
「専任媒介契約を途中で解除したいけど、そもそも可能なのかな?」
「契約書に『解除できない』と書いてあるけど本当に無理なの?」
「違約金が請求されるって本当?どうすれば損をしないで済むかな?」
専任媒介契約を結んでいるものの「なかなか売れない」「不動産会社の対応に不安がある」と感じたときには、契約期間中に契約を解除できるのか、費用がかかるのかという点は非常に気になるところでしょう。
結論から言えば、専任媒介契約は、たとえ契約期間中であっても途中で解除することが可能です。ただし、解除の理由によっては違約金や実費を請求される可能性があるため、正しい手順と知識を持って進めることが大切です。
この記事では、国土交通省が定めた「標準媒介契約約款」をもとに、専任媒介契約の途中解除に関する正しい知識を、売主の立場に立ってわかりやすく解説します。
違約金なしで契約解除ができるケースと、違約金・実費を請求される可能性があるケース、具体的にいくら払うのか、トラブルを避けるための進め方まで、一つひとつ丁寧に紹介していきます。
読み終えるころには、「どう進めれば安全に専任媒介契約を終了できるのか」が明確になり、次の一手へ自信を持って踏み出せるようになるはずです。
専任媒介契約ではなく専属専任媒介契約を結んでいる方へ 本記事では、主に「専任媒介契約」について解説していますが、この内容は「専属専任媒介契約」にも共通します。専任媒介も専属専任媒介も「1社にのみ媒介を依頼する代わりに、契約期間が決まっている媒介契約」であり、違いは「自己発見取引ができるかどうか」です。 ![]() |
目次
- 1. 専任媒介契約を期間中に解除・終了することは可能
- 2. 違約金なしで契約解除できる4つのケース(不動産会社の落ち度がある場合)
- 2-1. 売却活動の報告義務(2週に1回または週1回)を怠った
- 2-2. レインズへの登録義務や登録証明書の交付義務を怠った
- 2-3. 積極的に売却先を探す義務を怠った
- 2-4. 信義則に違反した/故意に虚偽などの報告を行った
- 3. 違約金または実費を請求される可能性があるケース
- 3-1. 他の不動産会社を通して売買を成立させてしまった
- 3-2. 自分で買い手を見つけて売買契約をした(専属専任媒介の場合)
- 3-3. 他の不動産会社に変更するために途中解除したい
- 3-4. 売却を中止することになった
- 4. 支払わなければならない違約金・実費はいくら?2つのケースを解説
- 4-1. 仲介手数料相当の違約金が請求されるケース(売買価格×3%+6万円)
- 4-2. かかった実費が発生するケース
- 5. 自己都合の契約解除で実費を払いたくないなら契約満了を待つのも選択肢
- 6. 損をせずに専任媒介契約を解除する5つのステップ
- 6-1. 専任媒介契約書を確認して途中契約の内容を確認する
- 6-2. 不動産会社に契約解除の意思表示をする
- 6-3. 費用請求がある場合には明細を送ってもらって精査する
- 6-4. 契約解除通知書を作成して送付する
- 6-5. 契約解除合意書を取り交わす(任意)
- 7. 契約解除した後には信頼性・売却力の両方がある不動産会社を選ぶことが大切
- まとめ
1. 専任媒介契約を期間中に解除・終了することは可能
結論からいうと、専任媒介契約は、契約期間中であっても途中で解除することが可能です。
不動産会社に落ち度がある場合はもちろん、自己都合でも専任媒介契約を途中解除することは可能 ・不動産会社に落ち度がある→違約金なしで解除可能 ・売主都合→違約金や実費を請求される可能性はあるが、解除自体は可能 ・違約金を払いたくない場合は、契約満了を待つという選択肢もある |
根拠として、国土交通省が定めた「宅地建物取引業法施行規則の規定による標準媒介契約約款」があります。「専任媒介契約約款」の内容を読むと、以下のことがわかります。
(1)不動産会社に落ち度がある場合 標準専任媒介契約約款第16条・第17条(契約の解除)により、不動産会社が義務違反や信義則違反をしたときは、売主は契約を解除できると明記されています。 (2)売主都合での解除の場合 |
たとえ不動産会社に「途中解約はできませんよ」と言われたとしても、専任媒介契約書に特約として「契約解除ができない旨」が定められていたとしても、実務上、途中での契約解除はできると考えて良いでしょう。
ただし、売主都合で契約解除する場合には、違約金や実費を請求される可能性があるため注意が必要です。
