
不動産を売るときは、スムーズに進めるために、基本的な流れをしっかり理解しておくことが大切です。
「初めてだから不安…」という方も多いかもしれませんが、ポイントを押さえれば安心して進められます。
本記事では、不動産売却の主なステップや販売のコツを分かりやすく解説していきます。
この記事で分かること |
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目次
不動産の売却手順
不動産を売却するとなると、「どこから手をつければいいの?」と戸惑う方も多いでしょう。
実は、売却手順を間違えると、予想外のトラブルや損失につながることもあります。事前にしっかり準備して、スムーズな売却を目指しましょう。
1.相場調査
まずは、自分の物件がどれくらいの価格で売れるのか、相場を調べることから始めます。
相場調査で用いられる4つの価格
- 公示価格:国土交通省が毎年3月に公表する、土地取引の基準となる価格で、全国の標準地を対象に評価。
- 相続税路線価:国税庁が毎年8月に発表する、相続税や贈与税を算出するための土地評価額で、公示価格の約80%程度が目安。
- 固定資産税評価額:市町村が毎年1月1日を基準として算定する、固定資産税や都市計画税の課税基準となる評価額で、公示価格の約70%程度。
- 実勢価格:実際に取引された際の価格で、市場動向や需給バランスを反映したリアルタイムの価格。
上記の価格を参考にし、市場の動向を把握しながら適正な価格を設定します。
また、エリアの需要や周辺環境の変化も価格に影響を与えるため、最新の市場情報をチェックすることが大切です。
2.物件査定
相場を把握したら、次は不動産会社へ査定の依頼です。
査定方法には、一括査定サイトを利用して複数社を比較する方法、大手に直接依頼する方法、知人の紹介を活用する方法などがあります。
また、査定には 「机上査定」 と 「訪問査定」 の2種類があります。
机上査定は、物件情報や相場をもとに算出する簡易的な査定で、比較的早く価格の目安を算出することが可能です。一方、訪問査定は実際に担当者が物件を確認し、より正確な査定額を提示する方法です。
売却をスムーズに進めるためにも、複数の不動産会社を比較しながら、自分に合った査定方法を選びましょう。
相場調査や査定については、以下の記事で詳しく解説しておりますので、ぜひご一読ください。
3.媒介契約
査定額に納得したら、不動産会社と媒介契約を結びます。
契約には「専属専任媒介」「専任媒介」「一般媒介」の3種類があり、それぞれの特徴を理解したうえで、自分に合った契約形態を選ぶことが重要です。
契約内容によって販売活動の範囲や自由度が異なるため、手数料や売却のスピード感も考慮しながら慎重に判断しましょう。
4.売買契約
購入希望者が見つかり、価格や条件の交渉がまとまったら、売買契約を結びます。
契約時には手付金のやりとりが発生し、これが売買契約を成立させる上で重要な役割を果たします。
そのため、重要事項説明や契約書の内容をしっかり確認し、手付金に関する取り決めや注意点を理解しておくことが大切です。
特に、引き渡しの条件や契約解除の際の取り決めについては、後々のトラブルを防ぐためにも十分に確認しておきましょう。
5.決済
売買契約を結んでから約1ヵ月後に、買主から残代金を受け取り、物件を引き渡します。
この際、登記の移転手続きに加えて、ローンの残債がある場合は完済手続きも必要になります。決済を滞りなく進めるために、事前に準備を整えておきましょう。
また、引き渡し前に設備の最終チェックを行い、買主とのトラブルを防ぐための確認作業も重要です。
不動産売却の媒介契約
不動産売却を依頼する際には、自分の売却意思に沿った媒介契約の種類を選ぶことが重要です。
専任媒介契約、専属専任媒介契約、一般媒介契約の違いを、以下にまとめました。
専属専任媒介契約 | 専任媒介契約 | 一般媒介契約 | |
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他の不動産会社への依頼 | 不可 | 不可 | 可能 |
自己発見取引 | 不可 | 可能 | 可能 |
契約期間 | 3ヵ月以内 | 3ヵ月以内 | 制限なし |
