不動産投資最大のリスク【空室リスク】とは?原因と対策を簡単解説

「これから不動産投資を始める。空室リスクについて改めて知っておきたい」

不動産投資や賃貸物件経営をするにあたって、「空室リスク」という言葉を、一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。

空室リスクとは、所有する物件に入居者がおらず、家賃収入が0になるリスクのことです。

不動産投資の中でも、空室リスクは最大のリスクと言われています。

というのも、空室リスクは、賃貸物件の経営者の収入(キャッシュフロー)に直結するからです。

いつまでも空室が続けば、経済状態が悪化し、赤字経営になる可能性もあるでしょう。
さらに、ローンを組んでいる場合は、預貯金を崩しながら返済することにもなりかねません。

リスクを避けるには、空室リスクについて理解を深めることが重要です。
リスクを知り、あらかじめ対策を立てておくことは、結果的に入居者の継続率にも繋がるでしょう。

そこで、この記事では、空室リスクについて、次のことを解説します。

この記事のポイント
  • 不動産投資の最大のリスク「空室リスク」とは?
  • 空室が起きたときの損失シミュレーションを解説
  • 空室が発生しる4つの原因を説明
  • 空室リスクを発生させないための事前対策3つを解説

この記事を読めば、空室リスクについての理解が深まり、事前にどのような対策を取ればよいか分かります。

ぜひ、安定的で、持続可能な不動産投資を行うための道標として本記事をご活用ください。

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1.空室リスクとは

不動産投資や賃貸物件経営には、常に様々なリスクが伴いますが、中でも「空室リスク」は最大のリスクといわれています。

空室は、賃貸物件の経営者の収入(キャッシュフロー)に直結するからです。
いくら「全室満室ならこのくらいの収入があるだろう」と試算しても、リスクを考慮しないと、実際の運用とかけ離れたものになってしまうでしょう。

安定的で、持続可能な不動産収入を得るには、賃貸物件で起こるであろうリスクを把握し、対策を取る必要があるのです。
この章では、不動産経営最大のリスクである「空室リスク」について、詳しく見ていきましょう。

1-1.空室リスクとは「所有する物件に入居者がおらず、家賃収入が0になるリスク」

空室リスクとは、所有する物件に入居者がおらず、家賃収入が0になるリスクのことです。

当然ですが、空室が多くなるほど、家賃収入が少なくなります。
それでも、下記のような経費は、必ず支払わなければなりません。

▼不動産投資でかかる主な費用

  • ローン
  • 固定資産税
  • 各種保険
  • 入居時の仲介手数料
  • 退去時のクリーニング代金
  • 突発的な修繕費用
  • 雑費 など

そのため、空室が多くなるほど、支出の割合が大きくなり、経営が破綻してしまう恐れもあるのです。
「空室リスク」を未然に防ぐには、次章で説明する賃貸物件の「空室率」を確認しておきましょう。

1-2.空室率の1つの目安は18.5%

空室率とは、所有する不動産の部屋数に対し、どのくらい空室があるかの割合を示す数値です。
「18.5%」が1つの目安となります。

総務省による平成30年度の住宅・土地統計調査の集計結果による、近年の賃貸用の空き家率(空室率)は次のようになっています。

参考:国土交通省「平成30年住宅・土地統計調査の集計結果(住宅及び世帯に関する基本集計)の概要

この空室率は、全国の空き家数を賃貸住宅の総数で割ったものです。
近年では、約18.5%の割合で推移していることが分かるでしょう。

なお、この数値を参考として、投資家や金融機関が不動産に投資をする場合に「空室率20%」を基準とし、収益還元評価を算出する場合があります。 

つまり、20%を超えると「リスクがある」と判断されるということです。
たとえば、10部屋のうち2部屋が空室である状態が続いている場合、「空室リスク」があるといえるでしょう。

1-3.補足:自分の物件の空室率計算方法

空室率を知っておくと、現状のリスクをいち早く把握し、すぐに対処できるようになるでしょう。

自分の物件の空室率計算方法は、下記の式で算出できます。

空室率 = 空室の戸数 ÷ 総戸数 ☓ 100

たとえば、部屋数20のアパートで、空室が6戸ある場合の計算は次のようになります。

4 ÷ 20 ☓ 100 = 20

つまり、この物件の空室率は20%となります。

空室率は、入居する人や退去する人がいる限り、常に変動しますよね。
定期的に空室率を把握し、リスクに備えましょう。


2.空室リスクは不動産投資の中でも最大のリスク!

