
「実家を相続したけど、誰も住む予定がない…」「転勤で家を空けることになったけど、売るか貸すか迷っている…」
そんなとき、多くの人が抱くのが「空き家の維持費ってどれくらいかかるのだろう?」という疑問です。
誰も住んでいなくても維持には毎年まとまった費用がかかり、放置すれば苦情や「特定空家」指定による税額増などのリスクもあります。
この記事では、空き家にかかる年間維持費の目安や節約のコツ、活用方法までを解説します。
空き家の管理や活用方法に迷っている方は、ぜひ弊社へご相談ください。状況に合った最適な選択肢をご提案します。
この記事で分かること |
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目次
空き家の維持費は年間いくら?【結論と目安】
結論から言うと、一般的な戸建ての空き家では年間20万円〜50万円程度の維持費がかかります。
「え、そんなにかかるの?」と驚かれる方も多いでしょう。でも、これが現実です。
空き家の年間維持費の内訳(目安)
固定資産税:10〜21万円
都市計画税:0〜5万円(課税されない地域もあり、評価額が高い場合は上限増)
火災保険・地震保険:3〜10万円(構造・築年数・補償内容により変動)
水道(基本料金):2〜4万円(上下水道合計/地域差あり)
電気(基本料金):1〜2.5万円(契約アンペア数や使用頻度による)
修繕・清掃・草刈り費用:3〜10万円
管理・点検費用:0〜24万円(自主管理か委託かによる)
交通費:0.5〜3万円(距離・訪問頻度による)
その他(掃除用具・防犯設備・除湿対策・不法投棄処分など):1〜3万円
しかし、放置して建物が傷んでしまうと、修繕費でさらに大きな出費が発生します。
維持費の中で一番重いのが固定資産税で、これだけで年間10万円〜30万円かかることがほとんどです。維持費の50%以上を占めることも珍しくありません。また、怖いのは「特定空家」に指定されてしまうケースで、税金が一気に6倍になることもあります。
そこに保険料や光熱費の基本料金、草刈りや清掃の費用などが加わっていきます。
空き家の維持費の内訳と相場
空き家の維持費は大きく分けて、以下の5つが中心です。
- 税金
- 保険
- 光熱費
- 修繕費
- 管理費
「人が住んでいないから費用はゼロ」と思いがちですが、実際は毎年まとまった金額がかかります。ここでは、上記5つの代表項目が具体的にどんな費用なのか、計算式や事例とともに紹介します。
①固定資産税
固定資産税は、全国どこでも空き家を所有している限り必ず発生する税金です。住んでないからといって免除してもらうことはできず、空き家を維持する中で最も大きな負担となります。
計算方法はシンプルで、
固定資産税 = 固定資産税評価額 × 1.4%
たとえば評価額が1,000万円の場合、「1,000万円 × 1.4% = 14万円/年」となります。同じ築30年の木造住宅でも、都市部は評価額が高く税額も高め、地方は安くなる傾向があります。東京郊外で評価額1,500万円の戸建てなら年間約21万円、地方都市で評価額500万円なら年間約7万円です。
評価額は毎年4月頃に届く「課税明細書」で確認可能です。もし紛失しても、市区町村の固定資産税担当課で再発行できます。
土地も建物も同じ方法で算出しますが、空き家が「住宅用地」に該当すると、土地の固定資産税が減額されます。
【住宅用地の特例(税優遇)】
小規模住宅用地 (200㎡以下の部分) | 評価額が6分の1に軽減 |
一般住宅用地 (200㎡超の部分) | 評価額が3分の1に軽減 |
【参考資料:固定資産税等の住宅用地特例に係る空き家対策上の措置】
評価額1,000万円(200㎡以下)の土地の場合、
本来の税額:1,000万円 × 1.4% = 14万円
特例適用後の税額:166.6万円(1/6の評価額) × 1.4% ≒ 約2万3,000円/年
に軽減されます。管理を怠って「特定空家」に指定されると、この軽減がなくなって税額が最大6倍に跳ね上がりますので、注意が必要です。
②都市計画税
