「会社員の収入以外に、不動産の賃貸経営を行うことで、資産形成の柱をつくりたい」
「”賃貸経営”という響きは魅力的だが、自分にできるのかどうか分からない・・・・・・」
不動産を購入して賃貸人から毎月賃料収入を得る賃貸経営は、「不労所得」の代名詞でしょう。
魅力的な響きがある反面、多くの人には縁遠い世界であり「大損をしてしまうのではないか」や「一部の富裕層が行うものなのではないか」と、疑問を持っている方も多いのではないでしょうか。
結論として、賃貸経営は学ぶことは多いものの、必要なノウハウを学んでおけば大失敗することはありません。
その理由として、株式投資などと違って、不動産リスクの大半は予測が可能で、経営者(オーナー)自身の努力で回避ができるからです。
むしろ、資金が潤沢にあったとしても、賃貸経営のノウハウがない方が気軽に足を踏み出してしまい、手痛い経験をする傾向も見られます。
ただし、ある程度の資金を要する賃貸経営は、誰しもが気軽に経験できることではないでしょう。
そのため、普通に会社員をしている方などには「果たして、自分は賃貸経営に踏み出していいのだろうか」という素朴な疑問が浮かぶのは無理もありません。
本記事では、賃貸経営に興味を持っている方の背中を押すために、基本的な賃貸経営の種類・メリットを解説します。
【賃貸経営の種類】
- アパート・マンション経営
○まとまった収入が手に入る
△資金力や融資を受けるための属性が必要 - 区分マンション賃貸経営
○手軽にスタートできる
△収入面では物足りない可能性がある - 戸建て賃貸経営
○賃貸人の長期入居が期待できる
△地域性など立地に左右される
【賃貸経営の種類に限らず共通するメリット】
- 安定収入が得られる
- 税金対策ができる
- 自己資金が抑えられる
- インフレリスクに強い
- 自由な時間が増える
ここまでお読みいただき、「自分ならアパート経営をしたいな」などと興味が高まったとしても、まだ注意すべき点があります。
賃貸経営が限られた人にしか広がらないのは、リスクもそれなりにあるからです。
いくら豊富な資金があったとしても、賃貸経営が持つリスクと対応方法を知らないと、経営が頓挫することになってしまいます。
記事の後半では賃貸経営ならではのリスクと対応方法についても解説します。
【賃貸経営のリスクと対応方法】
- 空室リスク・・・・・・オーナー努力が利きにくい物件を買わない
- 高額修繕費のリスク・・・・・・修繕費を組み込んだ収益シミュレーションを行う
- 天災リスク・・・・・・天災リスクが低い立地を選んだうえで、保険を手厚くする
ここまでお読みいただければ、メリットやリスク及び対応方法を知ったうえで、ご自身が賃貸経営に踏み出すべきか否かが判断できるはずです。
さらに記事の後半では「賃貸経営を具体的に進めたい」と思う方のために、一歩目を踏み出すためのガイドも掲載しています。
- 賃貸経営者になるための準備とは?
- 賃貸経営者になるための活動とは?
最後までお読みいただければ、実際の動き出しのイメージまで含めて、賃貸経営の世界に踏み込むリアリティがつくかと思います。
「経営」と名がつく通り、本記事で紹介した以外に詳細に学ぶべきこと多岐に渡るかと思います。
少なくとも当記事をお読みいただき「自分はこの辺の知識を入念に学ばないといけない」や「この点に注意が必要そうだ」という当たりをつけていただければ幸いです。
目次
- 1.賃貸経営の代表的な3種類
- 1-1.アパート・マンション賃貸経営
- 1-2.区分マンション賃貸経営
- 1-3.戸建て賃貸経営
- 2.賃貸経営の5つのメリット
- 2-1.安定収入が得られる
- 2-2.税金対策ができる
- 2-3.自己資金を抑えられる
- 2-4.インフレリスクに強い
- 2-5.自由な時間が増える
- 3.賃貸経営の3大リスク
- 3-1.空室リスク
- 3-2.高額修繕費のリスク
- 3-3.地震などの天災リスク
- 4.賃貸経営3大リスクへの回避方法
- 4-1.空室リスクへの対応方法
- 4-2.修繕リスクへの対応方法
- 4-3.災害リスクへの対応方法
- 5.賃貸経営の準備の3ステップ
- 5-1.必要な知識を身につける
- 5-2.賃貸経営の目的や目標を明確にする
- 5-3.収支計画を練る
- 6.賃貸経営を進める4ステップ
- 6-1.物件選びをスタートする
- 6-2.買い付け・融資・契約を進める
- 6-3.管理会社を探す
- 6-4.オーナーとして必要な動きをとる
- 7.賃貸経営をしたいならまずはスモールスタートがおすすめ!
