相続でマンションを取得した方の多くは、「自分では住まないから売却を考えている」と考えているのではないでしょうか。
そして、「売却までどんな流れになるのか見えないから不安」「売却すると税金は結構かかるのかな?」など不安な気持ちを抱えている方も多いはずです。
そんな不安を解消するために、この記事は「相続したマンションの売却を考えている方」に向けて、検討段階で知っておくべきことを分かりやすくまとめました!
相続したマンションを売却する前に知っておくべきことや、売却するベストタイミング、被相続人が亡くなってマンションを相続した後の流れ、相続税・譲渡所得税の計算方法まで、詳しく解説していきます。
マンションを相続してから売却をするまでには、かなりいろいろな手続きが必要となります。
後半では、マンションの相続税の計算方法や、マンションを売却した場合の譲渡所得税の計算方法についても、分かりやすく解説しています。
ぜひこの記事を読んで、売却するときに注意すべきことや売却にベストなタイミング、いつ何をすればいいか、どのような税金がかかるかまで、知っておくことをおすすめします。
これらを知っておくことで、今後の流れをスムーズに進めることができるはずです。ぜひ最後までお読みください。
目次
- 1. 相続したマンションを売却する場合に知っておくべきこと
- 1-1. 不動産以外に資産がない場合は相続税が払えない場合がある
- 1-2. 共有分割したマンションを売却する場合は全員の同意が必要になる
- 1-3. 売却する良いタイミングは「相続後3年10カ月以内」
- 1-4. マンションの所有期間が5年以下の場合は譲渡所得税が高くなる
- 1-5. マンションの購入金額が不明な場合は譲渡所得税が高くなるので注意
- 2. 相続したマンションを売却するベストタイミングをケース別に解説
- 2-1. 相続税が払えない場合:10カ月以内(相続税の申告期限内)に売却
- 2-2. 相続税を支払った場合:相続後3年10カ月以内に売却がおすすめ
- 2-3. マンションの所有期間が5年以下の場合:タイミングは要検討
- 2-4. マンションの購入金額が不明な場合:売り急がない方が良い
- 3. マンションを相続して売却するまでの流れ9ステップ
- 3-1. STEP1:遺言書の有無を確認する
- 3-2. STEP2:マンション以外の相続財産全体を特定する
- 3-3. STEP3:相続人を確定する
- 3-4. STEP4:遺産分割協議で誰が何を相続するか確定する
- 3-5. STEP5:マンションの相続登記を行う
- 3-6. STEP6:相続税の申告・納税をする(10カ月以内)
- 3-7. STEP7:相続したマンションを売却する
- 3-8. STEP8:「換価分割」の場合は相続人で利益を分割する
- 3-9. STEP9:譲渡所得を計算して確定申告する
- 4. 相続したマンションを売却する場合には2つの税金がかかる
- 5. マンションを相続した場合の相続税の計算方法
- 5-1. 基礎控除額を確認する
- 5-2. マンションの相続税評価額を計算する
- 5-3. 相続財産全体の相続税の計算をする
- 6. 相続したマンションを売却した場合の譲渡所得税の計算方法
- 6-1. 譲渡所得(売却益)を求める
- 6-2. 譲渡所得に税率をかけて譲渡所得税を求める
- 6-3. 特例を使えば譲渡所得税が安くなるケースがある
- 7. 相続したマンションを賃貸する選択肢もある
- まとめ
1. 相続したマンションを売却する場合に知っておくべきこと
最初に、「相続したマンションを自分では使わないから売却!」と何となく考えている方に向けて、事前に知っておくべきことを解説していきます。
状況によって、マンションをすぐに売却した方が良いケースもあれば、売却するよりも「賃貸に出す」という選択肢を取った方が良いケースもあります。
事前に注意点を知っておき、自分の状況と照らし合わせてどう動くべきか考えながらお読みください。
相続したマンションを売却する場合に知っておくべきこと ・不動産以外に資産がない場合は、相続税が払えない場合がある ・共有分割したマンションを売却する場合は全員の同意が必要 ・売却する良いタイミングは「相続後3年10カ月以内」 ・マンションの所有期間が5年以下の場合は譲渡所得税が高くなる ・マンションの購入金額が不明な場合は譲渡所得税が高くなるので注意 |
それぞれ詳しく見ていきましょう。
1-1. 不動産以外に資産がない場合は相続税が払えない場合がある