不動産投資は、株やFXのように、一気に大きな利益があるわけではありません。 

しかし、インフレにも強く、急激な価値の低下が見られないため、安全性の高い投資といえるでしょう。
コツコツと着実に利益を出すことが可能で、非常に有効な資産運用の手法です。

それほど危険性の高くない、不動産投資最大のリスクが、「空室リスク」です。
 1章でもお伝えしたように、空室があると家賃収入が入らないだけではなく、次のような2つの重大なリスクを引き起こします。

それぞれ解説していきましょう。

2-1.キャッシュフローの悪化

空室が長く続くと、キャッシュフローが悪化します。

不動産投資でいうキャッシュフローとは、一定期間において、「家賃収入からローンの返済や経費などを指し引いたあとの、手元に残る現金の流れ」ということになります。

空室があることで、本来入るべき家賃が入らず、キャッシュフローが悪化するのです。
例として賃貸物件を20部屋所有し、家賃設定を8万円と仮定して、年間の収益を試算してみましょう。

▼20部屋:家賃8万円の年間家賃収入の例

空室率家賃収入差額(損失)
空室率0%(20戸満室)160万円
空室率10%(18戸入室)144万円‐16万円
空室率20%(16戸入室)128万円‐32万円
空室率30%(14戸入室)112万円‐48万円

上記のように、20戸の物件がある場合、10%の空室率で年間16万円、20%の場合、32万円の家賃の機会損失となります。

さらに、不動産投資には、ローンや通常の経費以外にも、次のような費用がかかります。

▼不動産投資でかかる主な費用(ローン以外、通常の経費以を省く)

  • 固定資産税
  • 各種保険
  • 入居時の仲介手数料
  • 退去時のクリーニング代金
  • 突発的な修繕費用 など

キャッシュフローが悪化しても、支払いの額は変わりません。

空室が多く、その期間が長くなるほど、損益分岐点(支出が収入を上回る)を超える可能性が高くなります。
場合によっては経営者自身の預貯金から支払いをすることにもなりかねません。

このように、「空室率20%」を目安にしてしまうと、収益性は決して高くはないといえるでしょう。

2-2.資産価値の低下

空室が続くと、不動産の資産としての価値が低下します。 

継続的に広告を出すようになるため、「不人気物件」と認識されてしまうからです。

常に「入居者募集」が出ている物件は、
「この物件にはずっと人が入っていないな、なにか問題があるに違いない…」
など、ネガティブなイメージをもたれやすくなるでしょう。

さらに、家賃収入が入らないことで、修繕費用や管理費用の削減を余儀なくされることもあります。 
適切な修繕や補修ができないことで、建物の劣化が始まり、さらに建物の価値が低下することに繋がりかねません。

空室が続くほど、資産価値の低下の危険性が増えるといえるでしょう。


3.実際に空室が起きたときの損失リスクシミュレーション

返済額や借入金の額によって、数値の差はありますが、一般的に空室率の増減は、年間の収益に大きく影響します。

実際に、空室が起きた時の損失シミュレーションを行ってみましょう。

※ここでの試算は不動産取得税や損害保険料、また、修繕費などを考慮しないものとします。

〈賃貸物件の返済シミュレーションの例〉

物件価格:2,000万円(頭金:500万円)
借入額・借入条件:1,500万円・金利2.5% 
借入期間:30年ローン返済額71,000円

賃料収入:月額90,000円
修繕費用積立金:月額5,000円
建物管理費:月額5,000円
年間収入:24万8,700円

※分かりやすく示すため、数値は概算です。

参考:keisan「不動産投資シミュレーション

この条件で、空室率から、リスクをシミュレーションしてみましょう。

〈年間の損失リスクシミュレーション〉

空室率(稼働率)年間収益
稼働率100%24万8,700円
空室率8.3%
※11ヶ月の稼働として計算
15万円8,700円
空室率16.6%
※10ヶ月の稼働として計算
6万円8,700円
空室率25%
※9ヶ月の稼働として計算
−2万1,300円

