外国人への賃貸トラブル13選|オーナーへの影響・対策まで解説

近年、外国人の入居者希望が増えて、外国人に貸したほうがいいのか迷っているオーナーさんは多いのではないでしょうか。

実際、外国人の賃貸では、次のようなトラブルが発生しています。

しかし、上記のトラブルを避けて日本人にこだわりすぎると、安定した収入を得るのが難しくなります。なぜなら、日本人の人口減少と高齢化により、賃貸物件の空室率が上昇しているからです。

そのため、外国人への賃貸はトラブルもありますが、同時にメリットを得られる可能性があります。

ぜひ、積極的に検討してみてはいかがでしょうか。

【外国人に賃貸するメリット】
・空室リスクを減らし、安定した家賃収入を得られる
・退去が決まっても次の入居者を紹介してくれる場合がある
・家賃相場より高めに設定できる可能性がある

外国人向けに賃貸を拡大することは、将来的な賃貸経営の成功の鍵となります。

そこで、本記事では、トラブルを未然に防ぎ、円滑な賃貸関係を築くために、外国人入居者との賃貸トラブルについて詳しく解説します。

この記事のポイント
・外国人の賃貸で起こりやすいトラブルがわかる
・トラブルを避けるためにするべき対策がわかる
・外国人の賃貸で失敗しないためのポイントがわかる

外国人への賃貸には心配ごともあるかもしれませんが、適切な対策と信頼できる専門業者を利用すれば、問題は解決できるでしょう。

グローバル社会のニーズを捉え、新たなビジネスチャンスを掴むために、ぜひ挑戦してみてください。

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1. 外国人への賃貸で起こりやすいトラブル13選|オーナーへの影響まで解説

外国人の賃貸トラブル

外国人への賃貸では、日本人に貸す場合とは異なるトラブルの発生リスクが存在します。

具体的には、入居前、入居中、退去後のトラブルで、以下の13が挙げられます。

ひとつずつ見ていきましょう。

1-1. 入居前のトラブル2つ

入居前の賃貸契約において、外国人の場合、契約内容の理解不足がトラブルの主な原因となります。

これは、契約書や説明資料が日本語のみで、日本語がわからない外国人入居者にとって内容を理解するのが困難だからです。

特に、以下のような日本特有の契約内容は、トラブルになりやすいでしょう。

では、なぜ上記の契約内容がトラブルになりやすいのかを解説します。

1-1-1. 礼金・更新料について納得できず詰め寄られるトラブルが起きる

日本には、海外にはない「礼金」と「更新料」という賃貸契約特有の制度があります。これらの制度は、外国人にとって特に理解しにくいものです。

そもそも礼金と更新料は、オーナーへの謝礼として渡すお金で、敷金とは異なり返済しなくてよいお金です。

礼金入居時に支払う費用で、返金されません
更新料契約期間を延長する際に支払う費用で、通常は家賃の1ヶ月~2ヶ月分

外国人にとっては、お金を出して借りるのに、お礼をしなければいけないことに納得できず、理由を詰め寄られることがあります。

【礼金・更新料を払う理由】
礼金家を貸してくれるオーナーに、「これからよろしくおねがいします」という意味で払うお金
更新料更新手続きにかかる手間賃

理由を丁寧に説明しても、納得してもらえない場合は、契約が中断されることもあります。

1-1-2. 光熱費が含まれていると誤解して混乱が起きる

外国人の中には、家賃に光熱費が含まれていると誤解してしまうケースがあります。

なぜなら、アメリカやオーストラリアなど光熱費込みの物件がある国も多く、日本も光熱費込みだと勘違いしているからです。

また「光熱費込み」と「共益費込み」を混同するケースもあります。「共益費」が、共用エリアの維持管理費であることをしっかり説明しましょう。

海外でも共益費はあり、物件の所有者が基本的に負担します。「共益費」の意味を理解すれば、「光熱費」とは異なるとことがわかってもらえます。

光熱費込みだと誤解すると、入居しようとした際、電気や水道が通っていないことに気づき、混乱やトラブルが発生することになります。

1-2. 入居中のトラブル7つ

外国人への賃貸で入居中は、次のようなトラブルがよく起こります。

これは、言語・文化の違いによるコミュニケーション不足による原因の場合が多く、日本特有のルールやマナーは、日本人にとっては暗黙の了解であり、外国人には理解しにくいからです。