- 8.まとめ
1.賃貸経営の代表的な3種類
賃貸経営は、所有する不動産を住宅や事務所、店舗の用途で賃貸し、賃料収入を得ることで収益を上げる事業形態です。
株式売買や外国為替取引のような売買差益(キャピタルゲイン)を得ることもできますが、「賃貸経営」という言葉を使う場合、継続的に賃料収入を得る「インカムゲイン型」のビジネスが中心になることが多いでしょう。
本章では、賃貸経営の種類を以下の3つで説明します。
- アパート・マンション賃貸経営
- 区分マンション賃貸経営
- 戸建て賃貸経営
早速一つひとつの概要及び、メリット・デメリットを解説していきます。
1-1.アパート・マンション賃貸経営
アパートやマンションのような、通称「一棟モノ」といわれる建物全体を所有し、建物の入居者から得られる家賃収入により収益を上げるスタイルです。
一般的なメリット・デメリットは以下の通りです。
【メリット】
- 区分マンション1室や戸建てと比べると部屋数が多いため、毎月の収入が大きくなる
- 相続税対策、減価償却をはじめとした節税効果が大きい
- 土地を所有しての建物建築やリフォームなど、オーナーの裁量が大きい
【デメリット】
- 数千万円~億円単位の価格帯が多いため、ある程度資金力が必要
- 空室が多すぎる場合は、毎月の建物管理費や維持費が経営を圧迫することがある
- 修繕費や建物設備費をはじめとしたオーナー負担額が大きい
→初心者には不向きで、ある程度賃貸経営のノウハウがある人に向いている
1棟賃貸経営は競合も多く、物件選定や維持管理についてはある程度専門的な知識も必要です。
そのため、まだ物件を所持していない初心者の方がいきなり挑戦するには、ややハードルが高い分野といえます。
1-2.区分マンション賃貸経営
区分マンション賃貸経営は、RC造やSRC造など大型マンションの1室を(部屋単位)所有し、家賃収入を得る方法です。
一般的なメリット・デメリットは以下の通りです。
【メリット】
- 少額な物件も多いため、初心者や副業でも手が出しやすい
- 建物全体の管理が不要なので、手間がかからない
- 複数の区分マンションを所有することで、リスク分散できる
【デメリット】
- 一棟と比べると月々の家賃収入は少なくなる
- 古い物件を買うと、1室であっても賃貸付けや設備故障などで運用負荷がかかる
- 戸数が少ない物件の場合、オーナーの修繕積立費の負担額が上がる
→コストメリットよりも、賃貸経営の一連のプロレスを体験したい人に向いている
賃貸経営者のほとんどが、区分マンション所有経験があるほど、最もメジャーなスタイルです。
物件選びや融資など、一連の賃貸経営のプロセスを体験したい場合は、区分マンションからスタートすることがおすすめでしょう。
1-3.戸建て賃貸経営
アパートやマンションではなく、一戸建てを賃貸に出して家賃収入を得るスタイルです。自分で建築から手掛ける方法もあれば、自身が住居として使用していた戸建てを賃貸に出す方法もあります。
一般的なメリット・デメリットは以下の通りです。
【メリット】
- ファミリータイプが多いため、一度賃貸人がつけば長く入居してくれる
- ニーズが明確であることが多いため、ターゲットや募集時期を絞りやすい
- 建築やリノベーションから手掛ける場合は、自分の望む戸建てを建てて賃貸に出すことができる
【デメリット】
- 立地によってはターゲットが少なくなり、空室が長くなる
- 耐震構造や接道状況など建物・土地の知識が必要となる
- 木造であることが多いため、外壁・屋根塗装などの費用が発生しやすい
→ファミリー層に狙いを定める人には向いている
戸建て賃貸経営は、ニーズのあるエリアであれば、比較的安定的に運用が可能です。一方で土地や建築の知識が必要になることも多いため、それなりに勉強をしてからスタートすることがおすすめでしょう。
2.賃貸経営の5つのメリット
賃貸経営に興味はあるものの、具体的にどのようなメリットが享受できるか分からないという方もいるのではないでしょうか。
本章では既に賃貸経営をしている方から聞かれる、具体的な5つのメリットをお伝えします。
- 安定収入が得られる
- 税金対策ができる
- 自己資金が抑えられる
- インフレリスクに強い
- 自由な時間が増える
早速、一つひとつ具体的に説明してきます。
2-1.安定収入が得られる
賃貸経営は、入居者を確保できれば安定した家賃収入を得られるというメリットがあります。
株式投資などと比較すると「安定」という点がポイントで、毎日・毎月の変動が少なく、一度物件を購入してしまえば、決まった家賃が入ってくる魅力があるからです。
