専任媒介契約とは?メリット・デメリットや他の媒介との違いを解説

物件売却で不動産会社へ仲介の依頼をする際、締結する媒介契約には3種類の形態があります。 

  • 専属専任媒介契約
  • 専任媒介契約
  • 一般媒介契約

中でも、最もポピュラーな「専任媒介契約」の仕組みを理解することは、売り手として有利な立場を確保するうえで非常に重要です。

この記事では、専任媒介契約の具体的な特徴やメリット・デメリット、他の媒介契約との違いを解説します。また、囲い込み被害や、安心して専任媒介契約を締結するための業者選びのポイントについて合わせて紹介していきます。ぜひ最後までご覧ください。

本記事を読んでわかること
  • 専任媒介契約の7つの特徴が分かる
  • 専属専任媒介契約や一般媒介契約との違いを把握できる
  • 専任媒介のメリット・デメリット、向いている人が分かる
  • 不動産会社選びのコツを理解して、安心して専任媒介契約を結べる

目次

賃貸管理完全ガイド
依頼すべき理由

専任媒介契約にみられる特徴7選

専任媒介契約は、スムーズな売却活動を推し進めるための複数の特徴を持ち合わせています。契約期間中、一つの不動産会社が独占的に販売へ携わることで、早期売却ができたり、希望価格で売れたりという効果を期待できます。

では、専任媒介にみる7つの特徴を具体的に解説していきましょう。

1. 契約できる不動産会社は一社のみ

専任媒介では、売主は契約する不動産会社を一社に限定しなければなりません。依頼した1つの不動産会社が売主の窓口となり、売却活動を展開していきます。売主は窓口を一本化することで査定から売り出し、販売、契約に至る売却戦略を立てやすくなります。

また、不動産会社が販売活動に専念してくれるというのも特徴の1つです。営業担当者の手腕が売却に大きな影響与えるため、契約を締結する不動産会社選びがとても大切です。

2. 売主が自分で買主を見つける「直接取引」が可能

専任媒介においては、直接取引ができる点も、売主にとって大きなポイントです。なぜなら、直接取引では、本来不動産会社へ支払う仲介手数料が不要になるからです。知人や近所の人など、購入希望者を自ら見つけることができれば、経済的な利点となるでしょう。

また、収益物件を売却する場合には、投資家仲間の伝手をたどって売れるケースなどもあります。このような可能性がある方は、直接取引ができる専任媒介契約の選択をしておくと良いでしょう。

3. 契約期間の上限は3ヵ月

媒介契約には契約期間の上限が設けられており、通常は3ヶ月となります。この期間は、状況に応じて更新可能ですが、この間に有力な買主候補が見つからなかったり、思うように内覧の問い合わせが入らなかったりした時は、契約更新をしない選択もできます。

売主と専任媒介契約をした不動産会社は、この3ヶ月でなんとしてでも買主を見つけて契約をまとめたいので、独自サービスなどを利用して積極的に販売活動に取り組むでしょう。

4. 中途解約は条件付きで可能

不動産会社の行動が売却活動に悪影響を与えることが確認された場合には、専任媒介契約を締結後でも途中で解約ができます。

  • 営業報告やレインズの登録について規定違反をしている
  • 不動産ポータルサイトに物件掲載しないなど、営業活動をしていない

例えば、上記のような場合です。

また、売主側に非がなく、やむを得ない事情がある場合にも中途解約はできます。

  • 直接取引の相手を見つけた
  • 転勤の辞令がなくなったため、引き続き居住する

このような場合は、契約の途中でもペナルティーなどなく解約が認められます。

ただし、違う不動産会社と契約をしたくなったなど、売主の一方的な解約通告は認められません。期間内にどうしても中途解約をしたい場合は、営業活動に要した費用を支払うことで、契約を終了できる可能性があります。

5. 営業活動状況の報告は2週間に1回

売却活動において売主にとって重要なのが、不動産会社から提供される営業活動状況の定期報告です。どのような方法で活動し、どれほどの問い合わせ数があったかを知ることで、今後の戦略立てに役立てられるでしょう。

専任媒介契約では、最低でも2週間に1回の報告が求められます。これにより、売主は販売活動の現状を把握することができ、適切なタイミングで値下げに踏み出すなど売出し状況の最適化ができます。