マンションなどの不動産以外に資産がない(すぐ現金化できる資産がない)場合かつ相続税が発生する場合、10カ月という相続税の申告期限までにマンションを売却できなければ、相続税を支払えない事態が発生するので注意しましょう。
相続税の申告期限は「相続が発生してから10カ月以内」なので、一般的には、相続税を納めた後にマンションを売却する流れになることが多いでしょう。
しかし、マンションなどの不動産以外に資産がない場合には、「現金が無くて相続税を支払えない」というケースがあります。この場合は、相続税を支払うために、申告期限までに急いで売却をして現金化する必要があります。
ただし、10カ月という限られた期間で、相続したマンションを納得できる価格で売却できないケースもあります。また、買い手が見つからずに現金化できないケースもあるでしょう。
その場合には、相続税の延納制度も視野に入れながら、手続きを進めていきましょう。
1-2. 共有分割したマンションを売却する場合は全員の同意が必要になる
遺産分割協議でマンションを「共有分割」した場合には、売却する場合に「共有者全員の同意」が必要となるので注意しましょう。
例えば、亡くなった親が遺したマンションを、子ども3人で「ひとまず共有名義にしよう」としたとします。この場合、マンションを売却する場合には3人全員の同意が必要になります。
共有名義にしてしまうと、売却はもちろん、賃貸として貸し出す際にも全員の同意が必要です。何をするにも活用しづらくなるため、遺産分割協議での「とりあえず共有名義にする」というのはおすすめしません。
「代償分割」(特定の相続人が相続して、他の相続人に現金を支払う方法)や「換価分割」(不動産を売却して現金化し、分割する方法)をするようにしましょう。
1-3. 売却する良いタイミングは「相続後3年10カ月以内」
相続したマンションを売却する場合、相続後3年10カ月以内に売却すると「取得費加算の特例」というものを利用できるため、マンションの売却益に対する税金(譲渡所得税)を抑えられる可能性があります。
「取得費加算の特例」とは、相続した財産を、相続開始から3年10カ月以内に売却した場合に、納めた相続税の一部を「取得費」に加算できる特例をいいます。
売却した利益についての税金は、「譲渡所得」の部分について課税されます。以下の「取得費用」が多いほど、譲渡所得から多く差し引けるため譲渡所得が低くなり、税金が少なくなるのです。
ただし、もちろん、この特例が使えるのは、相続税を支払った人のみが適用できます。相続税がかからなかった方は、このタイミングは関係ないということになります。
相続税を支払った人がその不動産を売却する場合は、「相続後3年10カ月以内に売却するとオトク」と覚えておくと良いでしょう。
1-4. マンションの所有期間が5年以下の場合は譲渡所得税が高くなる
相続したマンションを売却する場合に、所有期間が5年以下の場合には、譲渡所得(売却して得た利益)に対する税率が高くなるので注意しましょう。
相続した不動産の保有期間は、亡くなった方がマンションを所有し始めた時からカウントされます。
例えば、親が亡くなってマンションを相続したケースで、親がそのマンションを購入したのが数年前だったという場合には注意が必要です。売却時点で5年以下だと、税率が高くなるからです。
以下の通り、譲渡所得税の税率は、所有期間が5年超だとトータルで約20%ですが、5年以下だと倍近い約40%になってしまうのです。
【譲渡所得税の税率】
所有期間 | 譲渡所得税の内訳 | 譲渡所得税の合計 | |||
所得税 | 住民税 | 復興特別所得税 | |||
短期譲渡所得 | 5年以下 | 30% | 9% | 0.63% | 39.63% |
長期譲渡所得 | 5年超 | 15% | 5% | 0.315% | 20.315% |
このような場合、ケースによりますが、5年を超えてから売却した方が税金を抑えられる可能性があります。特例との兼ね合いもあるため、状況に応じて、税金を計算してみることをおすすめします。
1-5. マンションの購入金額が不明な場合は譲渡所得税が高くなるので注意
相続したマンションを売却する場合に、亡くなった方がマンションを「いくらで買ったか(取得費用)」が分からない場合は、譲渡所得税が高くなるので注意が必要です。
譲渡所得は、以下の通り、「不動産の売却価格−取得費用−譲渡費用」で計算します。