特に一棟マンションやアパートは戸数が多く、空室リスクが分散されるため、区分所有のマンションや一戸建てと比較すると、収入がゼロになってしまうリスクは低くなります。
さらに、具体的に賃貸経営を検討している方のなかには「不動産経営はどのくらい収入が得られるのだろうか?」と疑問に思っている方もいるのではないでしょうか。
国税庁の申告所得税標本調査結果によると、不動産経営の平均所得は、ここ5年ほどで上昇傾向にあります。5年前の平成24年では510万円でしたが、令和に入ってからは540万円代へと増加しています。
年度 | 平成24年 | 平成29年 | 令和2年 | 令和3年 | 令和4年 |
---|---|---|---|---|---|
平均所得額 | 511万円 | 528万円 | 540万円 | 543万円 | 543万円 |
ただし、一棟マンションや区分マンション、アパートなど不動産経営をする住宅の種類や、空室状況によって実際の収入は異なります。
自分が欲しい物件が見つかったら、実際に収入シミュレーションをしてみると、物件購入へのモチベーションが上がることでしょう。
2-2.税金対策ができる
不動産経営を行うことで、所得税・住民税、相続税などを節税できる可能性があります。
不動産経営で発生する管理費や修繕費といった費用は経費になるため、総所得を減らすことができます。自ずと総所得額と連動する所得税や住民税の額を減らす効果があります。
そのため、「サラリーマン大家」のような不動産以外の手段で所得を得ている人に、不動産投資は人気になっているのです。
上記の所得税や住民税のほかに、相続税を抑えられるというメリットもあります。
現金で相続した場合はその金額が課税対象となりますが、建物や土地の場合は固定資産税評価額が課税対象となります。固定資産税評価額は時価の7割程度になるため、現金での相続よりも2割~3割ほどの節税につながるのです。
ただし節税効果はご本人の総所得や持ち物件によって異なるため、厳密にはご自身の状況に応じてシミュレーションすることが必要でしょう。
2-3.自己資金を抑えられる
不動産経営は、金融機関からの融資を受けられるため、手持ちの自己資金が少なくても経営を始められる点がメリットです。
他投資を始める場合は自己資金のみでスタートさせる必要があることに対し、不動産投資は金融機関は「賃貸事業」と見なすため、大きな金額でも借りやすい傾向があるからです。
ただし、賃貸経営にもある程度の自己資金が必要となります。
自己資金は「頭金」と「諸費用」に分類されますが、一般的に20%程度必要といわれています。
具体的に、5,000万円の物件を購入しようとした際の自己資金の必要額は以下の通りです。
費用の目安 | 具体例(物件価格5,000万円の場合) | |
---|---|---|
頭金 | 一般的には、物件価格の10~20% ※物件の担保価値・融資を受ける人の属性などによる | 500~1,000万円を頭金として用意 |
諸費用 | 新築:物件価格の4~7%が目安 中古:物件価格の7~10%が目安 | 新築なら200~350万円、中古なら350~500万円かかる |
合計 | 物件価格の15~30%用意できれば安心 | 700~1,500万円用意 |
ただし、必要な自己資本は物件評価や購入者の属性(勤務先・年数や役職)次第で、どの程度の融資を受けられるかによって変動します。
自分が必要となる自己資金の目安を知りたい場合は、試しに購入希望に近い物件をもとに、金融機関に融資面談を申し込んでみるとよいでしょう。
2-4.インフレリスクに強い
不動産はお金の価値変動が起こっても資産価値の変化が少なく、インフレが起こっても価値が低下しにくい特徴があります。
土地や建物などの不動産は、現物そのものに価値がある資産です。
例えばある企業の株価の動きと比較すると、「○○県の△△㎡のアパート」など条件を固定してしまうと、ほとんど物件価格には変動がないのがお分かりいただけるかと思います。
物件価格だけでなく、賃貸経営上は「賃料」の安定さも注目に値します。
ここ10年ほどで、食品やガソリンなどの価格の変動と比べてみると、上記のような「○○県の△△㎡のアパート」と同じ条件であれば、10年前とそこまで賃料に動きはないでしょう。
特に「レジ物件」居住用の物件は生活に必要不可欠な資産であるため、資産価値は経済情勢に左右されにくいといわれています。
2-5.自由な時間が増える
