原状回復で大家さんがすべきこと全7STEP|トラブル事例と対処法付き

「原状回復をトラブルなく終わらせたい」
「退去の立会いをスムーズにもれなくおこないたい」
「正当に請求できる原状回復費用は請求したい」

大家になってはじめての退去を経験する場合、不安も多くある中で、できれば原状回復をスムーズに終えて入居者と円満に賃貸契約を終えたいと思うことは当然のことです。

しかしご認識の通り、大家と入居者の双方が円満に退去手続きを終えるためには、大家さんが正しい知識をつけて、正当な方法で臨むほかありません。

結論、本記事で紹介する7つのSTEPを行えば、スムーズに原状回復を終えることができます。

 

『国民生活センター』に寄せられた賃貸住宅の原状回復トラブルの相談件数は、2022年の1年間だけでも12,856件※。大家さんにとって、決して他人事ではない状況です。
※参考:独立行政法人 国民生活センター「賃貸住宅の原状回復トラブル

近年「大家にぼったくられないようにしよう!」などの情報発信もSNSを中心に年々増えており、入居者側のリテラシーも上がっています

入居者にもしっかりと納得してもらい原状回復をスムーズに進めるためには、大家さん自身で事前に原状回復の知識・全体の流れを把握してしっかり準備することが大切です。

そこでこの記事では、

  • 大家さんが入居者から退去の連絡をもらってからすべきこと全7ステップ
  • 大家と入居者の間に起きたトラブル事例と対処法3選

を詳しく解説します。

この記事を最後まで読めば、退去連絡をもらった大家さんが何を準備して、どう原状回復に臨めばいいのかがわかります。

入居者に伝えておいた方が良い事柄や、立会い当日に使えるチェックシートもあるので、すぐにでも準備を始められるでしょう。

スムーズに原状回復を進めて、安定した不動産経営ができるよう、ぜひ読み進めてください。

目次

賃貸管理完全ガイド
依頼すべき理由

1. 【STEP1】入居者に立会い当日の流れ・持ち物を連絡する

入居者から『退去の連絡』をもらったら、すぐに下記の3点を入居者にお知らせしましょう。

【入居者にお知らせする3つのこと】

  • 立会い当日までにやることリスト
  • 立会い当日の流れ
  • 立会い当日の持ち物

これらをまとめた書面を、退去連絡を受けた後すぐに入居者に郵送することで、退去時によくある「うっかり住所変更の手続きを忘れていた!」「立ち合い日に荷物が残っている」などのトラブルを防ぐことが可能です。

立会い当日・原状回復をスムーズに終えるためには、入居者にここで伝えることをしっかりとやってもらうことが重要です。大家さんが、わかりやすく教えてあげましょう。

入居者にお知らせする内容については、このあと本章で詳しく紹介します。

そのまま印刷して入居者に送付できるPDFを作成したので、ぜひご活用ください。

すぐに印刷したい方は『こちら』をクリック!

『解約通知書(退去届)』は入居者から必ず受け取りましょう
解約通知書(退去届)は、入居者が退去する際、大家さんまたは管理会社に提出する書類です。

解約通知書は、退去時に入居者が必ず提出しなければならない書類ではないですが、『退去の意志・退去日を証明するもの』なので、のちのちのトラブルを避けるためにも必ず受け取っておきましょう。

もし、入居者から「解約通知書(退去届)がないのでください」と言われた場合は、立会い当日までにやることリストと一緒に入居者に送付してあげましょう。

1-1. 【入居者に伝えること①】立会い当日までにやることリスト

入居者から退去の連絡をもらったら、入居者に以下の『立会い当日までにやることリスト』を送付しましょう。

立会い当日までにやること連絡期日方法
 □電気の停止の連絡をする退去1週間前まで利用中の電力会社に連絡・電話・インターネット
水道の停止の連絡をする退去1週間前まで管轄している水道局に連絡・電話・インターネット
ガスの停止の連絡をする退去1週間前まで利用中のガス会社に連絡・電話・インターネット(ガスの閉栓にガス会社との立会いが必要な場合があります)
郵便物の住所変更の手続きをする(転送届の提出)退去1週間前まで・郵便局の窓口(本人確認書類が必要)・郵送(本人確認書類が必要)・インターネットから手続き可能
インターネット回線の停止手続きをする引越し日が決まり次第契約中のインターネット回線会社やプロバイダに連絡・電話・インターネット
電話の移転手続きをする退去2週間前まで(東日本⇆西日本の移動がある場合は手続きが複雑になるためできるだけ早く) ・固定電話やスマートフォンNTT東日本:0120-116-000NTT西日本:0800-2000-116・インターネット(NTT東日本 / NTT西日本)から手続き可能
食材宅配サービス・ネットスーパーの手続きをする引越し日が決まり次第利用中のサービスに連絡・電話・インターネット
鍵(スペアキーも含めお渡ししている全ての鍵)の用意立会い当日までスペアキーも含め引越しの荷物に梱包しないよう注意してください
荷物の撤去をする立会い当日(立会い時間の前)までに全て撤去立会い日当日までに全て撤去し終わっているように、ご自身、または引越し業者に依頼するなどして運び出しましょう
消耗品の交換をする(電球・エアコンや換気扇のフィルターなど)立会い当日(立会い時間の前)までに設置されている電球やフィルターの型番を確認して、購入・交換してください
部屋の傷や汚れ、損壊の確認をする立会い当日(立会い時間の前)までに該当箇所は立会い時に伝えられる状態にしてください
部屋の汚れやカビの掃除をする立会い当日(立会い時間の前)までに入居時の状態に戻すため、できる範囲で室内や部屋の掃除をしておきましょう

入居者も引越しの手配などでバタバタしていることが多いので、事前にやることをリストにして送付してあげることで、入居者が立会い日直前になって「すっかり忘れていた!」となることを防ぐことができます。

これらを忘れてしまうと、立会いが終わってからも電気代やガス代を払い続けなければいけなくなり、入居者への負担が大きくなることも。

入居者自身に「やらなきゃ!」と思ってもらえるように、退去立会いの日程調整をする際に以下の点も伝えてあげると良いでしょう。

入居者に伝えておくとよいポイント
立会い当日までにやることリストを送付しても、すべての入居者さんがきちっとやってくれるわけではありません。

そのため、リストを送付する際には、『やらなかったらどうなってしまうのか…』という入居者が被る恐れのあるリスク(下記)についてあわせて伝えておくと、入居者が行動しやすくなるでしょう。

