家賃滞納したまま引っ越しされた時の対処法|家賃回収の流れと注意点

「家賃を滞納した入居者が、無断で引っ越してしまった!」
「引っ越してしまった入居者から家賃を回収するにはどうすればいい?」

あなたは今、家賃を滞納したまま入居者が引っ越してしまい、泣き寝入りしたくないもののどうすべきかわからず、怒りや不安でいっぱいになっているのではないでしょうか。

家賃滞納者が無断で引っ越してしまっても、未納家賃を回収できる可能性はあります。
たとえば、以下のような場合です。

  • 保証人か連帯保証人がいる場合
  • 財産調査の結果、回収できる見込みがあると判断できた場合

なぜなら、保証人や連帯保証人がいれば家賃を代わりに支払ってもらうことができ、また、保証人が支払ってくれない場合でも、財産調査で回収できる見込みがあると判断できれば、訴訟を起こして強制執行で確実に滞納分を回収できるからです。

このような場合は、以下のように正しい手順で進めていくことで、最終的に家賃を回収できる可能性が高くなります。

  1. 引っ越してしまった入居者の住所を調べる
  2. 家賃の督促と契約解除の通知をおこなう
  3. 保証人に連絡する
  4. 財産調査を行う
  5. 民事訴訟を起こす

手順を誤ると家賃を回収できない可能性があるだけでなく、訴訟費用でさらに損をすることにもなりかねません。

また、家賃回収のために家賃滞納者が勤める会社に連絡した際に、家賃滞納の事実を電話に出た人に伝えてしまい、トラブルに発展するケースもあります。
そのようなトラブルを起こさないためにも、正しい方法を知って、正しい手順で進めることが大切なのです。

さらに、大家さんが注意すべき点として、賃貸契約の解除がなされない限りは勝手に部屋に入らないことがあげられます。

大家さんとしては、早く次の入居者募集のために部屋の状態を確認したいところですが、入居者との賃貸契約を解除しないまま物件に立ち入ると、のちのち不法侵入されたと訴えられてしまう可能性があります。入居者が勝手に引越した場合であっても、賃貸契約の解除が行われない限りはどんな状況にあっても入居者に権利があるためです。

そこでこの記事では、以下の内容を詳しく解説していきます。

【この記事の内容】

  • 勝手に引っ越した入居者から未納家賃を回収できる条件
  • 家賃滞納したまま引っ越した入居者から家賃を回収するステップ
  • 家賃滞納者が引っ越してしまった場合の原状回復の考え方
  • 家賃滞納者が引っ越してしまうリスクへの備え方

この記事を読み進めることで、家賃を回収できそうかが判断でき、回収のためにはどのような流れで動けばいいかがわかります

また、原状回復について知っておくべきことや、今後このようなことが起こらないようにするための備え方についても解説しますので、ぜひ最後までお読みください。

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1. 諦めないで!家賃滞納したまま引っ越されても家賃を回収できる可能性はある

「家賃滞納されたまま勝手に引っ越されてしまったし、今どこに住んでいるのかもわからない…」このように、一見すると家賃が回収できなさそうな状況であっても、まだ諦める必要はありません。

なぜなら、以下のどちらかの条件に当てはまるのであれば、家賃を回収できる可能性があるからです。

  • 【条件1】保証人か連帯保証人がいる場合
  • 【条件2】財産調査の結果、回収できる見込みがあると判断できた場合

まずはこれらの条件について、詳しく見てゆきましょう。

【家賃滞納の時効について】

家賃滞納には5年の時効があります。ただし、訴訟を起こせば時効を10年に引き伸ばすことが可能です。
しかし、訴訟を起こす場合は多くの費用や労力がかかります。そのため、訴訟を起こす場合は費用や労力に見合うかを見極めることがポイントになるでしょう。

1-1. 【条件1】保証人か連帯保証人がいる場合

入居者が家賃を滞納したまま引っ越してしまった場合、賃貸契約時に保証人や連帯保証人をつけているか確認しましょう。

保証人や連帯保証人とは、入居者が家賃を滞納したり物件を汚損したりした際に、入居者に代わって弁済する義務を負う人のことです。そのため、引っ越してしまった入居者ではなく、こちらに家賃や原状回復費を請求できます。

