
都内の投資用不動産市場では、これまで評価の高かった「都内郊外」から、都心物件へと資産を組み替える投資家が垣間見えるようになってきました。
実際に、不動産エコノミストの吉崎誠二氏も、相談してきたクライアントに対して、「資産を組み替えるのでしたら、今がチャンスだと思います」とアドバイスをしたとWebメディア「不動産投資スクエア(株式会社クレアスライフ)」内で語っています。本記事では、東京都の人口・世帯予測データをもとに「都内郊外から都心への資産組み換え」がなぜ今重要なのかを解説します。
ご売却や資産の組み換えをご検討中の方は、お気軽にご相談ください。最新の市場動向を踏まえたうえで、お客様にとって最適なご提案をさせていただきます。
| この記事で分かること |
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目次
- 都内郊外の物件はなぜ評価されてきたのか
- 割安でも都心近接
- 単身世帯を取り込みやすい
- 低金利と価格上昇の追い風
- 流動性が高く参入しやすい市場
- 都内郊外の評価・構造変化が起きている
- 郊外ワンルームの成約価格が頭打ち傾向
- 需要を支えてきた若年単身層の都心回帰
- 「新築供給減」「狭小ワンルームの供給増」で競争激化
- 大規模修繕・修繕積立金の増加など、維持コスト上昇
- 東京都の人口・世帯構成の変化が示す未来
- 「生産年齢人口」が横並びに
- 単身世帯の比率が上昇し続ける予測
- 区別に見ると、将来性に差が生まれ始めている
- 「今」がポートフォリオの組み換え適期といえる理由
- ①郊外物件が高値で動いている現状
- ②コスト増=収益性のひずみ
- ③今後の需要格差拡大リスク
- まとめ
都内郊外の物件はなぜ評価されてきたのか
近年、都内の不動産投資といって思い浮かぶのが「都内郊外エリア(以下、都内郊外とします)」。
都心ほど価格が跳ね上がらず、それでいて通勤圏としての利便性も確保できる。そんな「コスパの良さ」が投資家にとって魅力的でした。
特に、投資家に選ばれてきた背景を4つのポイントに分けて見ていきましょう。
割安でも都心近接
都内郊外では、 都心に比べて手頃な家賃設定ができるため、
「できるだけ安く住みたい」
「会社から遠すぎるのは嫌だ」
という社会人、学生からのニーズをしっかり取り込めていました。
投資家にとって限られた資金でも「都心需要」を狙える、そのバランスの良さが、都内郊外ワンルームを「安定運用できる投資商品」として成立させてきたといえます。
単身世帯を取り込みやすい
都内郊外は、昔から単身者の多い地域が多く、コンパクトな住まいが選ばれやすい傾向があります。中でも、やはり多いのは若者(特に学生)です。
都内郊外には、中央大学や工学院大学など大学が複数集まる地域(八王子市など)があり、学生の賃貸需要を直接取り込める強みがあります。
また、23区内には、
- 東京大学
- 早稲田大学
- 慶應義塾大学
- 明治大学
- 法政大学
- 上智大学
といった「ブランド力の高い大学」も存在します。ただし、都心は家賃水準が高いため、通学しやすく家賃が抑えられる郊外へ流れる学生も一定数見込めます。
学年ごとに入れ替わる学生需要は毎年発生するため、場所を選べば長期空室になりにくく、学生ニーズを安定的に取り込めるという構図が続いてきたのです。
低金利と価格上昇の追い風
長く続いた低金利のおかげで、借入負担を抑えながら物件を取得しやすい環境が続いてきました。また、インターネットやSNSの普及で情報が溢れ、不動産投資を始める投資家の数が増えたという背景もあります。
結果として、多くの投資家が都内郊外へ参入し、需要がさらに押し上げられました。
さらに、駅前再開発やインフラ整備が進むエリアでは価格上昇が顕著で、買った後に値上がりするケースも増加。「取得コストが抑えられ、出口でも利益を取りやすい」投資家にとって『回しやすいマーケット』が続いてきたのです。
流動性が高く参入しやすい市場
都内郊外は、供給戸数が豊富で、中古も含めた売買・賃貸の流通が活発です。
- 買いやすい
- 貸しやすい
- 売りやすい
という三拍子が揃いやすく、投資の参入障壁が低めでした。初心者でもチャレンジしやすい市場だったことも、人気の理由です。
一方で都心の東京都23区では、ワンルームの新築・供給に対して条例で規制があり、「良いワンルームがなかなか出にくい」状況が継続。これによって、郊外や市外エリアのワンルームの価値や安定性が相対的に上がることにつながりました。