賃貸経営は「不労所得」という表現をされるように、一度購入してしまえば、オーナー自身の時間を使わずに収入が得られるメリットがあります。
購入するまでは物件選びや融資などのパワーは必要ですが、購入して自動的に賃料が入ってきたら、オーナーがルーチンで行うべき作業はほぼ皆無だからです。
株式投資のように毎日チャートのチェックをする必要もありません。
そのため、会社の副業との相性もよいだけではなく、場合によっては会社員をリタイアし、開いた時間を他にやりたい趣味や社会貢献活動に使うことも可能になります。
賃貸経営をすることで「ライスワーク」ではなく、真の意味での「ライフワーク」に集中できる状態に近づくことは、大きなメリットといえるでしょう。
3.賃貸経営の3大リスク
賃貸経営は大きな額が動く買い物だけに、メリットだけでなく事前にリスクも認識しておく必要があります。
本章では、賃貸経営の代表的な以下3つのリスクを説明します。
- 空室リスク
- 高額修繕費リスク
- 天災リスク
もちろん他にも細かいリスクはあります。
まずは3大リスクを確認いただき「それは避けたい」「怖い」と感じる方は、賃貸経営は慎重に検討した方がいいかもしれません。
※また、リスクの回避方法については次章「4.賃貸経営リスクの回避方法」でも紹介するため、合わせてお読みいただいたうえで、判断してください。
早速一つひとつのリスクについて、具体的に説明してきます。
3-1.空室リスク
賃貸経営で最大のリスクは、空室が発生する可能性があることです。
経営収入は家賃収入に頼ることになるため、空室があれば収入が途絶えます。空室が長引くほど、想定していた収益を得られなくなるリスクがあります。
特に初心者の方からは、物件紹介資料の「満室想定利回り」という、理論上の利回りの高さに目を奪われ、空室リスクが高い物件を買ってしまうという失敗談もよく聞かれます。
現物の買い物である不動産は、「人の動きが少ない」「陽当たりが悪い」など、オーナー努力ではどうしようもない物件の場合は、空室は避けようがありません。
ただし、現実的にはよほどひどい物件を購入しない限り、経営を圧迫するほどの空室リスクは避けられるはずです。なぜなら、日本賃貸住宅管理協会によると、全国の入居率は下表のように90%は越えているからです。
<2021年度の入居率>
入居率 | |
---|---|
全国 | 96.2% |
首都圏 | 97.8% |
関西圏 | 95.9% |
その他 | 92.7% |
出典:(公財)日本賃貸住宅管理協会「第26回 賃貸住宅市場景況感調査『日管協短観』」
ただし、どのような物件であっても、賃貸経営には空室リスクは常につきまといます。
経営となるため「手持ち物件のなかで、空室が○%発生しているとするならば」とあらかじめリスクを盛り込んで、収益シミュレーションをするようにしましょう。
3-2.高額修繕費のリスク
賃貸経営では、年数が経過するにつれて建物が老朽化してしまいます。
老朽化した部分は修繕が必要になることから、その度に数十万円~数百万円の修繕費がかかります。
修繕費そのものがリスクというわけではなく、あらかじめ収支計画に修繕費を組み込んでおかない場合に「突発支出」となり、経営を圧迫するリスクがあるという意味です。
初心者の方からは、利回りの良い物件を購入してしまい、数年で大規模修繕をする必要に直面し、資金が捻出できないという失敗談もよく聞かれます。
一般的なアパートでは、物件の美観や性能を維持するために、大規模修繕が10~15年程度の頻度で必要になります。アパートなどの一棟物件は経営規模が大きい分、修繕費も数百万円単位のまとまった金額になり、その費用はオーナーが負担する必要があります。
修繕費を削減しようとして建物の管理を怠った場合は、賃貸付けが困難となり、格安の賃料で募集をすることにもつながります。
そうなると「安定収入」とはいえない状態に陥りかねません。
ローンの返済額などとともに「○年後に△円の修繕の必要があるけど、経営は維持できるだろうか」と中長期の目線で考えることが重要でしょう。
3-3.地震などの天災リスク
賃貸経営には、地震や火災、台風などの災害リスクもつきものです。
災害によってマンションが損傷や倒壊した場合は、不動産価値の減少や資産の消失も考えられます。
契約内容次第では、入居者に対して補償が必要なこともあります。
天災については地震、台風、洪水などの自然災害、及び自然災害に含まれる火災や土砂災害などのリスクも該当します。
