賃貸物件で孤独死が起きたら?大家の対応・リスク・保険まで徹底解説

賃貸で孤独死が起こった時の対処法を解説

「最近、入居者の年齢が上がってきたと感じている…」
「もし物件内で何かあったらと考えると、不安になる」

そんな不安を抱えているオーナーは少なくありません。高齢者の単身世帯が増える昨今、孤独死は他人事ではなく、賃貸経営における大きなリスクのひとつです。

この記事では、孤独死が発生した場合の対応ステップや、損害を最小限に抑えるための備え、そして再発防止のための予防策まで、大家に必要な情報をわかりやすく解説していきます。いざという時に慌てないためにも、今のうちから備えを見直してみてください。

高齢の入居者対応や、孤独死リスクが心配な方は、当社までご相談ください。物件の状況に応じた対策をご提案いたします。

この記事で分かること
  • 高齢者単身世帯の増加による孤独死リスク
  • 孤独死発生時の初動対応フロー
  • 原状回復・特殊清掃にかかる高額費用
  • 相続放棄による費用請求の困難化
  • 契約・保険・見守りによる事前対策
    賃貸管理完全ガイド
    依頼すべき理由

    賃貸物件で孤独死が増えている背景

    少子高齢化や核家族化が進むなかで、一人暮らしの高齢者が増えています。また、結婚という選択肢を持たないZ世代の増加(=単身者世帯の増加)も、孤独死のリスクにつながっています。

    それに伴い、不動産オーナーにとって、賃貸物件での孤独死がとても身近な問題になってきました。

    高齢者の推移と見通し

    (出典:総務省統計局「国勢調査」、国立社会保障人口問題研究所「日本の世帯数の将来推計(全国推計)(令和6年推計)」

    上記の予測では、2025年現在の高齢者単身世帯は14.2%とされていますが、2050年には20.6%とされています。しかし、昨今このような行政の予想よりもはるかに急ピッチで高齢化は進行しており、日本全体の課題となっています。

    また、警察庁の統計によると、2024年上半期(1~6月)だけでも、自宅で亡くなった一人暮らしの方は3万7,227体にのぼります(全体の36.2%)。

    驚くべきは、そのうち発見まで4日以上かかったケースが約4割にものぼるという点です。
    一般的に、亡くなってから4日以上経過して発見された場合は腐敗が進み、特殊清掃が必要になるケースが多く、結果として事故物件として扱われる可能性も高まります。

    警察庁孤独死データ

    (出典:警察庁)

    孤独死は決して他人事ではなく、賃貸経営においても現実的なリスクとして大家が真剣に向き合わなくてはならない問題です。


    孤独死が発生したときの大家の対応

    孤独死発生時の対応

    では、孤独死が発生した場合、どのように対応したらよいのでしょうか。

    1. 現場で救急車・警察へ通報
    2. 遺族や保証人、緊急連絡先へ連絡
    3. 現場検証で死因の特定
    4. 原状回復と残置物精算

    本章では、実際に孤独死が発生した際の基本的な流れと対応のポイントを順を追って紹介していきます。

    1. 現場で救急車・警察へ通報

    • 入居者と連絡が取れない
    • 郵便物が溜まっている
    • 異臭がする
    • 洗濯物が干しっぱなし

      上記のような異変を感じたら、無理に物件へ立ち入ることは避けましょう。救急や警察へ連絡し、室内確認の立ち合いを依頼しましょう。

      特に死亡が疑われる状況では、現場保存の観点からも、勝手に部屋を開けたり遺体に触れたりしてはいけません。通報後は、救急隊や警察の到着を待ち、指示に従って冷静に対応することが重要です。

      万が一、親族からの安否確認などで先に孤独死を発見してしまった場合は、速やかに救急・警察へ連絡するようにしてください。

      2. 遺族や保証人、緊急連絡先へ連絡

      警察による現場確認が済んだら、賃貸契約書に記載されている保証人や緊急連絡先に速やかに連絡します。

      相手がすぐに出なかったとしても、日時・方法・内容などの連絡履歴を記録しておくことが大切です。

      もしも、連絡が取れないまま何かしらの急ぎの手続きを進めなくてはいけない場合、後から「連絡したが応答がなかった」証拠として役立ちます。

      3. 現場検証で死因の特定

      警察は現場検証を通じて、死亡の原因を詳しく調べます。室内で亡くなっていた場合は、必要に応じて家宅捜索が行われることもあります。
      こうした初動捜査は、死因を特定するうえで非常に重要なプロセスです。自然死、自殺、他殺などの死因によって、その後の対応は大きく変わります。