不動産を購入した時の資料が残っていないなど正確な購入価格が分からない場合には、「売却価格×5%」を「概算取得費」としなければなりません。そのため、実際には利益が出ていなくても、「譲渡所得があった」と見なされ、譲渡所得税を支払わなければならないケースがあります。
例えば、親がいくらで購入したか分からないマンションを5,000万円で売却した場合、概算取得費=5,000万円×5%=250万円としなければなりません。この場合、「マンションを売却して4,750万円の利益(譲渡所得)を得た」と見なされてしまいます。そこから譲渡費用や特別控除額を除いても、相応の譲渡所得税が科される可能性があります。
本当は親が4,000万円で買ったマンションだったとすると、利益が出ていないのですが、その証拠がなければ概算取得費で計算するしかないのです。
このようなケースでは、譲渡所得税が高額になる可能性があるので、売却するのを一旦待って資料を探し直したり、税理士に相談したりして取得費の根拠とする方法を見つけることをおすすめします。
2. 相続したマンションを売却するベストタイミングをケース別に解説
1章で解説した通り、ケースによって、相続したマンションを売却するベストな時期は異なります。状況によってはすぐに売却せずに時期を見計らって売却した方が良いケースもあるのです。
ここでは、ケースごとに、相続したマンションを売却するベストタイミングがいつなのかをまとめました。
2-1. 相続税が払えない場合:10カ月以内(相続税の申告期限内)に売却
「相続財産に現金がなく不動産のみ」というケースなど、マンションを売却しないと相続税を支払えない場合には、どうにかして相続税の申告期限内(相続開始後10カ月以内)に売却するほかありません。
相続税の支払いは、現金一括払いが原則となるため、相続資産や手元に現金がない場合には、相続した不動産を現金化して納税資金に充てることになります。
しかしながら、相続後には、相続人や相続財産の特定、遺産分割協議、相続登記、相続税の計算など、やるべきことがたくさんあり、ただでさえ時間がかかります。10カ月以内に売却できるかどうかは、かなり厳しい状況となるでしょう。
売り急ぐことになると納得する価格での売却ができない危険性もある点には注意しましょう。
場合によっては「延納」(分割払い)や「物納」(相続した財産をもって支払に充てる)という選択肢を取る方法もあります。
このような状況の場合には、税理士の力を借りて相続税計算を早く正確に算出したり、早めに不動産会社に連絡して適正な価格での早期売却の相談に乗ってもらったりすることをおすすめします。
2-2. 相続税を支払った場合:相続後3年10カ月以内に売却がおすすめ
相続税を支払った後に売却する場合には、3年10カ月以内に売却するのがおすすめです。1-3で前述した通り、相続後3年10カ月以内に売却すると「取得費加算の特例」というものを利用できるからです。
使える特例はできるだけオトクに活用しましょう。
2-3. マンションの所有期間が5年以下の場合:タイミングは要検討
マンションの所有期間(亡くなった方が購入してからの期間)が5年以下の場合には、売却益にかかる譲渡所得税の税率が高くなります。そのため、5年を超えたタイミングで売却した方が良いケースがあります。
ただし、そのタイミングを待つことで、上記の「取得費加算の特例」の期限を過ぎてしまう場合には、どちらの方が税額が安くなるかを確認してタイミングを決めるべきです。つまり人によってベストタイミングがケースバイケースとなります。
このようなケースの場合は、税理士に相談して「どちらが税額が安くなるか」を確認してもらうのが安全です。
2-4. マンションの購入金額が不明な場合:売り急がない方が良い
マンションの購入金額が不明の場合には、1-5で説明した通り、「売却価格×5%」を「概算取得費」としなければならず、譲渡所得税がかなり高額になる可能性があります。
このようなケースでは、売り急がず、購入にまつわる資料を探し直したり、税理士に相談したりして、取得費の根拠とする方法を見つけることをおすすめします。
税理士に依頼すれば、市街地価格指数や不動産鑑定評価などを用いて、概算取得費の代わりの「取得費」の根拠として申告できる可能性があります。まずは相談してみましょう。
またこのような厄介なケースでは、売却ではなく「相続したマンションを賃貸に出す」という活用方法を取るのも手です。不動産会社に相談して、賃貸に向いている物件かどうか問い合わせてみることをおすすめします。
3. マンションを相続して売却するまでの流れ9ステップ
ここからは、マンションを相続して売却するまでの流れについて解説していきます。
