされているかどうか、調査する方法はあるのでしょうか。
直接不動産会社に訪ねてみても、「自社で囲い込みをしている」とは当然言うわけがありません。
最も確かな方法は、別の不動産会社に依頼するなどして、物件の問い合わせをしてみることです。
「●●町●丁目、●●●●万円の中古戸建ですが、ご紹介は可能でしょうか?」と尋ねてみてください。
売主に特別連絡が無いのにも関わらず、「申込が入っている」など紹介を拒否するような返答をされた場合、囲い込みの可能性があります。
不動産会社から囲い込みをされたらどうする?
もし、不動産会社から囲い込みをされていることが発覚したら、その会社に対して信用を無くしてしまいますよね。
「もうこの会社には頼みたくない」と思うのではないでしょうか。
このような場合はどのようにすべきか、2つの方法を解説します。
1.締結中の媒介契約を中途解約をする
契約期間の途中でも媒介契約の解除ができます。一般的に専属専任媒介や専任媒介では、3ヵ月以内で売主都合によって中途解約をすると、違約金が発生します。
運良く違約金を免除されても、営業活動を行った分の費用は請求されることが多いようです。
しかし、不動産会社が囲い込みをした場合は、媒介契約における約款の「不正・不当な行為をしたとき」に該当するため、これらの請求をされることなく契約解除ができます。
2.悪質なケースは専門機関に相談する
囲い込みを辞めるように言ったのにも関わらず続く場合や、囲い込みの手法があまりに酷い場合には、専門機関に相談してみましょう。
相談先として有力なのは、国土国通大臣もしくは都道府県知事です。
国土交通大臣や都道府県知事は、宅建業の免許を有する管轄の業者が悪質なことをした場合、業務停止・免許の取り消しといった処分を必要に応じて下すことができます。
消費者センターなど代表的な相談先もありますが、不動産会社に関する内容は上記へ連絡することが最も早い方法でしょう。
不動産の囲い込みで買えないを無くそう!有効な3つの対策とは
では、囲い込みのリスクを回避し、より効率的かつ公平な取引を実現するためには、どのような対策が有効なのでしょうか。
- 信頼のできる仲介業者を選定する
- 一般媒介契約を締結する
- 媒介契約書に特約を入れる
1.信頼のできる仲介業者を選定する
囲い込みを防ぐためには、まずは信頼できる仲介業者を選ぶことが重要です。
不動産業界には多くの業者がありますが、全てが透明性を持って業務を行っているわけではありません。
口コミや評判、業者の実績をよく調査し、信頼性の高い業者と契約することが大切です。業者が所属する団体(例えば全日本不動産協会など)を確認することも有効です。
また、囲い込みを行わないよう事前に仲介業者に伝え、釘を刺しておくことも良いでしょう。
2.一般媒介契約を締結する
どうしても囲い込みをされたくない場合、売主は「一般媒介契約」を締結することをお勧めします。
一般媒介では複数の仲介業者に売却依頼をすることが認められているため、思い通りの売却活動ができていないと感じたら、違う会社への依頼が可能です。
不動産業者は当然この形態を理解しているので、一般媒介にしておくことで囲い込みを働く業者はほとんどいなくなるでしょう。
囲い込みが行われやすいのは、専属専任媒介と専任媒介ですので、注意してください。
(一般媒介契約だからと言って、囲い込みが全く行われないわけではありません。)
3.媒介契約書に特約を入れる
売却戦略を考えるうえで、どうしても専属専任媒介もしくは専任媒介を選択したいケースもあるでしょう。
その場合は、媒介契約書の中に特約を入れることも有効です。
専属専任媒介や専任媒介は、一般的に契約期間が3カ月間という縛りがあります。そのため、この期限内に売主都合で解約をすると、違約金を請求されてしまう可能性があります。
例えば、「契約日から1カ月を経過した後は契約解除を可能とする旨」を媒介契約書に入れるなどして、囲い込みにあっていると気付いた場合にすぐに解約できる状態にしておくことが望ましいです。
まとめ
この記事では、不動産業界で日常的に横行している「囲い込み」について、発生理由やデメリット、対策について詳しく解説しました。
不動産の囲い込みは、適切な情報が得られないために本当に買いたい物件が、購入できないという問題を引き起こします。また、売主側は売却活動の長期化や、希望よりも低い価格で売却せざるを得ない状態を生み出してしまいます。
大手でも地域に根付いた不動産会社でも頻繁に見られるからこそ、口コミや評判、実績を十分に調査し、信頼性の高い業者と契約することが大切です。
このような状態を作らないために、売却依頼をする業者選びや媒介契約の重要性をしっかりと理解し、自分にできる対策を行っていきましょう。
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