不動産投資の減価償却とは?具体的な仕組みと計算方法【初心者向けに解説】

「減価償却は節税になるらしいけど、難しそう」「減価償却ってそもそも何?」と、悩んでいないでしょうか。

実は、減価償却は不動産投資で成功するための重要なカギを握っています。減価償却の仕組みを理解することで、賢く税金対策を行い、投資効率をアップさせることが可能です。

しかし、いざ調べてみると「耐用年数」「定額法」「定率法」など、専門用語が次々と出てきて混乱する人も多いです。

・そもそも減価償却ってどんな時に使うの?

・マンションとアパートで計算方法が違うって本当?

・中古物件の場合はどう計算すればいいの?

そんな疑問をお持ちの方に向け、この記事では、不動産投資における減価償却の仕組みや計算方法を、初心者の方にもわかりやすく丁寧に解説します。記事を読み終える頃には、減価償却の基礎知識をしっかりと身につけ、自信を持って不動産投資に取り組めるようになるでしょう。

また、不動産投資をスタートして初めての確定申告の方も、本記事で減価償却のポイントを押さえることができますので、ぜひ参考にしてみてください。

本記事を読んでわかること
  • 減価償却や耐用年数の仕組み、考え方
  • 減価償却の計算をする際に必要な3つの項目と調べ方
  • 「定額法」「定率法」それぞれの概要
  • マイホームと不動産投資における減価償却のちがい、それぞれの計算方法
  • 中古物件を購入したときの減価償却の計算方法
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不動産の減価償却って何?

不動産の減価償却は、建物など時間の経過とともに価値が減少する資産を、毎年少しずつ経費計上することです。ただし、どんな資産でも減価償却できるわけではありません。

適用される資産には法定耐用年数が定められており、その期間に応じて減価償却費を計算します。

本章では、不動産の減価償却について解説します。

減価償却とは

減価償却とは、簡単に言うと、建物などの資産の価値が時間とともに減っていくことを、会計上でも反映させるための仕組みです。

例えば、新しいパソコンを買ったとします。買った直後はピカピカで高性能ですが、数年も使えば動作が遅くなり、新しい機種が登場して型落ちになります。

使用すると、時間の経過とともに価値が下がるのは建物でも同じです。新築のマンションも年数が経てば老朽化が進み、価値は徐々に下がります。この価値の減少分を、毎年少しずつ経費として計上していくのが減価償却です。

また、数年にわたって利用できる建物の購入費用を、購入した事業年度に一度に全額経費として計上するのは実態とあっていません。減価償却によって費用を複数年に分散して費用計上する方が実態に即しています。

例えば、3,000万円で鉄筋コンクリート造のマンションを購入した場合、法定耐用年数は47年あり、1年間で約66万円を減価償却費として計上できます。66万円を毎年「減価償却費」として計上することで、税金の負担を軽減できる効果があるのです。

減価償却はどんな時に使うのか

減価償却は主に、事業用の固定資産を購入したときに使用します。不動産投資の固定資産は、以下が考えられます。

・マンションの建物部分

・駐車場のアスファルト工事

・パソコン

・電気工事

・給排水設備工事

ただし、上記の内容であっても一台当たり10万円未満の物に関しては、固定資産に該当しません。

例えば、10万円未満のパソコンなどです。一台当たり10万円未満の場合は、減価償却せずに購入した事業年度で経費として計上できます。

また、事業用であることも大切です。事業用の固定資産でなければ、減価償却は計上できません。

例えば、マイホームや自家用車などは、原則として減価償却の対象にはなりません。マイホームや自家用車などは事業活動に使われるのではなく、個人の生活のために使われるからです。

ただし、何らかの理由でマイホームを賃貸に出している場合や自家用車を仕事で使う場合は、一部を減価償却として計上できるでしょう。

不動産で減価償却ができるのは建物部分だけ

不動産で減価償却の対象となるのは、主に建物の部分だけです。土地は、年月が経っても価値が減ることはないと考えられているため、減価償却の対象外となります。

例えば、5,000万円で中古のアパートを購入し、土地の価格が2,000万円、建物の価格が3,000万円だった場合、減価償却できるのは建物の3,000万円分だけです。

ただし、不動産を新築で購入した場合は建物にかかった費用の内訳がわかるため、建物に付属する電気工事や給排水設備工事なども減価償却の対象となりえます。


耐用年数って何?