どのような流れで進めていくかを事前に把握しておくことで、安心して手続きを進められるようになります。しっかり理解していきましょう。
マンションを相続して売却するまでの流れ9ステップ ・STEP1:遺言書の有無を確認する ・STEP2:マンション以外の相続財産全体を特定する ・STEP3:相続人を確定する ・STEP4:遺産分割協議で誰が何を相続するか確定する ・STEP5:マンションの相続登記を行う ・STEP6:相続税の申告・納税をする(10カ月以内) ・STEP7:相続したマンションを売却する ・STEP8:「換価分割」の場合は相続人で利益を分割する ・STEP9:譲渡所得を計算して確定申告する |
3-1. STEP1:遺言書の有無を確認する
親御さんなどが亡くなってマンションを相続することになった場合に、最初にすべきことは「遺言書の確認」です。
あなたが、亡くなった方の配偶者や子どもなど、法的に相続する権利がある「法定相続人」だったとしても、遺言書がある場合には遺言書の内容が優先されるからです。
亡くなった方の自宅に「自筆証書遺言」や「秘密証書遺言」が残されていないか、また、「公正証書遺言の検索システム」を利用して「公正証書遺言」が作成されていないか確認してみましょう。
遺言書がない場合には、相続人全員で集まって「遺産分割協議」を行って、誰が何を相続するか決めていきます。
3-2. STEP2:マンション以外の相続財産全体を特定する
次に、マンション以外の財産も含めて、亡くなった方の財産を全て洗い出して、相続財産の全容を把握していきます。
遺言書がある場合には、財産目録を参考にして相続財産を特定しましょう。遺言書がない場合には、以下のようなものを探して、相続財産を特定していく必要があります。
プラスの遺産 | マイナスの遺産 |
・マンションなど不動産の権利書 ・預貯金 ・貴金属 ・株など有価証券 ・自動車 ・美術品 | ・カードローンなど金融機関への借金 ・個人への借金 ・未払いの税金 ・連帯保証債務 |
3-3. STEP3:相続人を確定する
相続財産の調査と並行して、相続人の確定も進めていきます。遺産分割協議は「相続人全員」で行う必要があるため、誰が相続人になるかを特定する必要があるのです。
相続人の確定の流れ (1)亡くなった方の「出生から死亡までの戸籍謄本」を集める (2)戸籍謄本をもとに家族関係を確認して、相続人を確定させる |
亡くなっている方が、生前に本籍地を変更している場合は、全ての本籍地で戸籍謄本を取得する必要があるので注意しましょう。
戸籍謄本を集めたら、以下の「相続人」の定義にしたがって、誰が相続人になるかを確定します。
3-4. STEP4:遺産分割協議で誰が何を相続するか確定する
相続財産と相続人を確定できたら、相続人全員で遺産分割協議を行って、「誰が何を相続するか」を決めます。
遺言書がある場合には、遺言書の内容にしたがって遺産分割を行います。遺言書がない場合には、以下の法定相続分をベースに、相続人で話し合って分割方法を決めます。
【法定相続分】
相続人の構成 | 法定相続分 |
配偶者と子ども | 配偶者:2分の1 子ども:2分の1(2人以上のときは、2分の1を人数で等分) |
配偶者と直系尊属(祖父母) | 配偶者:3分の2 直系尊属(祖父母):3分の1(2人以上のときは、3分の1を人数で等分) |
配偶者と兄弟姉妹 | 配偶者:4分の3 兄弟姉妹:4分の1(2人以上のときは、4分の1を人数で等分) |
マンションなどの不動産の分け方は、以下の3つの方法があります。
(1)代償分割:誰かが不動産を相続し、他の人には代償金を支払う (2)換価分割:不動産を売却し、売却で得た代金を相続人で分ける (3)共有分割:不動産を複数の相続人で共有名義にする |
代償分割の場合、例えば長男がマンションを相続して、次男には代わりに法定相続分に相当する現金を渡します。また、換価分割のように、マンションを売却してしまい、その代金を相続人で分ける方法もあります。
3-5. STEP5:マンションの相続登記を行う
マンションなどの不動産を相続した場合には、「相続登記(不動産の名義変更)」の手続きが必要となります。不動産の所有権が、亡くなった方から新しい方に移転したことを届ける手続きです。
2024年4月から相続登記は義務化され、相続で取得したことを知った日から3年以内に相続登記しなければならないことになっています。
相続したマンションが亡くなった方の名義のままだと売却できないため、売却する場合にはなるべく早めに手続きを進めましょう。