上記の例では、空室率16.6%でも多少の収益があるように見えますが、実際には、固定資産税や保険、急な修繕費用などが必要となります。

これらを差し引くと、ほとんど手元に残らない可能性が高いので、常に空室リスクを考えておく必要があります。

なお、返済シミュレーションは、keisan「不動産投資シミュレーション」や三井住友トラスト・ローン&ファイナンス「住宅ローン・アパートローン&不動産担保ローンのご返済シミュレーション」などを使って試算することができます。


4.なぜ空室が発生するの?4つの原因

 これまでお伝えしてきたように、不動産投資において空室リスクはとても重大なリスクです。

とはいえ、とにかく対策を立てればいいというわけではありません。
なぜ空室が発生するのか、その原因を把握しておかないと、有効な対策を立てることができないためです。

一般的に空室が発生するのは、次のような4つの原因が考えられます。

それぞれ解説していきましょう。

4-1.近隣物件と比較して価格設定で劣っている

近隣の同じような物件と比較して、家賃が高い場合は選ばれにくくなります。

特に、次々と新しい物件が誕生している地域では、競合となる賃貸物件が多くなります。
新築の間は埋まっても、築年数が経つと魅力が無くなってしまうこともあるでしょう。

また最近では、入居希望者はインターネットで家賃を比較できるため、家賃が高すぎると、検索から外れてしまうこともあります。

そのため、常に周辺物件の家賃をリサーチし、家賃を合わせるなどの対策が必要でしょう。

4−2.近隣物件と比較して建物の魅力で負けている

近隣物件と比較して魅力がない場合、空室になりやすいといえます。

何も特徴のない賃貸物件は、「選ぶ理由」が無いためです。

無難な設計にしてしまった場合は、設備に付加価値をつけることで競合と差をつけることも可能です。
たとえば、最近では次のような設備をもつ賃貸物件が人気となっています。

▼人気の設備

  • インターネット無料
  • 宅配ボックス
  • TVモニターインターホン(録画機能付き)
  • エアコンやシーリングライト
  • 防犯カメラ
  • ペット可
  • シェアハウス可 など

また、外装を少し凝ってみたり、無難な白い壁紙をアクセントクロス(アクセントとしてカラーや柄の壁紙にすること)に変えたりするだけでも、入居希望者へのアピールになります。

空室対策について、さらに詳しく知りたい方は、「空室 対策」の記事を参考にしてください。

4-3.住人・近隣トラブルが絶えない

住人や近隣とのトラブルが絶えない場合は、空室が続く原因となります。

一度入居しても、すぐに退去されてしまうためです。
たとえば、次のようなトラブルがあると、退去されやすくなります。

▼退去されやすいトラブルの例

  • 激しい騒音がする部屋がある
  • 他の住人に対して嫌がらせのような行為を行う人がいる
  • 無許可でペットを飼っている人がいる
  • 玄関の外までゴミや荷物が出ている部屋がある
  • ゴミの出し方や共有部分の使い方などのルールを守らない人がいる
  • 住人や近隣にクレーマーがいる
  • 近隣の騒音が酷い など

このようなトラブルが原因で退去されてしまうと、最悪の場合、退去費用や迷惑代を請求されることにもなりかねません。
空室リスクだけではなく、余計な手間やコストがかかる場合もあるでしょう。

そのため、賃貸契約の際には「特約」を含め、トラブルを未然に防ぐことも大切です。

▼賃貸契約に記入するべき特約の一例

  • 原状復帰
  • 短期解約に関する特約
  • 騒音に関する特約
  • 住人・近隣とのトラブルに関する特約
  • ペット禁止の特約 など

4-4.近隣エリアの人口が減っている

物件自体に問題がなくても、近隣エリアの人口が減って借り手が少ないことも考えられます。

借り手の人口が減るケースとして考えられるのは次の通りです。

▼近隣エリアの人口が減る原因の一例

  • 街全体が高齢化して、新たな借り手がいない
  • 近隣の大きな工場などが閉鎖した
  • 近隣の大学や大会社などが移転した など

最初からこのようなエリアは極力避け、人口が増加しているような場所にすることで、空室リスクを抑えることができます。

ただし、次のような賃貸物件では、人口が減っているエリアでも入居者を集めることが可能です。

  • 高齢者向け賃貸物件
  • 外国人の受け入れ可能
  • ペットOK、音楽等OK(防音設備等が必要)
  • 事務所やカフェなど商業利用もOK など

5.空室リスクを発生させないために行うべき3つの対策

不動産投資の最大のリスクである「空室リスク」を発生させないために、あらかじめ対策を立てておきましょう。

それぞれ解説していきましょう。

5-1.有能な不動産管理会社に管理を依頼する

空室リスクを発生させないためには、有能な不動産管理会社に管理を依頼すると安心です。

単に物件を管理するだけではなく、オーナー目線でしっかりとサポートしてくれる管理会社を選びましょう。
専門家が適切に管理を行うことで、空室リスクを抑え、資産価値を高めることもできるからです。