【掃除ができていなかった場合はどうなるのか】
掃除不足で換気扇のこびりつきがひどかったり、日常の手入れ不足で水回りがカビだらけになっていたり、汚れの程度によってはクリーニング代が上乗せされて入居者の負担が増えることもあります。

【荷物の撤去が間に合わなかった場合はどうなるのか】
立会い当日に部屋に荷物が残っていると、正しく部屋の状態を把握できないため再度立会いになることも。
その場合、本来の解約日に解約できないだけではなく、解約日が伸びた分だけ入居者が余分に家賃を払わなければならないこともあります。

1-2. 【入居者に伝えること②】立会い当日の流れ

入居者に、立会い当日の流れを下記の通り説明することも大切です。

立会い当日の流れ(所用時間約20分〜1時間)
入居者様・大家・(施工会社の担当者)で立会いの挨拶をする
『原状回復チェックシート』に従い大家と入居者で部屋の状態を確認する
室内の傷・汚れ・破損などを確認し、お互いに合意できたら退去立会いの書類にサインをする
鍵を返却して終了

今は、ネットで検索するとさまざまな情報がでてくるので「『退去の立会いには注意しよう!』って書いてあったけど、当日は何をするんだろう…」「どれくらい時間がかかるんだろう…」と不安に思っている入居者もいるかもしれません。

当日の流れを事前に説明することで、入居者も不安なく立会い当日を迎えることが可能です。

大家さんの他にクリーニング業者やリフォームの業者が同席する場合は、その旨も伝えておくと、入居者も心の準備をして立会いに出席できるでしょう。

原状回復の施工業者が決まっている場合は立会いに同席してもらうのがおすすめ
大家さんと入居者のみで立会いをした場合、万が一修繕箇所の見落としがあると、後日新たな箇所について請求することになりかねません。

施工業者の人に一緒に立会いをしてもらうことで入居者とその場で確認できるので、話がスムーズに進みやすいでしょう。

また、その場で業者に見積もりをしてもらうこともできるため、大まかな費用がわかり入居者と大きな齟齬が生まれにくくなるというメリットもあります。

1-3. 【入居者に伝えること③】立会い当日の持ち物

退去の立会い日当日に持ってくるこれらの持ち物も、事前に入居者に伝えましょう。

立会い当日の持ち物
  • 筆記用具・賃貸借契約書
  • 印鑑・口座番号(敷金の返却がある場合に必要)
  • 部屋の鍵(スペアキー)
  • 部屋の設備の説明書(入居時に渡している場合)
  • 入居時の写真(あれば)
  • スマホ・身分証明書(本人確認のため)など

立会い当日に入居者の忘れ物があると、立会いが滞ったり、最悪の場合は別日に振替えをしたりするなど、大家さんにとっても入居者にとっても負担が大きくなってしまいます。

例えば、入居者が立会い当日に鍵を持ってきていないと後日受け渡しとなり、その分双方に手間が発生してしまいます。

また、入居者が引越しの準備でバタバタしていてスペアキーを段ボールに梱包してしまった…となると、入居者自身、探す労力が必要となり、万が一見つからなかった場合は、鍵を変える大家側の手間、入居者側には費用負担が発生します。

スムーズに立会いを終えるためにも、持ち物の事前周知もしっかり行いましょう。


2. 【STEP2】原状回復における『負担範囲』を把握する

ここからは、大家さんが立会い当日までにやるべきことについて解説します。

大家さんが自信をもって立会いに臨むためには、まず大家さん自身が『原状回復における負担範囲』を把握しなければなりません。

大家さんが、『どの範囲が入居者負担で、どの範囲が大家負担なのか』根拠を持って正確に提示できないと、入居者は「その支払いは納得できない…」となってしまいます。

入居者が納得できていないと、正当な請求なのに支払ってもらえなかったり、最悪の場合はトラブルや裁判に発展したりしてしまうことも。

そこでここでは、原状回復の基礎知識として下記項目について詳しく解説していきます。

(1)ガイドラインに沿って大家負担・入居者負担の範囲を確認する
(2)賃貸契約の特約条項における大家負担・入居者負担の範囲を確認する
(3)入居時の状態を確認する

正しい知識をつけることは、スムーズに原状回復を進めるために必要不可欠です。

入居者と円満に原状回復を進めるため、1つずつ正確に理解しましょう。

2-1. ガイドラインに沿って大家負担・入居者負担の範囲を確認する

原状回復の大家負担・入居者負担の範囲は、国土交通省住宅局が発表している『原状回復をめぐるトラブルとガイドライン (再改訂版)※以下「ガイドライン」 』に基づいて確認する必要があります。