マンションを売却した代金を相続人で分割する「換価分割」の場合には、相続人の代表者の単独名義で登記を行い、売却してから代金を他の相続人に分配します。
相続登記には必要書類も多く、法務局に何度か足を運ぶ必要があるかもしれません。詳しくは、法務局の公式ホームページを確認してみてください。
3-6. STEP6:相続税の申告・納税をする(10カ月以内)
相続した財産の評価額が高い場合には、相続が発生してから10カ月以内に相続税の申告・納税が必要となります。
必ずしも相続税が発生する訳ではなく、相続した人の中で、相続税が課税される割合はだいたい10%程度です。9割程度の方は、相続財産の評価額が「基礎控除額」以下となり、相続税を納める必要はありません。
基礎控除額=3,000万円+(600万円×法定相続人の数) |
例えば、法定相続人の数が3人の場合の基礎控除額は、3,000万円+600万円×3人=4,800万円となります。相続財産全体の評価額が4,800万円以下であれば、相続税を支払う必要はありません。
ただし、納める相続税の金額がゼロであっても、小規模宅地等の特例や配偶者控除などの特例を利用する場合には申告が必要なので注意しましょう。
相続税の計算方法については、「5. マンションを相続した場合の相続税の計算方法」で後述するので確認してみてください。
3-7. STEP7:相続したマンションを売却する
相続したマンションの相続登記が終わっていれば売却が可能ですので、不動産会社に依頼して媒介契約を結び、売却する相手を探しましょう。
なお、相続したマンションを売却するタイミングは、故人が亡くなってから3年10カ月以内がおすすめです。3年10カ月以内に売却することで、譲渡所得の計算時に、支払った相続税の一部をマンションの売却価額から差し引くことができ、譲渡所得税を抑えられるからです。
(※相続税を支払っていない場合はこの特例は使えないため、売却のタイミングは関係ありません)
3-8. STEP8:「換価分割」の場合は相続人で利益を分割する
相続したマンションを「換価分割」で分割した場合には、マンションを売却した金額を、相続人で分割しましょう。
例えば、相続人が配偶者と子ども2人の場合、法定相続分は配偶者が2分の1、子どもが4分の1ずつです。相続したマンションが4,000万円で売却できた場合、配偶者が2,000万円、子どもが1,000万円ずつ受け取ることになります。
3-9. STEP9:譲渡所得を計算して確定申告する
相続したマンションを売却した結果、「譲渡所得」がプラスになる場合には、譲渡所得税を申告・納税しなければなりません。
具体的な計算方法は「6. 相続したマンションを売却した場合の譲渡所得税の計算方法」で解説しますが、一般的には、亡くなった方がマンションを買った価格よりも高く売れた場合にかかります。
特例・控除を利用することで税額が軽減されたり支払う必要がなくなったりすることもあるため、個別のケースで正確に計算しましょう。
確定申告は、マンションを売却した日の翌年の2月16日から3月15日の間となります。忘れずに申告・納税をしてください。
4. 相続したマンションを売却する場合には2つの税金がかかる
相続したマンションを売却する場合には、「相続時(相続税)」と「売却して利益が出た場合(譲渡所得税)」の2つのタイミングで税金がかかります。
【相続したマンションを売却した場合にかかる2つの税金】
相続税 | 相続した全財産の評価額から「基礎控除額」を差し引いた分について、一定の税率をかけて、控除額を引いて算出する ※基礎控除額を下回る場合には相続税はゼロとなる |
譲渡所得税 | マンションを売却して利益が出た場合に、その利益(譲渡所得)に対して納める税金 譲渡所得の計算式:譲渡収入金額 – 譲渡費用 – 取得費用 |
どちらの税金も、自分で計算するには結構難しい計算が必要となります。
次の章から、できるだけ簡単に税金を計算するステップを解説しますのでぜひ参考にしてください。
5. マンションを相続した場合の相続税の計算方法
ここからは、マンションを相続した場合の相続税の計算方法について解説していきます。
相続によりマンションを取得した場合には、相続税が科せられることがあります。「相続税が科せられるかどうか」「相続税がいくらになるか」は、マンションを含む相続財産全体の評価額や相続人の人数などによって決まります。
相続税の計算方法はかなり複雑となりますが、ここではエッセンスだけ簡単に解説していきます。
5-1. 基礎控除額を確認する