もちろんリスクが少ない立地や地域を選んだとしても、オーナーとしては常に「自分の持ち物件が災害に遭ったら」という覚悟を持つことが重要でしょう。
天災リスクを考慮せずに物件選びをした場合、いざ災害が起こってしまうと、ローンの負債を抱えながら、何も収入が得られない状況に陥ってしまいます。
4.賃貸経営3大リスクへの回避方法
前章で紹介したリスクの回避方法をお知らせします。
なお賃貸経営の特徴は「リスクの大半は購入前に予想ができ、対応可能である」という点です。株価などと違い、オーナーがコントロールできる範囲が多い点も特徴です。
したがって、賃貸経営が向いていない人はこのようなタイプです。
【賃貸経営が向いていない人のタイプ】
- 先々の予測をするのが苦手・苦痛になるタイプ
- 大きな課題や困難に直面すると、対策が考えられず頭が真っ白になるタイプ
- 他者に任せることが苦手で、全てを自分でコントロールしたがるタイプ
このタイプは賃貸経営に失敗しやすいなどは一概には述べられませんが、本章をお読みいただき「無理そう」や「面倒くさそう」と感じられた方は、他事業の並行経営なども検討されると良いかもしれません。
4-1.空室リスクへの対応方法
空室リスクを回避したいなら、まずは立地や物件そのものの選び方を重視すべきです。
「人気のエリア」「デザイナーズ物件」など、賃貸付けがしやすい物件を選び、「人の動きがないエリア」や「築古物件」など、オーナーの努力が利きにくい物件は避けた方が無難です。
例えば、オーナー努力がしにくい物件とは以下のようなものです。
【オーナー努力で空室が埋まりにくい物件特徴】
- 駅から遠すぎる(交通手段もなく、駐車場もない)
- 陽当たりが悪い
- 周囲から目線を遮ることができない
- 周辺の環境が悪い
- 立地に災害リスクがある
ただし、「人気エリア・新築」など、誰もが入居したがる物件を選んでしまうと、利回りが低くなってしまい、賃貸経営上のメリットが享受できにくくなります。
そのため、ある程度の条件を満たす物件を選ぶことと並行し、賃貸募集に強い会社を探すことも重要になります。
オススメは物件管理を任す管理会社を探す際に、賃貸付けが強い会社を選ぶことです。
管理会社であれば物件の特徴やメリット・デメリットを熟知したうえで募集をかけられるため、空室が出てから募集会社を選ぶより効率が上がるでしょう。
▶▶管理会社の選び方についてもっと知りたい方はこちらの記事もお読みください。
4-2.修繕リスクへの対応方法
修繕リスクについては、あらかじめ「いつ頃どんな修繕を施すと、物件の資産価値が低下しないか」を見込んでおくことです。
空室リスク同様、修繕の必要がない物件を購入する方法もありますが、それだけではやはり利回りが物足りなくなってしまいます。
自分が負担すべき修繕費+物件価格という「経費」と、自分が所持している期間で得られる賃料という「収入」を天秤にかけたうえで、最適な物件を選ぶ必要があります。
また、区分マンションを購入する際にも、購入後の修繕積み立て費の変化にも注意が必要です。
具体的には「築古・戸数が少ないマンションの区分」ケースです。購入時には修繕積み立て費が少なかったとしても、大規模修繕計画が持ち上がった際に、オーナー一人あたりの負担額が増える傾向にあります。
区分を購入する際には「修繕積み立て計画」を確認し、大規模修繕に向けての資金があることを確認し、物件所持中に急にオーナー負担が増加することがないかをチェックしましょう。
4-3.災害リスクへの対応方法
災害リスクに備えるためには、物件及び物件がある立地のリスクを確認し、リスクを最小限に抑えられる物件を購入するようにします。
リスクチェックの主な観点は以下の通りです。
【災害リスクのチェック方法】
- 国土交通省の「ハザードマップ」でその地域の洪水や土砂災害のリスクをチェックする
- 「震度6強~7程度の地震で倒壊や崩壊しない」という構造基準に該当する「新耐震基準(建築確認の完了日が1981年6月1日以降981年6月1日以降)」の物件を選ぶ
- 木造や築古物件を避ける
- 低層階物件や住宅密集地を避ける
ただし、リスクが低い物件を選んだとしても、災害に遭遇するリスクは避けられません。
そのため、物件選びだけではなく、火災保険や地震保険への加入も行うことを推奨します。保証内容は保険会社やプランによってさまざまあるので、自身で選ぶ自信がない方は保険選びまでアドバイスをしてくれる管理会社を選ぶとよいでしょう。
5.賃貸経営の準備の3ステップ