なぜなら、国土交通省が発表しているガイドラインは、法的な拘束力こそないものの、大家さんと入居者の双方の主張が公正になるように決められた指針だからです。

万が一トラブルが発生した際も、基本的にはガイドラインを元に大家負担なのか入居者負担なのかを判断します。

基本的に、次の入居者のための清掃や補修、自然現象や災害による補修は大家負担、入居者の故意・過失による清掃や補修は入居者負担になります。

ガイドラインによる部屋の箇所別の負担範囲については、以下の通りです。

【損耗・毀損の事例区分(原状回復をめぐるトラブルとガイドライン (再改訂版)より抜粋)】

 担当負担範囲
大家負担 ・畳の表替え(破損ではなく次の入居者のために行うもの)・フローリングのワックスがけ・家具設置による床やカーペットのへこみ、設置跡・畳の変色やフローリングの色落ち(日照・建物構造欠陥による雨漏りなどが原因の場合)
入居者負担・飲み物などをこぼした後の手入れ不足によるシミ・カビ・引越作業などで生じた傷・破損・入居者の不注意で雨が吹き込んだことによる床・畳の変色、色落ち・落書きなど故意による汚れ
天井大家負担・テレビや冷蔵庫などの後部壁面の黒ずみ(電気ヤケは通常使用で生じうる)・画鋲やピンの穴(下地ボードの張り替えが不要なもの)・エアコン設置による壁のビス穴、跡・クロスの変色(日焼けなどの自然現象によるもの)
入居者負担・手入れ不足による台所の油汚れ・くぎ穴、ネジ穴(下地ボードの張り替えが必要なもの)・結露を放置したことにより拡大したカビやシミ・クーラーの水漏れを放置したことによる壁の腐食・タバコのヤニや臭い・落書きなど故意による汚れ・天井に直接つけた照明器具の跡
建具大家負担・網戸の張替え(破損はしていないが次の入居者確保のために行うもの)・地震など自然災害で破損したガラス・網入りガラスの亀裂(構造により自然に発生したもの)
入居者負担・ペットが柱等につけた傷や臭い・落書きなど故意による汚れ
設備その他大家負担・部屋全体のハウスクリーニング・エアコンの内部清浄(喫煙等による臭い・汚れの付着を除く)・台所・トイレの消毒、浴槽・風呂釜の取替え(破損ではなく次の入居者のために行うもの)・鍵の取り替え(破損・紛失のない場合)・設備機器の故障や機器の寿命による使用不能
入居者負担・入居者が清掃や手入れを怠った結果、生じた汚損(ガスコンロ置き場、換気扇、風呂、トイレ、洗面台の水垢やカビなど)・日常の不適切な手入れや用法違反による設備の破損・鍵の紛失、破損による取り替え

 引用:国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン (再改訂版)」

しかし、修繕箇所によっては、双方の負担範囲だけでなく『減価償却』という考えを用いて負担割合を考慮しなければならないものもあります。

【減価償却とは】

減価償却とは、設備投資など一定以上の金額で購入をしたときに、その費用を何年かに分けて経費にしていく会計処理のことを指します。

しかし賃貸経営において建物や部屋内部、設備など減価償却の対象となるモノは、経年変化・通常損耗により時間が経つにつれて元の価値が減少していきます。

原状回復時に、しっかりとこの経年変化・通常消耗分(減った価値)も考慮しないと、入居者とのトラブルに発展する恐れがあるため注意が必要です。

そこで、ここからは大家さんに知っておいてほしい『原状回復における減価償却』の考え方について解説していきます。

原状回復における減価償却の考え方・計算方法について
賃貸借契約において、建物に発生する経年変化・通常消耗分は家賃として入居者が毎月支払っているとみなされます。
 
この経年変化・通常損耗分まで原状回復費として入居者に請求してしまうと二重請求となり、トラブルの原因に。

二重請求を避けるためにも、大家さんは建物や設備等の経過年数を考慮して、経過年数が長いほど入居者の負担割合を少なくすることが求められます

例えば下記表で表されている、6年後にはほとんど価値がなくなって、1円くらいの価値しかなくなるカーペットの場合。 

引用:国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン (再改訂版)

表の見方

  • 縦軸が入居者の負担割合、横軸が経過年数(何年使ったか)を表しています。
  • 新築や交換、張り替え直後の場合を『赤い線』で表しており、『破線』は入居時の状態(法定耐用年数から何年経過したか)で線の位置が変わることを表しています。

入居から3年経過した場合を見てみると、まず横軸「3年」の地点から縦に上がり、斜めの線(赤い線)と交わる地点を確認します。
この交点は縦軸の50%の位置にあるため、3年経過した時点で入居者の負担割合は50%となります。

同じ要領で考えると、入居から5年経過した場合の入居者の負担割合は約17%6年経過するとカーペットの価値は限りなく0円になるため、入居者の負担割合は0%となり100%大家負担となります。 

そのため、減価償却の対象となる場合は、都度修理費用の負担割合を計算する必要があるのです。 

減価償却の法定耐用年数は場所や備品の種類によって異なります。原状回復で考慮すべき場所は、下記の通りです。

【減価償却となる設備・法定耐用年数※】

設備法定耐用年数
流し台5年
壁(クロス)6年
カーペット・クッションフロア6年
冷房・暖房用機器(エアコン、ストーブ等)6年
冷蔵庫・ガス機器(ガスレンジ)6年
金属製以外の家具(書棚、タンス、戸棚、茶ダンス)8年
便器、洗面台等の給排水・衛生15年
主として金属製の器具・備品 15年

※参考:国土交通省「原状回復原状回復をめぐるトラブルとガイドライン

一方、『消耗品』など減価償却の対象とならないものもあります。

※消耗品とは、使用可能期間が 1 年未満のもの又は取得価額が 10 万円未満のものなどを指します。

【減価償却の対象とならないもの(例)】

減価償却の対象とならないもの理由
襖・障子消耗品の要素が強い
畳表消耗品の要素が強い
フローリング(部分補修)部分補修の場合は減価償却の対象とならない
柱(部分補修)部分補修の場合は減価償却の対象とならない

※参考:国土交通省「原状回復原状回復をめぐるトラブルとガイドライン

減価償却の対象とならない修繕箇所については、大家と入居者どちらかがガイドラインに基づき全額負担することになりますが、消耗品の場合は賃貸借契約書内の『特約』の有無によって負担者が変わります。

消耗品は『特約』を締結していれば入居者負担にできる!
賃貸借契約書にて『賃借人修繕負担特約』を締結している場合、消耗品の交換は入居者の負担となります。

一方で、『貸借人修繕負担特約』を締結していない場合の消耗品の交換は、大家負担になります。

【消耗品の種類】
・室内の電球(備え付けの照明器具そのものの故障は大家負担)
・フィルター(キッチン・トイレ・風呂 など)
・畳表・障子や襖
・パッキン(キッチン・洗面・浴室・トイレなど)
・電池(備え付けのエアコンや照明器具のリモコン、電池式のチャイム) など

現在特約を締結していない場合は次回の契約時以降、賃貸借契約書への追記を検討してもよいでしょう。

2-2. 賃貸契約の特約条項における大家負担・入居者負担の範囲を確認する

特約条項とは、賃貸契約において契約書に記載されている通常の条項以外に、大家と入居者の間で新たに追加した条件のことです。

特約条項は原状回復の指針であるガイドラインよりも効力があり、優先されます。

大家と入居者の契約において『通常損耗補修特約』など原状回復に関する特約が結ばれている場合は、あらかじめ特約条項にて定めている負担割合を確認しておきましょう。

通常損耗補修特約に入れられる可能性の高い項目は以下のような項目です。

  • ハウスクリーニング代
  • 消毒代 など

上記は賃貸物件を使用した後の一般的なメンテナンスとして考えられるため、あらかじめ入居者負担とする旨の特約条項がよく採用されています。

【通常損耗補修特約の表記例

下記の通常損耗・経年変化による修理費用は、入居者負担とする。
(1)退去後の賃室全体のクリーニング費用;50,000円
(2)台所・トイレ・浴室の消毒費用;20,000円