つまり、都内郊外は「供給過多・流通活発」 → 参入しやすく、かつ「23区の新規供給制限」 → 競争優位になりやすい、という二重の事情を背景に、「流動性が高く参入しやすい市場」として成り立ちやすかったのです。
ご売却や資産の組み換えをご検討中の方は、お気軽にご相談ください。最新の市場動向を踏まえたうえで、お客様にとって最適なご提案をさせていただきます。
都内郊外の評価・構造変化が起きている
これまで「手頃な価格で借り手需要もそこそこ見込める」という安心感があった都内郊外のワンルーム市場。
ところが最近、その当たり前が少しずつ変わり始めています。色々な変化が重なって、「このまま持ち続けて大丈夫?」と感じる場面が増えてきたように感じます。
郊外ワンルームの成約価格が頭打ち傾向
これまで都内郊外のワンルームは、「手の届きやすい価格」と「安定した賃貸需要」の両方を得やすい、ちょうどいい投資先として評価されてきました。
しかし最近は、売買価格の伸びが止まりつつあるという市況を伺うタイミングがあります。
背景には、都心側を選ぶ人が増えていたり、郊外物件の築年数が進んでいたりと、これまでとは違う動きが出てきていることが挙げられます。
吉崎氏も警鐘を鳴らしていますが、「都内ならば10割すべてのエリアが安全というわけではない」ということです。近年は、単に「割安で安定」と見られてきた都内郊外にも、選別の時代が訪れています。
交通利便の格差やキャンパス移転、若年層人口の変化などにより、すべてが安全ではない構造が浮き彫りになってきたのではないでしょうか。
需要を支えてきた若年単身層の都心回帰
これまで都内郊外ワンルームを支えてきた若年の単身者や学生などの間で、「多少狭くても都心の方が便利」という選び方が広がってきています。
仕事や遊びまでの移動時間を短縮し、その時間を有効活用したい、という効率重視の価値観が背景にあると考えられます。「若いうちだけ」「学生のうちだけ」と期間限定であれば、なおさらです。
さらに、スマホやSNSが当たり前となり、「短い情報で素早く答えにたどり着く」という行動様式が年々強まっています。
たとえば、長々と動画を視聴するのではなく、要点だけをサクッと見られるショート動画を好んだり、長時間の電話よりも短いメッセージ送信で要件を完結したり。GoogleやYahoo!の検索窓で検索するよりも、AIに聞くことで即時に自分が求める回答をくれる、そんな時代です。
単純に紐づけできるわけではありませんが、こうした効率重視の志向が、住まい選びにも影響し始めているのではないでしょうか。
「新築供給減」「狭小ワンルームの供給増」で競争激化
まず都心部では、建築コスト高騰や土地確保の難しさ、条例の影響もあり、ワンルームの新築供給が大きく減少してきました。
その一方で、都心の立地を重視した狭小ワンルームの供給が増えるなど、「広さよりアクセス・利便性」を求める層の需要を取り込む動きが強まっています。親世代からすると「こんな狭い場所に?」と思われがちですが、物価高の今、家賃を抑えたい層にマッチしているのが実情です。
この結果、
- 都心:築浅&狭小に人気が高まる
- 郊外:築古物件は選ばれにくくなる傾向
という構造変化が進行。つまり、都内郊外でも強いエリアと苦戦するエリアがハッキリ分かれていくと考えられます。
【参考:東京の狭小(激狭)ワンルーム投資が人気?資産価値や収益性、注意点を解説】
大規模修繕・修繕積立金の増加など、維持コスト上昇
都内郊外物件は築年数が進んでいるものが多く、これらの物件に今後差し迫るのは、躯体工事や給排水設備などの大規模修繕。建築コストの増加で、投資家にとって毎月の修繕積立金の値上げが続き、支出がじわじわと増えていく傾向があります。
これまで保てていた収支のバランスが崩れやすくなり、「大きな家賃上昇は見込めないのに、維持費の増加幅が大きい」という物件も出てきています。物価高の今、都内郊外市場で起きている変化の一つです。
東京都の人口・世帯構成の変化が示す未来
東京都では、人口そのものの増減よりも「世帯数」「世帯構成」の変化が、今後の賃貸需要における重要なカギになります。
以下で、公的データを用いて、最近の統計と予測をもとに「今後の住まいの需要構造」を整理してみましょう。
「生産年齢人口」が横並びに
まずは、東京都の人口構成を、5歳ごとの年齢区分で見た「人口ピラミッド」の推移から、その方向性を見ていきます。
(出典:東京都「東京都男女年齢(5歳階級)別人口の予測」)