まずは基礎控除額を確認します。亡くなった方の相続財産が基礎控除額以下であれば相続税はかからないため、相続税を計算する必要はなくなります。
基礎控除額は、3,000万円+(600万円×法定相続人の数)となります。つまり、相続人の数によって以下のように示すことができます。
【相続人の数ごとの基礎控除額】
法定相続人の数 | 基礎控除額 |
1人 | 3,600万円 |
2人 | 4,200万円 |
3人 | 4,800万円 |
4人 | 5,400万円 |
5人 | 6,000万円 |
例えば、亡くなった方の相続人が配偶者と子ども3人の場合、法定相続人の数は4人なので、基礎控除額は5.400万円です。相続した財産がマンションのみで、その評価額が2,000万円であれば、基礎控除額以下なので相続税はかかりません。
一方、相続した財産以外に現金として遺した遺産が8,000万円あり、合計1億円だった場合、基礎控除額5,400万円を超える分(4,600万円)が相続税の課税対象となります。
5-2. マンションの相続税評価額を計算する
マンションの相続税評価額は、「マンションの土地部分の評価額」と「マンションの建物部分の評価額」を合算した金額となります。
【マンションの相続税評価額】
マンションの土地部分の評価額 | 国税庁が公開している「相続税路線価」を用いて評価額を計算する 相続税路線価×マンション全体の面積×敷地権割合 ※路線価が設定されていない場合は、評価倍率表を利用して計算する |
マンションの建物部分の評価額 | 固定資産税評価額を用いる ※故人宛に毎年届く「固定資産税納税通知書」があれば、記載があるので確認してみましょう |
例えば、固定資産税評価額(建物部分)が600万円、路線価が1㎡あたり50万円、マンション全体の面積が1,000㎡、敷地権割合が「1/100」の場合、 (1)土地部分の評価額=50万円×1,000㎡×「1/100」=500万円 マンションの相続税評価額=(1)+(2)=1,100万円 |
なお、2024年1月1日以降に相続したマンションの評価額は、一定の「区分所有補正率」をかけて算出することに変更になりました。また、土地部分の評価額を正確に評価額を出すためには、土地の形状や面している道路の状況に応じて「補正率」をかける必要があります。正確な計算のためには、税理士に相談することをおすすめします。
5-3. 相続財産全体の相続税の計算をする
マンションの相続税評価額が出たら、マンション以外の相続財産の評価額を全て合算して、基礎控除額を上回る部分(=課税遺産総額)について、相続税を計算します。
相続税の総額=課税遺産総額×税率 |
例えば、マンションの相続税評価額が1,000万円、それ以外に預金が9,000万円あった場合で 法定相続人の数が4人の場合、基礎控除額は5,400万円 課税遺産総額=1億円-基礎控除額5,400万円=4,600万円 このケースの場合、相続税の税率は20%(控除額200万円)なので、相続税の総額=4,600万円×税率20%-控除額200万円=720万円となります。 最後に、相続税の総額を、相続した割合に応じて負担することになります。 |
実際には、状況に応じた特例や控除を差し引いて、相続税の金額が決まります。
例えば、「相続税の配偶者控除」という制度があるため、配偶者は課税対象となるものが1.6億円までであれば相続税は課税されません。
相続税の計算は、計算自体も難しいものですし、使える特例や控除が状況によって異なり、判断も難しいものです。正確に計算するにはやはり税理士に相談することをおすすめします。
6. 相続したマンションを売却した場合の譲渡所得税の計算方法
今度は、相続したマンションを売却した場合にかかる「譲渡所得税」について解説します。
譲渡所得税とは、譲渡所得(不動産を売却して得た利益)に課される税金のことです。
相続したマンションを売却した場合に、亡くなった方が購入した金額よりも高く売れた場合に、この譲渡所得税を納める必要があります。
不動産の価格は一般的には時間とともに下がっていくので、譲渡所得税はかからないケースも多いでしょう。しかしながら、地価が上がっているエリアなど、取得時よりも価値が上がっている場合には、しっかり計算して、納税する必要があります。
例えば、親が亡くなってマンションを相続したケースで、「親が10年前に4,000万円で購入したマンションを5,000万円で売却した」など、マンションの価格が購入当時よりも高い値段で売れた場合には譲渡所得税が発生する可能性があります。