次の章からは、みなさまがもっとも不安に思っているであろう「違約金」について解説していきます。
2. 違約金なしで契約解除できる4つのケース(不動産会社の落ち度がある場合)
不動産会社が専任媒介契約で定められた義務を果たしていない場合など、不動産会社に「落ち度」があることによる契約解除の場合には、違約金を支払わずに契約解除することが可能です。
ここでは代表的な4つのケースを紹介します。
違約金なしで契約解除できる4つのケース ・売却活動の報告義務(2週に1回または週1回)を怠った ・レインズへの登録義務や登録証明書の交付義務を怠った ・積極的に売却先を探す義務を怠った ・信義則に違反した/故意に虚偽などの報告を行った |
「なぜ契約解除が可能なのか?」についても、国土交通省「宅地建物取引業法施行規則の規定による標準媒介契約約款」に基づいてしっかりと根拠を説明していきます。
2-1. 売却活動の報告義務(2週に1回または週1回)を怠った
不動産会社が、売却活動の報告義務を怠った場合には、不動産会社に義務違反があるため、違約金なしで専任媒介契約を解除することが可能です。
不動産会社には、専任媒介契約では「2週間に1回以上」、専属専任媒介契約では「1週間に1回以上」の頻度で、売主に対して業務処理状況の報告を行う義務があります。
これは宅地建物取引業法で定められた義務のひとつで、1社にのみ売却活動を任せる代わりに、「現状の売却活動がどうなっているか」を売主に決まった頻度で伝えなければならないのです。
この報告義務を怠った場合には、「専任媒介契約の義務の履行がされていない」ということになるため、契約解除理由に該当します。
(契約の解除) 第16条 甲又は乙が専任媒介契約に定める義務の履行に関してその本旨に従った履行をしない場合には、その相手方は、相当の期間を定めて履行を催告し、その期間内に履行がないときは、専任媒介契約を解除することができます。 |
不動産会社の義務違反による解除となるため、この場合、違約金を支払う必要はありません。
2-2. レインズへの登録義務や登録証明書の交付義務を怠った
不動産会社がレインズへの登録や登録証明書の交付を怠った場合にも、不動産会社に義務違反があるため、違約金なしで専任媒介契約を解除することが可能です。
専任媒介契約または専属専任媒介契約を締結した場合、不動産会社には物件を「レインズ(指定流通機構)」に登録する義務があります。レインズに登録する期限は、専任媒介契約であれば媒介契約締結の翌日から7日以内、専属専任媒介契約であれば7日以内(休業日を除く)です。
加えて、登録後には「登録を証する書面(登録証明書)」を売主にできるだけ早いタイミングで交付しなければなりません。
これらの対応を怠った場合、不動産会社が専任媒介契約に定められた義務を履行していないと判断され、2-1と同様に契約解除理由に該当します。
不動産会社の義務違反による解除となるため、この場合も、違約金を支払う必要はありません。
2-3. 積極的に売却先を探す義務を怠った
不動産会社が積極的に売却先を探してくれていない場合にも、不動産会社に義務違反があるため、違約金なしで専任媒介契約を解除することが可能です。
専任媒介契約や専属専任媒介契約では、不動産会社の義務として「積極的に取引の相手を探すこと」が義務付けられています。
積極的に売却先を探してくれていないと考えられるケース例 ・自社サイトや不動産ポータルサイトに掲載されていない ・掲載されていても、写真が少ない・説明文が不十分 ・他の不動産会社からの問い合わせを断っている(囲い込み) ・オープンハウスや内覧会などの提案が一度もない ・価格設定の見直しなど売却につながるアドバイスがない ・定期報告以外の自主的な進捗共有が一切ない ・担当者との連絡がほとんど取れない/後回しにされる |
積極的な売却活動が行われておらず、改善を求めても対応がなされない場合には、売主は契約解除を申し入れることができます。この場合も不動産会社の義務違反による解除となるため、違約金は発生しません。
2-4. 信義則に違反した/故意に虚偽などの報告を行った
不動産会社が「信義則」(相手方の信頼を裏切らないように誠実に行うべきという原則)に違反した場合や、故意または重過失により事実を告げなかったり虚偽の報告をしたりした場合には、違約金なしで売主から契約を解除できます。