『通常損耗補修特約』の締約方法
通常損耗補修特約を有効にするためには、入居時に通常損耗補修特約が記載された賃貸借契約書にサインまたは捺印をもらう、または口頭で説明し合意を得ておく必要があります。

口頭での説明の場合は、録音記録などがないと合意が無効となってしまうこともあるため、契約時には必ず合意の証拠を残しておくようにしましょう。

2-3. 入居時の状態を確認する

原状回復における大家・入居者負担の範囲を理解したら、立会いを行う物件の入居時の状態を確認しておきましょう。

入居時の状態と現状とを比較することで、入居時にはなかった傷に対して、入居者から「入居した時からあった傷だよ」と責任を押し付けられてしまうことを防ぐことが可能です。

スマホやデジカメで撮影した入居時の日付つきの写真、またメモなどを残している場合はそちらも合わせてしっかりチェックしておいてください。

入居時の状態をしっかり把握してから、立会い当日に臨みましょう。

入居時の写真がない場合
退去の立会い時は入居時の写真を見ながら行うとスムーズですが、中には「入居者の写真がない!」という大家さんもいらっしゃるでしょう。

その場合は、入居者と賃室を確認する際、誠実な話し合いをより意識しておこなう必要があります。
もし大家さんが「これは入居時にはなかった傷では?」と思っても、証拠がない限りは立証ができず、裁判になったとしても負けてしまいます。

入居時の写真を今から撮影することはできないため、次の入居者が入る前には、必ず賃室の状態を写真に残すことを忘れないようにしましょう。


3. 【STEP3】立会い当日に必要な物を準備する

ここからは、立ち会い当日に向けて大家さんが準備しておくべき物を紹介します。

具体的には、

(1)チェックシート
(2)必要書類
(3)その他必要なもの

これら3点を用意していきます。

事前準備をしっかりと行い、当日はスムーズに立ち会いが進行できるようにしておきましょう。

3-1. 原状回復チェックシートの準備

立会いをスムーズに進めるため、立会い当日に向けて原状回復チェックシートを準備しておくと安心です。

原状回復チェックシートとは、立会いでチェックする箇所、状況、修繕・交換が必要かどうかを記載することができる下記のシートを指します。

 

 

出典:国土交通省住宅局 「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」(再改訂版) 

原状回復チェックシートの印刷は『こちら』から

口頭だけで汚れや傷、修繕箇所を確認すると、抜け漏れがあったり、後から「言った言わない」論争になったりしてしまいます。

大家さんと入居者の双方で一緒に確認して、原状回復チェックシートの項目を1つ1つ埋めていきましょう。

大家と入居者で、納得感を持ちながら立会いを進めるためにも、原状回復チェックシートを準備して立会いに臨んでください。

原状回復チェックシートは『入居時』『退去時』どちらも記載しよう
原状回復チェックシートは、『入居時』と『退去時』のどちらも埋めるのが理想ですが、退去の立ち会いを目の前にしてチェックシートの存在を知った方も多いと思います。

入居時の写真やメモがある人は、そこからわかる範囲をできるだけチェックシートに書いてみましょう。
写真やメモもない場合は、退去時だけでも立ち会い日に入居者と一緒に確認して埋めてみてください。

3-2. 賃貸借契約書の準備

立会い当日に向けて、入居者と契約した賃貸借契約書を用意しておきましょう。

賃貸借契約書は、原状回復義務や特約条項などを大家と入居者間で確認するために必要な書類です。また、契約の終了を捺印にて証明するものでもあります。

退去時には、契約書に記載されている内容をよく確認した上で、手続きを進めてください。

賃貸借契約書と合わせて、国土交通省が発表している『原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)』を持参しておくと、入居者から質問された際に根拠を持って返答できるため心強いでしょう。

3-3. そのほかに必要なものを準備する

退去の立会いには、チェックシート・賃貸借契約書の他に、下記物品も合わせて準備してください。

【立会い当日に持参するもの】

  • 筆記用具(メモ帳・ペン)
  • メジャー・スマホ
  • 入居時の写真やメモ など

筆記用具は原状回復チェックシートやメモへの記載に使用し、メジャーは、汚れや傷の大きさを測って、原状回復の施工業者に見積もりをお願いするために使用します。

スマホは、修繕箇所を写真におさめたり、入居者との話し合いやサインへの捺印時の会話を録音し、証拠に残したりするために使います。

忘れものがあると、立会い当日の進行を妨げてしまうこともあるため、前日までにしっかりと用意して当日に備えましょう。


4. 【STEP4】入居者の退去に立ち会う

このステップでは、いよいよ入居者との退去立会い当日の流れについて解説します。

立会い当日は大家さんが進行する必要があるため、スムーズに立会いを進められるようしっかりと流れを把握しておきましょう。

【立会い当日の流れ】

(1)参加者が集まり次第立ち会いを開始する
(2)部屋の状態を確認する
(3)原状回復の負担割合について話し合う
(4)鍵などの物品を回収する
(5)すべての窓・ドアの施錠を確認する

立会い当日の流れを事前に把握してシュミレーションしておくと、当日慌てずに対応することができます。

4-1. 参加者が集まり次第立ち会いを開始する

退去する部屋に合流し簡単な挨拶が済んだら、まずやってほしいことが宣誓です。

国が定めた原状回復の指針(ガイドライン)に沿って原状回復を進める旨を宣誓しましょう。

具体的には、

「本日は国土交通省が発表しているガイドラインに沿って、原状回復を進めてまいります。」

と宣誓すれば大丈夫です。

挨拶してすぐに部屋のチェックに入るのではなく、国が定めたガイドラインに沿って進めると最初に伝えてあげることで、

入居者に『正しい根拠を元にフェアに進めていきますよ』と意識付けすることができます

実際の立会いでは、ガイドラインでの事例を交え、「もしこの部分の交換があった場合は〇〇円くらいになります」など概算値を伝えながら進めると、安心感がありトラブルになりにくいです。