また、保証人や連帯保証人に事情を説明し、引っ越してしまった入居者に家賃を支払うように言ってもらうことで、家賃を回収できる可能性もあるでしょう。

【保証人と連帯保証人の違い】

保証人と連帯保証人は、入居者が滞納をした場合に家賃を請求されるという点では同じですが、その責任の重さが違います。
具体的にいうと、保証人には以下2つの権利によって支払いを断ることが可能なケースもあります。

  1. 催告の抗弁権:家賃滞納が発覚した場合、まず賃借人である債務者本人に請求するよう要求できる権利
  2. 検索の抗弁権:家賃滞納が発覚した場合、まずは主債務者本人の財産から返済を求めるように要求できる権利

対して、連帯保証人にはこの2つの権利がありません。そのため、入居者と同等の責任を負っており、支払いを拒否することはできないのです。

つまり、賃貸契約時に保証人ではなく連帯保証人をつけていた場合は、滞納があった時点で連帯保証人に対して賃料を請求できます。そのため、まずはどちらをつけているか確認することが大切です。

1-2. 【条件2】財産調査の結果、回収できる見込みがあると判断できた場合

保証人や連帯保証人(以下、両方を合わせて保証人と記載)がいない、もしくは支払いを拒否された場合は、引っ越してしまった入居者や保証人の財産調査をおこない、家賃を回収できる見込みがあるかを確認しましょう。

実は、家賃滞納者や保証人にお金がなくても、以下のような財産がある場合は差し押さえをして回収できます

  • 給料
  • 貯金
  • 自動車
  • 自宅にある動産(現金・商品・家財など、形を変えずに移転できる財産
  • 債権

そのため、事前に財産調査をしておき、回収できる見込みがあるかを確認しておくのです。
もし事前の調査で差し押さえ可能な財産があった場合は、訴訟も有利に進めることができるでしょう。


2. 家賃滞納したまま引っ越しされた時の滞納家賃を回収する5つのステップ

滞納したまま引っ越しされた時の家賃回収は、以下の手順で進めてゆきましょう。

  1. 引っ越ししてしまった入居者の現住所を調べる
  2. 家賃の督促と契約解除の通知を行う
  3. 連帯保証人に連絡する
  4. 財産調査を行う
  5. 民事訴訟を起こす

このような手順で進めることで、余計な時間とリスクを抑えて家賃を回収することができます。

では、詳しく解説してゆきます。

2-1. STEP1|引っ越してしまった入居者の現住所を調べる

家賃の督促をしたいものの、引っ越してしまった入居者の住所がわからず、途方に暮れている大家さんもいらっしゃるでしょう。しかし、そのような場合でも住所を調べる方法はあります。

その方法とは、入居者の「住民票を取得」することです。「他人が勝手に住民票を取得できるの?」と思われるかもしれませんが、第三者であっても債権回収のために債務者の住民票を取得することは「住民基本台帳法12条の3第1項」で認められています。

賃貸借契約書の原本を役所に提示すれば、住民票を取得することが可能です。

貸していた物件の市区外に転出している場合は、物件住所の管轄となる自治体から住民票を取得できませんが、転出先の住所は教えてくれます。住所がわかったら、改めて転出先の自治体で住民票を取得しましょう。

【いきなり訴訟は起こせない】

早く解決したいという気持ちから、すぐにでも訴訟を起こしたいと考える大家さんもいらっしゃるでしょう。しかし、訴訟を起こすには、「しっかり相手に対して請求した」という事実が必要です。

そのため、まずは住所を調べて督促を行う必要があります。

2-2. STEP2|家賃の督促と契約解除の通知をおこなう

住所がわかったら、入居者に対して配達証明付の内容証明郵便で、家賃支払いの督促と契約解除の催告を行います。

家賃の督促状には、以下のことを明記しておきます。

  • 滞納期間
  • 請求額
  • 支払期日
  • 振込口座
  • 期日までに振り込みがない場合は、法的措置をとること
  • 期日までに振り込みがない場合は、賃貸契約を解除すること

