定期借家のメリット・デメリットと向いているケース・不向きなケース

「定期借家契約のメリット・デメリットが知りたい!転勤が決まったけれど今は持ち家…売却はしたくないし、いつか戻るためには定期借家契約ってどうかな」 
「自分の状況に合っているならやりたいんだけど…何がいいのかわからないし、やるべきか判断のし方って?」

転勤や留学などで一時的に自宅を空ける人のなかには、契約期間がきっちり決まった定期借家契約を検討している方もいるかもしれません。

定期借家契約のメリット・デメリットは、以下です。

 

入居者が退去しない限り契約更新が続く普通借家契約とは異なり、定期借家契約は契約満了となると、必ず退去しなければなりません。

そのため、このようなメリット・デメリットが挙がるのです。

また賃貸オーナー側だけでなく、入居者側のメリット・デメリットを知っておくことも大切です。

なぜなら借主のメリット・デメリットは、貸主のメリット・デメリットへ結果的につながるからです。

借主が「定期借家契約って家賃が安くていいな!借りてみよう」といって入居してくれたら、賃貸オーナーにとっては空室が埋まり、メリットとなりますよね。

「再契約ができないかもしれないなら、入居は考えられないな」と入居者に思われてしまえば、賃貸オーナー側にとっては必要なときに退去してもらえるものの、客付けしにくいデメリットとも捉えられるのです。

そこで本記事では、貸主と借主両方の視点からメリット・デメリットをお伝えします。

本記事でわかること
・貸主の定期借家契約のメリット・デメリットがわかる
・借主にとっての定期借家契約のメリット・デメリットがわかる
・あなたが定期借家契約が向いているか向いてないか判断できる
・定期借家契約が向かなければどうしたらいいのか判断できる

ぜひ本記事を読み進めて、あなたが定期借家契約に向いているか否か、しっかりと決めていきましょう。

目次

賃貸管理完全ガイド
依頼すべき理由

1. 定期借家契約のメリット・デメリット

 定期借家契約のメリット・デメリットは、以下です。

※今すぐ詳細を知りたいメリット・デメリットがあれば表のリンクから確認できますので、ご覧ください。

定期借家契約は平成12年3月に借地借家法が改正され、「良質な賃貸住宅等の供給の促進に関する特別措置法」のもと、制定されました。(出典:国土交通省「定期借家制度」

賃貸オーナーが期間を決めて物件を貸し出す賃貸契約をいい、短い期間でも貸し出せるメリットがあります。

最初に定めた契約期間を過ぎたら、入居者は必ず退去しなければなりません。

そのため投資だけでなく、転勤や留学などでしばらく自宅を空け、いずれ戻ってくる人にも適している賃貸契約の方法です。

また貸し出す期間を自由に決められるだけでなく、契約期間中の退去はできないことから、賃貸オーナー側は収益がどのくらいになるかが明確にわかります。

一方住める期間が制限されるので、長期的に住むことを前提とする入居者であれば、定期借家契約を避ける傾向にあります。

それゆえ、家賃を下げざるを得ないデメリットがあることも否めません。

入居者の理解をしっかり得たうえで手続きを踏む必要があるため、手間のかかる契約といえるでしょう。

次の章からは、定期借家契約のメリット・デメリットをより詳細にお伝えしていきます。

また賃貸契約には定期借家契約のほかに普通借家契約があり、両者の違いを踏まえながら解説しますので、以下の表を参考にしながらご覧ください。

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普通借家契約
定期借家契約
契約方法書面もしくは電磁的記録書面にて契約更新がない旨の説明が必要口頭でも可能
契約期間自由1年以上
中途解約原則不可
更新の可否不可自動更新
賃料の増減に関する特約賃料の増減ができない特約も可能賃料の増減請求が可能
解約時の通知義務期間満了の6ヶ月~1年前までに通知なし

2. 定期借家契約のメリット6つ

定期借家契約のメリット・デメリットの全体像を把握していただいたところで、詳細を見ていきましょう。

定期借家契約のメリットは、以下6つです。

・短い期間でも貸し出せる
・減額請求を受けるリスクが低い
・立ち退き料が基本的に不要となる
・好ましくない入居者にも契約終了時に退去してもらえる
・原則として契約期間中の退去はできない
・再契約は貸し手側からも拒絶できる