6. 契約日から7日以内にレインズへの登録が義務

専任媒介契約では、契約日から7日以内に物件の情報を不動産流通機構(レインズ)へ登録することが義務付けられています。より具体的な話をすると「REINS IP」という専用サイトに登録をすることで、その会員である全国の不動産会社が売り出し情報を閲覧できます。

これにより、販売情報が適切に不動産市場に公開され、多くのネットワークを介して早期に買主を見つけ出すことが可能です。

7. 仲介手数料の規定は他の媒介契約と同じ

最後に、仲介手数料に関してですが、専任媒介契約においても、他の契約と同様の規定が適用されます。仲介手数料は、売却の成果に応じて不動産会社に支払われる費用であり、具体的な料率は宅地建物取引業法に基づいて定められています。

仲介手数料の上限はこのように定められていますが、価格が400万円を超える物件を購入する際には、それぞれの金額部分ごとに3段階に分けて計算しなくてはなりません。さすがにそれでは大変なので、「物件価格×3%+6万円」という速算式を用いるのが一般的です。


「専属専任媒介契約」と「一般媒介契約」とは

他の契約形態と専任媒介契約の内容を比較すると、売主の縛りが専属専任媒介契約はより厳しく、一般媒介契約はより緩くなります。 それぞれの契約では、不動産会社の対応や売却活動にどのような違いが見られるのでしょうか。

専属専任媒介契約の特徴

専属専任媒介契約は、一社の不動産会社にしか依頼ができないので、専任媒介契約と同様に熱心に営業をしてもらいやすくなります。また、自分で探してきた買主との直接取引は出来ず、レインズへの登録義務や営業活動の報告義務についても厳しく取り決められているため、不動産会社からきめ細かな対応をしてもらえるのが特徴です。

売却に対して、不動産会社と密な連携を取りながらチームプレーを行っていきたい人に向いているでしょう。

一般媒介契約の特徴

一般媒介契約は、複数の不動産会社に同時に売却依頼をすることができます。そのため「需要の高い物件」や「売れる物件」でない場合、熱心に営業をしてもらえないかもしれません。せっかく経費をかけて熱心に売却活動を行っても、他の不動産会社に取られてしまう可能性があるからです。 一方で、複数の不動産会社が競い合うため、ニーズが高い売れる物件であれば、募集価格よりも高値で売却できるなど有利に働くケースもあります。

ただし、レインズへの登録義務がないため、全国の不動産会社への情報伝達が遅れてしまう可能性を覚えておきましょう。媒介契約書に「契約日より〇日以内に物件情報をレインズへ登録する」という条項を設けることは認められていますので、心配な人は特約として提案してみてください。


専任媒介契約のメリット3選

では、専任媒介契約を選択することで、どのような点が売主のメリットとなるのでしょうか。

1. 積極的な販売活動

2. 直接取引は仲介手数料が無料

3. 不動産会社とのやりとりの負担が少ない

それぞれ順に解説していきましょう。

1. 積極的に販売活動を行ってもらえる

専任媒介契約を結び、特定の不動産会社に売却活動を託すことで、自社で利益(仲介手数料)を出そうと物件が売れるよう尽力します。不動産ポータルサイトへの掲載や、オープンハウスの実施など、さまざまな方法を駆使して売却活動を行ってもらえるので、物件が目立ちやすくなります。

そのため、売却成立までの時間を短縮したい場合には、専任媒介契約を活用するのが賢明な選択でしょう。

2. 直接取引は仲介手数料が無料

専任媒介契約では、自分で見つけてきた買主と直接取引をする場合、不動産会社を介さないので仲介手数料が発生しません。例えば、3,000万円の物件であれば、105万円ほどの仲介手数料を浮かせることができます 。

また、この無料になる仲介手数料分を値引きすることで、円滑な直接取引に繋がることが期待されます。自身でも積極的に売却活動を行いたい売主は、覚えておきたいところです。

3. 不動産会社とのやりとりの負担が少ない

専任媒介では特定の不動産会社としか契約ができないので、複数の会社とコミュニケーションを取るよりも、やりとりがずっと楽になります。一社に絞ることで、担当者との関係も深まり、売主と不動産会社の信頼関係も築きやすくなるでしょう。 物件売却に関する詳細な相談やアドバイスを期待でき、疑問点の解決にもスムーズに対応してもらえます。