前章までで、賃貸経営のメリットやリスクも踏まえて「やってみたい」と思った方は、いよいよ賃貸経営者としての準備を進めましょう。
本章では実際の活動に移す前の3つの準備ステップを解説します。
- 必要な知識を身につける
- 賃貸経営の目的や目標を明確にする
- 収支計画を練る
では、具体的に一つずつ説明を進めます。
5-1.必要な知識を身につける
いきなり活動を開始するのではなく、不動産投資や賃貸経営に必要な知識を獲得するようにしてください。
前章で説明したように、賃貸経営のリスクは事前に知識があれば避けられるケースが多いため、知識習得は必須だからです。
物件の選び方や物件の購入手順から、管理や税金といった知識まで、アパート経営に必要な知識はさまざまです。
賃貸経営や不動産投資の知識が学べる主な手法は以下の通りです。
【賃貸経営の知識の身に付け方】
- 書籍を読む
- インターネットで調べる
- 講習会や講座、セミナーに参加する
- 不動産業者と話をする
- 大家同士の交流会に参加する
おすすめの学習方法は、上記を上から順番に行うことです。
なぜなら不動産業者や交流会は、会社や個人の不動産投資や賃貸経営へのポリシーが色濃く反映されているからです。
例えばある不動産会社は「ワンルーム経営がおすすめ」と主張するかもしれませんし、ある大家さんは「築古中古アパートがおすすめ」と勧めるかもしれません。
このように賃貸経営は個人の考え方や財務状況によって、成功パターンが違います。
そのため、まずは書籍や講座の中立な情報で学んで基礎知識を得た上で、他者との交流を通じて学ぶステップがおすすめです。
5-2.賃貸経営の目的や目標を明確にする
賃貸経営は人によって目的はさまざまなので、自分の言葉で「なぜ賃貸経営を行うのか」という目的を明確化することが重要です。
目的が曖昧であると、賃貸経営の要所で発生するオーナーとしての判断にブレが生じてしまいます。
例えば「どんな特徴の物件をどんな順序で買うべきか」「どの金融機関から融資を売るべきか」「どの条件だけは譲らないのか」など、自分の目的・目標に応じて速やかに判断する必要があります。
例えば、あえて数ある事業のなかで「賃貸経営」を選ぶかの目的例は以下の通りです。
【賃貸経営の目的例】
- 実物資産への資産分散をしたい
- インフレ(物価上昇)リスクのヘッジをしたい
- 安定したインカムゲイン(定期収入)の獲得を獲得したい
- 本業をリタイアしたあとの収入源を構築したい
- レバレッジ効果(借入による資金効率上昇)を活用した効率的な投資をしたい
- タックスコントロール(相続税、所得税など)をしたい
「賃貸経営」を目指すということは、ある意味自分は経営者になるということです。
経営者が事業のミッションやビジョンをつくるように、賃貸経営をする前に目的を確かなものにしておけば、10年・20年と続くであろう賃貸経営のプロセスも頓挫することなく進めていけるでしょう。
5-3.収支計画を練る
賃貸経営は、長期にわたる事業です。将来にわたって収支がどうなるかをシミュレーションし、全体の計画を立てることがとても大切になります。
収支計画を立てないと、初年度は黒字になったとしても数年後から赤字になってしまい、その時に対策をしても後手に回って効果がないこともあるからです。
収支とは賃貸経営の収支から支出を引いた額です。
この収支を数年にわたってシミュレーションすることが、収支計画となります。
【収支計画例】
1年目 | 2年目 | 3年目 | 4年目 | ||
---|---|---|---|---|---|
収入A | 家賃合計 | 868,000 | 868,000 | 868,000 | 868,000 |
駐車場賃料合計 | 0 | 0 | 0 | 0 | |
礼金 | 70,083 | 0 | 0 | 0 | |
収入合計/月 | 938,083 | 868,000 | 868,000 | 868,000 | |
支出B | 建物保有税 | 28,131 | 28,131 | 28,131 | 24,104 |
土地保有税 | 22,969 | 22,969 | 22,969 | 22,969 | |
共益費 (共用電気・水道など) | 5,000 | 5,000 | 5,000 | 5,000 | |
管理手数料 | 43,400 | 43,400 | 43,400 | 43,400 | |
修繕積立金 | 25,000 | 25,000 | 25,000 | 25,000 | |
建物管理業務費 | 20,370 | 20,370 | 20,370 | 20,370 | |