(契約の解除) 第17条 次のいずれかに該当する場合においては、甲は、専任媒介契約を解除することができます。 一 乙が専任媒介契約に係る業務について信義を旨とし誠実に遂行する義務に違反したとき。 二 乙が専任媒介契約に係る重要な事項について、故意もしくは重過失により事実を告げず、または不実のことを告げる行為をしたとき。 三 乙が宅地建物取引業に関して不正または著しく不当な行為をしたとき。 |
たとえば以下のようなケースが該当する可能性があります。
不動産会社が信義則に違反した/故意に虚偽などの報告を行ったと考えられるケース例 ・両手仲介(売主からも買主からも仲介手数料をもらう)を狙って、囲い込みを行っていた ・実際には内見希望がないのに「何件か問い合わせが来ている」と虚偽の報告をされた ・レインズ未登録なのに「すでに登録済です」と、虚偽の報告をされた ・内覧希望が来ていたのに、両手仲介を狙って断ってしまい、その事実を報告しなかった ・広告を打っていないのに「積極的に広告している」と説明された ・売主の同意を得ずに販売価格を引き下げて、チラシを配布された |
専任媒介契約約款の解除事由に該当する場合には、違約金なしで契約解除することが可能です。
こうした行為は宅建業法違反に該当する可能性が高いため、経緯をまとめたうえで、都道府県宅建協会の不動産無料相談所にも相談することもおすすめします。
3. 違約金または実費を請求される可能性があるケース
ここからは逆に、専任媒介契約の解除はできるものの「違約金(または実費)」が請求される可能性があるケースについてもわかりやすく解説します。
なお、違約金や実費は「かならず請求される」「かならず発生する」ものではない点に注意が必要です。
専任媒介契約を途中で解除しようとするとき、「違約金は絶対に払わなければならない」と思い込んでしまう方が多いようです。しかし実際には、違約金はあくまで「請求される可能性がある費用」であって、必ず発生するとは限りません。
これから解説する4つのケースでも、不動産会社が請求する権利を持っている、というだけであり、運よく請求されないことも十分にありえます。
違約金または実費を請求される可能性があるケース ・他の不動産会社を通して売買を成立させてしまった ・自分で買い手を見つけて売買契約をした(専属専任媒介の場合) ・他の不動産会社に変更するために途中解除したい ・売却を中止することになった |
あくまで「請求される可能性があるケース」として見ていきましょう。
3-1. 他の不動産会社を通して売買を成立させてしまった
専任媒介契約の期間中に、他の不動産会社とも媒介契約を結んでしまい、なおかつ売買まで成立させてしまったというケースは、明確に契約違反に該当するため、不動産会社から違約金(約定報酬額=仲介手数料相当の金額)を請求される可能性が高いといえます。
国土交通省が作成した標準専任媒介契約約款では、以下の通り第12条で違約金の請求について定められています。
(違約金の請求) 第12条 甲は、専任媒介契約の有効期間内に、乙以外の宅地建物取引業者に目的物件の売買又は交換の媒介又は代理を依頼することはできません。甲がこれに違反し、売買又は交換の契約を成立させたときは、乙は、甲に対して、約定報酬額に相当する金額(この媒介に係る消費税額及び地方消費税額の合計額に相当する額を除きます。)の違約金の支払を請求することができます。 |
そもそも専任媒介契約・専属専任媒介契約は、1社のみにお願いする契約なので、その約束を破って他社で売却を成立させてしまうのは不義理となります。
契約違反に該当する行為なので、原則として支払いを免れることは難しいと考えておきましょう。
3-2. 自分で買い手を見つけて売買契約をした(専属専任媒介の場合)
専属専任媒介契約を結んでいる場合には、売主が自分で買い手を見つけて売買契約を成立させる「自己発見取引」は禁止されています。これに違反して売買契約を締結した場合、不動産会社から違約金(仲介手数料相当)を請求される可能性が高いといえます。
国土交通省が作成した標準専属専任媒介契約約款では、以下の通り第12条2項で違約金の請求について定められています。
(違約金の請求) 2 甲は、専属専任媒介契約の有効期間内に、自ら発見した相手方と目的物件の売買又は交換の契約を締結することはできません。甲がこれに違反したときは、乙は、甲に対して、約定報酬額に相当する金額(この媒介に係る消費税額及び地方消費税額の合計額に相当する額を除きます。)の違約金の支払を請求することができます。 |
一方、専任媒介契約(専属でない)であれば自己発見取引は認められており、違約金は発生しません。(ただし実費を請求される可能性があります。)