家や車、家電など、私たちが普段の生活で何気なく使っているものは、消耗品なので長い間使っていると劣化していきます。そこで、「どれくらい長く使えるのか」を表す目安となるのが耐用年数です。耐用年数は、何のために使うかによっても変わります。

自分がお金を出して購入したマイホームは、大切に使い、定期的にメンテナンスを行うことで長く使うことができます。しかし、不動産投資で第三者に貸し出す建物の場合、必ずしも同じように大切に扱われるとは限りません。

こうした違いから、建物の耐用年数は使用用途によって異なり、マイホームと賃貸用物件では異なる年数が設定されているのです。このように、耐用年数は物の使用状況や経済的な計算において重要な基準となります。

不動産の計算では「法定耐用年数」を使う

耐用年数は主に、以下の3つに区分されます。

・法定耐用年数:減価償却の計算に使われる

・物理的耐用年数:物理的に壊れるまでの期間を表す

・経済的耐用年数:建物が経済的に見てどれくらい有効活用できるかを表す

減価償却を計算するときは、法定耐用年数を使用します。法定耐用年数は国が定めた耐用年数で、種類や構造によって年数が決まっています。

法定耐用年数が減価償却の計算に使われる理由は、税金の計算を公平にするためです。もし、減価償却費を自由に計算できてしまったら、人によって税金の負担額が大きく変わってしまい不公平になります。国は資産の種類ごとに法定耐用年数を定め、誰もが同じ基準で計算できるようにしているのです。

建物の構造別の法定耐用年数

建物の法定耐用年数は、構造や用途によって異なります。住宅用の建物の主な構造と、それぞれの法定耐用年数は以下が考えられます。

建物別の法定耐用年数

  • 木造:22年

木造住宅は日本の伝統的な建築様式で、今でも多くの住宅で採用されています。木は、鉄やコンクリートに比べて、比較的劣化しやすい材料です。法定耐用年数は、他の構造に比べて短くなっています。ただし、定期的なメンテナンスをしっかりと行えば、長持ちさせることも可能です。

  • 金属造:34年

鉄骨造は木造に比べて強度が高く、耐火性にも優れており、木造よりも法定耐用年数は長くなっています。オフィスビルやマンションなど、中規模から大規模な建物に多く用いられています。

  • 鉄筋コンクリート造:47年

鉄筋コンクリート造は、鉄筋とコンクリートを組み合わせた建築方法です。鉄筋の引張力とコンクリートの圧縮力を組み合わせることで、非常に強度の高い構造を実現でき、法定耐用年数は最も長くなっています。高層ビルや橋など、大規模な構造物に多く用いられています。

    これらの法定耐用年数は、あくまでも目安です。実際の耐用年数は、建物のメンテナンス状況や使用環境によって大きく変わる可能性があります。

    使用用途について、詳しくは後述します。


    不動産の減価償却の算出で必要となる項目

    減価償却を計算するときに必要となる項目は、主に以下の3つです。

    ・建物取得費

    ・建物の法定耐用年数

    ・償却率

    以下では、減価償却をスムーズに計算するために必要な項目を解説します。

    建物取得費

    建物取得費とは、建物を取得するためにかかった費用を指します。土地と建物の購入価格が売買契約書などで「建物1,000万円 土地2,000万円」と明確に区分されていれば、建物取得費の計算は難しくありません。

    しかし、中古物件などは土地と建物を合計した価格で購入するケースは珍しくありません。減価償却の対象となるのは建物部分のみなので、土地と建物の取得費用を分けて考える必要があります。

    土地と建物の購入価格が区分されていない場合、以下の方法が考えられます。

    • ・消費税等が契約書に記載されている場合:消費税額から建物部分を計算

      ・消費税等が契約書に記載されていない場合:固定資産税評価額から按分計算

    一般的には、契約書に消費税等が記載されていないため、固定資産税評価額から按分して建物取得費を計算するケースが多いでしょう。

    固定資産税評価額は、市町村が毎年発行する「固定資産税評価証明書」に記載されており、土地と建物それぞれの評価額が明記されています。この評価額を参考に、それぞれの取得費用を按分することで、建物取得費を算出できます。