支払いの期限は、内容証明郵便到達から1週間程度に設定しておきましょう。

配達証明付の内容証明郵便を送ることで、のち訴訟を起こす際に「適切に督促を行った」ことの証明になります。

この時点で相手から連絡が来た場合は、契約を解除してほしいことと、未納家賃をどのように支払うかについて話し合いましょう

内容証明郵便の送り方は、日本郵便株式会社の「内容証明」を参考にしてください。

2-3. STEP3|連帯保証人に連絡する

内容証明を送っても元入居者からなんの連絡もない場合は、連帯保証人に連絡をします。
以下の手順で話を進めましょう。

  1. 保証人から入居者に連絡を取ってもらい、入居者に家賃を支払うよう打診してもらう
  2. 1ができなかった場合は、保証人に家賃滞納分を請求する
  3. 家賃滞納分を支払ってもらえなければ、保証人に対しても訴訟起こす

まず、保証人に対して家賃滞納の現状を説明し、入居者に連絡を取ってもらいましょう。保証人から入居者に連絡してもらうことで、入居者から大家さんに連絡がくる可能性もあります。

保証人も入居者と連絡が取れないようであれば、保証人に家賃の支払いを求めます。ただし、「1-1.【条件1】保証人か連帯保証人がいる場合」で解説したように、保証人には「催告の抗弁権」と「検索の抗弁権」が認められているため、必ずしもすぐに支払ってくれるとは限りません。

ただし、2つの権利を持たない連帯保証人を付けている場合、支払いを拒否されたら入居者と同時に連帯保証人に対しても訴訟を起こすことが可能です。

【保証人に家賃を払ってもらえても、賃貸契約は解除できない点に注意】

保証人が滞納分の家賃を支払ってくれても、賃貸契約そのものは解除できません。なぜなら、保証人には賃貸契約を解除する権利はないからです。

そのため、家賃を支払ってもらえた場合でも、別途、入居者に賃貸契約解除してもらう必要があります

2-4. STEP4|滞納された家賃を回収できるか財産調査を行う

入居者や連帯保証人への督促を行っても支払いの意思がない場合は、訴訟に移る前に入居者と連帯保証人の財産調査を行いましょう。

差し押さえ可能な財産がなければ、たとえ訴訟で勝つことができても経済的に支払う能力がなく、結局は未納分の家賃回収が困難なケースが多いためです。そのため、訴訟を起こす前に財産調査の実施をおすすめします。

詳しい財産調査は弁護士などに依頼しなければなりませんが、以下の2つであれば、大家さん自身で財産調査を行うことが可能です。

  1. 差し押さえできる給料があるか
  2. 差し押さえできる動産があるか

この章では、大家さんが自分で調べられる2つの財産について、調べ方を解説します。

2-4-1. 差し押さえできる給料の有無|申告された勤務先に連絡する

まず、入居時に申告された勤務先に、入居者が勤めているか、電話して確認しましょう。もし現在でも勤めていることがわかれば、最大で給与の手取り額4分の1までは差し押さえが可能です。この差し押さえの限度額は、民事執行法152条によって定められています。

【給与差し押さえイメージ】

【在籍が確認できたらまず取次ぎしてもらうことが大切】

勤務先に電話をかけた結果、在籍していることがわかったら、電話を代わってもらうように伝えましょう。もし、手が離せなかったり、外回りなどで社内にいなかったりした場合は、こちらの名前と電話番号を伝えて折り返し電話してもらえるように伝えておきましょう。

もしかしたら、入居者と連絡が取れて解決できるかもしれないからです。

注意点として、勤務先に家賃を滞納していることは伝えてはいけません。入居者が勤務先に家賃滞納の事実がばれることで、家賃滞納者とのトラブルに発展する可能性があるからです。

また、会社に居づらくなった家賃滞納者が退職してしまい、さらに家賃回収が困難になるといったリスクも考えられます。

「消防の検査があるのですが、連絡が取れなかったので心配しております」といったように、不審に思われないような理由を伝えて、電話を代わってもらいましょう。

ただし、当然ですが無職になっている場合は給与の差し押さえはできません。また、入居者が転職後、大家さんに転職先の情報を申告していなかった場合は、調べるのは困難です。