この人口ピラミッドを見ると、1970年当時は「若い世代が多く、上に伸びる三角形」でした。
しかし、2020年以降は形が変わり、今後予想されるのは20〜64歳の生産年齢人口がほぼ均等に並ぶ「樽型の構造」。2045年の予測では、年代ごとの人口の凸凹がほとんどなく、どの世代もほぼ同数で並んでいます。
この変化は、不動産投資においても「これまでの当たり前」が通用しづらくなる可能性があり、慎重に考える時期に迫っているといえるでしょう。
入居者の属性が「若年層」ばかりの場合、一度ポートフォリオの見直しを検討してみて下さい。
単身世帯の比率が上昇し続ける予測
また、東京都では、単身世帯が増え続けることも予想されています。
(出典:東京都総務局統計部「東京都世帯数の予測」(2024年3月公表))
東京都の世帯数は、2020年時点では約362.6万世帯でしたが、2040年ごろにピークを迎え、2045年には 410.1万世帯まで増える見込みです。
前章のことを考慮すると、25年で+47.5万世帯(+13.1%)という伸びは、60代以上の単身者の増加が想定されます。
しかしこの世代は、健康・体力・ライフスタイルの変化や、万が一への備えを考える人が多く、若年層のように気軽に賃貸へ住み替えるとは限りません。むしろ、「住み替えリスク」や「終の住処」への不安から、慎重に物件を選ぶ層と言えます。
そのうえ、孤独死リスクを懸念して入居審査が厳格化されるケースもあり、「世帯数は増えているのに、優良な借り手が減少している」という矛盾が生まれやすい構造です。
区別に見ると、将来性に差が生まれ始めている
区ごとの将来像には、少しずつ違いが見え始めています。
単身者の転入が続き、賃貸需要が保たれそうなエリアがある一方で、人口の伸びが鈍く、今後は頭打ちが懸念されるエリアも出てきています。
まだ大きな差ではありませんが、この小さな動きが、将来の資産価値にも影響していきそうです。

(出典:東京都「東京都男女年齢(5歳階級)別人口の予測」)※以下、同様。
【 平成27年(2015年)〜令和2年(2020年)】
この時代は、都心への人の動きがすでに始まっていた時期です。東京都では、この5年間に高齢化による自然減が広がり始めました。特に人口規模の大きい外縁区は、死亡超過が目立ちます。
一方、社会増減を見ると、港区・中央区・江東区などでは転入する人が安定して多い状況が続きました。再開発やオフィス立地の近さが影響していると考えられます。振り返ると、「都心に近い場所が選ばれる」傾向はこの頃から確認できます。
【令和7年(2025年)〜令和12年(2030年)】
【令和22年(2040年)〜令和27年(2045年)】
令和7年(2025年)〜令和12年(2030年)は、区によって人口動向が分かれる結果が見え始めます。さらに将来を見ると、全区で自然減が進む予測です。高齢化の影響が大きくなっていきます。
転入・転出の動きは、都心側では一定の転入超過が続く一方、外縁区では転出が優勢になる可能性があります。
上記の画像ベースで「東京都23区の人口動向」を分析すると、以下のようになります。
増える区 |
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横ばいの区 |
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減る区 |
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ご売却や資産の組み換えをご検討中の方は、お気軽にご相談ください。最新の市場動向を踏まえたうえで、お客様にとって最適なご提案をさせていただきます。
「今」がポートフォリオの組み換え適期といえる理由
東京の賃貸市場では、入居者の動きや建物の維持費など、これまでとは違う変化が進んでいます。
都内郊外ワンルーム市場では、これまで見えにくかったリスクが少しずつ形になり始め、ずっと安定した資産とは言い切れない状況です。
では、なぜ「今」なのでしょうか。その根拠となる3つのポイントを解説します。
①郊外物件が高値で動いている現状
今、都内郊外物件はまだまだ買い手が多く、想定以上の価格で売れるケースもあります。
ただし、この高値がいつまで続くかはわかりません。今、都内郊外物件は確かに「売りやすい相場」が続いていますが、注意すべきは将来への不透明感です。