ローン返済額 | 351,138 | 351,138 | 351,138 | 351,138 | |
支出合計/月 | 496,008 | 496,008 | 496,008 | 491,981 | |
収支 | 月額収支(A-B) | 442,075 | 371,992 | 371,992 | 376,019 |
年額収支 | 5,304,900 | 4,463,904 | 4,463,904 | 4,512,228 | |
年間収支累計 | 5,304,900 | 9,768,804 | 14,232,708 | 18,744,936 |
「収支計画書」を見れば、収入の予測や経費の発生予測の見通しが立ちます。
計画段階で、収支のバランスが取れていないと判明した場合は、希望物件、設備・仕様または、ローンなどの資金計画を再検討していきます。
6.賃貸経営を進める4ステップ
賃貸経営の準備ができたら、実際に賃貸経営を行うための活動に移ります。
本章では実際の活動を4つのステップで紹介します。
- 物件選びをスタートする
- 買い付け・融資・契約を進める
- 管理会社を探す
- オーナーとして必要な活動を行う
では、具体的に一つずつ説明を進めます。
6-1.物件選びをスタートする
物件選びをスタートさせるためには、まずは前章の収支計画が成立しやすい物件の条件を言語化します。
【立地・建物種別】
- 希望エリア
- アパート、マンション、区分、戸建て
- 築年数、建築様式(RCや木造)
【コスト目安】
- 希望価格帯
- 自己資金額
- 借り入れ希望額や希望金融機関
【その他】
- 空室かオーナーチェンジか
- 建物や室内設備に特定の希望があるか
- 建物や土地の権利の指定があるか(「所有権に限る」など)
このような条件をまとめておくメリットは、仲介業者に条件を渡すことで、自力で探す以外に紹介してもらうルートを確保できることです。
世の中に出回っている物件を全て自力でチェックするのはかなりのパワーを要するため、条件を提示することで効率的に物件を探すことができるでしょう。
6-2.買い付け・融資・契約を進める
条件に叶った物件があったら、仲介会社を経由して申し込み(通称「買い付け」)を行います。
通常は交渉権利は「一番手の買い付け」に渡ることが多いため、そのためにも物件選びの際に条件をまとめておくことで、迷わずに速やかに購入意思を固めることができます。
その後は融資のプランや買い主・仲介会社とのやり取りによってプロセスはさまざまです。
物件の価格交渉や詳細資料をもとにした不明点のやり取りが発生し、並行して融資を受ける場合は金利・融資年数などの審査も進めます。
特に融資の条件は収支計画に大きく影響を与えるため、条件に見合う金融機関が見つからなかったら、申し込みを入れたあとでも商談ストップさせる判断も必要となります。
6-3.管理会社を探す
賃貸経営における管理の仕事内容は、大きく分けてと「入居者の管理」と「建物の管理」があります。
それらを依頼する管理会社を探す必要があります。
【入居者管理の内容例】
- 家賃の集金
- 入居者の募集・契約
- 要望・クレーム対応
【建物管理の内容例】
- 清掃
- 照明、エレベーター等設備の点検
- 建物のメンテナンス
区分マンションの場合は、「入居者管理」だけで大丈夫ですが、一棟モノの場合は、「建物の管理」が必要となります。
管理会社のなかでも「リフォームが得意」「賃貸募集が得意」「売却までサポート」など、得意分野が異なります。
物件購入の際にお世話になる仲介会社は、ある意味短期的な取引ですが、管理会社は中長期に及ぶ賃貸経営のパートナーとなります。
どのようなサポートを期待しているかを明確にしたうえで、しっかりと信頼できる管理会社を探すようにしましょう。
6-4.オーナーとして必要な動きをとる
3.賃貸経営のメリットで紹介したように、物件を入手したあとは、トラブルや退去がない限り、不動産オーナー自身が対応することは、ほぼありません。
ただし、「室内設備の故障への対応」「入居希望者の最終審査」「更新時の条件変更有無」など、管理会社は一次対応はするものの、最終判断はオーナーとなります。
一時的な利益目線だけでなく、中長期な安定経営をめざす観点で、的確な判断をするようにしてください。
また建物修繕や室内リフォームなど、物件のバリューアップをはかる施策は常に考え、必要に応じて管理会社に相談するようにしましょう。
7.賃貸経営をしたいならまずはスモールスタートがおすすめ!