契約書を見て、自分が「専任」か「専属専任」かをしっかり確認しておくことが大切です。
3-3. 他の不動産会社に変更するために途中解除したい
「単に他社に乗り換えたい」という理由で途中解除を申し入れることは可能ですし、契約違反には当たらないため違約金は発生しませんが、「それまでにかかった実費」を請求される可能性があります。
これも、国土交通省のルールとして、専任媒介契約約款を見ると以下のように書かれています。
(費用償還の請求) 第14条 専任媒介契約の有効期間内において、甲が自ら発見した相手方と目的物件の売買若しくは交換の契約を締結したとき、又は乙の責めに帰すことができない事由によって専任媒介契約が解除されたときは、乙は、甲に対して、専任媒介契約の履行のために要した費用の償還を請求することができます。 2 前項の費用の額は、約定報酬額を超えることはできません。 |
専任媒介契約の履行のために要した費用というのは、たとえば、不動産会社がすでに広告掲載・写真撮影・資料作成などを行っていた場合の費用のことです。
また、いくら実費がかかっていたとしても、第14条2項にあるように「約定報酬額(=仲介手数料)」を超える請求はできないため、そこが上限となります。
3-4. 売却を中止することになった
「やはり売却をやめたい」と途中で判断した場合も契約解除は可能ですが、すでに業務が進んでいた場合は3-3と同様に、実費を請求されることがあります。
なお、契約期間の満了を待って更新をしない形で終了させれば、こうした請求を避けられる可能性も高まります。まずは契約満了日を確認し、無理に途中解除せず穏便に終える選択肢も検討しましょう。
4. 支払わなければならない違約金・実費はいくら?2つのケースを解説
3章で解説したように、専任媒介契約を売主側の都合で途中解除した場合には、状況によっては不動産会社から違約金や費用を請求されることがあります。ただし、その金額にはあらかじめ上限が設けられており、不当に高額な金額を請求されることは法律上認められていません。
これから紹介するのは、違約金として実際に請求される可能性がある金額の目安です。具体的には、以下の2つのパターンが考えられます。
違約金・実費を支払わなければならない2つのケース ・仲介手数料相当の違約金が請求されるケース(売買価格×3%+6万円) ・かかった実費が発生するケース |
なお、もしもそれを大きく超えるような金額を請求された場合や、根拠のない一律請求をされた場合には、公益社団法人全国宅地建物取引業協会連合会(通称:全宅連)が提供している公式の無料相談窓口に相談してください。
4-1. 仲介手数料相当の違約金が請求されるケース(売買価格×3%+6万円)
売主に「契約違反」がある場合には、仲介手数料相当の違約金(売買価格×3%+6万円)を請求される可能性が高いと考えられます。
具体的には以下のケースの場合、売主側の契約違反となります。
仲介手数料相当の違約金が発生するケース (1)1社としか媒介契約を結べないはずの「専任媒介契約」または「専属専任媒介契約」なのに、ほかの不動産会社とも媒介契約を結び、さらに売却を成立させてしまった場合 (2)自己発見取引が禁止されている専属専任媒介契約なのに、自分で見つけた買主と売買契約を結んでしまった場合 |
仲介手数料の上限額は、400万円を超える物件の場合「売買価格×3%+6万円(税抜)」で計算できます。
たとえば、売買金額が2,000万円の場合だと、違約金の上限額は、2,000万円×3%+6万円=66万円(税抜)となります。
4-2. かかった実費が発生するケース
売主に「契約違反」はないものの、売主都合で契約を解除する場合には、売却活動にかかった実費を請求される可能性があります。
国土交通省が定めている「宅地建物取引業法施行規則の規定による標準媒介契約約款」(契約書式と契約内容の標準モデル)では、専任媒介契約の契約期間中に「不動産会社に責任がない理由」で契約解除する場合には、不動産会社は「媒介契約の履行のために要した費用」を請求できるとされています。
(費用償還の請求)
第14条 専任媒介契約の有効期間内において、甲が自ら発見した相手方と目的物件の売買若しくは交換の契約を締結した時、又は乙の責めに帰すことができない事由によって専任媒介契約が解除されたときは、乙は、甲に対して、専任媒介契約の履行のために要した費用の償還を請求することができます。