たとえば、最近の中国との関係悪化によって、東京の収益物件の買い手となる中国人富裕層の動きが鈍る可能性がありえます。実際に、コロナ禍では不動産取引全体が一時的に停滞しました。
こうした予期せぬ社会的なショックは、いつ起きてもおかしくありません。
言い換えれば、「持ち続けることがリスクに変わる前に、動ける時に動いておく」という判断が求められる局面だといえます。
②コスト増=収益性のひずみ
近年は、金利だけでなく建材費や人件費の高騰で、修繕費や管理費の負担が重くなっています。
今後も上昇が予想されますが、実際にどれほど上昇するのかを理解していない方も多いかもしれません。
(出典:CBRE PROPERTY SEARCH「建築費高騰の背景と、その対抗策は?」)
上記のグラフは、東京都における建築コスト、資材コスト、労務コストの推移および今後の予測を示したもので、Webメディア「CBRE PROPERTY SEARCH」内の岩谷 紘之氏によるコラム内で公表されています。
- 資材コスト…コンクリート・鉄筋・ガラス・サッシ・内装材など、建物づくりに使う材料の値段
- 労務コスト…現場で工事を行う職人さんや技術者、監督などの人件費
- 建築コスト…これら資材+労務をまとめた「建物を建てる(大きく直す)ためのトータルコスト」
グラフを見ると、まず資材コストと労務コストが右肩上がりになっていて、それに引っ張られる形で建築コスト全体が2030年に向けて大きく上昇する予測になっています。
イメージとしては、「2011年と同じ内容の工事をしようとしても、2030年には2倍近いお金がかかる」という世界です。
この上昇は、新築だけの話ではありません。マンションオーナーにとっては、
- 外壁・屋上防水・配管・エレベーターなどの大規模修繕工事
- 給湯器・設備交換などの更新工事
に使う材料代は資材コストに、工事の人件費は労務コストにそれぞれ連動します。つまり、グラフの線が右に行くほど、将来かかる修繕費や建て替え費用も一緒に膨らんでいく、ということです。
しかし、工事費が上がるスピードに家賃を追いつかせるには、単純計算で2011年に10万円だった家賃を、2030年には約23万円にしなければいけない計算になります。
オーナーとしては「支出の伸びに合わせて収入も増やしたい」のが本音ですが、実際には、ポータルサイトなど家賃が2倍以上に上がるような市場環境は考えにくい、という残酷な現実があるわけです。
③今後の需要格差拡大リスク
2020年の国勢調査をもとにしたデータによると、東京都では、単独世帯がすでに全体の約50.2%を占めています。この比率は今後も一定水準を維持すると見込まれていますが、問題はその中身の変化です。
これまで都内郊外ワンルームの主な入居者だった若年〜中年単身層・学生は減少傾向へ。代わりに、高齢単身世帯の比率が大幅に高まると推計されています。
しかし高齢単身者は、
- 健康面の不安
- 生活導線・安全性の重視
- 見守りサービスへのニーズ
など、求められる東京の需要は静かにシフトしています。かといって、学生や若年層が全くゼロになるわけではありません。
つまり大切なのは、「自分の物件はこの先の市場でどんな立ち位置になるのか」を正しく見極め、設備投資(バリアフリー・見守り対応など)を含めて生き残れるかを冷静に判断することです。
もし今後の需要の波に乗れないと感じるなら、まだ高く売れる“今”のうちにポートフォリオを組み換えるという選択が、空室リスクを避ける賢い一手になりえます。
まとめ
今、東京の不動産市場では、単身世帯の増加や都心への需要集中が進み、物件の価値に大きな差が生まれ始めています。かつて安定した投資先だった都内郊外エリアでも、築古化や競争の激化で、家賃維持が難しくなる可能性が高まっています。
一方で、都心や都心近接エリアにあるコンパクトタイプの物件は、今後も選ばれ続ける見通しです。
そこで、まだ高値で売りやすい今のうちに、将来の需要が見込めるエリアへ資産を移す。こうした「出口」と「これからの入居需要」をセットで考えた判断が、これからの不動産経営ではますます重要になってきます。
将来の安心のためにも、いまの資産が本当にこの先も戦えるのか、見直すタイミングに来ているのかもしれません。
ご売却や資産の組み換えをご検討中の方は、お気軽にご相談ください。最新の市場動向を踏まえたうえで、お客様にとって最適なご提案をさせていただきます。














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