実際に、公益財団法人日本賃貸住宅管理協会の調査では、契約内容の誤解や文化の違いによるトラブルが多数発生していることがわかります。

外国人の賃貸トラブル

引用:公益財団法人日本賃貸住宅管理協会 「賃貸人の実態調査」

それぞれのトラブルの具体的な内容や、事例をご紹介します。

1-2-1. ゴミ出しルールを守れない

日本のゴミ出しルールは、多くの外国人にとって複雑で理解するのが難しいと感じられています。

その理由としては、次のようなものが考えられます。

・分別種類が多く、混乱してしまう
・収集日や指定ごみ袋など、地域ごとに細かいルールが異なる
・表示が日本語のみでわかりにくい

最近では、外国語でのゴミ出しルール表示を掲示する自治体も増えてきました。

それでも、日本の複雑なゴミ出しルールを徹底することは難しいようですね。

オーナーへの悪影響
・ごみ収集業者からのクレーム
・近隣住民からのクレーム
・訴訟リスク

1-2-2. 騒音で近所迷惑になる

外国人への賃貸物件が増加する一方で、騒音トラブルが大きな課題となっています。

この問題の背景には、以下のような理由が考えられます。

・自国では夜遅くまで音楽を聞いたり、友達と談笑したりするのが普通である
・日本語が十分に話せず、注意されても理解できない

ただし、騒音問題は外国人に限らず、日本人でも発生しています。国籍に関わらず、注意をしても聞き入れない人はいるようです。

オーナーへの悪影響
・近隣住民からのクレーム
・訴訟リスク
・不動産価値の低下

1-2-3. 勝手に同居人を入れる

外国人への賃貸において、無断で同居人を入れられるトラブルが発生しています。

その理由としては、以下のことが考えられます。

・自国で入居人数制限がないため、理解していない
・家賃を節約するために、人数を増やす
・短期お泊り期間に明確な定義がない

SNSで発信されているトラブルには、以下のようなものがあります。

現場を抑えても、遊びに来ているだけと平気で嘘をつくケースがあるようです。

オーナーへの悪影響
・近隣住民からのクレーム
・物件の破損
・騒音やゴミ出しトラブルの増加
・訴訟リスク

1-2-4勝手にペットを飼う

勝手にペットを飼うトラブルも、上位4番目に入っています。

ペットを飼うのは、多くの国でも制限が設けられているので、禁止物件であればダメだとわかっているはずです。

それでも勝手にペットを飼ってしまうには、次のような理由があると考えられます。

・海外で暮らす孤独感や不安を軽減するための心の支えにしている
・ペット飼育に対する規制が緩い国の出身者は、大丈夫だろうと考えてしまう
・ペット飼育可物件は数が少なく、家賃が高いので内緒で無断飼育してしまう

