抵当に入っている土地は売却できる?買主・売主向け徹底ガイド

土地を売却する際に、その土地に「抵当権」が設定されていると、自由に売ることができるのか不安に思う方も多いでしょう。抵当権とは、金融機関などの債権者が貸したお金を回収するために、万が一の場合に備えて設定する権利です。そのため、抵当権付きの土地はそのままでは売却が難しい場合が多く、原則として抵当権を抹消する必要があります。

本記事では、抵当権付きの土地を売却する方法や売買時の注意点、抵当権抹消の手続き、またその費用について詳しく解説します。売主・買主の双方に役立つ情報を網羅した内容になっていますので、ぜひ参考にしてみてください。

この記事で分かること
  • 抵当権付きの土地は、そのままでは売却できない
  • 抵当権の抹消には「完済」か「任意売却」が必要
  • 抹消登記の手続きとかかる費用とは
  • 売買時は債権者の同意とスケジュール管理がポイント
  • 相続時はローン負担もあり、放棄も選択肢にある
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抵当権付きの土地とは?

まずは抵当権に関する理解を深めてもらうため、その概要について詳しくお伝えします。

抵当権と混同されがちな「根抵当権」に関しても解説するので、併せて理解しておきましょう。

抵当権とは?

抵当権とは、金融機関や個人貸主、企業などの債権者が融資を行う際に、借主(個人や法人)が返済できなくなった場合に備えて、不動産を担保として確保する権利のことです。特に住宅ローンや事業用ローンなどで多く利用され、土地や建物に抵当権が設定されます。

万が一、借主がローンを返済できなくなると、債権者は抵当権を行使し、担保となっている不動産を競売にかけて貸付金を回収することができます。

つまり、抵当権は債権者にとって貸したお金を確実に回収するための手段であり、債務者にとっては、信用を得て資金調達を行うための重要な仕組みです。

抵当権の有無は法務局の登記簿謄本で確認

土地や建物に抵当権が設定されているかどうかは、第三者でも法務局で取得できる「登記簿謄本」で確認することができます。登記簿謄本には、その土地や建物の所有者情報だけでなく、抵当権の有無や債権者・借入金額・抵当権の設定日などが記載されています。

登記簿謄本は、従来は最寄りの法務局で直接取得するか郵送で取り寄せる方法が一般的でしたが、現在は「登記ねっと」を利用してオンラインで取得することも可能です。

【参考:登記ねっと | 登記・供託オンライン申請システム 登記ねっと

なぜ土地に抵当権が設定されるのか?

土地に抵当権が設定される主な理由は、金融機関などからの融資を受ける際に担保として提供するためです。一般的に、住宅ローンや不動産投資ローン、事業用の融資などで土地や建物に抵当権が設定されます。

たとえば、マイホームを購入する際に住宅ローンを組む場合、銀行は融資の安全性を確保するために、購入する土地や建物に抵当権を設定します。これにより、万が一借主の収入がなくなってしまい返済不能になった場合でも、銀行はその不動産を競売にかけて貸付金を回収できるわけです。また、企業が事業資金を借りる際にも、所有する不動産を担保にして融資を受けるケースがよく見られます。

一方で、土地を購入する際にすでに抵当権が設定されている場合は、売主が過去に融資を受けた際の担保として提供している可能性があります。この場合、売却時に抵当権を抹消する必要があるため、事前にどのような手続きが必要かを把握しておくことが大切です。

根抵当権とは?通常の抵当権との違い

根抵当権とは、ローンなどの特定の債務に対してではなく、一定の範囲内で繰り返し借入や返済を行うことを前提として設定される抵当権です。主に企業が銀行から事業資金を借りる際に利用されることが多く、最大の借入限度額を設定し、その範囲内で何度でも借入や返済を行うことができます。

通常の抵当権は、特定の借入に対して設定されるため、ローンを完済すれば自動的に役割を終えます。一方、根抵当権は極度額の範囲内で継続的に融資を受けられるため、ローンを一度完済しても、引き続き新たな借入が可能です。そのため、企業が運転資金の調達手段として活用するケースが多くなっています。

そのため、ローンを完済しても自動的に消えるわけではなく、根抵当権においても正式な抹消手続きを行う必要があります。根抵当権を抹消する際は、通常の抵当権よりも手続きが複雑になることがありますので、売却を検討している場合は事前に金融機関と相談し、どのような対応が必要かを確認することが大切です。


抵当権付きの土地売却できるのか?