ガイドラインに沿って進めることで、私情や感情に流されることなく正しく判断できるため、立会いをスムーズに進めることができるでしょう。

4-2. 部屋の状態を確認する

宣誓が済んだら、原状回復チェックシートに沿って、汚れや破損部分がないかメモをとりながら入居者と一緒に1つ1つ確認します。

大家と入居者で一緒に擦り合わせながらメモを取ることで、入居者が納得感を持って同意書へサインできるます。また、後日原状回復の施工業者に見積もりを依頼する際にも、部屋の状態を正確に伝えることが可能となります。

部屋の状態を確認する際は、入居時の写真と見比べながらチェックするとスムーズに進められるでしょう。

原状回復チェックシートや写真はトラブルを回避するための重要な証拠となるので、大家と入居者で一緒に、部屋のすみずみまで確認しておきましょう。 

入居時の写真がない場合
入居時の写真があれば退去時の状態と見比べることができますが、中には入居時の写真がないこともあると思います。

その場合でも、以下のような入居者の『明らかな故意過失』と認められれば費用を請求できることも。

【故意による毀損】

  • 壁面への落書き、物件への故意の破損など、明らかに故意による損害の場合
  • 重大な過失による損傷
  • 水漏れを放置して建物を腐食させた
  • ペットの世話を放任して建物を著しく汚損させた
  • 大規模な改造を勝手に行い、建物に重大な損傷を与えた

など、入居者に重大な過失があり、通常の使用を大きく逸脱した行為により建物に損害を与えた場合。

【善管注意義務違反(普通ならするべき注意を怠ったために起きた問題)】

  • 日常的な清掃や手入れを著しく怠り、建物を劣化させた
  • 設備の適切な使用や管理を行わず、故障や破損を招いた

など、入居者に善管注意義務違反が認められる場合。

これらの原因で建物や設備に生じた損害については、入居者の原状回復義務が発生するといえます。

ただし、その判断は個別の事情に応じて慎重に行う必要があり、証拠写真がない場合は、双方の”誠実な対応による話し合い”が重要です。

入居時の写真は、原状回復をスムーズに進める上で重要な資料となるため、今まで撮影していなかった大家さんも、今後は必ず入居時の写真を撮影するようにしましょう。

4-3. 原状回復の負担割合について話し合う

部屋の状態の確認が一通り終わったら、負担割合について話し合って『原状回復チェックシート』にサインをもらいましょう。

なぜなら、『原状回復チェックシート』にサインをもらわないと、入居者が原状回復費用の負担範囲に合意したという証拠がないため、正当な原状回復費用の請求ができなくなる可能性があるためです。

例えば、立会いで入居者と一緒に部屋の状態を確認し話し合い、入居者自身が納得していた様子でも、同意書のサインなく原状回復をした場合は、後から入居者は「同意していない!」と支払いを拒否することもできてしまうのです。

そのため、傷・汚れ・破損は入居者と一緒に確認してすべて写真と書面に残し、両者が納得した上で書類にサインをしてもらうことが重要です。

原状回復チェックシートの説明をする際は、スマホやボイスレコーダーで両者の音声を録音しておくと、「言った、言わない」の水掛け論を防げるのでおすすめです。

サインをしてもらう時のポイント
入居者にサインをしてもらう前に「ご質問などあれば」と一言添えると、入居者が疑問に思っていることなどがあった場合、大家に確認しやすいでしょう。

4-4. 鍵などの物品を回収する

『原状回復チェックシート』へサインをしてもらったら、入居者が保持している鍵などの物品を回収します。

【回収する物品】

  • 玄関の鍵(スペアキーも)
  • 郵便受けの鍵・共有部分の鍵
  • エアコンのリモコン
  • 部屋にある設備の取扱説明書一式 など

立会い日に回収できないと、後日郵送してもらったり、最悪返してもらえなくなったりすることもあるので、忘れずに回収しておきましょう。

スムーズに次の入居者を募集するためにも、入居者が保持している物品は確実に回収してください。

ライフラインの使用停止手続きが完了しているかを確認する
物品の回収とあわせて、ライフライン(電気・水道・ガス・インターネット等)の使用停止手続きが完了しているか、入居者に確認しましょう。

次の新規入居者にスムーズに物件を引き渡すために、使用停止手続きがされているかは重要です。

手続きが完了していない場合は、その場で停止の手続きをしてもらうなどして確実に使用を停止してもらいましょう。

4-5. 【立会い終了後】すべての窓・ドアの施錠を確認する

立会い作業が完了したら、全ての窓やドアが施錠されているかを確認します。

なぜなら、次の入居者が決まるまでは空き部屋になるので、侵入者や雨の吹き込みを防ぐためにドアや窓は閉めておく必要があるためです。

風呂の小窓やトイレの小窓は、特に忘れやすい部分なので、しっかりとチェックしましょう。

浴室に水滴が残っている場合|浴室入口のドアを開けておくのがおすすめ
浴室に水滴が残っている場合は、浴室のドアや窓をすべて閉めてしまうと換気不十分でカビが発生し、追加でクリーニング代が必要になることもあります。