SNSでは、次のようなトラブルが発信されています。

契約書にペットの飼育を禁止する条項があっても、外国ではゆるく見過ごされることがよくあります。そのため、日本でも同様に考えてしまうのでしょう。

オーナーへの悪影響
・近隣住民からのクレーム
・物件の破損
・騒音問題
・衛生問題
・管理規約違反
・訴訟リスク

1-2-5. 部屋を無断改造してしまう

外国人入居者による無断改造は、賃貸物件の管理者にとって大きなトラブルとなります。

なぜなら、騒音の原因となったり、膨大な修理費用が発生する場合があるからです。

なぜこのようなトラブルが起こるのか、次のような理由が考えられます。

・自国の住環境と異なるため、改造の必要性を感じる
・自国では自由に部屋を改造することが当たり前である
・釘を打ったり、ペンキを塗るのを改造と思っていない

実際に、次のようなトラブルがSNSに掲載されています。

釘を打ったり、ペンキを塗るのは頻繁にあるトラブルです。一方、上記のような大掛かりな改造をされてしまうケースもありますね。

オーナーへの悪影響
・物件の破損
・安全性の問題
・法的な問題
・不動産価値の低下
・保険の無効化

1‐2-6. 家賃を滞納する

外国人の賃貸において、家賃滞納はときどき起こるトラブルです。

理由は、以下のようなことが考えられます。

・外国人労働者や留学生など、経済的に不安定な状況に置かれやすい
・収入が不安定

特に留学生の場合、学費や生活費の負担が重くなると、家賃の支払いが後回しになることがあります。

ただし、家賃滞納は外国人に限ったことではありません。

次の、日本人の家賃滞納率と外国人の家賃滞納率を比較したデータを見てください。

外国人の賃貸トラブル

引用:東京大学空間情報科学研究センター「民間賃貸住宅市場における入居審査と家賃滞納

日本人の家賃滞納率は1.6%、外国人は2.1%で、そこまで大きな差はありません。

家賃滞納は、国籍にかかわらず賃貸で起こり得る一般的なトラブルといえます。

オーナーへの悪影響
・収入の減少
・回収のための時間と労力の浪費
・回収不可のリスク

1-2-7. 部屋の又貸しをする

賃貸物件を契約した後、知り合いや友人に部屋を転貸してしまうことがあります。

これには次のような理由が考えられます。

・契約期間中に帰国となり、又貸ししていく
・条件不足で借りられない知人の代わりに契約し、そこに知人が住む

SNSでは、次のような事例が発信されています。

又貸しは禁止だと説明しても、本人たちの勝手な事情で貸してしまうのでしょう。

オーナーへの悪影響
・家賃滞納のリスク
・修理費用を徴収できないリスク
・近隣住民からのクレーム

1‐3. 退去後のトラブル4つ

外国人の賃貸で、退去後に起こるトラブルは少し厄介です。

理由は、退去後に自国へ帰ってしまうと連絡が取れなくなってしまうからです。

実際、退去後には以下のようなトラブルが発生しています。

外国人の賃貸トラブル

引用:公益財団法人日本賃貸住宅管理協会 「賃貸人の実態調査」

主なものを解説します。

1-3-1. 荷物を放置していく

退去後に荷物が残っているトラブルが発生しています。

これは、日本の賃貸形態が家具なしであることが大きな理由であると考えられます。

日本の生活で必要な家具など、自国に帰るとき不要になります。その場合、処分できずそのまま帰国してしまうのです。

逆に、日本に長く住む外国人であれば、国内で転居する可能性が高く、荷物放置のトラブルは回避できるでしょう。

1-3-2. 汚れがひどいまま退去する

外国人は、部屋を汚したまま退去することがあります。

この背景には、文化的な違いが大きく影響していると考えられます。

日本では、賃貸物件を退去する際に、入居時よりもきれいにして返すのがマナーとされています。これは、「来たときよりも美しく」という暗黙の了解として、多くの日本人に浸透しています。

しかし、この習慣は必ずしも他の国で共有されているわけではありません。 

東南アジアなどでは、退去した後、次の賃貸までにオーナーが掃除をするので、入居者は大まかに掃除をすればよいと考えられています。

そのため、本人は掃除をしたつもりでも、オーナー側は汚れたままだと感じてトラブルになります。

1-3-3原状回復費用を払わない

外国人への賃貸で起こりやすいトラブルのひとつは、原状回復費用を払わないことです。

これにはいくつかの理由があります。

・原状回復ルールを十分に理解で きていない
・多くの外国人は敷金は戻ってくると思い込んでいる
・賃借人負担となる損耗等の考え方を理解していない
・国土交通省の「原状回復のガイドライン」にある通常の使用範囲の見解が異なる