内覧希望者の対応も複数の会社との調整が不要なので、やりとりが面倒と感じる人にとっては、大きな利点となるでしょう。


専任媒介契約のデメリット2選

この契約には多くのメリットがある一方で、注意しなければならないデメリットも存在します。

1. 囲い込み被害に遭いやすい

2. 担当者選びが売却成立に影響する

以下では、専任媒介契約を締結する際に、特に把握しておくべきデメリットを2つ紹介します。

1. 不動産会社からの囲い込み被害に遭いやすい

契約を一社に絞ることで、その不動産会社が売却物件の情報を独占するため、他社による販売のチャンスが失われるデメリットがあります。特に問題視されるのは、不動産会社が「囲い込み」を行い、他の業者や買主に積極的に情報を開示しないケースです。

詳しくは後述しますが、契約前に不動産会社の評判や実績をきちんと調査し、定期的な進捗報告を要求することが重要です。

2. 担当者選びを間違えると売却がスムーズにいかない

専任媒介契約では、不動産会社の担当者の腕前が売却を大きく左右します。

例えば、経験が少ない担当者の場合、物件の査定額を他社より高く見積もられる可能性があります。それを良かれと思い契約したものの、販売期間が長期化してしまったり、売出価格よりも値下がりしたりするかもしれません。 実績豊富で確かなスキルをもった担当者に出会えれば、査定から売却成立までスムーズに進む可能性が高まります。

契約前には、不動産会社及び担当者の実績や評価をしっかりとリサーチし、納得できる人に依頼するようにしましょう。

  • コミュニケーション能力
  • 市場に関する知識
  • 販売戦略の提案能力
  • 連絡などやりとりの安心感

特に上記の点をポイントとして、担当者の資質を見極めていきましょう。特に、契約前の面談は入念に行うようにしてください。

これらのデメリットを充分に理解し、適切な対策を講じることで、専任媒介契約の利用時には、安心して売却活動を進められるようになります。


専任媒介契約における「囲い込み」とは

本章では、デメリットで解説した「囲い込み」についてもう少し掘り下げてみましょう。不動産会社が囲い込みをする理由は、売主・買主双方からの仲介手数料を自社で独占したいがために発生します。

売主・買主双方にとって不利益になることがあり、厳しい対処が求められますが、囲い込み自体は宅建業法違反ではないので、日常的に横行しているのが現状です。

「両手取引」と「片手取引」の違い

不動産取引には、「両手取引」と「片手取引」という二つの形態があります。

  • 両手取引:不動産会社が売主と買主の双方を担当する場合を指し、一つの不動産会社が仲介手数料を両方から受け取るケースです。
  • 片手取引:売主側と買主側にそれぞれ異なる不動産会社を通して取引を行うので、二つの会社が介入します。一つの不動産会社が両方から仲介手数料を受け取ることはありません。

不動産会社はより多くの利益を得るために両手取引を好み、それが囲い込みの発生へと繋がります。

囲い込み被害で売却活動にどんな影響がある?

囲い込みに遭ってしまうと、売主は主に以下の被害を受けます。

  • 売却時期が遅くなってしまう
  • 取引価格が安くなってしまう

例えば、レインズを見た他の不動産会社が物件について問い合わせをしても

  • 商談中で申込が入りそうなので紹介できない
  • 申し込みが入ったので内覧できない

というように、他の不動産会社に物件情報を提供しない行為に及ぶことがあります。

しかし、売主への活動報告では「一件問い合わせはありましたが、内覧希望はまだありません」と言うように、自社が囲い込みを行ったことは伝えません。 市場の透明性が損なわれ、公正な競争の場が失われることとなり、結局は売主や本当に購入したい買主が不利益を被る結果になるのです。


専任媒介契約が向いている人とは

一定の条件のもとで不動産会社に売却活動を委ねる専任媒介契約は、特定の状況やニーズを持つ方に向いています。

では、具体的にどんな方が専任媒介契約を選ぶべきなのでしょうか。以下に、その主な対象者を挙げていきましょう。

1. 早期売却を目指している人

専任媒介契約の場合、一社に集中的に売却活動を任せることができ、その結果として売却へのスピードの速さが期待できます。積極的なマーケティング戦略や広告展開、ネットワークの活用などが行われやすくなるため、市場に物件情報が迅速に行き渡り、買い手とのマッチングの機会も増加します。