      たとえば、自殺や事件性がある場合は、「心理的瑕疵」に該当する可能性が高く、次の入居者への告知義務や賃料の設定にも影響します。

      4. 原状回復と残置物精算

      警察による調査が終わった後、室内に残された遺品や家具、生活用品などの整理や撤去が必要になります。誰がどこまで負担するかは、契約書の内容や死因によって異なります。

      特に死後の発見が遅れた場合、床や壁への体液の浸透によって特殊清掃やリフォームが必要になるケースも。

      また、残置物の撤去費用や原状回復費については、保証人や相続人への請求ができない場合、大家が負担する可能性もあるため、対応前に契約内容や状況をしっかり確認しておきましょう。

      高齢の入居者対応や、孤独死リスクが心配な方は、当社までご相談ください。物件の状況に応じた対策をご提案いたします。


      保証人や遺族に損害賠償請求できるのか

      孤独死が発生すると、「通常の原状回復」だけでは済まないケースが多くあります。

      体液が床材に浸透している場合は特殊清掃やリフォームが必要になり、数十万円から高額になることもあるでしょう。早期発見できるかどうかでも費用に大きく差が生じます。

      特殊清掃・修繕にかかる費用の目安

      2024年12月に発表された「第9回孤独死現状レポート(日本少額短期保険協会・孤独死対策委員会)」によれば、

      • 残置物処理費の平均損害額:約29.5万円
      • 原状回復費の平均損害額:約47.4万円

      となっており、想定以上に高額になるケースもあることがわかります。

      実際のデータでは、以下のような費用幅が確認されています。

      残置物処理費用原状回復処理費用
      最大損害額1,913,210円4,546,840円
      最小損害額1,080円3,300円

      (出典:「第9回 孤独死現状レポート(2024年12月 日本少額短期保険協会 孤独死対策委員会)」)

      原状回復費用は、金額の振れ幅が特に大きいのが特徴です。遺体の腐敗が進み、床や壁の張り替えに加え、脱臭・除菌・内装工事が必要になるケースではここまで膨らむこともあります。

      死因①自殺の場合

      自殺があった物件は、心理的瑕疵物件と判断される可能性が高く、次の入居者へその事実を契約前に告知する義務が発生します。

      室内には血液や体液の付着があることも多く、日数が経過していた場合には床材・クロス張替に加えて、特殊清掃・脱臭・消毒作業も必要になります。

      これらの費用については、契約内容や状況によって、保証人や遺族に請求できるケースもありますが、相続放棄された場合などは請求が難しくなるため、あらかじめ確認と備えが欠かせません。

      死因②病死・不慮の事故の場合

      高齢の入居者が持病などによって自然死したケースでも、発見が遅れれば遺体の腐敗や臭気の発生、体液の浸透といった影響が出ることがあります。

      とくに夏場など気温が高い季節には、ほんの数日でも特殊清掃が必要になることが少なくありません。

      費用がかかった場合、その負担を誰がどこまで請け負うかは、契約書の内容や相続人の対応次第です。後手に回ると、自殺と同じく大家側の持ち出しになるケースもあるため、状況の整理と確認は早めに行っておきたいところです。

      死因③他殺の場合

      他殺事件が発生した物件は、心理的瑕疵の中でも最も重い部類に該当します。また、その事実が報道などで広まることで、周辺住民にも強い影響を与えることがあります。

      原状回復には特殊清掃やリフォームが必要になるだけでなく、物件のイメージが著しく損なわれるため、長期にわたる空室や賃料の大幅な下落も覚悟しなければなりません。

      他殺の場合でも、加害者に対して損害賠償請求を行うことは法的には可能ですが、実際にはハードルが非常に高いのが現実です。加害者が刑事事件で服役中であったり、十分な資力がなかったりするケースが多く、請求が通っても回収できないまま終わることがほとんどです。


      孤独死は事故物件?告知義務のルール

      孤独死=事故物件ではない

      孤独死が発生した賃貸物件でも、すべてが「事故物件」として扱われるわけではありません。事故物件かどうかの判断は、「どのような死因で、どのような状況だったのか」が大きなポイントになります。

      「孤独死=事故物件」になるとは限らない

      孤独死があったからといって、必ずしも事故物件扱いになるわけではありません。

      国土交通省のガイドラインでも、自然死や老衰による死、持病による死亡などで、発見が早く遺族対応も問題なかった場合は「告知不要」とされています。

      室内で亡くなっても告知不要なケース

      以下のようなケースでは、たとえ室内で亡くなっていたとしても、告知義務が発生しないことがあります。

      • 死因が老衰や持病などの自然死である
      • 死後数日以内に発見されており、腐敗や異臭が出ていない
      • 特殊清掃や原状回復の必要がなかった
      • 事件性がないと警察から判断されている