これらは、言葉の問題により、契約内容を理解していないことに加えて、現状回復費用の負担責任の線引が曖昧であることが大きな原因と考えられます。

例えば、外国人が退去した後、香辛料の臭いが強くてクリーニング代が高い場合、外国人にとっては、それは「通常の使用範囲」となります。

言い争いになった場合、主張の強い外国人は、日本人のようにある程度のところで妥協することはないと思っておいたほうがいいでしょう。

1-3-4. 退去予告もなく無断で退去する

外国人への賃貸で、退去予告もなく無断で退去してしまうトラブルも増加傾向にあります。

これらは、不法滞在やオーバーステイで摘発されて、強制送還されてしまう場合によく起こるトラブルです。

違法で警察に捕まると、予告期間をもつ余裕はなくなり、いつの間にか消えてしまいます。

無断退去は、契約の途中解除だけではなく、荷物をそのままにして行ったり、部屋を汚したまま放置するなど、さまざまな問題を引き起こします。


2. 外国人への賃貸はトラブルがあっても積極的に検討すべき理由

外国人の賃貸トラブル

外国人の賃貸は、さまざまなトラブルはありますが、それでも今からは積極的に検討する必要があるでしょう。

その理由として、次の5つが考えられます。

順番に見ていきましょう。

2-1. 外国人の賃貸需要が増えている

1つ目の理由は、日本に滞在する外国人が増えて、賃貸需要が増加しているためです。

日本は少子高齢化で人手不足のため、政府は外国人労働者を受け入れる制度を整え、企業も積極的に外国人労働者を受け入れています。

実際、日本で住む外国人は年々増加していることが、以下のデータでわかります。 

外国人の賃貸トラブル

引用:国土交通省 「外国人の民間賃貸住宅への 入居について」

需要のあるところに参入すれば、空室リスクを減らし、安定した家賃収入を得られます。

2-2. 紹介により次の入居者を確保しやすい

外国人に賃貸をすると、退去が決まっても次の入居者を紹介してくれることがよくあります。

これは海外に住む外国人は、言葉の問題などの寂しさから、強いネットワークを持っていることが多いからです。

物件が気に入れば、自分が自国に帰るとき、知り合いに紹介してくれるでしょう。

入居者紹介によるメリットは、以下のような点が挙げられます。

・広告費を節約できる
・安定した入居率を維持できる
・良質な入居者を見つけやすい

特に、空室リスクが高い地方や古い物件では、入居者紹介によるメリットが大きく感じられるでしょう。

2-3. 家賃相場より高めに設定できる

外国人への賃貸では、家賃相場より高めに設定できる場合があります。 

これは、外国人向けの賃貸物件は、まだ十分に普及していないため、供給不足の状態にあるからです。

しかも、外国人向けの賃貸物件では、契約書の複数言語化や、トラブル発生時のサポートなど、外国人向けのサービスを提供しなければなりません。

そのため、外国人への賃貸では、家賃相場より高めに設定しても、入居が決まる可能性が高いといえます。

2-4. 新たなアイデアやビジネスチャンスを生み出す可能性がある

外国人の賃貸を積極的に検討すべき理由で、多様な価値観に触れられることがあります。

これは、外国人入居者との交流を通じて、異なる文化や考え方に触れる機会が増えるからです。

外国人に賃貸することは、自分の視野を広げ、異文化理解やグローバルな視野を養うことができるでしょう。

また、多様なバックグラウンドを持つ入居者との交流は、新たなアイデアやビジネスチャンスを生み出す可能性もあります。

そのため、外国人の賃貸は、個人やビジネスにとって貴重な学びの場となり得るのです。

2-5. 対策すればトラブルを減らせる

外国人への賃貸は、適切な対策を講じればトラブルを減らすことができます。

なぜなら、外国人との賃貸トラブルは、主に言語や文化の違いから生じるコミュニケーション不足が原因だからです。

そのため、言語の壁を取り除き、お互いに話し合うことで、リスクを大幅に軽減できます。

具体的には、相手が理解できる言葉でトラブルの原因を伝えて、その解決策を一緒に考えることが有効です。