勤務先がわからない場合は、訴訟で判決が出た後、強制執行前におこなわれる「財産開示」でなければ調べることはできません。

【財産開示とは】

財産開示とは、債務者が持つ財産の情報を開示させる制度です。

財産開示手続は、民事訴訟の判決が出たのちに、債権者が裁判所に申立てを行います。債務者を裁判所に呼び出し、債務者本人から債務者自身の財産について陳述させ、差押えに必要な情報を取得します。

債務者が裁判所からの呼び出しに対して正当な理由なしに出頭しなかった場合や、財産に関してうその陳述をした場合は、「6カ月以下の懲役または50万円以下の罰金」という刑事罰が科されることがあります。

しかし、財産開示で差し押さえ可能な財産が見つかるかどうかは、調べてみないとわかりません。本当に財産がなく、滞納された家賃の回収ができない可能性があることを踏まえて、分割で支払うことを合意させるなどの和解も視野に進めていく必要があります

2-4-2. 差し押さえできる不動産の有無|住所から持ち家かどうかを確認する

家賃を滞納している入居者が不動産を所持している可能性は低いですが、連帯保証人の場合は不動産を所持している可能性があります。

連帯保証人が不動産を所持している場合は、滞納している家賃の支払いを拒否されても不動産を差し押さえることが可能です。差し押さえた物件を競売にかけ、家賃滞納分に充てるなどの検討ができるため、必ず確認しましょう。

手順

  1. 賃貸契約時に記載いただいた連帯保証人の自宅住所を確認
  2. 法務局または登記情報提供サービスに申し込み、物件の所有者を確認

物件の住所がわかれば、法務局で登記事項証明書を取る方法のほか、インターネットで 一般財団法人民事法務協会が提供している「登記情報提供サービス」から申し込み、所有者を確認することが可能です。

出典: 一般財団法人民事法務協会「登記情報提供サービス」

登記情報を見て、不動産の所有権者が保証人の名前になっているかを確認しましょう。

なお、登記事項証明書の取得にかかる費用は以下の通りです。

登記事項証明書書面請求600円
オンライン請求・送付500円
オンライン請求・窓口交付480円

【条件に当てはまらない場合は未納家賃の回収は難しい可能性が高い】

残念ながら、上記の条件に当てはまらない場合は、未納家賃の回収は難しい可能性が高いでしょう。

訴訟を起こして勝訴し強制執行が決定された場合は、より詳しい財産調査がおこなわれるため、自分では調査しきれなかった財産が見つかる可能性はゼロではありません。しかし、それでも財産がなく、未納家賃の支払いができない可能性が非常に高いです。

そのような場合は、話し合いにて家賃の分割支払いの合意を取り付けるか、家賃の回収は諦めて、次の入居者募集のために賃貸契約解除などの手続きに移行しましょう。

 

2-5. STEP5|未納家賃の請求と賃貸契約解除の民事訴訟を起こす

ここまでの手順で家賃が支払われず、財産調査の結果回収見込みが立てられた場合は、民事訴訟を起こします。連帯保証人がいるにも関わらず、こちらも支払ってくれない場合は、1つの訴訟で入居者と連帯保証人の2人に対して同時に未納家賃の請求することが可能です。

また、未納家賃の請求と同時に、入居者に対しては、賃貸契約解除の訴訟も起こしましょう。

未納の金額が140万円以下の場合は、物件の所在地を管轄する「簡易裁判所」に訴状を提出します。裁判所経由で入居者に訴状が発送され、受け取った時点で訴訟開始となります。

【簡易裁判の一般的な流れ】

訴状を提出してから判決が下るまで、およそ3~4か月程度です。入居者に対して支払いを命じる判決が出たら、財産開示手続きが行えるようになります。

財産開示では、裁判所の許可を得た申立人(大家さん)が、家賃滞納者に聞き取りをおこなう財産調査が可能になるため、事前に勤務先や銀行口座がわからなかった場合でも、給料や口座を差し押さえできるようになります。