順番に解説します。

2-1. 短い期間でも貸し出せる

定期借家契約の場合は1年未満の短期間でも貸し出して、収入を得られるメリットがあります。

普通借家契約の場合は一般的に2年ごとの契約更新が主となり、少なくとも1年以上で契約を結びます。

なぜなら1年未満の賃貸借契約の場合は「期間の定めのない契約」と見なされ、いつでも解約できてしまい貸主に不利な状況になってしまうからです。

(出典:e-Gov法令検索「借地借家法(平成三年法律第九十号)第二十九条」e-Gov法令検索「民法(明治二十九年法律第八十九号)第六百十七条」

しかし定期借家契約では1年未満の賃貸借契約が可能なため、たとえば以下のようなシーンで活用できます。

・建物の建て替えの予定に合わせて貸したい
・大規模修繕の時期に合わせて貸したい
・転勤や出張の予定に合わせて貸したい
・マンスリー物件として貸し出したい

普通借家契約では契約期間が終わったあとは入居者が退去しない限り契約更新となりますが、定期借家契約の場合は賃貸期間を終えれば、再度契約を結ばない限り貸し出す必要はありません。

そのため短期間の貸したい期間だけ賃貸して、その後は自分で住んだり、親族が使ったりと、物件を柔軟に使えます。

2-2. 減額請求を受けるリスクが低い

定期借家契約では、入居者から家賃減額の請求を受けるリスクが少ないです。

なぜなら定期借家契約では、賃料の減額を求められても応じる必要のない「賃料改定に関する特約」が有効になるからです。

たとえば2年間は賃料を10万円と固定して一切増減額しないとき、入居者から周囲の物件よりも賃料が高いから減額してほしいといった要望に応じる必要がありません。

よって、決まった収入を毎月得られるメリットがあります。

一方普通借家契約では、賃料の増減について「賃料の増額はしない」とした特約が有効になっても「減額しない」という特約は無効になってしまうのです。

定期借家契約は普通借家契約と違い、賃料の減額請求を受けるリスクが減り、毎月予定していた収入をきちんと得られる点は大きなメリットです。

2-3. 立ち退き料が基本的に不要となる

定期借家契約では契約期間満了に伴って退去を求めるときに、立ち退き料が不要であるメリットがあります。

物件の建て替えや転勤などで2年後に物件を必ず退去してほしい場合、普通借家契約では賃貸オーナーの都合で求めることはできません。

なぜなら借主は借地借家法によって守られており、契約更新を賃貸オーナー側から拒絶することはできないからです。(出典:e-Gov法令検索「借地借家法(平成三年法律第九十号)第二十八条」

そのため、法的義務はないものの退去の交渉をするうえで、賃料3~6か月分相当の高額な立ち退き料を支払うケースが一般的です。

仮に賃料15万円の物件であれば、立ち退き料は45~90万円ほどになるので、決して安い金額とはいえませんよね。

さらに建物を明け渡してもらうために、以下のような正当事由が必要にもなります。

・建物の老朽化や危険な状態
・家主や親族の住居として使用
・大規模な改修が必要

定期借家契約であれば決まったときに退去してもらえ、高額な立ち退き料を支払う必要がないので金銭面で大きなメリットといえます。

2-4. 好ましくない入居者にも契約終了時に退去してもらえる

定期借家契約では、賃貸オーナーにとって好ましくない入居者でも、契約終了時に退去してもらえるメリットがあります。

入居者のなかには、以下のような迷惑行為やトラブルを起こす人も多々います。

・騒音を出して迷惑をかける
・ゴミ出しのルール違反を繰り返す
・共用スペースを占有する
・無断でペットを飼育する
・家賃滞納する

このような入居者であっても、普通借家契約を結んでいる場合は簡単に退去させることはできません。

以下のような流れで退去を求めることとなり、多くの時間や労力・費用などがかかるのです。

普通借家契約の好ましくない入居者に退去を求める流れ
1. 注意喚起書面で入居者全員へ注意喚起をおこなう
2. 警告書の送付迷惑行為が改善されない場合、当事者へ警告書を送付する
3. 契約違反による退去要求内容証明で賃貸契約解除通知を送り退去を要求する
4. 法的手段弁護士へ依頼して訴訟を起こす

また迷惑行為をおこなう入居者がいると、ほかの住民の住環境にも悪影響を与えてしまい、退去されてしまうリスクもあるでしょう。

空室が増えてしまえば、賃貸オーナーの収益にもかかわります。

しかし定期借家契約であれば、元々の契約期間を過ぎたら退去してもらえます。

迷惑行為を続ける入居者と再契約を結ぶ必要もないため、賃貸オーナーの頭を悩ませることもないでしょう。

2-5. 原則として契約期間中の退去はされない

定期借家契約では契約期間中の入居者退去は原則としてないため、賃貸オーナーは必ず決まった収入を得られるメリットがあります。

どうしても入居者が退去したい場合は、以下3つのケースに限って可能です。

定期借家契約で契約期間中退去できるケース
解約権留保特約を付けている契約期間中でも、解約が可能であることを規定する条項。特約がついていれば途中の解約が可能となり、主に事業用物件にて用いられる。
中途解約権の条件を満たしている居住用として賃貸している場合に、以下2つの条件を満たしている。
・物件の床面積が200平方メートル未満である
・転勤や療養などのやむを得ない事情によって契約の続行が難しい
違約金を支払う残存期間の賃料相当額の違約金を支払って退去する