レインズ登録義務 | 5営業日以内 | 7営業日以内 | 義務なし |
業務報告義務 | 1週間に1回以上 | 2週間に1回以上 | 義務なし |
不動産売却をスムーズに進めたいなら 専任媒介契約 がおすすめです。1社にのみ依頼するため、不動産会社が積極的に販売活動を行い、専任でサポートしてくれます。
また、 レインズ(不動産流通機構)への登録義務 があり、広く買い手を探しやすいのもメリットです。
一般媒介では不動産会社の優先度が下がりやすく、情報管理が煩雑になりがちです。
専任媒介契約は適度な自由度とサポートのバランスが取れているため、多くの売主にとって安心できる契約形態といえます。
不動産売却の体験談と売るときのコツ
不動産を売却する理由は人それぞれですが、状況によって最適な進め方が異なります。
スムーズに売却を進めるためには、実際の体験談を参考にしながら、それぞれのケースに合ったコツを押さえておくことが大切です。
ここでは、代表的な5つの売却ケースと、その際に気をつけたいポイントを紹介します。
1.住み替え
都内に住む30代のBさんは、家族が増えたことをきっかけに、より広いマンションへの住み替えを決意しました。
先に新居を購入したものの、旧居の売却が思ったよりも時間がかかり、ローンの二重負担に苦しむことに。最終的には価格を下げて売却しましたが、当初の希望価格よりも低くなってしまいました。
【コツ】売却と購入のタイミングに注意
住み替えの場合、売却よりも先に新居を購入すること自体は良い選択といえます。なぜなら、購入後にじっくり売却活動ができ、引っ越し時期の調整がしやすくなるからです。
購入を優先する場合、資金繰り対策として「買い替えローン」を活用するなどの工夫が必要です。
住み替え時には、売却か購入どちらを優先すべきか、売却時の残債をどのように返済するかなど、自身の状況に合わせた慎重な売却戦略を立てましょう。
2.相続
埼玉県に住む40代のKさんは、親が残した一戸建てを兄弟と相続しました。
しかし、兄弟の間で「売却するか賃貸に出すか」で意見が分かれ、話し合いが長引くことに。最終的には売却で合意し、専門家のアドバイスを受けながら無事に手続きを進めましたが、意見がまとまるまでに時間がかかり、思わぬ手間が発生しました。
【コツ】相続人全員での話し合いを優先
共有名義の不動産は、 全員の同意がないと売却できないため、意見がまとまらないと手続きが進みません。そのため、相続が発生する前から家族で話し合い、売却や活用方法について意見をまとめておくと、スムーズに進めやすくなります。
相続登記や税金の確認も含め、早い段階で専門家に相談しながら進めることが大切です。
3.転勤・転職
名古屋市に住む35歳のTさんは、急な転勤が決まり、持ち家を売却することになりました。
しかし、転勤までの期間が短く、売却のタイミングをどうするか悩んでいました。そこでTさんは、不動産会社と相談しながら 価格設定を市場より少し低めにすることで、短期間での成約を目指す方針を決定。
売却活動を開始したところ、すぐに購入希望者が見つかり、無事転勤前に契約を完了させることができました。
【コツ】スピード優先の売却戦略
転勤・転職などで早めに売却したい場合は、 相場よりやや低めの価格設定や、不動産会社との積極的な販売戦略が重要です。 内覧対応のスケジュールも工夫し、できるだけ多くの買主に物件を見てもらうことが、早期売却のポイントとなります。
また、転勤の場合には、金融機関に事前に相談し、承諾を得ることで自宅を賃貸に出す選択肢もあります。
これにより、資産を手放さずに家賃収入を得ることができるため、状況に応じて柔軟に対応することが大切です。
4.離婚
横浜市に住む40代のAさんは、離婚に伴い、夫婦共有のマンションを売却することになりました。
しかし、売却後の分配割合やローンの清算方法で揉めてしまい、手続きが進まずに時間がかかることに。最終的に弁護士を交えて話し合い、ようやく売却が完了しましたが、事前に財産分与のルールを決めておけばスムーズだったと後悔したそうです。
【コツ】財産分与を明確に
夫婦が円満な時に「もしも離婚したら」という話をするのは難しいものですが、いざという時に備えて、財産分与についてきちんと考えておくことが大切です。