抵当権が設定された土地はそのままでは売りにくいため、基本的に売却するには「抵当権抹消」が必要です。そのためには、まずローンを完済することが前提になります。

ローンを完済する方法として、下記の3つのケースが考えられます。自身の状況に合わせて、最適な方法を選びましょう。

1.貯蓄資金からローンを完済する方法

抵当権を抹消するための最もシンプルな方法は、自己資金を使ってローンを完済することです。住宅ローンや事業資金の借入をすべて返済すれば、金融機関が抵当権を解除するため、自由に土地を売却できるようになります。

この方法のメリットは、売却の手続きをスムーズに進められる点です。ローンが残っていると、売買契約の際に債権者の同意が必要になることが多いですが、完済してしまえばそのような手続きは不要になります。また、買主にとっても抵当権が抹消された状態の土地は安心して購入できるため、交渉がスムーズに進みやすくなります。

ただし、まとまった資金が必要になるため、貯蓄だけで完済するのが難しい場合は、親族からの資金援助や、低金利の借入を利用するなどの対策が必要です。

2.売却代金でローンを完済する方法

自己資金が不足している場合は、土地の売却代金を利用してローンを完済する方法が一般的です。この場合、売却手続きとローン返済を同時に進める必要があるため、金融機関と事前に売買契約後のやりとりについて日程調整をしましょう。

具体的には、土地の売買契約を締結し、物件代金が買主から支払われる決済のタイミングと同時に、その資金を使ってローンを一括返済します。返済が完了すると、金融機関は抵当権の抹消に必要な書類を発行し、登記手続きを行うことで抵当権が解除されます。

この方法のメリットは、手持ちの資金がなくても売却が可能になる点です。ただし、売却価格がローン残高を下回る場合は、不足分を自己資金で補う必要があるため、事前にローン残高と売却価格以外にかかる諸経費までしっかり確認しておくことが大切です。

3.任意売却を活用する方法

ローンの残債が売却価格を上回り、自己資金でも不足分を補えない場合は、「任意売却」という方法があります。任意売却とは、金融機関の同意を得て、市場価格で土地を売却し、売却代金をできる限りローン返済に充てる手続きのことです。

通常、ローンを返済できないと、土地は競売にかけられますが、競売では市場価格よりも安く売却されることが多く、債務者にとって不利です。一方、任意売却では市場価格に近い金額で売却できるため、競売よりも有利な条件で手放すことができます。また、売主自身が買主を選ぶことができるため、より良い条件で売却できる可能性があります。

任意売却を行うには、金融機関との交渉が必要になるため、不動産会社や任意売却の専門家に相談するのが一般的です。債権者との合意を得られれば、ローン残債の一部を分割払いにするなどの交渉も可能になるため、返済負担を軽減できる場合もあります。

ただし、任意売却を行うとローンの長期延滞が信用情報に登録されるため、個人信用情報(いわゆるブラックリスト)に影響を与えます。 その結果、一定期間は新たなローンやクレジットカードの審査が通りにくくなる点に注意が必要です。

【関連記事:競売と任意売却の違いを11個解説!それぞれの定義、メリット・デメリットとは?


抵当権抹消にかかる費用と手続き

この章では、抵当権抹消の手続き方法や必要書類、費用相場について分かりやすく解説します。

抵当権抹消登記の流れと期間

抵当権抹消登記の流れは、以下のとおりです。

抵当権抹消手続き4STEP

  • ローン完済
  • 金融機関から抵当権抹消書類を受領
  • 法務局で登記申請
  • 登記完了

ローン完済後に金融機関から必要書類が発行され、それを持参して法務局へ申請します。手続き自体は1日で完了しますが、登記の反映には1〜2週間かかるのが一般的です。

なお、自分で申請することも可能ですが、手続きが不安な場合は司法書士に代理で依頼することもでき、スムーズに抹消登記を完了させることができます。

抹消に必要な書類

抵当権抹消登記には、下記の書類が必要です。

  • 金融機関から受け取る「抵当権解除証書」や「登記原因証明情報」
  • 不動産の登記簿謄本
  • 本人確認書類(運転免許証など)
  • 委任状(代理申請の場合)

