
かつて「安定した堅実な資産運用」として人気を誇ったファミリーマンション投資。
しかし、物件価格の高騰や金利上昇の理由から、ここ数年で状況は大きく変わりました。それでも、家族世帯の入居ニーズは今も変わらず強く、「長期的に安定した家賃収入を得やすい」という魅力は健在です。
本記事では、昔と今のファミリーマンション投資の違いを整理しながら、2025年以降における戦略と注意点を詳しく解説します。
| この記事で分かること |
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目次
- ファミリーマンション投資とは?
- 単身向けとのちがい
- 主な入居層と需要傾向
- 昔と今のファミリーマンション投資の違い
- ①物件価格の上昇
- ②賃料の上昇率が鈍化
- ③金融環境の変化
- ④生活スタイルの変化
- ファミリーマンション投資のメリット
- ①長期入居で空室リスクが低い
- ②柔軟性がある出口戦略をとれる
- ③入居者の属性や質が良い
- ④人気学区エリアのファミリーマンションは資産価値が落ちにくい
- ファミリーマンション投資のデメリット・リスク
- ①初期費用と修繕コストが高い
- ②多くの自己資金・借入が必要
- ③利回りが低い
- ④不動産投資初心者には不向き
- ワンルーム投資との比較で見る戦略の違い
- 今の時代に成功するファミリーマンション投資のポイント
- ①エリアの具体的な将来性を確認
- ②管理体制と修繕積立金をチェック
- ③ 中古リノベは「築年数」に注意
- ④住まい選びの基準はAIやDXの進展も考慮
- ⑤融資戦略の基本を押さえる
- まとめ|今後の見通し
ファミリーマンション投資とは?
ファミリーマンション投資とは、主に家族で住む広めの住戸を対象とした不動産投資です。単身者向けの1R、1Kといった間取りではなく、2LDK~3LDK程度の物件を運用することで賃貸収入を得ます。
単身向けとのちがい
ファミリーマンション投資とワンルームマンション投資との違いは、以下のとおりです。
比較項目 | 単身向け | ファミリー向け |
間取り | 1R、1K、1LDK | 2LDK~3LDK程度 |
専有面積 | 20~30㎡程度 | 50~70㎡程度 |
㎡単価 | 高め | 低め |
総賃料(目安) | 月5~6万円程度 | 月10~15万円 |
入居期間 | 2~3年 | 5年以上 |
退去理由 | 卒業・転職・結婚など | 子供の進学・転勤など |
空室リスク | やや高い | 低い |
収益の安定性 | 変動しやすい | 比較的安定している |
単身向けと比べると、ファミリーマンションは初期投資こそ大きくなるものの、入居期間の長さや安定した家賃収入といった点で、長期運用に向いています。
主な入居層と需要傾向
ファミリーマンション投資の主な対象者は、子育て世帯、転勤族、共働き夫婦です。特に小学生から中学生の子供を持つ家庭が多く、安定した収入と長期居住の意向を持つ層が大半を占めます。
これらの層の入居者が重要視するのは「教育環境」「治安」「利便性」の3つです。
- 教育環境: 評判の良い学校区、通学の安全性、学習塾へのアクセス
- 治安: 犯罪発生率の低さ、街灯の整備状況、地域コミュニティの活発さ
- 利便性: スーパーや病院、公園などの生活施設への近さ
近年、需要トレンドは都心部だけでなく、郊外物件にも需要が広がっています。
ただし、郊外でも駅近・駐車場完備の物件に人気が集中しており、駅徒歩10分以内、かつ各戸に駐車場が確保されている物件が特に高い入居率を維持しています。
リモートワークの普及により、都心から少し離れた住環境の良いエリアで、広めの住空間を求める家族が増えているのも、近年の特徴的な傾向と言えるでしょう。
昔と今のファミリーマンション投資の違い
ファミリーマンション投資を取り巻く環境は、この10〜15年で大きく変化しています。
項目 | 昔(2010年前後) | 今(2025年現在) |
①物件価格 | 現実的で購入しやすい、利回りも確保 | 急上昇で非現実的、初期費用が高騰 |
②賃料動向 | 物件価格に見合った家賃設定ができた | 価格上昇に賃料が追いつかず、利回りが低下傾向 |
③金融環境 | 低金利で融資は比較的通りやすく、担保重視の審査 | 金利上昇傾向で審査厳格化、年収・自己資金を重視 |