        このように、孤独死であっても「次の入居者が心理的に抵抗を感じない」と判断される場合には、事故物件扱いにはなりません。

        心理的瑕疵と判断されると告知が必要になる

        「事故物件」とされるのは、以下のいずれかに該当する場合です。

        • 物理的瑕疵:雨漏りや構造の欠陥など
        • 環境的瑕疵:近隣の騒音・悪臭・反社会的勢力の存在など
        • 法的瑕疵:法令違反による制限
        • 心理的瑕疵:自殺、他殺、孤独死など、心理的な抵抗を感じさせる事案

        このうち、孤独死が該当する可能性があるのは「心理的瑕疵」です。入居希望者が「その部屋で亡くなった人がいる」と知って不安を感じるようなケースでは、告知義務が生じることになります。

        判断基準は、自殺や他殺、死後長期間放置されたケースなど、心理的抵抗感が強くなる事情があったかどうかがポイントです。

        高齢の入居者対応や、孤独死リスクが心配な方は、当社までご相談ください。物件の状況に応じた対策をご提案いたします。


        相続放棄すれば支払い義務はない

        相続放棄すれば支払い不要

        孤独死により発生した特殊清掃や原状回復にかかる費用は、原則として入居者の相続人に請求することが可能です。

        しかし、相続人が相続放棄の手続きを行った場合、その義務も引き継がれなくなるため、請求は困難になります。

        相続放棄されると費用請求はできない

        相続人が家庭裁判所で相続放棄の手続きを行い、それが正式に受理されると、その人は故人の財産だけでなく、借金や未払い金などの義務も一切継がないことになります。

        そのため、家賃滞納や原状回復費、特殊清掃などにかかった費用をその相続人に請求することはできなくなります。

        支払い義務が消えるのは放棄が成立したあと

        相続放棄は、家庭裁判所に「相続放棄申述書」を提出し、正式に「受理」された時点から効力が発生します。

        つまり、放棄が成立する前に連絡・請求したものに関しては、状況によって請求が認められる可能性もあるため、放棄の意向があっても、早い段階で対応し記録を残しておくことが大切です。

        たとえば、滞納家賃や清掃費について、放棄成立前に内容証明などで請求していた場合、それが有効と判断されるケースもあるとされています。

        相続人がいない場合は大家が負担することも

        相続人が見つからない、あるいは全員が相続放棄した場合、その故人の財産や義務は「国庫に帰属」することになりますが、清掃や修繕などの実費はその前に発生してしまいます。

        このようなケースでは、誰にも費用を請求できないため、最終的に大家が自己負担せざるを得ません。

        孤独死に備えるリスク軽減策

        • 賃貸契約時に保証会社を挟む
        • 万が一の費用をカバーする保険に入っておく
        • 孤独死時の取り決めを契約条項に盛り込む

        いざ直面してから焦ることのないよう、契約時から対応をしておくことが得策です。


        孤独死リスクに備える保険はどれ?

        孤独死に備えた保険

        孤独死による原状回復費や家賃損失のリスクに備えるためには、保険の活用が効果的です。とはいえ、「どの保険に入ればいいのか?」「何を補償してくれるのか?」と疑問に思う方も多いでしょう。

        ここでは、保険の種類や補償範囲、実際の活用例までを紹介します。

        選ぶべき保険は「家主型」か「入居者型」か

        孤独死リスクに備える保険は、大きく分けて「家主型」と「入居者型」があります。

        「大家型」と「入居者型」保険の違い

        • 家主型:大家自身が加入し、孤独死などによる特殊清掃費や空室損失を補償してくれるものです。

        • 入居者型:入居者に加入してもらう保険で、事故が起きた際の遺族の費用負担を軽減できます。

        家主型は、事故発生後もスムーズに対応できるため、管理を大家側でしっかり行いたい場合に向いています。入居者側を選ぶ際には、加入範囲やきちんと継続・更新しているか確認することが重要です。

        物件の規模や入居者層に合わせて、どちらか一方、または両方を組み合わせて備えるのが効果的でしょう。

        保険でカバーされる費用とされない費用

        孤独死に対応する保険でも、すべての費用が自動的に補償されるわけではありません。以下のように、カバーされる費用とされない費用の違いを把握しておくことが重要です。

        カバーされる主な費用例
        • 特殊清掃費(消臭・消毒・撤去など)
        • 原状回復費(床材や壁紙の張り替えなど)
        • 空室期間中の家賃損失
        • 残置物の撤去・整理費
        カバーされないことがある費用例
        • 通常のリフォーム費用(保険で認められる範囲外のグレードアップ)
        • 精神的損害や風評被害による損失
        • 保険加入前に発生した事故