2 前項の費用の額は、約定報酬額を超えることはできません。
不動産会社は、依頼者の不動産を売るために、チラシを作って配布したり、ポータルサイトに広告を掲載したり、室内や外観写真を撮影して画像を加工したり、書類を取得したりという手間を掛けているため、その実費は請求できるという考え方です。
実費がいくらになるかはケースごとに異なりますが、上限として「仲介手数料」(通常は売買代金×3%+ 6万円)が設定されているため、高くても仲介手数料の金額を超えることはありません。
実費を求められた場合は、何にいくらかかったかの明細を出してもらって、内容を確認しましょう。
5. 自己都合の契約解除で実費を払いたくないなら契約満了を待つのも選択肢
「専任媒介契約の解除時に違約金や実費がかかってしまうケース」を詳しく見てきたところで、「自分の場合は実費が発生してしまいそうだけれど、できれば費用を払いたくない」と感じる人もいるかもしれません。
そのように考えている方にとって有力な選択肢となるのが、「途中解除はやめて契約が満了するまで待つ」ことです。
たとえば、次のような状況にあてはまる場合には、無理に途中解除せず、契約の終了日を待つことで余計な出費(実費請求)を回避できる可能性があります。
専任媒介契約の期間満了を待つのが向いている人 ・もうすぐ待てば専任媒介契約の期間終了日を迎える ・まだ他社との媒介契約を結んでいない ・売却活動に不満があるが、明確な契約違反があるわけではない ・やむを得ず売却自体を中止したいと考えている |
専任媒介契約の有効期間は、法律で「最長3ヶ月」と定められているため、かならず3ヶ月をもって一旦契約は終了します。
もし契約の満了日が近づいているなら、途中解除を申し出るよりも、満了をもって自然に契約を終了させるほうが、トラブルや費用請求を避けやすくなります。
※ただし、すでに違約金が発生するような行為をしてしまっている場合には、契約満了を待っても違約金の請求を免れることはできません。 たとえば、他の不動産会社と売買契約を結んで売買契約を成立させてしまった場合や、専属専任媒介契約なのに自己発見取引で売買契約を締結してしまった場合などです。 |
媒介契約書に記載された「契約期間(満了日)」を確認してみて、契約満了まで待てるのであれば、契約を穏便に終了させて、更新しなければ実費などの請求はされません。
「実費を払ってまで、急いで自己都合での契約解除をしたいのか」、それとも「実費の請求を避けるために、とりあえず契約満了まで待つか」の判断を冷静にしてみるのがおすすめです。
6. 損をせずに専任媒介契約を解除する5つのステップ
専任媒介契約を途中解除したいときには、正しく段階を踏んで進めることで、トラブルを避けてスムーズに解除を実現できます。
ここでは、理想的な解除手順のステップを紹介します。損することなくスムーズに専任媒介契約を途中解除したい場合には、以下の流れに沿って進めることをおすすめします。
損をせずに専任媒介契約を解除する5つのステップ ・専任媒介契約書を確認して途中契約の内容を確認する ・不動産会社に契約解除の意思表示をする ・費用請求がある場合には明細を送ってもらって精査する ・契約解除通知書を作成して送付する ・契約解除合意書を取り交わす(任意) |
なお、状況によっては一部の手順を省略できる場合もありますが、基本的な考え方は同じです。とくに「違約金や実費の金額確認」や「契約解除通知書の出し方」などは、後々のトラブル回避のために慎重に進めましょう。
6-1. 専任媒介契約書を確認して途中契約の内容を確認する
契約解除に向けてまずすべきことは、不動産会社と結んだ専任媒介契約書の内容を確認することです。
専任媒介契約書でとくに確認すべき項目 ・専任媒介契約か専属専任媒介契約か 専属専任の場合は、自己発見取引をしてしまうと違約金が発生します。 ・契約期間(満了日) ・更新に関する記載 ・解除方法 ・解除時の費用負担に関する記載 ・特約の有無 |
なお、確認時にとくに意識してほしいのは、「売主に不利な特約内容が書かれていないか」という点です。契約書に書かれているからといって、すべての内容が法的に有効とは限りません。
国土交通省が定めた約款に反して、売主に不利な特約が契約書に書かれている場合、無効にできる可能性が高いといえます。