都市計画区域内にある土地・建物に課される税金で、都市のインフラや整備事業の財源になります。課税されない地域もあるため、所在地の自治体で確認が必要です。
こちらも固定資産税評価額を基に算出されます。計算式は、
都市計画税 = 固定資産税評価額 × 0.3%
評価額1,000万円なら、「1,000万円 × 0.3% = 3万円/年」です。
③火災保険・地震保険
「空き家に保険なんて必要?」と思うかもしれませんが、これは必須項目です。
なぜなら、万が一空き家が原因で近隣に迷惑をかけた場合、民法第709条により、故意でなくても損害賠償責任を負う可能性があるからです。
- 強風や老朽化した庭木が倒れ、隣家の塀や建物を壊した
- 台風で屋根瓦が飛んで隣の車を傷つけた
- サビや劣化で外壁の部材や屋外設備が落下し、車や人に被害を与えた
- 雨漏りや水道管破裂で水が漏れた
- 放火や侵入被害に遭った
たとえば上記のような事態が発生した際、保険に加入していなければ、高額な賠償費用は実費負担となります。実際、管理が行き届かない空き家は、住んでいる家よりもリスクが高いことが多いです。
火災保険料は契約内容によって変わりますが、年間5万円程度が目安です。最近は、空き家専用のプランを用意している保険会社もあるので、複数社で見積もりを取ることをおすすめします。
④光熱費(最低限の契約維持)
「誰も住んでいないんだから、電気も水道も止めればいい」と考える人もいますが、これは危険な判断です。
ライフラインを完全に止めてしまうと、水道管が錆びついたり、建物内部の湿度管理ができずにカビや腐食が進んだりします。また、定期的な清掃や点検の時に電気や水道がないと作業ができません。
水道の基本料金は、地域や給水用メーターの口径によって変わりますが、月2,000円前後、年間2万4,000円程度です。
電気の基本料金は、契約アンペア数や電力会社によって異なりますが、空き家で最低限の契約を維持する場合、月1,000円程度、年間約1万2,000円が目安です。
長期間ライフラインが止まっている空き家は、特定空家に認定される要因の一つにもなりますので、ライフラインは通しておきましょう。
⑤修繕・清掃・草刈り費用
空き家を所有していて厄介なのが、修繕や日常清掃、庭先の草木の手入れです。特に草刈りは、放置すると近所迷惑になりますので、極力実施するようにしてください。
草刈り作業を業者に頼むと、1回5,000円〜2万円程度かかります。夏場は草木が伸びるのが早く、蜂の巣などが作られてしまうと大変ですので、定期的な巡回が必要です。
建物の清掃も大切で、1回1万円〜3万円程度が相場です。これに小さな修繕(雨どいの修理・交換など)が加わると、年間で10万円を超えてしまうこともあります。
⑥管理・点検費用
「自分で管理するから大丈夫」と思っていても、遠方に住んでいると現実的に難しいもの。空き家管理サービスを利用する場合、月5,000円〜2万円程度が相場です。
サービス内容は、月1〜2回の見回り、換気、簡単な清掃、郵便物の整理などです。「簡単な作業内容のわりに、思ったよりも金額が高い」と感じるかもしれませんが、トラブルを未然に防ぐことを考えると決して高くはありません。
⑦交通費
空き家を所有する方が意外としっかり計算しないのが、この交通費です。月1回物件を見に行くだけでも、電車代やガソリン代は発生します。
遠方の場合は、宿泊費も必要でしょう。「たまにしか行かないから」と思っていても、年間で計算すると大きな金額になります。
⑧その他
上記以外に発生する細々とした出費も、意外とバカになりません。
- 掃除用具
- 防犯設備
- 除湿対策
- 不法投棄されたゴミの処分費
こうした小さな出費も積み重なれば、年間で数万円規模になることもあります。見るからに空き家と分かる状態は、不法投棄や犯罪のリスクを高めてしまいます。
空き家の適切な管理を行い、ライフラインの完全停止は避けましょう。
空き家の管理や活用方法に迷っている方は、ぜひ弊社へご相談ください。状況に合った最適な選択肢をご提案します。
空き家の維持費を節約する方法