④生活スタイルの変化 | 広さ・学校区などを重視 | 広さ・学校区に加えて、生活の利便性・ワークスペースも重視 |
上記の表をもとに、それぞれの項目について具体的に見ていきましょう。
①物件価格の上昇
2000年代後半から2010年代初頭にかけては、都心近郊でも坪単価100万円台のファミリーマンションも多く、一般の会社員でも手が届く価格帯でした。
しかし、2020年代に入り状況は大きく変化します。建築資材や人件費の上昇に加え、土地の取得競争が激化。
また、東京の不動産市場が海外の富裕層や国内外の投資家から注目される存在となったことで、価格は一段と押し上げられました。
現在では、都心エリアで坪単価300万円を超える物件も珍しくなく、同じ家賃収入でも投資効率は大きく低下。かつては5%超の利回りを狙えた物件が、今では3%台、場合によってはそれを下回る水準にまで落ち込んでいます。
②賃料の上昇率が鈍化
急激な物件価格の上昇とは裏腹に、家賃はそこまで上がらない現実があります。
一部の人気エリアでは家賃も上がっていますが、「物件価格の上昇スピードには追いついていない」状況です。ファミリー層は長く住んでくれるのが大きな魅力ですが、安定している反面、家賃を上げるタイミングが難しいという現実もあります。
競争率が高まる昨今、「利回りが高い物件を探せばいい」という昔ながらの考え方は通用しません。
③金融環境の変化
2010年前後は低金利が続き、融資も比較的受けやすい時代でした。審査では物件の担保価値が重視され、自己資金が少なくても購入できるケースも多く見られました。
ところが、2018年頃の「かぼちゃの馬車問題」や「レオパレス施工不良問題」を機に、金融機関の融資姿勢が一気に厳格に。過剰融資や収支計画の甘さが社会問題となり、現在は年収・自己資金比率・返済負担率など、個人の返済能力を厳しく見る傾向が強まっています。
さらに、日銀の政策修正による金利上昇も重なり、以前に比べて資金調達のハードルは高くなっています。
④生活スタイルの変化
一昔前の入居者が求める条件は、「広さ」や「学校区の良さ」が中心でした。
しかし、近年は共働き世帯の増加により、駅近や買い物の利便性(スーパーが遅くまで営業している)、保育園へのアクセスなど「生活導線」を意識した選び方が主流になってきています。
さらに在宅勤務の定着で、ワークスペースで「+1のスペース」を確保する間取りや、遮音性の高い住環境への高いニーズも。
他にも、ペット可・宅配ボックス・オートロックなどの設備も、入居者が物件を選ぶ際の重視ポイントになりつつあります。
ファミリーマンション投資のメリット
ファミリーマンション投資には、単身向け物件にはない独特の強みがあります。
初期投資は大きく利回りも控えめですが、そのリスクを取ってでも始めたい安定性と資産価値の維持力が特徴です。
①長期入居で空室リスクが低い
ファミリー層が引っ越す理由の多くは、転勤や子どもの進学といったライフステージの大きな変化です。
平均入居期間は、単身物件よりも2〜3倍長くなります。頻繁に募集をかける必要がなく、入退去のたびにかかるリフォーム費用や広告費も抑えられます。
空室期間が短いということは、つまり安定した収益が見込めるということです。単身物件のように短期間で入れ替わる心配が少ないのは、大きな安心材料になります。
②柔軟性がある出口戦略をとれる
ファミリーマンションの大きな強みは「自分が住むために買う人」にも売却できる点です。つまり、投資家だけでなく「実需層という大きな買い手市場がある」ということ。
投資家に売却する際の相場は市場の6割程度と言われていますので、これは出口戦略を考える上で重要なポイントです。
他にも、
- 老後に自分が住み替える
- 子どもに居住用として相続する
といった選択肢も現実的です。投資物件としてだけでなく、将来的な住居としても活用できる柔軟性は、単身向けワンルームにはないメリットです。
③入居者の属性や質が良い
ファミリーマンションの入居者は、一定の収入と社会的信用がある層が中心です。
子どもの教育環境や生活の安定を重視するため、家賃の滞納リスクが低く、物件の使い方も比較的丁寧な傾向があります。
単身物件に比べて近隣トラブルも少なく、管理組合の運営も協力的な入居者が多いです。属性の良い入居者が集まることで、物件全体の資産価値維持にもプラスに働きます。