浴室の窓は防犯上閉めておいた方がよいですが、ドアは開けておいても特に問題ありません。

浴室が十分に換気されていない場合は、浴室のドアを開けておきましょう。


5. 【STEP5】修繕・清掃の手配をする

大家と入居者の立会いが終わったら、原状回復の施工業者に見積もりを依頼し、その上で見積もり額が妥当であれば施工を依頼しましょう。

ここでは、修繕・清掃の手配の流れを、原状回復費用の相場と合わせて解説します。 

5-1. 原状回復の施工業者に見積もりを依頼する

立会いの際に入居者と確認した『原状回復チェックシート』に沿って、原状回復の施工業者に見積もりを依頼します。

相場とのずれが大きくないか確認するため、見積もりは必ず取るようにしてください。

業者が確定していない場合は、何社かに見積もりをお願いして比較(相見積もり)をしてみてもよいでしょう。

また、立会いに原状回復の施工業者が同席して見積もりが取れている場合は、この過程は必要ありません。

5-2. 見積もり額が妥当かどうか確認した上で施工を依頼する

原状回復工事やクリーニングの依頼は、見積もりが妥当かどうか確認してからにしましょう。

業者によっては相場より大幅に高い金額で見積額を提示していることがあるため、注意が必要です。

原状回復工事費用とクリーニングの費用相場は、下記を参考にしてください。

【原状回復工事費用の相場】

壁紙の張替え1㎡あたり:1,000〜2,000円6畳の部屋:40,000円~50,000円
壁穴・傷1箇所あたり10,000〜30,000円程度
フローリングの張替え20,000〜50,000円
フローリングの傷8,000〜60,000
畳の交換4,000〜35,000
天井ボードの張替え(タバコのヤニなど)20,000〜60,000円
水回りの換気扇修理のみ:8,000円~20,000円浴室・トイレの換気扇交換:30,000~150,000円
レンジフードの交換100,000~200,000円
シンク(流し台)の交換50,000〜130,000円
コンロの交換35,000〜250,000円
トイレの交換便器ごと:100,000〜300,000円便座のみ:50,000〜100,000円
ドア・建具の交換室内ドア・クローゼットドア:30,000〜100,000円浴室ドア:50,000〜160,000円障子の張替え:2,000〜6,000円/枚ふすまの張替え:2,000〜3,000円/面ふすまの交換:15,000円前後/枚
窓・網戸・サッシの交換窓全体:100,000〜500,000円網戸の張替え:3,000〜5,000円サッシの交換:30,000〜50,000円

【クリーニング費用の相場】

間取り別の費用相場
1R/1K15,000〜30,000円
1DK/2K23,000〜34,000円
1LDK/2DK30,000〜40,000円
2LDK/3DK40,000〜60,000円
3LDK/4DK50,000〜75,000円
場所別の費用相場
エアコン10,000〜16,000円
換気扇・レンジフード7,000〜-20,000円
ガスコンロ・グリル7,000〜12,000円
洗面所6,000〜10,000円
トイレ6,000〜10,000円
浴室11,000〜20,000円

クリーニングは、施工業者によって『水回りまとめてパック』『エアコンまとめて割』などまとめて依頼するとお得になるプランを設けていることもあリます。

上に記した原状回復工事費用・クリーニング費用の相場と、実際の見積もりを比較してみて、あまりにも乖離がある場合は相場について話した上で価格交渉をしてみても良いでしょう。


6. 【STEP6】原状回復費用を精算して入居者に請求(還付)する

原状回復のためのリフォームやクリーニングが完了したら、原状回復にかかった費用を精算して、『敷金精算書(解約精算書ともいわれる)』を下記の項目を参考に作成してください。

【精算書の記載項目】

  • 敷金・預り金
  • 未払い家賃
  • リフォーム費用の詳細
  • クリーニング費用の詳細
  • 鍵の交換費用・差引返金金額 など

『敷金精算書』は、入居者が負担する範囲の原状回復費用について、『何にいくら』かかり、『最終的にいくら請求(還付)』するのかを明確に伝えるために作成します。

原状回復費用が敷金内で収まれば還付し、敷金内で収まらなければ請求が必要です。

例えば、リフォーム費用・クリーニング費用は、床・壁・キッチンなどの修理箇所と合わせて具体的な施工名・金額を記載します。

精算書を作成したら、入居者の新しい居住先に郵送しましょう。

請求書は『作成ツール』を使用すれば簡単に作成できます!
「敷金請求書を作るのは大変…」と思っている大家さんもいるでしょう。

確かに、1からエクセルなどで作るのは大変ですが、昨今は『請求書作成ツール』がネット上にたくさんあり、中には無料で簡単に請求書を作成できるものも。

作成ツールであれば、請求書のフォーマットを1度作るだけで、その後は簡単にコピーや編集ができるため便利です。

その中でも『Misoca(ミソカ)』は無料登録するだけで使用できる便利なツールです。

Misoca(ミソカ)がおすすめな理由】

  1. テンプレートから好みのものを選んで必要事項を入力するだけで、簡単に請求書が作成できる
  2. メール、電話、チャットによるサポートがあり、請求書作成でわからないことがあっても質問できる
  3. 1クリックで請求書の郵送が可能(1通160円) 

「どのツールを使ったら良いかわからない…」という方はぜひ試しに使ってみてください。


7. 【STEP7】次の入居者のための準備をする

    

原状回復が終わったら、『次の入居者のための準備』を進めましょう。

【次の入居者のための準備】

(1)設備の動作確認
(2)室内の写真撮影
(3)次の入居者募集

原状回復工事が完了した段階で早めに次の入居者の準備をすることで、次の入居者募集を早めに始められます。

7-1. 設備の動作確認

原状回復工事が終了したら、下記を参考に部屋の設備の動作確認をします。

【動作確認が必要な設備(例)】

  • インターホン
  • 防犯カメラ
  • エアコン
  • ガスコンロ
  • 換気扇(キッチン・トイレ・浴室など)
  • 便座(暖房便座や温水洗浄便座)
  • 蛇口(キッチン・洗面・浴室など) など

なぜなら、次の入居者が入る前に設備の動作確認をしておかないと、次の入居者が退去する際、誰が破損・故障させたのか責任区分がわからなくなってしまうからです。

『入居前から壊れていたのか』または『入居者の故意・過失で壊れたのか』を確かめようがないということです。

万が一動作不良などがあれば、修理・交換をする必要があります。修理や交換をするには、業者に頼んだり作業に入ったりと時間がかかるため、次の入居者を早く募集するためにも、原状回復工事が完了したら早めに設備の動作確認をしましょう。

7-2. 室内の写真撮影

設備の動作確認が終わったら、室内の写真を撮影しておきましょう。

次回の原状回復費用を正しく請求するためには、本記事で何度もお伝えしている通り『元々あった傷や破損なのか』『借主がつけた傷や破損なのか』を明確に判断する必要があります。次の入居者が入る前の部屋の状態をできるだけ詳細に残しておくことが大切です。