また、不動産が共同名義の場合、名義人全員の同意と必要書類(各名義人の本人確認書類、委任状など)が揃っていないと申請ができません。 そのため、事前に共同名義人と確認を取り、全員が必要な書類を準備できるよう手続きを進めましょう。

書類の不備があると手続きが遅れるため、金融機関からの書類を受け取る際は内容をしっかり確認し、必要に応じて共同名義人とも連携して準備を進めることが大切です。

抹消手続きの費用相場

抵当権抹消登記の費用は、大きく分けて「登録免許税」と「司法書士報酬」の2つです。

登録免許税は不動産1筆につき1,000円程度で、土地と建物がある場合は2,000円です。

司法書士に依頼すると、報酬として別途10,000〜30,000円ほどかかりますが、手続きを確実に進めたい場合は専門家のサポートを検討するとよいでしょう。


抵当権付きの土地売買でのトラブル事例と注意点

抵当権が設定された土地の売買は、適切な手続きを踏まないとトラブルにつながる可能性があります。

この章では、よくあるトラブル例と、その対策・注意点をお伝えします。あらかじめ把握しておくことで、リスクを最小限に抑え、スムーズな取引を進めていきましょう。

債権者の合意を得ていないケース

抵当権が設定された土地の売却では、事前の調整が不十分だと手続きが滞る原因になります。特に、ローンの残債が売却価格を上回る場合、金融機関が抵当権の抹消に慎重になり、売却が難航することがあります。

また、売主が事前に条件を確認せずに売買契約を進めた結果、金融機関からの承認が得られず契約が白紙になるケースもあります。このような事態になると、買主との信頼関係が損なわれ、契約不履行をめぐるトラブルに発展しかねません。

スムーズな売却を実現するには、売却計画の初期段階で金融機関としっかり相談し、必要な手続きを明確にしておくことが重要です。

対策・注意ポイント

物件の売却を決めたら、まずは債権者に相談し、ローンの完済方法や抵当権抹消の条件を確認しましょう。

特に、売却価格がローン残債を下回る場合は、不足分の精算方法について債権者と協議する必要があります。自己資金で補填できない場合は、返済計画の見直しや分割払いの交渉を進めることも検討してください。債権者の同意なしに契約を進めると、最悪の場合、契約不履行となる可能性があるため、慎重に対応しましょう。

抹消登記の期間を考慮せずに取引を進めるケース

抵当権の抹消登記には一定の時間がかかるため、これを考慮せずに売買契約を進めると、引き渡しの遅延につながる可能性があります。抹消登記の完了まで通常は1〜2週間程度かかりますが、書類の不備や法務局の混雑状況によってはさらに時間がかかることも想定されます。

買主が融資を受ける場合、金融機関のローン承認には抵当権が抹消されていることが条件とされるケースが多いため、抹消登記が未完了ではローン契約が進まず、取引全体に影響を及ぼす可能性が高いです。

引き渡しの遅延が発生すると、損害賠償請求の対象となることがあり、買主から違約金を求められるケースもあります。特に、住宅ローンの融資実行日が決まっている場合、そのスケジュールに間に合わなければ契約解除や追加費用の負担につながる可能性があるため、注意が必要です。

対策・注意ポイント

物件の売却を決めたら、早めに金融機関と連絡を取り、必要書類を準備しましょう。また、抹消登記のスケジュールを事前に確認し、売買契約の引き渡し日と調整することが大切です。

司法書士に依頼することで、スムーズに手続きを進められる場合もあるため、不安がある場合は専門家に相談するとよいでしょう。

引っ越し先を事前に決めていないケース

売却を進める際、引っ越し先を決めずに手続きを進めてしまうと、引き渡し期限までに退去できないという問題が発生することがあります。

特に、抵当権付きの不動産は抹消手続きが必要なため、通常の売買よりも時間がかかる可能性があります。新居の契約が間に合わず、一時的に仮住まいを探すことになるかもしれません。

対策・注意ポイント

売却のスケジュールを決める際は、引っ越し先を早めに確保し、余裕を持った計画を立てることが大切です。

賃貸住宅へ移る場合は、入居可能な時期を確認し、売買契約の引き渡し日と調整しましょう。また、引っ越し費用や仮住まいの費用も考慮し、スムーズに移動できるよう準備しておくと安心です。