解約権留保特約が付いていれば入居者に退去されてしまう可能性もありますが、条件を満たしたり費用の支払ったりする必要があることから、定期借家契約では契約期間満了まで住み続けてもらうことが一般的といえます。

一方普通借家契約ではたとえ2年契約だったとしても、入居者は1年で退去しても問題ありません。

違約金も基本的に支払う必要はないので、賃貸オーナー側からすればいつ退去されても仕方がないのです。

そのため、普通借家契約では以下のような懸念があるでしょう。

・急な退去で空室対策が必要になった
・入居者がいつ退去してしまうか不安になる

定期借家契約ではこのような心配をする必要がないメリットがあり、安心して賃貸経営できます。

2-6. 再契約は貸し手側からも拒絶できる

定期借家契約では、契約期間を満了したら再契約を結ぶ必要がありません。

そのため以下のような理由でも、貸し手側から拒絶できます。

・建物の建て替えがあるから賃貸を避けたい
・大規模修繕があるから賃貸を避けたい
・転勤や出張後は自身が住みたい
・迷惑な入居者だったから賃貸を避けたい

一方普通借家契約の場合は契約期間満了後、借主が希望する場合は更新となり、貸主側からは拒絶できません。

なぜなら借地借家法によって借主は守られており、貸主よりも強い立場にあるからです。

更新を拒絶する場合は賃貸期間満了の1年前から6か月前の間に、借主に対して契約を更新しない旨を通知する必要があります。

(出典:e-Gov法令検索「借地借家法(平成三年法律第九十号)第二十六条」

そして通知だけでは更新の拒絶できないため、合わせて以下のような正当事由も提示しなければなりません。

・建物の老朽化や危険な状態
・家主や親族の住居として使用
・大規模な改修が必要

ただし正当事由を提示したところで、借地借家法では借主が有利な立場です。

借主が契約の続行を希望すれば、裁判に発展することも多いです。

立ち退き料として賃料3~6か月分程度を支払うことも一般的なので、多額の費用もかかるでしょう。

定期借家契約の場合は「契約満了にともなって更新しない」という選択ができるため、このような手続きにおける労力や費用は一切かからない点が大きなメリットです。


3. 定期借家契約のデメリット6つ


定期借家契約のメリットについておわかりいただけたかと思います。

続いて、比較するためにデメリットも見ていきましょう。

定期借家契約のデメリットは、以下6つです。

・住める期間が制限されていることで敬遠する人もいる
・契約期間が短ければ入居者を募集するコストがかかりやすい
・家賃が相場より安くなりやすい
・普通借家契約と比べて手続きを慎重におこなう必要がある
・契約終了の通知義務がある
・ 契約期間が短ければ物件の管理コストが増加しやすい

順番に解説します。

3-1. 住める期間が制限されていることで敬遠する人もいる

定期借家契約は普通借家契約と異なり、住める期間が制限されるので敬遠する人もいます。

必ずしも再契約してもらえるとは限らないため、たとえ気に入った物件であっても1年や2年など契約期間満了後に、再び入居先を探さなければなりません。

引っ越し費用や物件探しの労力を考えると、契約期間満了後に更新できる普通借家契約を選択したいと考える人がいることもうなずけるでしょう。

3-2. 契約期間が短ければ入居者を募集するコストがかかりやすい

定期借家契約は契約期間を自由に決められる一方で、短くするほど次の入居者を決めるための募集コストがかかってしまいます。

契約期間を終えたのちに賃貸オーナー自身が住むのであればいいのですが、新たな入居者を募集する場合は以下のようなコストが発生します。

入居者募集コスト
仲介手数料家賃0.5~1ヶ月分+消費税
広告料家賃1~2ヶ月分
客付け業者に支払う費用賃料1ヶ月分

そのため仮に家賃10万円の物件であれば、合計30万円~40万円ほどの入居者の募集コストがかかるのです。

普通借家契約では1年以上の賃貸契約を結び、2年が一般的な目安です。

そのため定期借家契約で、6か月ごと等の短い期間で契約を繰り返す場合、入居者募集コストは普通借家契約よりも高くなってしまうので注意しましょう。

3-3. 家賃が相場より安くなりやすい

定期借家契約の家賃相場は、普通借家契約よりも安い傾向になります。

なぜなら、「3-1. 住める期間が制限されていることで敬遠する人もいる」でお伝えしたように、入居者を集めづらい傾向にあるため、家賃を下げざるを得ないからです。

2021年におこなわれた定期借家推進協議会の「定期借家アンケート結果(対象:宅建業者)」においても、家賃相場の値下がりや減額が、定期借家契約をおこなわない理由として挙げられています。