無効にできる可能性が高い売主に不利な特約の例 ・「途中解除は理由にかかわらず一律5万円」と書かれている → 不動産会社に義務違反がある場合は、費用を支払う必要はなく、一律での違約金請求は無効とされる可能性があります。 ・「解除時に広告費として10万円を請求」と書かれている ・レインズへの登録義務を免除するという条項がある ・「報告は月1回」と書かれている ・契約期間が3カ月を超えて設定されている ・専任媒介契約が自動更新すると書かれている |
たとえば、「契約は途中で解除することができない」や「解除する場合には一律〇万円を支払うこととする」など、一方的に売主に不利な条件は、宅建業法や国土交通省の標準媒介契約約款に反している可能性が高いといえます。
国土交通省の標準媒介契約約款とも比べてみて、不利な特約がある場合には、気を付けて以降の手続きを進めていきましょう。
6-2. 不動産会社に契約解除の意思表示をする
専任媒介契約を契約期間中に解除したいときは、まずは不動産会社に対して「契約を終了したい」という意思を伝えましょう。手段は、対面でも電話でも構いません。
(1)不動産会社の売却活動に不満がある場合
「なかなか売れない」「あまり動いてくれていないのが不満」という理由で解除を考えているケースでは、不動産会社に猶予期間を与えて、そのあいだの成果を確認するステップを置いても良いでしょう。
解除の意思表示をきっかけに、不動産会社が営業活動を強化する、連絡頻度を改善する、販売戦略を見直すなど、具体的な対応を取ってくれるケースも少なくありません。
相手が誠実に改善に取り組むかどうかを見ることが、契約を続けるかどうかの判断材料になります。意思表示をしたあとの反応を、3日〜7日ほどを目安に客観的に判断することをおすすめします。
猶予期間の動きを見て満足できたならば、専任媒介契約の解除を取りやめて契約を継続するという判断もできます。
(2)売主都合で契約解除を考えている場合
売主都合で契約解除をする場合には、一度契約解除の可能性を伝えてみて、違約金や実費が請求される可能性がありそうかどうかを感触として確かめてみるのがおすすめです。
このときに、わざわざ違約金や実費の話を自分から出す必要はありません。違約金や実費はあくまでも「不動産会社が請求できる権利を持っている」だけであり、請求されないこともあるからです。
請求されずに契約解除できるケースもあるため、担当者が何を言ってくるか慎重に確認する姿勢が大切です。
なお、契約解除を申し入れた際に不動産会社から一方的に高額な違約金や実費請求を示唆された場合は、すぐに書面に進まず、都道府県宅建協会の不動産無料相談所に相談することをおすすめします。
(3)あきらかに不動産会社に義務違反などがあり即刻解除したい場合
不動産会社のほうに明確な義務違反(たとえば、2週間に1度の営業活動報告が来ないなど)がある場合で、不動産会社の意向を待たずに解除したいという場合には、このステップを踏まずに「契約解除通知書の作成・送付」のステップに進んでも構いません。
6-3. 費用請求がある場合には明細を送ってもらって精査する
契約解除の申し出をしたときに不動産会社から「費用を請求します」といわれた場合には、かならず根拠となる明細を送ってもらって確認しましょう。
前述したように、不動産会社の責任がなく売主都合で専任媒介契約をする場合には、不動産会社はかかった実費を請求できる権利を持っています。しかしながら、費用を請求する際には、明細を提示してその内容について説明することが、実務上の責任とされています。
「何にいくらかかった」など詳細がない場合や、不当な請求と考えられる場合には、都道府県宅建協会の不動産無料相談所に相談することをおすすめします。
6-4. 契約解除通知書を作成して送付する
最終的な意思表示としては「契約解除通知書」を作成し、書面で通知すると安心です。
契約解除を書面でしなければならないというルールはなく口頭でも法的には問題ありませんが、「言った・言わない」の認識のずれで揉めたくない場合には、証拠を残す意味でも書面で送付しましょう。
記録が残る形式が望ましく、より証拠として有効にしたいなら配達証明郵便を使うことをおすすめします。
不動産会社によっては、契約解除を申し入れた時点で「書面で通知してほしい」と言われることがあるので、ひな型や用紙をもらって記入しましょう。
用紙がない場合には、以下のような形式で「契約解除通知書」を作成して送付しましょう。
専任媒介契約解除通知書の記載項目例 (1)解除通知書の作成年月日 (2)媒介契約の相手方の会社名・代表者名 (3)自分の住所・氏名 (4)書面のタイトル「専任(または専属専任)媒介契約解除通知書」 (5)媒介契約解除を伝える文章 (6)媒介契約書の日付・物件の住所・所有者名 |