裁判所に対して債権差し押さえの申立てを行い受理されれば、以下のような差し押さえ先に対して債権差押命令が発送されます。

  • 入居者
  • 入居者が利用している銀行
  • 入居者の勤め先

その後、給料や口座などの差し押さえが行われます。

【債権執行にかかる費用】

債権執行をおこなう場合、以下のような費用がかかります。

  • 申立手数料:4,000円(収入印紙)
  • 切手代:3,000~5,000円
  • 弁護士費用:5万円~

3. 家賃滞納者が引っ越した場合の原状回復の考え方

家賃滞納者が勝手に引っ越してしまうという特殊なケースの場合、原状回復も通常通りにはできません。そのため、以下の2つの考え方を理解しておきましょう。

  • 原状回復は賃貸契約を解除してからおこなう
  • 敷金を原状回復費用に充てて残った分は未納家賃と相殺できる

これらを理解しておかないと、大家さんが逆に訴えられてしまったり、未納家賃の回収に時間がかかってしまったりする可能性があります。

では、原状回復の考え方について、詳しく見てゆきましょう。

3-1. 原状回復は賃貸契約を解除してからおこなう

原状回復の前に、必ず賃貸契約を解除しておきましょう。賃貸契約を結んでいる限り入居者に権利が残っている状態であるため、物件内に立ち入ると不法侵入になってしまうからです。

万が一、引っ越してしまった入居者が戻ってきた場合、賃貸契約の解除前に部屋へと立ち入られたことに対する損害賠償を請求されてしまう可能性もあります。

そのため、必ず賃貸契約を解除してから、原状回復を行いましょう。

3-2. 敷金を原状回復費用に充てて残った分は未納家賃と相殺できる

原状回復を行う際に、契約時に預かっている敷金を清算します。その際に、敷金が残ることもあるでしょう。

通常であれば、敷金は元入居者へと変換されますが、家賃を滞納している場合は未納家賃と相殺できます。そうすることで、元入居者が支払わなくてはならない未納分を減らせるため、家賃を回収できる可能性が高まります。

【原状回復費用が敷金では足りなかった場合】

敷金0円の物件だったり、預かっている敷金では足りなかったりするケースもあります。その場合は、元入居者や保証人に不足分の原状回復費用を請求できます

支払いに応じてもらえなければ、未納家賃の請求と同様に督促をおこない、それでも払われなければ調停や訴訟を起こさなくてはなりません。


4. 家賃を滞納したまま引っ越されるリスクへの備え方

ここまで解説したように、家賃滞納者に無断で引っ越しされてしまうと、非常に手間と時間がかかります。そのため、このようなリスクを減らし、同じことが起こっても対処しやすいように備えておくことが大切です。

家賃滞納者が勝手に引っ越してしまうリスクには、以下のように備えるのがおすすめです。

  • 支払い能力のある連帯保証人をつける
  • 保証会社の利用を必須にする
  • 入居審査を厳しくする
  • 家賃保証がある管理会社を利用する

では、これらの備え方について詳しく解説します。

4-1. 支払い能力のある連帯保証人をつける

賃貸契約時に連帯保証人をつけておくと、未納の家賃を入居者に代わって支払ってもらえます。万が一連帯保証人が支払いを拒否しても、入居者と同時に支払いを求める訴訟を起こせるため、家賃を回収できる可能性が高まります。

ただし、連帯保証人は誰でもいいというわけではありません。

以下のポイントを満たす支払い能力の高い連帯保証人を付けてもらいましょう。

2親等以内の親族である身内の滞納であれば責任をもって対応してくれる可能性が高いため
長期的に安定した収入が見込める

 
・すぐに定年退職になる高齢者では、滞納時に支払い能力がない可能性があるため
・安定した収入がなければ滞納分を支払えない可能性があるため

4-2. 保証会社の利用を必須にする

支払い能力のある連帯保証人をつけることも家賃滞納におけるリスク対策となりますが、これまで説明してきたように、必ずしも弁済してくれるとは限りません。

連帯保証人もなんらかの事情で経済的に支払い能力がなくなったり、事故や病気などで死亡する可能性もゼロではないためです。
また、入居希望者の中にも「連帯保証人になってくれる親族がいない」「周囲の人に連帯保証人になってくれと頼みづらい」などなんらかの事情で連帯保証人を立てられない人も増えています。

そこで近年は連帯保証人の代わりに、家賃保証会社を利用するケースが一般的になっています。

家賃保証会社は入居者と保証会社が契約を結び、入居者が委託費用(初年度は家賃の50%~100%、更新料1万円が目安)を支払うことになりますが、現在では連帯保証人を立てるか家賃保証会社を利用するかのどちらかを入居条件としている物件がほとんどのため、保証会社の利用を必須にしたからといって空室率が高まるといったことはないでしょう。