 

参考:定期借家推進協議会「定期借家アンケート結果(対象:宅建業者)」

一概にいくらくらい安くなるとはいえませんが、およそ10%位が目安といえるでしょう。

そのため、定期借家契約で得た賃貸収入で問題なく賃貸経営を続けられるのか、事前にシミュレーションしておく必要があります。

賃貸経営の収支計画を建てる具体的な方法は、以下の記事を参考にしてください。

賃貸経営の入門編!基本的なノウハウやリスクを分かりやすく解説

3-4. 普通借家契約と比べて手続きを慎重におこなう必要がある

定期借家契約は普通借家契約と比較して、手続きを慎重におこなう必要があります。

適切な手続きをおこなわなければ定期借家契約が成立したと見なされず、結果的に普通借家契約とされる可能性があるからです。

事実、貸主側は定期借家契約を締結したと主張したものの、認めてもらえず不動産を明け渡してもらえなかった裁判事例もあります。

※出典:一般財団法人 不動産適正取引推進機構「定期借家契約の期間満了後、黙示の普通借家契約が成立したとし、その後締結の契約も普通借家契約の更新であるとされた事例」

定期借家契約を結ぶには、以下の手続きをおこなう必要があります。

・定期借家契約専用の契約書を用いて契約書に必要な項目を記載する
・書面で契約更新がない旨を説明する
・更新したい場合は契約書を交わす

順番に解説します。

3-4-1. 定期借家契約専用の契約書を用いて契約書に必要な項目を記載する

普通借家契約と見なされないためには不要な項目が記載されていない、定期借家契約専用の契約書を用いて、必要な項目を記載することです。

以下のサイトでは、国土交通省から定期借家契約の契約書のひな形を掲載しているので、ご活用ください。

国土交通省「定期賃貸住宅標準契約書」

定期借家契約を締結するには、以下の項目を契約書に記載します。

・契約期間:いつからいつまでなのかを記す
・更新しない条項:契約満了後は更新がないことを表す

契約書は定期借家契約専用でなくても、実際はかまいません。

ただし、一般的な普通借家契約の場合は、「更新料支払条項」や「自動更新条項」といった契約更新に関する条項が入っていることが多いです。

このような「更新」に関わる条項が記載されている場合、「更新しない条項」があったとしても定期借家契約とは見なされません。

結果的に、普通借家契約と見なされてしまう可能性が高まってしまうでしょう。

そのため、定期借家契約専用の契約書を用いて契約書に必要な項目を記載するほうが安心です。

3-4-2. 書面で契約更新がない旨を説明する

契約書とは別に、定期借家契約には契約更新がなく、期間満了になったら退去してもらう旨を書面で説明する必要があります。(出典:e-Gov法令検索「借地借家法(平成三年法律第九十号)第三十八条」)

そもそも契約更新がないことを伝え忘れてしまった場合は、契約書に記載していても定期借家契約を結んだことにはなりません。

口頭で伝えた場合も、「言った、言わない」といったトラブルを招きかねないため、書面による説明が重要なのです。

そして、説明して終わりではなく、事前に説明をしたと記録するために借主のサイン・押印をもらう必要もあります。

定期借家契約は、間違った手続きをしてしまえば普通借家契約を結んだことになってしまいます。

現実的には賃貸オーナー自身で契約を締結するよりも、ノウハウが豊富な仲介業者や賃貸管理会社などへ依頼するほうが安心でしょう。

3-4-3. 更新したい場合は契約書を交わす

定期借家契約では、更新したい場合は契約書を新たに交わします。

具体的には、「3-4-1. 定期借家契約専用の契約書を用いて契約書に必要な項目を記載する」と「3-4-2. 書面で契約更新がない旨を説明する」の一連の流れを繰り返し、新たな契約として結ぶのです。

そのため契約書のミスはできず、再度更新ができないことも含めて説明しなければならないことから、定期借家契約の手続きは手間がかかります。

3-5. 契約終了の通知義務がある

定期借家契約では、契約満了の6か月前~1年前までに契約終了の通知義務があります。

(出典:e-Gov法令検索「借地借家法(平成三年法律第九十号)第三十八条」)

もし忘れてしまった場合は、定期借家契約の満了を主張できなくなるので注意が必要です。

定期借家契約を結ぶ人のなかには、出張後や親族などがのちのち物件を使用する予定の人もいるでしょう。

万が一通知を忘れてしまった場合は、伝えた日から最短で6か月後に退去となるので、「予定していた日から住めない」というリスクがあることを知っておいて下さい。

3-6. 契約期間が短ければ物件の管理コストが増加しやすい

定期借家契約では契約期間に定めはありませんが、短いほど入居者の退去にともない物件の管理コストが増加します。

以下は、入居者が退去したときに発生する費用項目例です。

費用項目
概要
原状回復費用
・ハウスクリーニング費用:
 ワンルームマンションで15,000円くらいが目安
・補修費用( 壁や床の修理、壊れた設備の交換など)
事務手数料・鍵の交換費用:10,000円くらい~
・契約解除手数料(早期退去の場合):契約期間分の賃料
家具や家電の廃棄費用(家具付き物件の場合)不要な家具や家電の処分費用
リノベーション費用
修繕ではなく、より良い設備を入れるための費用