特に共有名義の場合、売却代金の分配や住宅ローンの処理方法を事前に話し合い、公正証書などで書面化しておくことで、万が一の際にもトラブルを防げます。
5.資産整理・金銭面の問題
千葉県に住む50代のYさんは、老後の資金を確保するため、所有していた投資用マンションを売却することにしました。
しかし、期待していた価格より査定額が低く、売却するかどうか2~3年ほど迷っているうちに市場価格が下落。結局、当初よりもさらに安い価格での売却を余儀なくされました。
【コツ】早めの査定で現実的な判断を
不動産の価値は市場の影響を受けやすく、特に投資物件の場合は家賃収入や空室リスクも考慮する必要があります。
売却を決めたら、早めに複数の不動産会社へ査定を依頼し、適正価格を把握することが大切です。
また、売却か保有かを判断するために、収支シミュレーションを実施し、売却時と賃貸運用時の収益を比較しておきましょう。
市場価格が思ったより低い場合は、家賃を見直して収益性を高める、リフォームして資産価値を向上させるなど、売却以外の選択肢も検討すると柔軟な判断ができます。
不動産売却にかかる費用
不動産を売却する際、売却価格がそのまま手元に残るわけではありません。売却にはさまざまな費用がかかるため、事前に把握しておくことが重要です。
ここでは、代表的な費用項目と、それぞれのポイントを解説します。
仲介手数料
不動産会社を通じて売却する場合、売買が成立した際に仲介手数料が発生します。
手数料の上限は法律で定められており、一般的に「売却価格 × 3% + 6万円(+消費税)」が目安です。成功報酬のため、売却が決まるまでは支払う必要はありません。
税金
不動産売却では、 譲渡所得税や住民税などの税金がかかります。
特に利益(譲渡所得)が発生した場合は税負担が大きくなるため、事前にどれくらいの税額になるかシミュレーションしておくと安心です。
1.譲渡所得税
売却によって得た利益(譲渡所得)に対して課される税金です。
所有期間が5年を超えると 長期譲渡所得 として税率が下がるため、タイミングを見極めて売却するのも一つの戦略でしょう。特例や控除を活用できるケースもあり、場合によっては譲渡所得税が0円になることもあります。
このように、事前に税金のシミュレーションを行い、最適な売却時期や条件を検討することが重要です。
2.住民税
不動産を売却して 譲渡所得税が発生した場合のみ 、住民税も課税されます。これは、譲渡所得(売却価格から取得費や諸経費を差し引いた利益)が「所得」とみなされるため、翌年の住民税の計算対象になる仕組みです。
たとえば、売却益が出た場合、その年に支払う譲渡所得税とは別に、翌年の住民税として追加で納税が必要になります。
売却後の納税額が想定以上にならないよう、事前に試算しておくことが大切です。
3.印紙代
売買契約書に貼る印紙代も必要です。印紙税は売却価格によって異なり、たとえば 1,000万円超~5,000万円以下なら1万円というように段階的に設定されています。
これは、買主と売主で折半することが多く、契約時に不動産会社からどのように負担するかアナウンスされます。
登記費用
不動産を売却する際、買主へ所有権を移転するための所有権移転登記は、基本的に買主側がその費用を負担します。
ただし、売主側にも登記に関する費用が発生するケースがあります。たとえば、 住宅ローンが残っている場合、売却時にローンを完済し、抵当権を抹消する必要があるのです。
この抵当権抹消登記は売主負担となり、司法書士へ依頼する場合は手数料も加わります。
また、相続した不動産を売却する場合、相続登記が完了していないと売却できないため、相続登記の費用も売主負担となります。
売却時の手続きをスムーズに進めるためにも、事前に登記が必要な項目を確認し、費用を準備しておきましょう。
測量費用
土地や戸建てを売却する際、 境界が不明確な場合は測量が必要 になることがあります。
特に隣地との境界が曖昧な場合、買主から測量を求められることがあり、その費用は売主負担となるのが一般的です。
確定測量では隣地所有者との立ち会いが必要となり、 数十万円の費用がかかることもあります。
事前に測量の必要性を確認し、費用を考慮した売却計画を立てましょう。
関連記事:土地売買で測量なしって危険なの?