また、これにより当初設定した希望価格で契約が成立する可能性も高まるでしょう。

2. 自分でも積極的に買主を探したい人

専任媒介では、買主を自分で見つけた場合に「直接取引」が認められているため、仲介手数料の節約を目指すことができます。自ら積極的に売却活動を行いたい方や、身近に売れそうな人がいる場合には、この契約形式が適しているでしょう。 その際は不動産会社にも報告する必要がありますので、適切な手続きを踏むことが大切です。

3. 複数の不動産会社との連絡を煩わしく感じる人

多くの不動産会社と連絡を取り、それぞれの会社からの報告や提案を受け入れるのは、時間と手間がかかる作業です。専任媒介契約では、これらの手間を省き、一社の不動産会社と密に連携を取ることができます。 コミュニケーションの効率化を図ることができるため、売却に関わるストレスを軽減できるメリットがあります。

信頼できる会社に任せ、安心して売却活動を進めていきたい人には向いているでしょう。


専任媒介契約で不動産会社の見極めポイント4選

不要なトラブルや売却チャンスを喪失しないためにも、売却活動を委ねる不動産会社の見極めは非常に重要です。さらに専任媒介で一社の不動産会社へ任せるとなると、より慎重な業者選定が必要になります。

本章では、信頼できる不動産会社を選ぶために基準とする4つのポイントを紹介しますので、会社選定の参考にしてみてください。

1. 宅地建物取引業の免許を確認する

宅地建物取引業の免許の有無は、安心してサービスを受けるための最低限の指標です。免許の有無を調べる際には、以下の3つの方法があります。

  1. 国土交通省のWebサイトで確認
  2. 都道府県の宅建協会のWebサイトで確認
  3. 不動産会社や宅建士のWebサイトで確認

番号は6桁の数字で成り立っていますので、契約前に登録情報を照会してみてください。

2. 不動産会社の売却実績を確認する

不動産会社を選ぶ際、過去の売却実績を確認することは非常に重要です。実績の多さは、そのまま経験値とも言えます。

  • 一戸建てとマンションどちらが得意なのか
  • 収益物件の販売実績はどれほどあるのか
  • 新築と中古どちらを多く取り扱っているのか

例えば、上記のような点を確認してみましょう。不動産会社にも得意、不得意なジャンルがありますので、収益物件は取り扱いが少ない、というケースはよく見られます。

3. 三社以上の不動産会社と比較する

信頼できる不動産会社を見極めるためには、一社だけではなく、複数の不動産会社との比較が欠かせません。少なくとも三社以上の不動産会社の情報を収集しましょう。それぞれの会社に同じ条件で査定を依頼してみることで、価格面での適切性や、どのような売却戦略を提案してくるのかを明らかになります。

例えば、実際に物件に家具を設置する「ホームステージング」を独自サービスで行っている会社があれば、それによって早期の売却を期待できるでしょう。複数社を比較することは、不動産会社自身に競争意識を持たせることにもつながるため、より良いサービスを提供してもらいやすくなる利点もあります。

4. 囲い込みをしないように明文化する

信頼の置ける不動産会社は、透明性の高い営業活動を行いますので、囲い込みを行っていないかどうかを確認することが重要です。さらに安全を期すため、契約時には囲い込みを行わない旨の取り決めを明文化しておくと良いでしょう。

例えば、囲い込みがないことを保証する条項を契約書に盛り込むことで、後々のトラブルを防げる可能性が高まります。


まとめ

この記事では、「専任媒介契約とは?」と題して、その特徴やメリット・デメリット、さらに他の契約との違いについて具体的に解説してきました。また、専任媒介契約が不動産取引においてどのような位置づけであるのか、そしてどんな方に適しているのかについても触れてきました。

専任媒介契約は、不動産売買における重要な役割を持っています。一つの不動産会社に売却を専任することで、その会社から全力のサポートを得られる可能性が高まります。その一方で、不動産会社選びや囲い込み問題には注意が必要でしょう。 不動産売買を考える際にはこれらのポイントを考慮し、より賢く、適切な選択を行うことが大切です。

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