年々変化する不動産や税金関連の法律・規制などの知識が豊富で、しっかりと共有してくれる管理会社だと、さらに安心でしょう。

一般的に、不動産管理会社は次のようなことを行ってくれます。

▼不動産管理会社が行ってくれること

  • 入居者募集
  • 賃貸借契約の締結・更新
  • 家賃の回収・滞納者への督促
  • 解約手続き・退去時の立会い
  • 法定点検
  • トラブル・クレーム処理
  • 物件の清掃
  • 室内クリーニング
  • リフォーム、リノベーションの提案、手配

不動産管理会社によって、上記のような一つ一つの業務で差が出ます。

中には、管理がずさんで二次クレームが発生したり、入居者が退去するなど、却って空室リスクが増えるケースもあります。
また、入居者を募集する力(客付け力)が弱い場合は、空室リスクが高まり、経営悪化に直結するでしょう。

不動産管理会社は、費用だけではなく、何を、どこまでしてくれるのかをしっかり見極めて、有能な業者を選択することをおすすめします。

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5-2.内見の際に魅力的に映るようにする

空室リスクを減らすには、入居希望者が内見に来た時に、いかに魅力的に映るかも重要です。

内見は、「入居するか・しないか」を、最終的に決定するポイントだからです。 
いつ内見に来られても、一番いい状態を見てもらえるように工夫しましょう。

たとえば、次のようなことが考えられます。

  • 部屋の電灯がつくようにしておく(夕方以降の対策)
  • エアコンが使えるようにしておく(暑さ、寒さ対策)
  • 共用部分・植木などを綺麗に保っておく

いつ内見に来ても、エアコンやシーリングライトが使えるように、通電しておくとよいでしょう。

また、次のような、不動産会社の営業マンが案内しやすくなる工夫も実践してくださいね。

  • 部屋の鍵をわざわざ取りに行かなくて済むよう、現地にキーボックスを設置する
  • 営業マンの車が停めやすいよう、駐車スペースを確保しておく

5-3.Googleマイビジネスに名称と写真、情報を登録する

Googleマイビジネスに、名称と写真、情報を登録しておきましょう。
無料で利用できるため、手軽に利用できます。

登録することで、賃貸物件の名称がGoogleの検索上位に入りやすくなるからです。

最近の入居希望者は、ポータルサイトで気になる物件を見つけた後、Googleで直接検索することが多くなっています。

賃貸物件の名称がGoogle検索に出てくるだけでも、建物の信頼度がアップします。
物件の写りの良い写真や、周辺情報などを入れることで、入居希望者に広くアピールできるでしょう。


6.まとめ

不動産投資における空室リスクについてお伝えしました。

空室リスクの危険性や、実際に空室リスクに陥る原因、対策などがお分かりになったのではないでしょうか。

最後に、この記事の振り返りをしてみましょう。

◯空室リスクとは

  • 空室リスクとは、所有する物件に入居者がおらず、家賃収入が0になるリスクのこと
  • 空室率の一つの目安は、18.5%

◯空室リスクが引き起こす2つの重大リスク

  • キャッシュフローの低下
  • 資産価値の低下

◯空室が発生する4つの原因

  • 近隣物件と比較して価格設定で劣っている
  • 近隣物件と比較して建物の魅力で負けている
  • 住人・近隣トラブルが絶えない
  • 近隣エリアの人口が減っている

◯空室リスクを発生させないために行うべき3つの対策

  • 有能な不動産管理会社に管理を依頼する
  • 内見の際に魅力的に映るようにする
  • Googleマイビジネスに名称と写真、情報を登録する

この記事を読んで、すぐに空室リスクをなくし、安定的で、持続可能な不動産投資を行うことを願っています。

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