原状回復費用は入居者が退去したのち、元の状態にするために壁紙を張り替えたり、水回りをキレイにしたりするハウスクリーニングや補修をする費用です。

間取りのほか、居住年数でかかる費用は異なります。

ほかにも鍵の交換は入居者が変わるごとに必須となり、場合によっては入居者ニーズに沿ったリノベーションが必要となる場合もあるでしょう。

リノベーション例
・モニター付きインターフォンに変更:30,000円~
・3点ユニットバスを「バス・トイレ・洗面台」にセパレートする:100万円~
・アクセントクロスに変更:30,000円~
・間取り変更して一体型LDKに変更する:110万円~

入居者がずっと同じ物件に住んでくれる場合は、このような退去ごとにかかる費用の発生頻度が少なくなります。

普通借家契約と比較して、定期借家契約には物件の管理コストが増加しやすいデメリットがあることを知っておきましょう。


4. 借主側のメリット・デメリットも知っておこう

ここまでの流れで、定期借家契約をすることで貸主にどのようなメリット・デメリットがあるのか、おわかりいただけたかと思います。

しかし、それだけでは、定期借家契約について理解するうえでまだ足りません。

賃貸オーナーだけでなく、借主側のメリット・デメリットも知っておくべきだからです。

借主が「定期借家契約ってメリットがあって良さそう!借りてみよう」といって入居してくれたら、賃貸オーナーにとっても空室が埋まり、結果的にメリットとなりますよね。

つまり借主のメリットは、賃貸オーナーのメリットといえます。

そしてデメリットも然りです。

どのような入居者にとって定期借家契約はメリットがあるのか、もしくは受け入れてもらえないデメリットとなるのかを知っておくことが、賃貸経営を潤滑におこなううえで欠かせないのです。

次の章からは借主側のメリット・デメリットを解説していきます。


5. 定期借家契約における借主側のメリット

定期借家契約における、借主側のメリットは、以下3つです。

・敷金・礼金や家賃が低い
・好条件の物件に住めることがある
・短い期間だけ借りられる

順番に解説します。

5-1. 敷金・礼金や家賃が低い

定期借家契約に住むと、敷金・礼金や家賃が低い金銭的なメリットが借主にあります。

3-1. 住める期間が制限されていることで敬遠する人もいる」でお伝えしたように、定期借家契約は入居者が集まりにくいことから、敷金・礼金や家賃を賃貸オーナーが下げる傾向にあるからです。