例えば、騒音トラブルがあった場合、外国人はベランダで大声で話すことを騒音と認識していないことがあります。

そこで、お互いに話し合い、ベランダでの声の響き方やその声で寝られない、勉強の妨げになるなど隣人が困っていることを説明します。

その上で、電話の使用方法やベランダでの行動についてルールを設けることで、トラブルを未然に防ぐことができます。

トラブルが起こったら、きちんと話し合って問題解決に取り組むことで、円満解決に繋がります。


3. トラブルを避けるための対策5つ

外国人の賃貸トラブル

ここでは、トラブルを避けるための具体的な対策を5つ紹介します。

詳しく解説します。

3-1. 入居審査を入念に行う

外国人に賃貸する場合、入居審査を入念に行うのが重要です。

なぜなら、外国人は帰国すると連絡が取りづらく、トラブル時に対処が難しくなるからです。信頼性や安全性を確保するために、入居前にしっかり審査を行う必要があります。

入居審査では、特に以下の項目をよく調べておきましょう。

【収入】
日本での収入を確認するために、勤務先と勤務年数、収入証明を確認することは重要です。できれば、勤務先に電話をして在籍確認をすると安心です。また学生など収入がない場合は、連帯保証人が必要でしょう。目安として、就労ビザで5年以上滞在している人で、預金残高が賃料の3ヶ月分以上あれば、支払い能力は問題ないといえるでしょう。

【滞在資格(学生ビザ、ワーキングホリデービザ、就労ビザなど)】
滞在資格の種類や滞在期間、ビザの有効期限を確認することも不可欠です。これは滞在資格によって許可される滞在期間が異なるからです。
・学生ビザ:3ヶ月~4年3ヶ月未満(延長可能)
・ワーキングホリデービザ:1年
・就労ビザ:15日~5年(最大10年まで延長可能の場合あり)
ビザの有効期限が契約期間を満たしていない場合、途中で契約解除となったり、そのまま不法滞在者として滞在されたりします。
不法滞在の外国人に家を貸すことは、不法滞在を幇助したとして、検挙時にオーナーも取り調べを受ける可能性があります。

【身元の確認】
本人確認書類(パスポート、在留カード、運転免許証など)を確認します。
在留カードは偽造のものも多くあります。在留カードとパスポートの期限や在留資格が異なってはいないかよく確認してください。

*在留カードとは
在留カードは、日本で中長期滞在する外国人が持つ、身分証明書と在留資格を証明するICカードです。在留カードには、氏名や在留資格、在留期間などの基本情報が記載されています。在留カードについては、法務省の「「在留カード」及び「特別永住者証明書」の見方」を確認ください。偽造カードを発見する方法も掲載されています。

外国人入居者を受け入れるには、入居審査に加え、連帯保証人の設定や家賃保証サービスの利用など、さらなる対策が有効です。

3-2. 契約書を丁寧かつ分かりやすく説明する

賃貸契約書は、相手が完全に理解するまで、丁寧に分かりやすく説明しましょう。

なぜなら、契約書は、トラブルを未然に防ぎ、スムーズな賃貸生活を実現するための重要な書類だからです。

特に、外国人入居者との契約では、言葉の壁や文化の違いから誤解が生じる恐れがあります。

そのため、外国人に契約書を理解してもらうには、以下のような対策が必要です。

・多言語の契約書作成。必要に応じて通訳を用意する
・手続きやルールについて契約書と別に資料を用意する
・生活ルールや住宅の使用方法について誓約書に署名してもらう

国土交通省では、外国人入居者向けに、賃貸契約に必要な以下の書類を、日本語に加え、英語、中国語など14カ国の言語で用意しています。

・入居申込書
・重要事項説明書
・賃貸住宅標準契約書
・定期賃貸住宅標準契約書
・定期賃貸住宅契約についての説明 
・定期賃貸住宅契約終了についての通知
・希望条件チェックシート
・入居審査必要書類チェックシート
・入居の約束チェックシート

書類はこちらからダウンロードできます。

国土交通省「「外国人の民間賃貸住宅入居円滑化ガイドライン」(賃貸人、仲介業者・管理会社の方へ)