3-1.チェックシートの準備』で紹介したチェックシートに記してある場所を参考に撮影して、物件・部屋ごとに分けてファイルなどにまとめておきましょう。

撮影日付のわかる写真と、場合によっては動画も残しておくことをおすすめします。

7-3. 次の入居者を募集する

部屋の設備の動作確認と室内の写真撮影が完了したら、いよいよ次の入居者募集を開始しましょう。

空室期間を短縮するためにも、原状回復が完了し入居できる状態になったら、できる限り早く次の入居者を探すことが大切です。

入居者の募集方法には、次のような方法があります。

【入居者の募集方法】

(1)入居者募集の専用サイトやSNSを使用する
(2)知人、友人に紹介してもらう
(3)貼り紙やチラシを使う
(4)仲介会社に依頼する など

1〜3は大家さん自身が入居者を探す方法で、4は管理会社に入居者を探してもらう方法です。

入居者を探す方法はさまざまありますが、入居者が早く決まる確率が高いのは『4.仲介会社に依頼する』です。仲介手数料は発生するものの、入居者募集・内見・契約・鍵の引き渡しなど面倒な部分だけ委託するという方法もあります。

大家さん自身にかかる手間や時間を加味して、納得できる方法で入居者募集をしましょう。

また、今回の原状回復でかかった費用を加味して、次の入居者と契約する際には特約条項を入れるのか、変更するのか、はたまた削除するのかなどを検討しておきましょう。

特約条項を検討するポイント
『通常損耗補修特約』や『賃借人修繕負担特約』は、現状の賃貸契約書に記載がないのであれば、盛り込むことを検討してもよいでしょう。

  • 通常損耗補修特約:通常損耗による原状回復費用の一部を入居者に負担してもらえる
  • 賃借人修繕負担特約:消耗品の交換を入居者に負担してもらえる 

上記の特約は、「賃貸契約書に記載」または「入居者への口頭説明」による入居者の合意があれば(録音・サインがあればより確実)有効です。

※通常損耗補修特約は、原状回復の種類・費用を具体的に記載する必要があるので注意が必要です。
NG:「通常損耗による原状回復費用は入居者負担」
OK:「退去時の、ハウスクリーニング費用:5万円、台所・風呂・トイレの消毒:2万円は入居者負担とする」

あまりにも常識からかけ離れた金額だと、逆に失効してしまうため、特約の記載内容を弁護士に確認しておいてもらうと安心です。


8. 大家と入居者の原状回復トラブル事例と対処法3選

ここまで、原状回復・立会いをスムーズに進めるため、入居者の退去〜次の入居者募集までの流れを詳しく解説しました。

しかし、STEP1〜STEP7をすべて実践しても、トラブルが起こってしまう可能性もあります。

そのため、事前によくあるトラブルと対処方法を知り備えておくことが大切です。

そこでここでは、大家と入居者間で実際に起きた『原状回復にまつわるトラブル事例』を3つ紹介します。

【原状回復のトラブル事例と対処法】

(1)入居者に原状回復費用の支払いを拒否 or 値下げ交渉された
(2)喫煙している入居者から「クロスは経年劣化なのでは?」と支払い免除を要求された
(3)入居者が立会い当日に”怖い人”を連れてきた

起こりうるトラブルとそれぞれの対処の方法を事前に知っておくことで、トラブルを避けることができ、万が一トラブルが起きてしまった時にも落ち着いて対応することができるでしょう。

原状回復に臨む前の心構えとしてしっかりチェックしておいてください。

8-1. 入居者に原状回復費用の支払いを拒否 or 値下げ交渉された

入居者に『敷金精算書(解約精算書)』を郵送後、原状回復費用の支払いを拒否されたり値下げ交渉されたりするトラブルはよくあります。

昨今、インターネットやSNSに『原状回復は大家負担』などと誤解を招くような記載があることもあり、正しい知識が浸透していないこともトラブルをまねく一因になっています。

理不尽に支払いを拒否したり値下げ交渉したりする方の中には、

「8年以上住んでいたのだから、ペットの粗相による戸棚の交換は大家負担だ!」

「ハウスクリーニング代を請求するのはおかしい!(特約にて合意しているにも関わらず)

など、ガイドラインや特約に反して言い分を通そうとする方も。

そのようなトラブルには、毅然とした態度で以下の対処法を実践してみてください。

【対処法】

  1. 契約書、ならびにガイドラインを提示した上で敷金精算書の内容を再度説明する→感情的にならず、落ち着いて1つ1つお伝えするよう意識しましょう 
  2. 支払い拒否や値下げ交渉をされた時点で弁護士にも相談しておく
  3. 対処法1を実践しても解決しない場合は、訴訟について改めて弁護士に相談した上で、必要に応じて内容証明郵便を送付し、調停・訴訟を申し立てましょう
支払い拒否や値下げ交渉などのトラブルは未然に防ぐ対策も重要
退去後にもめないためには、契約時や退去立会い時の会話を、スマホやボイスレコーダーで録音しておくことが重要です。日付とともに保存しておくことで、立派な証拠となります。

また、『2-2.賃貸契約の特約条項における大家負担・入居者負担の範囲を確認する』でも解説しましたが、消耗品代や鍵交換代、ハウスクリーニング代などを入居者に負担してもらいたいと考えている場合は、入居時に『通常損耗補修特約』を制定し、合意をとった上で契約をとっておくことも大切です。

8-2. 喫煙している入居者から「クロスは経年劣化なのでは?」と支払い免除を要求された

喫煙している入居者からのクロス(壁紙)・天井のヤニに関する支払い免除の要求も大家さんを悩ませるトラブルの1つ。

「クロス(壁紙)は6年で残存価値1円となる」という国土交通省の『原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(以下、ガイドライン)』があるため、どんな場合でも6年以降は支払う義務がないと勘違いしている方が多いのです。

しかし実際は、喫煙による過失は入居者負担です。その旨はガイドラインでも明記されており、『喫煙による原状回復の費用免除』などの特約を締結していなければ、タバコのヤニによるクロス(壁紙)の張り替えは正当な請求となります。

【対処法】

  • ガイドラインの喫煙に関する記載(原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)のp18)を明示し、支払い責任がある旨を伝える
  • 賃貸借契約書で『喫煙に関する特約条項』を締結している場合は上記と合わせて明示し、支払い責任がある旨を伝える
  • 契約時のクロスの写真や会話の録音があれば、合わせて入居者に提示する
契約時に『喫煙に関する特約条項』を追記しておくと安心
契約時に『喫煙に関する特約条項』を追加し、説明した上で署名をしてもらっておくと安心です。また、契約時の会話の音源を録音しておくと、契約無効との主張を防ぐ効果もあります。