敷金・礼金や家賃の差については明確にいえませんが、敷金・礼金であればマイナス1か月分、家賃は10%位が目安といえるでしょう。

仮に普通借家契約で賃貸すると月10万円する物件が9万円で借りられるとしたら、借主にしてみればお得ですよね。

もちろん築年数や部屋の間取りなどによっても家賃は変わってくるので、あくまでも目安として捉えてください。

5-2. 好条件の物件に住めることがある

定期借家契約では、本来賃貸オーナー自体が住むように建てたり購入したりした物件もあることから、好条件の物件に住めることがあります。

たとえば、以下のようなケースが挙げられます。

・戸建てや分譲マンションに住める
・食洗機や浴室乾燥機などの充実した設備がある
・立地がいい
・築年数が浅い

急な転勤や出張が決まった人や、将来的には自分で住む予定だけれど現時点では自宅が別にある人など、定期借家契約で貸し出す人の事情はさまざまです。

普通借家契約では貸し出す期間が決められないため、このような自分の所有物件にいずれ住もうとお考えの人は選択できませんよね。

自分では住めないことから貸し出すケースが多い定期借家契約では、普通借家契約で見つからない好条件の物件に住める可能性があります。

5-3. 短い期間だけ借りられる

定期借家契約は契約期間の定めがないため、短い期間でも借りられます。

たとえば、以下のような人にとって、定期借家契約はメリットがあります。

定期借家契約にメリットがある人
・一時的な転勤や出張の人
・留学や研修の人
・新しいエリアを試してみたい人
・家の建て替えやリフォームをする人

たとえば出張や転勤・留学などで一時的に引っ越し、のちのち元の自宅へ戻る方は多いでしょう。

これから新たな土地に引っ越しを検討するうえで治安や地域のルールなど、住みやすさを確認するために一時的に賃貸したい人もいるかもしれません。

しかし普通借家契約の場合は1年以上の契約が基本であり、なかには2年以上の場合も多いことから、貸りたい期間が短い人には向きません。

定期借家契約であれば1年未満の賃貸も可能なため、借主にとっては、予定に合わせて柔軟に借りられるというメリットがあります。


6. 定期借家契約における借主側のデメリット

定期借家契約の借主側のメリットをおわかりいただけたら、デメリットも合わせて見ていきましょう。

借主側のデメリットを知ることで、定期借家契約を選択するか否か判断材料にできます。

定期借家契約の借主側のデメリットは、以下3つです。

・再契約できない可能性がある
・再契約時に家賃が上がる可能性がある
・原則、契約途中で解約できない

順番に解説します。

6-1. 再契約できない可能性がある

必ずしも再契約できるとは限らない点は、定期借家契約における借主の大きなデメリットです。

定期借家契約では、契約満了の6か月~1年前までに賃貸オーナーから契約終了となる旨の通知が来ます。

契約満了をもって解約となり、更新手続きはおこなわれないため、住み続けたい場合は再度契約を結び直しが必要です。

再契約を申し出ても賃貸オーナーから拒否された場合は速やかに退去しなければならず、契約満了後も居座ってしまえば不法占拠にあたり、法的手続きを取られてしまう可能性も否定できません。

家賃や住みやすさなどが気に入った物件に住んでいると、だれでも退去したいと思わないですよね。

普通借家契約であれば退去を申し出ない限り更新できますが、定期借家契約では必ずしも再契約できないので「もう少し住みたい!」と思っても退去しなければならない点はデメリットといえます。

6-2. 再契約時に家賃が上がる可能性がある

定期借家契約の場合は自動的に更新はされないため、再契約時に契約書を交わすにあたって家賃が値上がりする可能性があります。

再度契約時に賃貸オーナーが値上げを希望する場合、借主が同意しなければ契約は不成立となります。

そのため借主は値上がった家賃に納得しなければ、契約を結べないのです。

一方普通借家契約の場合は、借主が契約解除を求めない限り当初の契約内容を引き継いで更新されていきます。(出典:e-Gov法令検索「借地借家法(平成三年法律第九十号)第二十六条」

もし家賃の値上げを賃貸オーナーが希望する場合は、固定資産税の増加や物価の変動など、正当事由が必要となり、入居者の同意を得なければなりません。

このように借主に有利な普通借家契約と違い、定期借家契約では家賃の値上がりリスクがあるので、敬遠される原因の一つといえます。

6-3. 原則、契約途中で解約できない

定期借家契約では原則、入居者都合で解約できません。

以下は例外として、契約途中で解約できるケースです。

定期借家契約で契約期間中退去できるケース
解約権留保特約を付けている契約期間中でも、解約が可能であることを規定する条項。特約がついていれば途中の解約が可能となり、主に事業用物件にて用いられる。
中途解約権の条件を満たしている居住用として賃貸している場合に、以下2つの条件を満たしている。
・物件の床面積が200平方メートル未満である
・転勤や療養などのやむを得ない事情によって契約の続行が難しい
違約金を支払う残存期間の賃料相当額の違約金を支払って退去する