これらの資料を使用して、ゆっくり丁寧に説明するといいでしょう。分からない点があれば、遠慮なく質問してもらうように促します。

そして、説明後には、入居者が内容を理解しているかどうかを必ず確認してください。

内容理解を確認するのにおすすめの翻訳アプリ
・Google翻訳
・Microsoft Translator
・DeepL翻訳

3-3. 文化や習慣の違いを理解し、日本の風習を説明する

外国人入居者とのトラブルを避けるためには、文化や習慣の違いを理解することが重要です。

なぜなら、外国の文化や習慣についてある程度の知識があれば、あらかじめ日本では、どうするべきかを説明できるからです。

具体的には、次のようなことが挙げられます。

海外の風習日本の風習理由
土足で部屋に上がる・靴は玄関で脱ぐ・部屋履きを利用する・来客用のスリッパを用意する・日本では、外からの泥や砂を家の中に持ち込むのは、不衛生だと考える・土足は畳やフローリングなどの床を傷つける原因となるため
友達と遅くまで大声で騒ぐ・大勢の集まりはお店などを利用する・隣近所に配慮して小声で話す・集合住宅の場合は、壁や床が薄い場合が多いため、通常の会話でも隣家に音が響く可能性がある
近所付き合いは重要視しない・周りへの気配りを大切にする・日頃から挨拶を心がける・挨拶を交わすことで、近所の人との親睦が深まり、トラブルを防げることがある

日本での生活マニュアルは、出入国在留管理庁からもテキストと動画で紹介されています。

参考:出入国在留管理庁「生活・仕事ガイドブック

ぜひこちらも活用してください。

外国人にとっては、なにが良くないのか、わからないこともあるでしょう。そのため、文化や習慣の違いで起こるトラブルを、すべて防ぐことは難しいかもしれません。

近隣から注意を受けてしまった場合は、まず誠意を持って謝罪することで問題解決に繋がる可能性があることを理解してもらうといいでしょう。

3-4. 定期的な連絡・コミュニケーションを図る

外国人入居者との賃貸契約において、トラブルを未然に防ぐには、定期的な連絡・コミュニケーションが有効です。

なぜなら定期的な連絡・コミュニケーションは、単にトラブルを回避するだけでなく、相手との信頼関係を築く効果も期待できるからです。

信頼関係があれば、困ったことがあっても気軽に相談しやすくなります。そうすることで、トラブルを早期に発見できたり、トラブル発生時も双方が協力して解決に取り組んだりできるでしょう。

具体的には、次のような方法で連絡を取り合うことができます。

・定期的なメールやメッセージでコミュニケーションを保つ
・家賃の支払いを手渡しにする
・生活ルールや生活情報などのチラシを住戸に定期的に投函する
・国際交流イベント等の情報を提供し、できれば一緒に出かける

外国人入居者だけでなく、学校や勤務先と連絡を取り合うのもいいでしょう。

外国人入居者との連絡・コミュニケーションは、双方が理解し、尊重し合う姿勢が重要です。

積極的にコミュニケーションを図り、円滑な関係を築きましょう。

3-5. トラブル発生時の対応策を事前に準備する

外国人への賃貸において、トラブル発生時の対応策を事前に準備することが大切です。

準備しておくことで、万が一トラブルが発生した場合にも、迅速かつ適切な対応が可能になります。

以下は、トラブル発生時の対応策を事前に準備しておく際のポイントです。

・想定されるトラブルを網羅的に洗い出す
・各トラブルに対する具体的な対応方法を検討する
・対応フローチャートを作成する
・トラブル発生時に役立つツールを準備する

以下のようにまとめるといいでしょう。

想定されるトラブル
対応方法
対応フローチャート
ツール
家賃滞納・家賃保証会社に加入・保証人、身元引受人の設定・緊急連絡先の確認1.督促状を支払いに応じるまで複数回送付2.契約解除予告通知書を内容証明郵便で送付3.法的手続き・家賃保証会社・督促状(入居者の母語)・通訳・弁護士
騒音・契約時に周知徹底・誓約書の取り交わし・防音対策(防音シート、遮音マット等)1.騒音の内容、時間帯、頻度などを確認2.写真や騒音を録音3.書面と口頭で注意4.話し合い5.法的手段・騒音計・通訳・弁護士
無断同居・契約時に周知徹底・誓約書の取り交わし・管理室や近隣住民と連絡1.事実確認(写真や目撃証言)2.書面と口頭で同居人の退去を要求3.法的手段・目撃証言・写真・弁護士