④人気学区エリアのファミリーマンションは資産価値が落ちにくい
ファミリーマンションは、人気の学区や生活環境の整ったエリアに建てられているケースが多くみられます。こうした立地は、時代が変わっても根強い需要があります。
特に学区の評価が高い地域では、入居ニーズが安定しており資産価値を維持しやすいのが特徴です。土地の価値が下支えとなるため、築年数が経っても売却価格が大きく下がりにくい傾向があります。
たとえば、都心近郊の「人気学区×駅近」エリアでは、築20年以上でも新築時の価格を超える金額での取引事例もあります。
ファミリーマンション投資のデメリット・リスク
メリットがある一方で、相応のコストと難しさもあります。特に初期費用の大きさと流動性の低さは、投資判断をする上で無視できないポイントです。
①初期費用と修繕コストが高い
購入価格が高いのはもちろん、維持費も大きな負担です。面積が広い分、退去時の修繕やリフォームの費用も比例して高額になります。
トイレや洗面台、お風呂などの水まわり設備は、使用人数が多い分だけ故障や交換の頻度も高くなるでしょう。
長期保有を考えるなら、メンテナンスコストをしっかり見込んでおく必要があります。
②多くの自己資金・借入が必要
ファミリーマンションは価格帯が高く、購入時にまとまった自己資金と大きな借入が必要になります。単身向けマンションと比べて物件価格が数千万円高いことも多く、頭金だけで数百万円かかるケースも。借入額が大きい分、月々の返済負担や金利上昇の影響も受けやすくなります。無理のない資金計画を立て、返済に余裕を持たせることが大切です。
③利回りが低い
ファミリーマンションは、同じ立地でもワンルームに比べて家賃の㎡単価が低くなる傾向があります。
たとえば、都心エリアではワンルームの賃料が1㎡あたり4,000〜5,000円前後で推移しているのに対して、ファミリータイプはそれよりも㎡単価が低いケースが多く見られます。
つまり、面積が広くても家賃が面積分だけ上がるわけではないため、投資額に対する収益率は自然と低くなるということです。
購入価格が高い分、家賃とのバランスが取りづらく、短期的な収益性よりも安定性を重視する投資スタイルになりやすいのが特徴です。
④不動産投資初心者には不向き
ファミリーマンション投資は、基本的な仕組み自体は他の区分投資と同じです。
ただし、1物件あたりの投資規模が大きく、リスクも比例して高くなります。購入価格が高いため、空室期間や修繕費が発生するとキャッシュフローへの影響が大きくなる点には注意が必要です。そのため、リスク分散の観点からは、小規模の物件から始めたほうが現実的といえます。
一方で、ファミリータイプは立地や土地評価が高い物件が多く、資産性の面では魅力があります。初期から資金力に余裕がある人や、長期的な資産形成を目的とする人にとっては、有力な選択肢です。
ワンルーム投資との比較で見る戦略の違い
ファミリーマンションとワンルームマンションでは、戦略の方向性がまったく異なります。
どちらが優れているというよりも、目的や資金力、リスク許容度によって向き・不向きが分かれます。
以下で、それぞれの特徴を項目ごとに比較しました。
項目 | ファミリーマンション | ワンルームマンション |
入居期間 | 長い(5年以上) | 短い(1~2年) |
空室リスク | 低い | やや高い |
利回り | 低い | 高い (ファミリーマンションとと比較して) |
管理費・修繕費 | 高い | 低い |
売却市場 | 実需・投資家両方 | 投資家中心 |
節税効果 | 大きい | 小さい |
近年、都心エリアでは物件価格に対して家賃が追いつかず、ワンルームタイプ・ファミリータイプいずれも家賃収入だけでローン返済をまかなうのは難しいのが現実です。(自己資金にもよる)
どちらを選ぶかは、目的や投資方針によって決まります。特に都心では、数字の表面だけで判断せず、「何年先にどんな形で回収するか」まで設計する視点が欠かせません。
【参考記事:ワンルームマンションでやるべき空室対策7選!分野別に計27個紹介】
今の時代に成功するファミリーマンション投資のポイント
2025年以降のファミリーマンション投資では、「人口減少」よりも「地域偏在」と「生活スタイルの二極化」に注目すべきです。