また、取得費(亡くなった方がそのマンションを購入した金額)が正確に分からない場合には、「概算取得費」という低額な取得費を用いて計算しなければならないため、納税せざるを得ないケースがあるため注意が必要です。
以下で、譲渡所得税の計算ステップを解説していきます。
6-1. 譲渡所得(売却益)を求める
まずは、譲渡所得(つまり売却して得た利益)を計算します。
譲渡所得=不動産の売却価格-取得費用-譲渡費用 |
例えば、不動産の売却価格が5,000万円、取得費用(親が10年前に購入した金額4,000万円、相続でかかった登録免許税12万円)、譲渡費用(仲介手数料126万円、印紙代2万円)の場合、
譲渡所得=5,000万円-4,012万円-128万円=860万円となります。
一方、不動産の売却価格が4,000万円、亡くなった親が購入した当時の金額5,000万円だった場合には、譲渡所得はゼロとなり、税金は発生しません。
注意すべきは、亡くなった方が「いくらで購入したか」が分からないケースです。
不動産を購入した時の資料が残っていないなど正確な購入価格が分からない場合には、「売却価格×5%」を「概算取得費」としなければなりません。そのため、実際にはマンションの価格が下がっても、「譲渡所得があった」と見なされ、譲渡所得税を支払わなければならないケースがあるのです。
例えば、親がいくらで購入したか分からないマンションを5,000万円で売却した場合、概算取得費=5,000万円×5%=250万円としなければなりません。この場合、「マンションを売却して4,750万円の利益(譲渡所得)を得た」と見なされてしまいます。そこから譲渡費用や特別控除額を除いても、相応の譲渡所得税が科される可能性が高いので注意しましょう。
6-2. 譲渡所得に税率をかけて譲渡所得税を求める
譲渡所得税の税率は、マンションを所有していた期間(亡くなった方が取得した時点から計算)が「5年以下」か「5年を超えるか」で以下のように異なります。
【譲渡所得税の税率】
所有期間 | 譲渡所得税の内訳 | 譲渡所得税の合計 | |||
所得税 | 住民税 | 復興特別所得税 | |||
短期譲渡所得 | 5年以下 | 30% | 9% | 0.63% | 39.63% |
長期譲渡所得 | 5年超 | 15% | 5% | 0.315% | 20.315% |
例えば、譲渡所得の金額が1,000万円の場合、所有期間が5年以下なら396.3万円、5年を超える場合は203.2万円となります。
6-3. 特例を使えば譲渡所得税が安くなるケースがある
特例の適用条件を満たしている場合には、譲渡所得の計算時に特例を適用できるため、譲渡所得税を減額できるケースがあります。
譲渡所得や相続財産に関する特例はいくつかありますが、相続したマンションを売却したケースに使える代表的な特例を3つ紹介します。
特例1:マイホーム(居住用財産)を売った場合の3,000万円の特別控除の特例
相続したマンションに「相続した人も以前から居住していた」場合、または、相続したマンションに「相続後に相続人が住んでいた」場合に使えるのが、「マイホーム(居住用財産)を売った場合の3,000万円の特別控除の特例」です。
この特例を使えば、所有期間の長短に関係なく、譲渡所得から最高3,000万円を差し引けるため、譲渡所得税をかなり減額できる嬉しい特例です。
特例の適用を受けるための主な適用要件は以下です。
・確定申告をすること ・自分が住んでいる物件を売却する場合、または、以前住んでいた物件を売却する場合 ・以前住んでいた物件の場合には、住まなくなってから3年を経った日を含む年の12月31日までに売却すること ・売り手が親族などではないこと |
ただし、「この特例の適用を受けることだけを目的として入居した」と認められる場合には特例が適用されない可能性があるので注意しましょう。
参考:国税庁「No.3302 マイホームを売ったときの特例」
特例2:相続財産を譲渡した場合の取得費の特例
「1-3. 売却する良いタイミングは「相続後3年10カ月以内」」でも前述した内容ですが、相続した財産を一定期間内に売却した場合に、相続税の一部を取得費に加算できるという特例です。
譲渡所得=「不動産の売却価格-取得費用-譲渡費用」なので、取得費が多くなれば譲渡所得が少なくなり、税金額も少なくなります。
特例の適用を受けるための主な適用要件は以下です。
・相続や遺贈によって財産を取得した人であること ・その財産を取得した人が、相続税を納めていること ・その財産を相続開始日から3年10ヶ月以内に譲渡していること |