特約条項には、「室内で喫煙した場合、借主は退去する際、壁・襖・天井張り替えの費用を全額負担すること」などのように、原状回復の負担範囲を具体的に記載しておきましょう。

8-3. 入居者が立会い当日に”怖い人”を連れてきた

立会い当日に、入居者がいわゆる”怖い人”を連れてきたというトラブルも、実際にあった事例です。

特に入居者が女性の場合などに多く、同伴者が最初から強気で恫喝してくるようなパターンも。

そのような場面に備え、あらかじめ下記の対処法からできそうな方法を取り入れ、実際に遭遇した場合にも臆せず毅然とした態度で立会いを進めましょう。

【事前の対策と立会い当日の対応】

◯事前の対策

  • 立会い時、大家さん1人ではなく原状回復の施工業者や管理会社の人にも同席してもらう
  • 立会い日を調整する際に、立会いに誰が参加するのかお互いに確認しておく

◯立会い当日の対応

  • 立会い中の様子を、終始録音(できれば録画)して証拠として残す
  • 恫喝されても毅然とした態度を崩さない

恫喝は「脅迫罪」、嘘の説明による強要は「虚偽罪」に当たることもあるため証拠が重要です。


9. 原状回復に不安のある大家さんは管理会社への委託を検討してみよう

ここまで、原状回復の流れや原状回復で大家がするべきことの全容を解説してきました。しかし、原状回復について全体像の理解はできたものの、

「原状回復ってやることが多くて大変そう…」
「クレーム気質の入居者だったらどうしよう…」
「トラブルが起きたら怖い…」

と不安に思っている大家さんも多いのではないでしょうか。

これからも原状回復や次の入居者探しという大変な業務を、大家さん自身が入退去のたびに何度も繰り返さなければならないと考えると、費用対効果も悪く大変ですよね。

国土交通省の調査によると、自主管理をしている大家さんはわずか2割。残り8割の大家さんは、部分的・全面的に管理会社に業務を任せているのが現状です。

※参考:国土交通省「賃貸住宅管理業務に関するアンケート調査(家主) 」

多くの大家さんは、大変な業務や作業を必要な分だけ管理会社に任せ、金銭面だけではなく時間の面でもゆとりをもって賃貸経営をおこなっています。

これからも物件という大切な資産を守り賃貸経営を成功・安定させたいと考えている方は、管理会社を頼るのも1つの方法です。

原状回復や退去の立会いで困ったらルーム・スタイルにご相談ください!
「入居者に原状回復費用の支払いをしてもらえなかったらどうしよう…」
「原状回復に怖い人がきたら嫌だな…」

といった原状回復の悩みやお困りごとも、2006年から賃貸管理・仲介・売却・内装業を”一気通貫で提供”している弊社ルーム・スタイルでは徹底的にサポートが可能です。

強み①原状回復の速度が早く次の入居者が見つけやすい
入居者の退去5日後に『原状回復完了・次の入居者さんへお引き渡し』の実績もあり入居までの期間は平均1ヶ月(※首都圏の賃貸物件の平均募集期間は4〜5ヶ月程度)
スムーズな賃貸情報の拡散・豊富なノウハウで圧倒的な客付けの速さを実現しています。

強み②管理費用の安さ
ルームスタイルの管理費用は、総家賃の3%〜4%(相場は5%)。独自開発のシステムで効率化を図り、「高品質な管理を保ちながら管理手数料を下げる努力」をしております。
加えて総合管理プランでは、6つの安心保証(下記の図参照)もついているためコスパ抜群。

  

「入居者とトラブルになったらどうしよう…」というオーナー様が抱える不安も、しっかりとサポートさせていただきます。 

強み③満足度が高い
高品質できめ細やかな対応に加え、管理費用の安さ、次の入居者の早期客づけ、オーナー様、入居者様双方の満足度の高さで、ルーム・スタイルは多くのオーナー様から選ばれています。

実際にいただいたオーナー様の感想を一部「オーナー様の声」より抜粋してみましょう。

東京都渋谷区:オーナー様

今回は初めての募集でしたが、 親切丁寧、とても分かりやすく説明して貰えたのが嬉しかったです!また質問を投げかけた際のレスポンスが、とても早くて「信頼出来る方だ」と心より感じました。宮城さんにお願いして本当に良かったです♪

東村山市マンション区分:オーナー様

今回、初めての賃貸募集でしたが、丁寧な対応でした。

また、イレギュラーな状況ではありましたが、親身なご対応であり、交換を持てました。

東京都豊島区:オーナー様

返信が早くて、いつも丁寧でご対応してもらってありがとうございます。

信頼できる担当者です。今後とも宜しくお願い致します。

もちろん、高評価をいただいているのはオーナー様だけではありません。ルーム・スタイルでは、24時間365日対応のコールセンターをご利用いただけ、入居者からのクレームにも即座に対応いたします。

専任担当と優秀なチームスタッフが、徹底して入居者サポートもするので、オーナー様にも入居者様にも、不満を感じさせません。

原状回復を機に委託管理にご興味を持たれた方は、ぜひ一度『ルーム・スタイル』へ『お問合せ』ください。


10. まとめ

この記事を通して、『大家さんが原状回復に臨むにあたり知っておくべきこと』を十分把握できたかと思います。

最後に、原状回復全体の流れとポイントをおさらいしましょう。

◎原状回復の心構えとして大切なこと

  • 国土交通省が発表しているガイドラインを十分理解する
  • 賃貸借契約書に記載のある『特約』の内容を把握する
  • 正しい知識をつけ、毅然とした態度で立会いに臨む

◎契約時・退去時にしておくべきこと

  • 部屋の場所ごとの状態を写真に収める
  • 『賃貸借契約書』『退去立会いの同意書』の締結時は会話や発言を録音する
  • 『通常損耗補修特約』『賃貸借人修繕負担特約』『喫煙に関する特約条項』について十分理解した上で、必要に応じて賃貸借契約書に記載する

◎トラブルは事前に事例・対処法を知っておくことが大切

◎原状回復や不動産管理に不安や大変さを感じる大家さんは、管理会社への完全委託や部分委託を検討するのも1つの方法

原状回復は、知識を正しく理解しておくことが、トラブルを防ぎ成功に導くための助けになります。

この記事を通して、原状回復の不安がなくなり、自信を持って原状回復に臨める大家さんが1人でも増えてくれることを願っています。

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