ローンの繰り上げ返済手数料
住宅ローンが残っている状態で不動産を売却する場合、売却代金でローンを一括返済することになります。
その際、 金融機関によっては繰り上げ返済手数料が発生することがあります。
手数料は、数万円~数十万円程度 かかることもあるため、売却前に金融機関へ確認しておくことが重要です。
解体費用(古家付き土地の場合)
古家付きの土地を売却する場合、 建物を解体して更地にするか、そのまま売るかを選ぶことになります。
一般的に、更地のほうが売却しやすいものの、 解体費用は売主負担となり、木造住宅で100万円以上かかることもあります。
建物の状態によっては、そのまま「古家付き土地」として売り出した方が高く売れる場合もあるため、 解体すべきかどうかを慎重に検討しましょう。
引っ越し費用
住み替えによる売却の場合、 引っ越し費用も考慮する必要があります。
引っ越し業者に依頼する場合、荷物の量や移動距離によって費用が異なりますが、同じ市内なら10万円前後、遠方なら20万円以上かかることもあります。
一方で、自分たちで荷物を運べば 引っ越し費用を大幅に抑えることも可能です。
ただし、大型家具の運搬や新居への搬入作業の負担を考えると、業者を利用するほうがスムーズに進められます。自分に合った方法を選び、コストと利便性のバランスを考えましょう。
残置物撤去の費用(遺品整理)
相続で引き継いだ家を売却する場合、故人の残置物を処分する必要があります。
しかし、相続者が近くに住んでいるとは限らず、遠方にいる場合は片付けに何度も足を運ぶのが難しいことも。
また、両親が使っていた思い入れのある遺品が多いと、感情的に整理が進まず、片付けが間に合わないケースも少なくありません。
自力での処分が難しい場合は、専門業者に依頼するのが一般的で、費用は数万円~数十万円かかることもあります。
特に大型家具や家電が多いと追加料金が発生するため、事前に見積もりを取って確認しておきましょう。
不動産売却の「買取」って?
不動産を売却する方法には、「仲介」と「買取」 の2種類があります。
仲介は、不動産会社を通じて一般市場で買主を探す方法で、売却価格は市場相場に近くなります。
一方、 買取は、不動産会社が直接買い取る方法で、売却までのスピードは早いものの、売却価格が市場の6~7割程度になることが一般的です。
買取価格が安くなる理由は、業者が買い取った物件をリフォームし、再販する際の修繕費用や利益を考慮して価格を設定するためです。
仲介 | 買取 | |
売却期間 | 長い | 短い |
売却価格 | 相場に近い | 相場の6~7割 |
内覧対応 | 必要 | 不要 |
プライバシー保護 | 近所に知られる可能性がある | 近所に知られない |
契約不適合責任 | 必要 | 免責 |
仲介手数料 | 必要 | 不要 |
買取は、不動産会社との直接契約になるため仲介手数料が不要ですが、これを差し引いても売却価格自体が低く設定されるため、手元に残るお金は仲介よりも少なくなります。
売り急ぐ事情がある場合や、なかなか売れない物件には適していますが、納得のいく価格で売却したいなら、仲介で買主を探すのがベターでしょう。
特別な事情がない限り、まずは仲介での売却を検討するのがおすすめです。
まとめ
本章では、不動産売却の基本的な流れや費用、契約の種類、ケース別の売却コツについて解説しました。
不動産の売却には、事前に把握すべきポイントがたくさんあります。売却の流れをきちんと理解し、計画的に進めることでスムーズな取引が可能です。
また、仲介手数料や税金、登記費用といった売却コストがかかるため、それを見越した資金計画を立てることが重要となります。
特に譲渡所得税や住民税は、特例や控除を活用して節税できることがあるので、事前に確認しておきましょう。
売却を成功させるには、 事前準備と情報収集がカギ。信頼できる不動産会社と適切な売却戦略を立て、納得のいく取引を目指しましょう。
弊社でも、不動産売却に関するサポートを行っております。査定から売却活動、契約手続きまで、経験豊富なスタッフが丁寧にサポートいたしますので、ぜひお気軽にご相談ください。
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