ここまで賃貸経営のノウハウをお伝えしてきましたが、もしまだ物件をひとつも持っていない場合は、無理のない予算の区分マンションなどで、一連のオーナーになるまでのプロセスを試すことがオススメです。
なぜなら不動産は投資のなかでも比較的歴史が長く、独特の商慣習があるため、初心者は戸惑うことが多いからです。いきなり本命の物件にチャレンジすると慌てて判断が鈍るリスクがあるため、手頃な物件でトライアルをすることがおすすめなのです。
さらには、賃貸経営は「仲介会社」「金融機関」「司法書士」「税理士」などステークホルダーも多いため、株式投資のような自分一人だけで進められる世界でもありません。
そのような一連のプロセスやそこで必要となる関係者を実践的に把握することは、賃貸経営者としてスムーズに立ち上がる良い経験になるでしょう。
“スモールスタートで一連の賃貸経営のプロセスを踏むメリット”
- どのプロセスでどのような書類が必要となり、どの程度の時間を要するかが分かる
- 仲介会社、金融機関、管理会社などのパートナー開拓を行うことで、次に大きな物件を買う準備や体制が整う
- 致命的ではない小さい失敗や反省をし、それらを振り返ることで、賃貸経営で自分が気を付けるべき点が把握できる
どのような経営や投資にも共通ですが、事業特性によっては「向き・不向き」はあります。
ただし不動産投資は動くお金が高額であることや、融資を受け負債を抱えるケースが多いため、いきなり大きな物件に手を出して適性確認してしまうと、思わぬ落とし穴があることもあります。
特に事業として中長期の目線で取り組んでいきたいのであれば、ぜひ無理のない範囲の物件でスモールスタートして、賃貸経営の世界を体感することがおすすめでしょう。
8.まとめ
今回は、賃貸経営に興味をお持ちの方に向けてのノウハウをまとめました。
あらためて当記事のポイントを振り返ります。
・賃貸経営の種類は以下の3つです
- アパート・マンション賃貸経営
- 区分マンション賃貸経営
- 戸建て賃貸経営
・賃貸経営のメリットは以下の5つです
- 安定収入が得られる
- 税金対策ができる
- 自己資金が抑えられる
- インフレリスクに強い
- 自由な時間が増える
・賃貸経営のリスクと回避方法は以下の通りです
- 空室リスク
→オーナー努力で回避できないリスクがある物件を選ばない - 高額修繕費リスク
→あらかじめ修繕費を経営シミュレーションに組み込む - 天災リスク
→リスクを事前に調べた上で、保険に加入する
・賃貸経営の準備及び実務は以下のステップで進めます
- 必要な知識を身につける
- 賃貸経営の目的や目標を明確にする
- 収支計画を練る
- 物件選びをスタートする
- 買い付け・融資・契約を進める
- 管理会社を探す
- オーナーとして必要な活動を行う
「不労所得」の代名詞である賃貸経営はメリットは多いものの、高額のキャッシュが動くこともあるため、リスクヘッジも必要です。
ただし賃貸経営のリスクのほとんどは、事前に知識を仕入れられれば回避が可能です。
ぜひ当記事で賃貸経営のノウハウを学んでいただき、賃貸経営オーナーへの一歩目を踏み出していただければ幸いです。
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