空き家の維持費を抑えるコツは、「メリハリをつけること」です。削れるところは少しの手間をかけてでも徹底的に削り、必要なところにはしっかりお金をかける。この使い分けが大切です。
①固定資産税の軽減制度を活用する
何より大切なのは「特定空家」に指定されないこと。年に数回でもいいので、草刈りや簡単な清掃は欠かさずに行いましょう。
自治体によっては空き家の管理に補助金を出してくれるところもあります。一度役所に相談してみる価値はあります。
例えば、東京都北区では以下のような助成事業を行っています。
対象 | 北区内で1年以上の空き家となっている戸建住宅の所有者で1~6すべての要件を満たしていること |
要件 |
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助成内容 |
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(出典:東京都北区「空き家の適正管理助成」)
補助制度は自治体ごとに内容や条件が異なるため、まずはお住まいの役所や公式サイトで最新情報を確認してみましょう。
②管理・清掃を効率化する
管理の頻度を見直してみましょう。建物の状態や季節に応じて、本当に必要な回数を見極めることが大切です。一部の必要な箇所だけを管理会社に任せることもおすすめです。
近所の人と仲良くしておくのも重要なポイント。何か気になる点があったときに連絡をもらえれば、大きなトラブルを防げます。
③保険の補償内容を見直す
建物の価値が下がっているなら、保険金額も見直すとよいでしょう。
不要な特約を外すだけで年間数万円の節約になることもあります。ただし、昨今火災保険料は値上がり傾向にあるため、むやみに解約することはおすすめしません。
いくつかの保険会社で見積もりや補償内容を比べてみて、「やっぱりいらないな」と納得できたときだけ、プラン変更や解約を考えれば十分です。
④事前のメンテナンスで長寿命化
「予防は治療に勝る」という言葉通り、小さな修繕をこまめに行うことで大きな出費を防げます。
たとえば、外壁の塗装を少し早めにやっておくことで雨漏りを防ぎ、結果として屋根や内装の修繕費を抑えることが可能です。庭木の剪定や草刈りも、放置してから一気に片づけるより、定期的に行ったほうが安く済みます。
これらの積み重ねが物件の資産価値を維持・向上させ、結果的に将来の売却時にも有利に働きます。
空き家を活用して維持費を補う方法
「維持費がかかるなら、いっそのこと活用して収入を得よう」という発想の転換も大切です。放置して負担を増やすよりも、収入源として生かすことで管理の負担も軽減できます。
本章では、空き家の活用法を5つ紹介します。
建物付きで貸し出す(住宅・店舗・倉庫)
比較的簡単なのは、家やお店、倉庫としてそのまま貸す方法です。
すぐに家賃が入りやすく、建物の価値をそのまま活かせます。安定した家賃収入が見込めますが、普通の賃貸契約では借りた人の権利が強くなるという注意点があります。
これにより、危険を伴う老朽化など、正当な理由がないと退去させることができません。期限を決めて貸したいときは、「定期借家契約」を使うと安心です。
弊社の賃貸管理について詳しく知りたい方は、ぜひこちらのコラムもご覧ください。
年間入居率98%・平均入居1ヶ月の客付け!賃貸管理でルーム・スタイルが選ばれる15の理由
更地にして貸し出す
次に紹介するのが、古くなった家を取り壊し、土地だけを貸す方法です。土地の間口(道路との接道面)が広ければ、駐車場や資材置き場など使い道が広く、手入れも少なくてすみます。
ただし、木造住宅の解体は1〜2週間程度で終わることが多いものの、まとまった費用が必要です。空き家の解体に関しては、多くの自治体で助成制度が用意されています。たとえば「東京都空き家家財整理・解体促進事業」では、解体費の半額(上限10万円)が補助されます。荒川区や北区、新宿区など一部の区では、より手厚い助成を受けられる場合もあります。解体を検討している方は、まずはお住まいの自治体に確認してみるとよいでしょう。