    例えば、土地と建物の合計取得費用が5,000万円で、固定資産税評価額における土地の評価額が3,000万円、建物の評価額が3,000万円とします。

    この場合、建物取得費は5,000万円×3,000万円÷6,000万円=2,500万円となります。

    建物の法定耐用年数

    建物の減価償却費を計算する上で、もう一つ重要な要素が法定耐用年数です。減価償却費は、法定耐用年数によって経費にできる金額が変わります。法定耐用年数が長ければ1年あたりの減価償却費は少なくなり、逆に法定耐用年数が短ければ1年あたりの減価償却費は多くなります。

    法定耐用年数は、国税庁のホームページなどで確認可能です。所有する建物の構造を確認し、適切な法定耐用年数を適用しましょう。

    償却率

    償却率は建物の取得価額に対して、1年間にどれだけの割合で減価償却費を計上できるかを示す数値です。償却率は、法定耐用年数によって決まります。

    償却率を用いることで、年間の減価償却費の計算が可能です。具体的には、建物取得費に償却率を掛けて年間の減価償却費を計算できます。

    償却率は、減価償却費を計算する上で大切な項目です。具体的な償却率については、国税庁のホームページで確認することができますので、必ず最新の情報を確認するようにしましょう。


    不動産の減価償却で使う2種類の計算方法

    減価償却の計算方法には、主に定額法と定率法の2種類があります。どちらの方法が適用できるのか、それぞれの方法の特徴を理解しておくことが大切です。

    ここでは、この2つの計算方法について、わかりやすく解説していきます。

    ①定額法

    定額法は毎年同じ金額を減価償却費として計上していく方法で、計算が簡単でわかりやすいメリットがあります。また、毎年の減価償却費が一定であるため、長期的な収支計画が立てやすい点も魅力です。これらの理由から、定額法は不動産の減価償却において一般的に多く採用されている方法です。

    アパート経営を行う場合、毎年の家賃収入から一定額の減価償却費を差し引くことができるため、収益を確保しやすくなります。

    定額法は、計算が簡単でわかりやすく、長期的な収支計画にも役立つため、不動産投資において有効な減価償却方法と言えるでしょう。

    ②定率法

    定率法は取得価額から減価償却累計額を差し引いた未償却残高に、一定の償却率を掛けて減価償却費を計算する方法です。定額法とは異なり、毎年の減価償却費が変動するのが特徴です。

    具体的には償却初期に多くの減価償却費を計上し、徐々に減らしていく方法です。定率法を利用すると、初年度は定額法よりも多くの減価償却費を計上できます。

    ただし、定率法は建物ではなく、主に設備や機械などの資産に適用されるため、不動産投資における建物の減価償却にはあまり使われません。


    不動産の減価償却は使用用途によって計算方法が異なる

    不動産の減価償却は構造だけでなく、使用用途によっても計算方法が異なります。具体的には以下のケースが考えられます。

    ・不動産投資など事業用不動産の場合

    ・マイホームなど非事業用不動産の場合

    ここでは、使用用途ごとの減価償却の計算方法について解説します。

    不動産投資など事業用不動産の場合

    事業用不動産の定額法の減価償却の計算方法は以下です。

    減価償却費=取得価額×耐用年数に応じた償却率

    以下のケースで計算してみます。

    建物の取得価額

    1,000万円

    法定耐用年数

    22年

    償却率

    0.046

    償却方法

    定額法

    新築の場合、上記のケースでは減価償却費は46万円です。

    1,000万円×0.046=46万円

    さきほどの建物取得費、建物の法定耐用年数、償却率の3つの項目から減価償却を計算できます。

    構造によって法定耐用年数は違いますが、使用用途によっても法定耐用年数は異なります。例えば、木造の場合は以下のとおりです。

    事務所用

    24年

    住宅用

    22年

    飲食店用

    20年

    病院用

    17年

    旅館用

    17年

    同じ木造同じでも、このように法定耐用年数が異なることがわかります。減価償却を正しく計算するには、建物の構造と使用用途の確認を忘れないようにしましょう。

    マイホームなど非事業用不動産の場合

    マイホームなど非事業用不動産の場合、減価償却の計算方法は以下です。

    建物の取得価額×0.9×償却率×経過年数=減価償却費相当額

    非事業用建物の償却率は以下のとおりです。

    木造

    0.031

    木造モルタル

    0.034

    (鉄骨)鉄筋コンクリート

    0.015

    金属造①

    0.036

    金属造②

    0.025

    非事業用不動産の場合、通常は減価償却を計算する必要はありません。しかし、非事業用建物を事業用に変更するときには減価償却の計算が必要です。


    中古の事業用不動産はどうやって減価償却を計算する?