トラブルはいつ起こるかわかりません。 事前にしっかりと準備しておくことで、安心して賃貸経営を行えます。


4. 外国人への賃貸で失敗しないためのポイント3つ

外国人の賃貸トラブル

最後に、外国人の賃貸で失敗しないための大切なポイントを3つ紹介します。

ひとつずつ見ていきましょう。

4-1. ターゲットを明確にする

外国人への賃貸で失敗しないために、ターゲットを明確にすることが有効です。

なぜなら、ターゲットを明確にすると、言語や文化・風習の理解など、的を絞って対策ができるからです。

例えば、ターゲットを絞ると以下のような対策が考えられます。

【英語圏の入居者をターゲットにする場合】
・英語の資料を用意する
・英語を学ぶ、または英語を話せる知人を探す
・土足への対応に気を配る

【留学生をターゲットにする場合】
・支払い能力を慎重に確認する
・学校と提携する、または学校と密に連絡を取り合う
・悩み相談などを行う

【短期賃貸をターゲットにする場合】
・基本の家具をつける
・家賃をまとめて先払いしてもらう
・敷金を高めに設定する

ターゲットを明確にすることで、準備する資料が減ったり、集める情報を絞れたりするため、オーナーの負担が軽減します。

一方、物件の状況やエリアに合致していないターゲットを設定してしまうと、希望者が見つからない可能性が高まります。

自分の賃貸物件に合うターゲットを選びましょう。

4-2. 退去後の連絡先を確認する

外国人への賃貸では、退去後の連絡先を確認しておくことが非常に重要です。 

なぜなら、外国人に賃貸する場合、退去後すぐに帰国してしまうと、そのまま音信不通になってしまうからです。

音信が取れないと、以下のようなトラブルが発生する可能性が高まります。

・未払い分の賃料を回収できない
・原状回復費用を請求できない
・敷金を返還できない

未払い金や原状回復費用の支払いだけでなく、敷金が返還できないなど、借り手側も困ってしまう可能性があることを伝えるといいでしょう。

連絡先は、メールアドレスだけでなく、自国の電話番号や住所を確認しておくといいでしょう。

4-3. 多言語対応可能な賃貸仲介業者、管理会社を利用する

外国人への賃貸では、多言語対応可能な賃貸仲介業者・管理会社を利用することがもっとも安心です。

多言語対応の仲介業者なら、契約書やルールの説明など、専門的な知識を持つスタッフが外国語で説明してくれます。オーナーが準備する必要はありません。

また、管理会社と契約することで、トラブル時の対応もすべてお任せできます。さらに、家賃滞納の支払いや更新料・原状回復費用の不払いなどを管理会社が支払ってくれるサービスもありますので検討してみてください。


5. まとめ

外国人の賃貸で発生しやすいトラブルと、その対処法についてわかりやすくまとめました。

【発生しやすいトラブル】

・言語
・文化の違いによるコミュニケーション不足
・契約内容の理解不足
・家賃滞納
・退去後のトラブル

これらのトラブルを回避するために、以下の対策をご紹介しました。

・入居審査を入念に行う
・契約書を丁寧かつ分かりやすく説明する
・文化や習慣の違いを理解し、日本の風習を説明する・定期的な連絡
・コミュニケーションを図る
・トラブル発生時の対応策を事前に準備する

外国人への賃貸は、さまざまなトラブルのリスクも存在します。

しかし、人口減少が進む日本において、外国人の賃貸を積極的に取り組むことで、空室リスクを軽減し、安定的な収入を得ることができます。

本記事の内容を参考に、リスクと可能性を理解し、適切な対策を講じて、新たな可能性を切り開く道としてください。

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