なお、この時点で費用(違約金・実費)を支払う旨を記載する必要はありません。
費用請求については、前述したとおり、明細と根拠を確認したうえで判断すべきものであり、解除通知はあくまで「契約を終了する意思表示」にとどめましょう。
6-5. 契約解除合意書を取り交わす(任意)
最後のステップは、契約解除合意書を取り交わすというステップ(任意)です。
契約解除合意書とは、売主と不動産会社が、「いつ契約を解除するのか」「費用の支払いがある場合はいくらをどう支払うのか」といった内容について、双方が合意したことを明文化しておく書面です。
通常、契約解除通知書を売主から送付した時点で、専任媒介契約は終了します。しかしながら、解除にあたって費用の支払いが発生する場合には、「契約解除合意書」を取り交わすケースもあります。
契約解除後に特に費用の支払いもなく、不動産会社側もスムーズに了承しているようなケースでは、契約解除合意書を取り交わさなくても問題ありません。
あくまで任意のステップですが、不動産会社から契約解除合意書が送られてきた場合には、しっかりと内容を確認して署名を行いましょう。内容に不明点がある場合は、その場で保留し、都道府県宅建協会の不動産無料相談所を活用することをおすすめします。
7. 契約解除した後には信頼性・売却力の両方がある不動産会社を選ぶことが大切
専任媒介契約を解除した後は、次の不動産会社をどう選ぶかが売却成功の鍵になります。とくに、信頼できる対応と実際に売る力の両方を備えているかどうかが重要です。
信頼性に欠ける会社に再び依頼してしまうと、売却活動に対する不安がまた続き、報告不足や囲い込みといったトラブルが繰り返される可能性があります。逆に、売却力だけを重視してしまうと、売主の希望や事情が無視されるリスクもあります。
信頼できる不動産会社の見極めポイントとしては、次のような点が挙げられます。
・営業担当者が、約束した報告頻度を確実に守ってくれる
・査定価格の根拠をデータに基づいて丁寧に説明してくれる
・他社からの問い合わせや内見も積極的に受け入れている(囲い込みをしない)
・広告内容や写真の見せ方にも工夫がある
・過去の売却実績が豊富で、地元エリアの取引にも詳しい
一方で、集客力のある会社かどうかを見極めるには、SUUMOやアットホームなど外部ポータルへの掲載状況や、レインズ登録の早さ、問い合わせ対応の丁寧さも確認しておきたいポイントです。
契約解除後の再依頼では、ただ「別の会社に変える」だけでは不十分です。信頼性と売却力を兼ね備えた会社を選ぶことが、納得できる売却につながります。
次こそは「この会社に任せてよかった」と思えるパートナーと出会うことを目指しましょう。
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まとめ
本記事では「専任媒介契約の解除」について解説してきました。最後に、要点を簡単にまとめておきます。
◆違約金なしで契約解除できる4つのケース(不動産会社の落ち度がある場合)
・売却活動の報告義務(2週に1回または週1回)を怠った
・レインズへの登録義務や登録証明書の交付義務を怠った
・積極的に売却先を探す義務を怠った
・信義則に違反した/故意に虚偽などの報告を行った
◆違約金または実費を請求される可能性があるケース
・他の不動産会社を通して売買を成立させてしまった
・自分で買い手を見つけて売買契約をした(専属専任媒介の場合)
・他の不動産会社に変更するために途中解除したい場合
・売却を中止することになった
◆自己都合の契約解除で実費を払いたくないなら契約満了を待つのも選択肢
・穏便に契約を終わらせることができる
◆支払わなければならない違約金・実費はいくら?2つのケースを解説
・仲介手数料相当の違約金が請求されるケース(売買価格×3%+6万円)
・かかった実費が発生するケース
◆専任媒介契約を解除する場合の手順
・専任媒介契約書を確認して途中契約の内容を確認する
・不動産会社に契約解除の意思表示をする
・費用請求がある場合には明細を送ってもらって精査する
・契約解除通知書を作成して送付する
・契約解除合意書を取り交わす(任意)
契約解除した後には信頼性・売却力の両方がある不動産会社を選ぶことが大切です。不動産会社の選定に迷ったら、ぜひルーム・スタイルにご相談ください。
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