解約権留保特約という解約できる特約を付けている場合や、中途解約権の条件を満たす、やむを得ない事情があれば契約期間途中でも解約できます。

しかしこれらのケースに該当しなければ、本体住むはずだった期間分の家賃相当となる違約金を支払い、退去することとなるでしょう。

一方普通借家契約の場合は、契約期間途中であっても自由に退去は可能です。

必ずしも契約期間満了まで物件に住むと言い切れない場合は、契約途中で解約が難しい定期借家契約の締結は借主にとってリスクがあるといえます。


7. 定期借家契約が向いているケースと向いてないケース

ここまで、定期借家契約について貸主・借主双方のメリット・デメリットをおわかりいただけたかと思います。

では、実際にあなたに定期借家契約が向いているか否かを判断していきましょう。

7-1. 向いているケース

定期借家契約が向いているケースは、以下が挙げられます。

定期借家契約が向いているケース
将来的に物件を使用する予定がある:
自分や家族が物件を使用する予定があり、それまで賃貸したい

短期間ごとに賃貸条件を見直したい:
賃貸市場の動向把握や賃料の見直しなどをしながら収益性を高めたい

シーズンレンタルしたい:
観光地やリゾート地など、特定のシーズンに需要が高い

物件の売却を考えている:
売却までの間に短期間だけ賃貸したい

リフォームや大規模修繕を予定している:
リフォームや大規模修繕前の期間だけ賃貸に出したい

入居者リスクを減らしたい:
借主がトラブルを起こしたときに必ず退去させたい

定期借家契約が向いているケースに当てはまる人は、ここまでご紹介したようなメリットが大きくなり、デメリットの影響を受けにくくなります。

とくに1年や2年など、賃貸可能な期間がはっきりと決まっている場合は、定期借家契約が向いています。

普通借家契約では貸主から退去を求められないため、いざ使用したいタイミングで物件に住めないからです。

また観光地やリゾート地など、特定のシーズンに需要が高い地域に物件を所有している場合は、その期間だけ家賃を上げて数ヶ月間運用して収益を上げる方法もあります。

必ず契約を終了できる定期借家契約を選ぶことで入居者トラブルに備えられるので、精神的な安定を求める人にも向いているでしょう。

定期借家契約が向いているケースはすべてに当てはまる人である必要はないため、どれか一つでも「自分に合っている」と感じた場合は、ぜひ前向きに検討してみてください。

7-2. 向いていないケース

定期借家契約が向いていないケースは、以下が挙げられます。

定期借家契約が向いていないケース
物件の空室リスクを可能な限り避けたい:
契約終了ごとに空室期間が発生するリスクがある

物件管理の手間をかけたくない:
契約時の手続きや借り手との家賃交渉などを頻繁にしたくない

ファミリー物件を所有している:※2LDKや3LDK
ファミリー層は長期間住める物件を求める傾向が強い

借り手の確保が難しいエリアに物件がある:
そもそも需要の低いエリアに物件があればより空室リスクが高まる
※人口が少ない地域やアクセスが不便な場所

長期的な家賃収入が欠かせない:
住宅ローンの返済やほかの経済的な計画に収入を充てる

定期借家契約を考える借主は、転勤や出張・留学などで住まいを探す単身者が多い傾向にあります。

そのため2LDKや3LDKなどファミリータイプの場合は、入居者が見つかりにくいでしょう。

また「3-1. 住める期間が制限されていることで敬遠する人もいる」でお伝えしたように、定期借家契約は入居者を集めにくいです。

借り手が見つかりにくい人口が少ない地域やアクセスが不便な場所に物件がある場合は、空室リスクがより高まってしまうでしょう。

ほかにも住宅ローンの返済や、ほかの経済的な計画に収入を充てることを考えている人も不向きです。

家賃収入が生活するうえで欠かせない場合は、定期借家契約に向いていないと捉えてください。

定期借家契約が向いていないケースに1つでも当てはまったらできないとはいえませんが、順調に賃貸経営できないリスクは高まります。

3つ以上当てはまるようであれば、定期借家契約の断念も検討したほうがいいでしょう。

とはいえ、管理の手間が定期借家契約に向かない理由であれば、賃貸管理会社へ任せることもできます。

9. 定期借家契約を選ぶならノウハウに優れた管理会社を選びが大切」を参考に賃貸管理会社を検討することも一つの方法でしょう。


8. 定期借家契約が向かない場合の選択肢

あなたに定期借家契約が向いているか否か、判断できましたでしょうか。

普通借家契約は選択肢として選べず、定期借家契約も向かなければ、所有物件をどうするのか困ってしまいますよね。

その場合は、以下2つの選択肢があるので参考にしてください。

・空き家にして綺麗を保ち、管理だけしてもらう
・売却する

順番に解説します。

8-1. 空き家にして綺麗を保ち、管理だけしてもらう

継続的な賃貸ができないなかで定期借家契約にも向かない場合、住むまでの期間空き家にして綺麗を保ち、管理だけしてもらう方法があります。

空き家にする場合、換気や掃除など定期的な管理をしなければ湿気により家が傷んでしまいます。

水道管の手入れをするための通水や、雨漏りのチェックなどマメなメンテナンスも必要です。

自宅にいないからといって何もしなければ、いざ戻ってきたときに住めなくなってしまうため、定期的な管理は欠かせないのです。

空き家の管理は不動産会社や賃貸管理会社に依頼すると、月5,000~10,000円程度でおこなってくれるので、検討するといいでしょう。

8-2. 売却する

定期借家契約に向かない場合、売却も選択肢の一つとしてあげられます。

以下は、売却することで得られるメリットです。

メリット詳細
現金化できる家賃収入の代わりにまとまった金額の現金を手に入れられる
管理負担の軽減物件の管理やメンテナンス、借主とのやり取りなど負担を減らせる
資産価値の低下を心配しなくてすむ周辺環境やニーズなどによる物件価格の変動を考えなくてよくなる