総人口は減っても、「子育て世帯が集まる都市近郊の一定エリア」には需要が集中しています。子育て世代の転入超過が続くエリアでは、教育環境・治安・共働き利便性を重視した住まい探しが今後も堅調に推移すると見られます。
①エリアの具体的な将来性を確認
単に「人気エリア」ではなく、10年後も人が集まる街を選ぶことが大切です。
市町村のホームページで「人口ビジョン」「都市計画マスタープラン」などを確認してみましょう。再開発や駅前整備、保育園・学童の整備方針など、行政の「街づくりの方針」を読むことが、将来性を見極めるヒントになります。
②管理体制と修繕積立金をチェック
築年数に応じた修繕履歴や、積立金の残高確認は基本です。
たとえば、国土交通省の「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」では、専有面積1㎡あたり月200~250円程度が目安とされています。(築年数や設備仕様に応じた適正額の見極めが推奨)
管理体制は、議事録をチェックしたいところですが、購入の検討段階では見せてもらえないことがほとんどです。代わりに「長期修繕計画書」「直近の大規模修繕履歴」による判断や、仲介会社にヒアリングしてもらうのが現実的です。
現地見学の際には、共用部の清掃状態や掲示板の更新頻度などからも、管理の状態を感じ取ることができます。
③ 中古リノベは「築年数」に注意
新築価格の高騰を受け、中古マンションをリノベして再生する投資が注目されています。ただし、築40年以上の物件は旧耐震基準の可能性があり、耐震性の確認が必須です。
また、古すぎる物件は売却時に買主のローンが通りにくいため、購入時から出口戦略を意識しましょう。リノベ済みなら入居付けがスムーズ、未改装ならターゲット層に合わせた設計で差別化を図るのが効果的です。
④住まい選びの基準はAIやDXの進展も考慮
これまでのような「都心=通勤利便性」という住まい選びの基準に加えて、「暮らしの質」を重視する傾向が強まっています。
- 防音・通信環境の良い部屋
- 子どもの学習スペース(リビング学習)
- 近隣の学童・習い事施設の充実度 など
脱炭素・ZEB(ゼロエネルギービル)対応など、環境性能の高いマンションが評価される流れも加速しています。
省エネ性能や管理組合の意識が高い物件は資産価値を維持しやすく、長期保有に向く傾向があります。
⑤融資戦略の基本を押さえる
金利が上昇傾向にある今は、「いくら借りるか」より、どう借りてどう返すかが問われます。自己資金を多めに入れて返済余力を確保し、金利変動リスクを抑えるのが基本です。
「今すぐ始めたい」「若いうちに投資をしたい」という気持ちは理解できます。しかし、焦りからのスタートは失敗のもと。不動産投資で何より重要なのは「堅実さ」です。
きちんと自己資金を貯められないうちは、運用開始後にキャッシュフローが赤字に転じた際、すぐに資金が尽きてしまいます。特に最初の一棟目は、あえて慎重に、自己資金を多めに入れることが鉄則です。
そうすることで、金利上昇・空室・修繕といった不測のリスクにも耐えられる「強い経営体質」をつくることができます。
まとめ|今後の見通し
ファミリーマンション投資は、価格高騰で手が出しにくい面もありますが、今も「長期安定収益」を狙える貴重な投資スタイルです。
ただし、昔のように勢いだけで収益を上げられる時代ではありません。
これからの時代に成功するカギは、
- 再開発や人口動向を見据えたエリア選び
- 適正な積立金と管理体制の地に足のついたチェック
- 築年数と耐震性を踏まえた中古マンション戦略
- そして、焦らず堅実に進める資金計画と融資設計
この4つを丁寧に積み上げることです。
2025年以降も、金利の緩やかな上昇や建築コストの高止まりが続くと予想されます。
その一方で、教育・治安・生活利便性を備えた地域のファミリー需要は今後も底堅い見通しです。外国人の居住が増えている今、「安心して子育てできる地域かどうか」という治安面は、以前にも増して重視されるようになっています。
海外投資家が日本の不動産を買い続ける今、日本は明らかに新しい局面に入っています。これからの10年・20年で、街の姿も人の暮らしも変わっていくでしょう。
だからこそ、「今ある価値」だけでなく「これからの価値」を見極めながら、一歩ずつ着実に進めていくことが大切です。












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