また、建物を取り壊して更地にすると「住宅用地の特例」が使えなくなるため、固定資産税が上昇することも視野にいれておきましょう。
【解体に関する補助事業の参考資料(東京都):東京都空き家家財整理・解体促進事業|補助金一覧|東京都住宅政策本部】
短期民泊やシェアハウス運営
観光地や駅に近い場所なら、短期民泊やシェアハウスとして使う方法があります。短い期間での貸し出しは、時期によって料金を変えられ、忙しい季節には収入を増やせます。ただし、入れ替わりが多く掃除や管理の手間がかかるため、遠方の場合は近くの管理会社に一任するとよいでしょう。
また、民泊を運営するには自治体への申請や届け出が必要で、物件を紹介するポータルサイト(Airbnbなど)への登録や、写真・説明文の作成といった専門的な知識も求められます。180日までの営業制限や地域の独自ルールがあるので、実績のある業者や代行サービスの利用検討をおすすめします。
駐車場や物置としての部分利用
土地や建物の一部を駐車場や物置として貸す方法です。初期投資が少なく始めやすく、利用者の入れ替えも柔軟に対応できます。
月極駐車場の場合は契約や集金など事務作業が発生しますが、需要が安定しているエリアでは長期的な副収入源になります。
事業用スペースに改築する
空き家をカフェや事務所、レンタルスペースなど事業用に改築する方法です。立地やコンセプトによっては高い収益が見込め、地域活性化にも貢献できます。
ただし、用途変更や建築基準法への適合が必要な場合があり、改築費用や営業許可の要件も事前に確認しておくことが重要です。
空き家の活用法のコストや手順など、より具体的に知りたい方は、以下の記事も合わせてご覧ください。
【ケース別】空き家の活用法おすすめ5選|収益化に繋がる選び方
売却を検討する場合の注意点
空き家を売却する方法には、大きく分けて「更地にして売る」か「古家付きとして売る」かの2パターンがあります。更地は用途が広く買い手が見つかりやすい一方で、古家付きはリフォーム前提の買い手に限られます。他にも、売却時には以下のような注意点があります。
空き家を売却する時の代表的な注意点
- 相続登記を済ませないと売却できない
共有名義や抵当権など権利関係の整理が必要
境界確定や測量の費用が発生する場合がある
相続した空き家を売る場合、まずは相続登記を済ませる必要があります。2024年4月から相続登記は義務化されており、未登記のままでは売却ができません。
【関連記事:【2024年】不動産の相続登記(名義変更)が義務化!手続きや費用を徹底解説】
また、共有名義や抵当権が残っている場合は、事前に権利関係を整理する手続きが必要です。共有者全員の同意や、金融機関との調整が求められることもあります。
【関連記事:抵当に入っている土地は売却できる?買主・売主向け徹底ガイド】
さらに、土地の境界があいまいな場合は、売却前に境界確定や測量を行うのが一般的です。測量には数十万円単位の費用がかかることもあるため、早めに準備しておくと安心です。
弊社では、売却のお手伝いはもちろん、不動産買取サービスも行っております。急いで現金化したい方や、管理の負担をすぐに手放したい方は、お気軽にご相談ください。
まとめ|空き家の維持費を甘く見ない
この記事では、空き家の年間維持費の目安や内訳、節約のコツ、活用・売却の方法までを解説しました。
空き家は「誰も住んでいないからお金はかからない」と思われがちですが、実際には税金・保険・光熱費・管理費など、毎年ある程度まとまった維持費が必要です。放置すれば建物の劣化や草木の繁茂などから近隣トラブルに発展したり、「特定空家」に指定されて税負担が一気に増えるリスクもあります。
維持費を抑えるには、軽減制度や補助金の活用、管理方法の見直しが効果的です。また、活用や売却などの選択肢を早めに検討することで、無駄な出費や将来のトラブルを防げます。
現状に合わせた最適な方法を選び、長期的な視点で行動していきましょう。
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