          保険会社や商品によって補償範囲が異なるため、契約前に細かく条件を確認しておくことが大切です。

          孤独死発生に伴う支払保険金額

          以下は、実際に孤独死が発生した賃貸物件において発生した損害額と、保険会社から支払われた保険金の金額です。

          残置物処理費用原状回復処理費用
          平均損害額295,172円474,170円
          平均支払額224,365円315,349円

          (出典:「第9回 孤独死現状レポート(2024年12月 日本少額短期保険協会 孤独死対策委員会)」)

          上記のように、全額が補償されるとは限らず、補償範囲や上限額によっては一部自己負担が生じるケースもあります。

          とはいえ、保険未加入なら全額自己負担だったことを思えば、一部でも補償されたのは大きな助けです。
          多少の自己負担があっても、保険の備えがあるだけで安心感はまったく違います。

          高齢の入居者対応や、孤独死リスクが心配な方は、当社までご相談ください。物件の状況に応じた対策をご提案いたします。


          孤独死の予防策と見守りサービス

          孤独死見守りサービス

          孤独死は「起きてから対応する」のではなく、「予防」が何よりも重要です。高齢者や単身者の入居が多い物件では、日常のつながりや見守り体制がリスクを大きく減らすカギです。

          孤独死を防ぐには日常のつながりが大切

          孤独死の予防には、一人で暮らす入居者を孤立させないことが効果的な策です。
          管理会社やオーナーが定期的に声をかけたり、郵便物や洗濯物の様子を日頃から気にかけるようにしましょう。ご近所とのちょっとした挨拶や交流も、早期発見につながることがあります。

          利用できる見守りサービスの種類・特徴

          現在は、大家や管理会社でも導入しやすい見守りサービスが増えています。

          • センサー式(人感・ドア開閉):動きがないと通知される
          • 電力モニター型:電気の使用状況から異常を検知
          • 定期連絡サービス:安否確認を代行してくれる
          • 宅配物の見守り:新聞や宅食が溜まっていたら連絡が入る

            それぞれ費用が異なるので、物件や入居者に合わせて選ぶのがコツです。

            地域や行政支援の導入

            自治体によっては、見守り体制の構築を支援しています。

            たとえば、郵便局や新聞配達員、ガス業者などと「見守り協定」を結び、異常時に通報できる体制を整えている例もあります。見守り機器の導入補助金を用意している市区町村もあるので、一度、地域の福祉課などに相談してみてください。


            孤独死に備えた、これからの賃貸経営術

            孤独死に備えるには

            高齢化や単身世帯の増加が進むなか、孤独死は誰の物件でも起こり得るリスクです。

            発生後のトラブル拡大防止のため、日々の賃貸経営でできる具体的な対策を3つ紹介します。

            孤独死に関する取り決めは契約書に記載する

            孤独死が発生した際の対応や費用負担を賃貸借契約書に明記しておくと、いざというときのトラブルを防げます。

            • 緊急連絡先の明記と定期的な更新の同意
            • 一定期間連絡が取れない場合の入室・安否確認に関する同意
            • 死亡時の遺品整理や残置物処理に関する家主対応の同意
            • 保険の加入および更新時に保険証書のコピーを提出する旨の同意

            緊急連絡先は定期的に確認する

            たとえ契約書に盛り込んだとしても、入居時に提出された緊急連絡先や保証人の情報が古い状態のままのケースがあります。入居中の確認を怠り、いざという時に連絡がつかず、遺品整理や費用請求が滞るケースも実際にみられます。

            そのため、年に1回程度の見直しや更新のお願いをルール化しておくと安心です。メールや掲示などで「情報の変更があれば連絡してください」と定期的にアナウンスすることも効果的です。

            管理会社と事前に対応の流れを決めておく

            管理会社を入れている場合、オーナーが孤独死の現場を発見することは少ないでしょう。

            そのため、「万が一のときの動き方」について管理会社と事前に共有しておくことで、現場対応・連絡・清掃・保険手続きなどがスムーズになります。


            まとめ

            孤独死のまとめ

            高齢の単身入居者が増える今、孤独死はどの物件でも起こりうるリスクです。
            実際に起きた際は、現場対応や原状回復、費用の請求など、オーナーの負担は少なくありません。

            「契約書の明記」「緊急連絡先の更新」「管理会社との連携」など、事前の備えが重要です。
            いざという時に慌てないためにも、何も起きていない今こそが見直しのタイミングです。

            高齢の入居者対応や、孤独死リスクが心配な方は、当社までご相談ください。物件の状況に応じた対策をご提案いたします。

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