    中古の事業用不動産を購入した場合は、新築の不動産とは減価償却の計算方法が異なります。具体的には、以下2つのケースです。

    ・建物が法定耐用年数の一部を経過している場合

    ・建物が法定耐用年数の全部を経過している場合

    ここでは、中古の事業用不動産の減価償却の計算方法について、わかりやすく解説します。

    建物が法定耐用年数の一部を経過している場合

    中古の事業用建物を購入した場合、その建物がすでにどれくらい使用されているかによって、減価償却の計算方法が変わってきます。まずは、法定耐用年数の一部を経過している場合の計算方法を見ていきましょう。

    中古で購入した建物が法定耐用年数の一部を経過している場合、耐用年数はその建物の残りの使用可能年数を見積もって計算します。具体的には、以下です。

    法定耐用年数-経過年数+(経過年数×20%)

    例えば、法定耐用年数が47年の鉄筋コンクリート造の建物を、築10年の中古で購入したとします。この場合の耐用年数は39年です。

    47年-10年+(10年×20%)=39年

    中古で購入した建物の耐用年数は、新築で購入した場合よりも短くなるため、減価償却費を計上できる期間も短くなります。

    建物が法定耐用年数の全部を経過している場合

    次に、法定耐用年数の全部を経過している建物を購入した場合の計算方法を見ていきましょう。法定耐用年数の全部を経過している建物を購入した場合、耐用年数はその法定耐用年数の20%と定められています。

    例えば、法定耐用年数が47年の鉄筋コンクリート造の建物を、築50年の中古で購入したとします。この場合、耐用年数は9年です。

    47年×20%=9.4年→9年

    1年未満の端数は切り捨てされます。ただし、年数が2年に満たない場合には2年となるため注意しましょう。


    よくある質問

    減価償却でどれほどの節税効果がありますか?

    減価償却による節税効果は、個人の年収や事業の規模、利益によって異なります。減価償却費はあくまでも経費の一部であり、他の経費や控除との兼ね合いによって節税効果は違います。

    減価償却を活用することで、特に初年度の節税効果が大きくなるケースがありますが、長期的な視点で資産の価値と利益を計画的に管理することが重要です。

    より詳しく知りたい方は、税理士などの専門家にご相談することをおすすめします。

    減価償却をしない選択肢はありますか?

    法人の場合の減価償却は任意ですが、個人は必ず減価償却が必要です。減価償却した結果、不動産所得で損失が発生した場合は他の所得の黒字と相殺できます。

    また、相殺しても損失が残っている場合、青色申告であれば最大3年間損失を繰り越すことができます。

    減価償却をしない場合、税金が多くなったり、銀行などの融資で不利になったりする恐れがあるため注意しましょう。


    まとめ

    減価償却は、建物など時間の経過とともに価値が減少する資産を、毎年少しずつ経費計上することです。これにより、税金を効果的に減らし投資効率を向上させることが可能です。不動産において減価償却の対象は建物部分だけであり、土地は対象外です。また、耐用年数は資産の種類や用途によって国が定めており、法定耐用年数の償却率を基に減価償却費を計算します。

    減価償却費をスムーズに計算するには、建物取得費、法定耐用年数、償却率の3つの項目が必要です。

    まず、建物取得費は、売買契約書や固定資産税評価証明書に記載されている金額をもとに確認します。中古物件の場合、土地と建物の金額が一緒になっていることが多いため、その場合は固定資産税評価額を使って建物部分を按分する方法があります。

    次に、法定耐用年数は建物の構造や用途によって異なり、国税庁のサイトや資料で確認できますので、所有する建物のタイプに合った年数を調べましょう。

    最後に、償却率は法定耐用年数に応じて決まるので、これも同様に国税庁の情報を参考にするか、専門家に相談して正確な数値を確認すると安心です。

    減価償却の仕組みを正しく理解することで、適切なタイミングでの経費計上が可能になり、キャッシュフローの改善や将来の税負担の予測がしやすくなります。長期的な視点で計画的に活用することで、より安定した投資運営を実現できるでしょう。

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