専門家に相談しないで進めるケース

抵当権付きの土地の売却は、通常の売却と比べると手続きが少し複雑です。法律や金融機関との交渉が関係するため、専門家に相談せずに進めるとトラブルが発生しやすくなります。

たとえば、抹消登記の不備やローン残債における処理のミスなどが原因で、売却が成立しないケースもあるので注意してください。また、金融機関との交渉がスムーズに進まず、買主がローン契約を結べないまま取引が破談するリスクも考えられます。

対策・注意ポイント

インターネット上には売却手続きに関する情報が多く、自分で進められそうに感じるかもしれません。

しかし、金融機関ごとに異なるルールがあるほか、オンライン上の情報と実際の手続きが必ずしも一致するとは限りません。そのため、売却を進める前に、不動産会社や司法書士、金融機関の担当者に相談し、具体的な手続きの流れを確認することが重要です。

特に、ローン残債がある場合や任意売却を検討している場合は、経験豊富な専門家のサポートを受けることでスムーズに進めることができます。費用はかかりますが、後々のトラブルを避けるためにも、プロのアドバイスを活用しましょう。


抵当権付きの土地を相続することになったら?

最後に、抵当権付きの土地を相続することになった場合のポイント・注意点を解説します。場合によっては相続を放棄するのも1つの選択肢となるので、自身の状況に合わせてよく検討するようにしてください。

相続人全員で話し合いが必要

抵当権付きの土地を相続する場合、相続人全員で話し合いを行い、どのように扱うか決める必要があります。

たとえば、土地をそのまま相続するのか、売却するのか、または相続放棄するのかを検討しなければなりません。特に、土地にローン残債がある場合、相続人がその債務を引き継ぐことになるため、慎重な判断が求められます。

相続人同士で意見が分かれることもあるため、事前に話し合いの場を設け、スムーズに合意形成できるよう準備しておくことが重要です。

抵当権付きの土地でも相続税は課される

抵当権が設定されている土地でも、相続税の対象となります。相続税の計算では、土地の評価額からローンの残債を差し引いた額が課税対象となるため、抵当権があるからといって相続税が免除されるわけではありません。

また、相続税の納税義務は相続発生から10カ月以内にあるため、早めに納税資金を準備する必要があります。土地を売却して相続税を支払う場合は、売却に時間がかかることを考慮し、計画的に進めることが大切です。

相続放棄という手も考える

抵当権付きの土地を相続すると、ローン残債も引き継ぐことになります。そのため、返済が困難な場合は、相続放棄を検討するのも一つの選択肢です。

ただし、相続放棄をすると、土地と併せて他の財産もすべて相続できなくなるため、慎重な判断が必要です。

また、相続放棄の手続きは、相続の開始を知った日から3カ月以内に家庭裁判所へ申請しなければならないため、早めに決断し、必要な書類を準備しなくてはなりません。

相続放棄手続きの完了まではローン返済が必要

相続放棄をする場合でも、手続きが完了するまでは、相続人が一時的にローンの支払い義務を負う可能性があります。特に、金融機関が相続放棄を正式に認めるまでの間は、督促が続くこともあるため注意が必要です。

支払いを無視すると、延滞扱いとなり、信用情報に影響を与えることもあります。そのため、相続放棄を検討する際は、弁護士や司法書士に相談しながら進めることをおすすめします。

相続放棄が認められれば、以後の支払い義務はなくなります。


まとめ

抵当権付きの土地は、そのままでは自由に売却できず、ローンの完済や抵当権抹消の手続きが必要になります。

売却方法としては、自己資金でローンを完済する・売却代金で精算する・任意売却を活用するなどの選択肢があります。抵当権を抹消するには、法務局での登記手続きが必要で、費用や期間を考慮して計画的に進めることが大切です。

また、売買時には債権者の同意や抹消登記のスケジュール、引っ越しの準備など、やるべきことが多く発生します。専門家に相談せずに進めると、予期せぬトラブルに発展することもあるため、不動産会社や司法書士のサポートを活用しましょう。

さらに、相続によって抵当権付きの土地を取得する場合、ローンの負担も引き継ぐため、相続人全員での協議が不可欠です。状況に応じた最適な対応を選び、慎重に手続きを進めましょう。

 

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