参考:国税庁「No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」
特例3:10年超所有軽減税率の特例
相続したマンションの「所有期間(亡くなった方が所有していた期間を含む)」が10年を超えている場合には、譲渡所得税が安くなる特例です。
この特例を適用すると譲渡所得に対する税率が以下のように安くなるため、譲渡所得税を抑えられます。
【所有期間が10年を超えるマイホームを売った時の軽減税率】
課税長期譲渡所得金額(=A) | 税額 |
6,000万円以下 | A×10% |
6,000万円超 | (A-6,000万円)×15%+600万円 |
ただし、この特例が使えるのは亡くなった方がマンションを居住用に使っていた場合なので注意しましょう。投資物件として使っていた場合には適用できません。
参考:国税庁「No.3305 マイホームを売ったときの軽減税率の特例」
7. 相続したマンションを賃貸する選択肢もある
ここまで、マンションを相続して売却を考えている方に向けて、知っておくべきことやベストタイミング、流れ、税金について解説してきました。
最後に、相続したマンションを売却するのではなく「賃貸に出す」という選択肢もあることをお伝えしていきます。
相続したマンションを自分が使わない場合、まず考えるのが売却することです。所有しているだけで固定資産税や管理する費用がかかってしまうので、当然の選択でしょう。
しかしながら、立地や状況によっては、賃貸の選択肢も検討してみるのがおすすめのケースもあります。
賃貸に出す選択肢を検討すると良いケース ・すぐ現金化しなくても困らない場合 ・賃貸需要が高く、高い入居率を維持できる場合 ・将来的に自分や家族で住みたい希望がある場合 ・売却するのを先延ばしにしても、資産価値がさほど下がらない立地の場合 ・一括ではなく、家賃収入を毎月得たい場合 ・家族に相続するための資産を残しておきたい場合 |
「マンションは貸すか売るかどっち?判断基準と収益計算例を解説」の記事もぜひ参考にしてください。相続したマンションに限定した内容ではありませんが、貸した場合と売った場合の費用シミュレーションなどが参考になると思います。
もしも売却するか賃貸に出すか迷っている場合には、ぜひ一度ルーム・スタイルにお気軽にご相談ください。
ルーム・スタイルは、東京都渋谷区に本社を構える不動産会社です。賃貸管理も不動産売買も両方取り扱っている会社なので、お客様の状況やライフプランに合ったご提案が可能です。相談先に迷ったら、お気軽にご相談ください。
まとめ
本記事では、相続したマンションの売却を予定している方に向けて、さまざまな情報を解説してきました。最後に、要点を簡単にまとめておきます。
相続したマンションを売却する場合に知っておくべきこと
・不動産以外に資産がない場合は、相続税が払えない場合がある ・共有分割したマンションを売却する場合は全員の同意が必要 ・売却する良いタイミングは「相続後3年10カ月以内」 ・マンションの所有期間が5年以下の場合は譲渡所得税が高くなる ・マンションの購入金額が不明な場合は譲渡所得税が高くなるので注意 |
相続したマンションを売却するベストタイミング
・相続税が払えない場合:10カ月以内(相続税の申告期限内)に売却 ・相続税を支払った場合:相続後3年10カ月以内に売却がおすすめ ・マンションの所有期間が5年以下の場合:タイミングは要検討 ・マンションの購入金額が不明な場合:売り急がない方が良い |
マンションを相続して売却するまでの流れ9ステップ
・STEP1:遺言書の有無を確認する ・STEP2:マンション以外の相続財産全体を特定する ・STEP3:相続人を確定する ・STEP4:遺産分割協議で誰が何を相続するか確定する ・STEP5:マンションの相続登記を行う ・STEP6:相続税の申告・納税をする(10カ月以内) ・STEP7:相続したマンションを売却する ・STEP8:「換価分割」の場合は相続人で利益を分割する ・STEP9:譲渡所得を計算して確定申告する |
相続したマンションを売却する時には、相続税の納税や売却、譲渡所得税の計算などさまざまな手続きが必要となります。
売却する前に「賃貸に出す」選択肢も考えてみたい方は、マンションの活用法について、ぜひルーム・スタイルにご相談ください。
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