4-3. 入居審査を厳しくする

入居者の質が良くないと感じる場合は、入居審査を厳しくするのもひとつの手です。収入の安定性や人柄などをしっかりと確認し、家賃未納の発生リスクを抑えましょう。

基本となる審査項目は以下のとおりです。

【入居審査の基本となる項目】

チェック項目内容
収入に問題がないか
  • 入居希望者本人が働いており、安定した収入がある
  • 現在勤めている会社にある程度の期間勤務している(勤務年数が短いとやめてしまうリスクがある)
  • 家賃額が月収の3分の1以内、または年収の36分の1以内に収まる
連帯保証人はだれか
  • 連帯保証人に安定した十分な収入がある
  • 2親等以内の親族
人柄に問題はないか
  • トラブルや家賃滞納などがなさそうな人柄・見た目をしている

勤続年数や、収入に対する家賃額とのバランスをしっかりと確認しましょう。ただし、厳しくしすぎると入居者が見つからなくなる可能性があるため、注意してください。

ただし、空室の状況が少し長引くよりも、家賃を滞納されたあげく勝手に引っ越されてしまうことの方が損失は大きくなる可能性があることを理解しておきましょう。

4-4. 家賃保証がある管理会社を利用する

家賃保証など、保証が充実している管理会社を利用するという手もあります。
賃貸経営には家賃滞納だけでなく、空室リスクや入居者トラブルなどさまざまなリスクが発生する可能性があります。

連帯保証人を付けても、その人に財産がなければ回収できない可能性があり、入居審査だけでは家賃滞納のリスクをゼロにはできません。

つまり、上記2つの対策はしておいた方がいいものの、これだけでは不完全だということです。

保証が充実している管理会社に管理を任せた場合、以下のような保証を受けられることがあります。

  • 滞納された家賃の保証
  • 訴訟にかかる費用の保証
  • 原状回復にかかる費用の保証

このような保証があれば、家賃を滞納された上に引っ越されてしまっても、家賃は毎月振り込まれ、訴訟で余計な費用をかけずに済むため、損害を最小限に抑えられます

さまざまなリスクに備えるためにも、管理会社の利用を検討してみてはいかがでしょうか。

私たちルーム・スタイルでは、先ほど紹介したすべての保証を含む、「6つの安心保証」が標準完備された管理プランを提供しています。

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賃貸経営中は、いつどんなトラブルが発生するか予想できません。だからこそ、予期せぬリスクが起こっても、オーナー様を守るためにサポートいたします。

家賃滞納や賃貸契約を解除せずに引っ越されてしまうと、労力だけでなく多大な費用がかかります。そのため、あらかじめ保証によって備えておくことが大切です。

家賃滞納を含むさまざまなリスクに関する保証をご検討中の方は、ぜひ一度ルーム・スタイルにご相談ください。


5. まとめ

この記事では、家賃を滞納したまま引っ越されてしまった場合の、家賃回収方法について解説してきました。最後にまとめをご覧ください。

家賃滞納者が引っ越した場合に家賃回収できる可能性が高い2つの条件

  • 【条件1】保証人か連帯保証人がいる場合
  • 【条件2】財産調査の結果、回収できる見込みがあると判断できた場合

【引っ越した家賃滞納者から家賃を回収する5つのステップ】

  1. 引っ越ししてしまった入居者の現住所を調べる
  2. 家賃の督促と契約解除の通知を行う
  3. 連帯保証人に連絡する
  4. 財産調査を行う
  5. 民事訴訟を起こす

【家賃滞納者が引っ越した場合の原状回復の考え方】

  • 原状回復は賃貸契約を解除してからおこなう
  • 敷金を原状回復費用に充てて残った分は未納家賃と相殺できる

家賃滞納者が引っ越してしまうリスクに備える場合は、連帯保証人を付けたり、入居審査を厳しくしたりする方法がありますが、これでは完全に備えられません。

リスクに備え、万が一の際に損害を最小限に抑えたいのであれば、保証が充実した管理会社の利用もおすすめです。

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