売却する場合、将来的に得られる家賃収入の代わりにまとまった現金を手に入れられ、物件を管理する必要もありません。

また、さまざまな要因で物件の価値は変動します。

売却によって「相続時にいくらくらいの値段が付くのだろう」「人口の過疎化によって地価が値下がってしまった」などと、資産価値の低下に悩むこともなくなります。

もちろん売却には諸費用がかかったり、すぐに売却できるのかといった課題もあります。

しかし定期借家契約が難しいなかで無理に物件を所有し続けるよりは、売却も一つの選択肢として考えてみてください。


9. 定期借家契約を選ぶならノウハウに優れた賃貸管理会社選びが大切

定期借家契約をお考えであれば、順調な経営をおこなうためにもノウハウに優れた賃貸管理会社選びが欠かせません。

なぜなら、どのような賃貸管理会社でも同じような成果が出るとは限らず、客付け力や管理力が異なるからです。

優れた賃貸管理会社選びをするには、以下を参考にしてください。

・定期借家契約のノウハウがあるか
・実績はあるか
・客付け力は高いか
・専門知識はあるか
・入居者対応の質が高いか
・口コミや評判はいいか
・大家への定期的な報告をしているか
・連絡を取りやすいか

定期借家契約は普通借家契約と異なり、手続きが煩雑な契約です。

前提として、定期借家契約のノウハウがある賃貸管理会社へ任せましょう。

また、空室リスクの高い定期借家契約では、客付け力の高い賃貸管理会社へ委託することも絶対条件です。

定期借家契約について詳しくなく、客付け力がなければ収入を得られず、固定資産税や維持管理費用をただただ支払い続けるだけとなります。

それゆえに、単純にどの賃貸管理会社でもいいとはいえないのです。

ここで、弊社ルーム・スタイルについてお伝えさせてください。

弊社ルーム・スタイルは、2006年から賃貸管理・仲介・売却・内装業を一気通貫でおこなう賃貸管理会社です。

普通借家契約だけでなく定期借家契約にも対応しており、煩雑な契約に関わる業務は18年の実績とノウハウをもとに、弊社がすべて適切におこなうのでご安心ください。

とくに客付け力の高さが選んでいただくうえでの大きな魅力といえ、一般的な平均空室率は4~5か月のところ、弊社は「年間入居率98%・平均入居1ヶ月の客付け」を誇ります。

オリジナルのカラー間取り図によるマイソクや、一眼レフを使った目を引く情報掲載は、可能な限り物件の魅力を引き出す弊社ルーム・スタイルの得意分野です。

以下のようなバーチャルサービスも使用して、入居候補者が自分が住んだときのイメージができるよう視覚に訴えます。

空室リスクがある定期借家契約は「どこでもいい」と思って決めてしまえば、空室が続く可能性が大いに高まるため、賃貸管理会社選びが非常に重要です。

定期借家契約をお考えであれば、ぜひ一度弊社ルーム・スタイルへご相談ください。


10. まとめ

定期借家契約のメリット・デメリットについておわかりいただけましたでしょうか。

最後に、要点をまとめていきます。

◎定期借家契約のメリット・デメリットは、以下です。

◎借主側のメリット・デメリットも定期借家契約について理解するうえで知っておきましょう。

◎借主側のメリットは、以下3つです。

・敷金
・礼金や家賃が低い
・好条件の物件に住めることがある
・短い期間だけ借りられる

◎借主側のデメリットは、以下3つです。

・再契約できない可能性がある
・再契約時に家賃が上がる可能性がある
・原則、契約途中で解約できない

◎ 定期借家契約が向いているケースと向いてないケースは、以下です。

定期借家契約が向いているケース
将来的に物件を使用する予定がある:
自分や家族が物件を使用する予定があり、それまで賃貸したい

短期間ごとに賃貸条件を見直したい:
賃貸市場の動向把握や賃料の見直しなどをしながら収益性を高めたい

シーズンレンタルしたい:
観光地やリゾート地など、特定のシーズンに需要が高い

物件の売却を考えている:
売却までの間に短期間だけ賃貸したい

リフォームや大規模修繕を予定している:
リフォームや大規模修繕前の期間だけ賃貸に出したい

入居者リスクを減らしたい:
借主がトラブルを起こしたときに必ず退去させたい

定期借家契約が向いていないケース
物件の空室リスクを可能な限り避けたい:
契約終了ごとに空室期間が発生するリスクがある

物件管理の手間をかけたくない:
契約時の手続きや借り手との家賃交渉などを頻繁にしたくない

ファミリー物件を所有している:※2LDKや3LDK
ファミリー層は長期間住める物件を求める傾向が強い

借り手の確保が難しいエリアに物件がある:
そもそも需要の低いエリアに物件があればより空室リスクが高まる
※人口が少ない地域やアクセスが不便な場所

長期的な家賃収入が欠かせない:
住宅ローンの返済やほかの経済的な計画に収入を充てる

◎ 定期借家契約を選ぶならノウハウに優れた管理会社選びが大切です。

あなたの物件を、定期借家契約にするか否か、メリット・デメリットを踏まえて決断できることを祈っています。

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