「アパート経営は、年収でいくら稼げるのか?」
「家賃収入だけで食べていけるのか?」
アパート経営を検討している方にとって、最も気になるのはその収入面でしょう。アパート経営は物件価格が高い分、オーナーになれる人は限定的にはなりますが、複数の部屋を所有することで1棟で多くの利益を出すことが可能です。
また、区分マンション投資などと違い、自身で収益性をコントロールしやすいのも特徴です。
そこで、この記事ではアパート経営の平均年収や、家賃収入で年収500万円を稼ぐ際のシミュレーション事例について解説します。アパート経営をしていくか否かを判断する検討材料として、ぜひ参考にしてください。
本記事を読んでわかること |
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目次
アパート経営をしている家主の平均年収は542.5万円
年度 | 平成29年 | 平成30年 | 令和元年 | 令和2年 | 令和3年 | 令和4年 |
平均収入額 | 5,170,000円 | 5,181,000円 | 5,208,000円 | 5,400,000円 | 5,427,000円 | 5,425,000円 |
参考:国税庁 申告所得税標本調査結果
国税庁の発表によると、アパート経営をしている方の令和4年度の平均年収は542.5万円となっています。
また、ここ6年の推移を見てみると、アパート経営における平均年収は年々増加していることがわかります。
ただ、この数値は「不動産収入」という枠組みで調査されたものです。
マンション・駐車場・戸建て物件の経営などをしている方の年収も含めて算出されていることを理解しておいてください。
また、各所得階級別の不動産所得者数の割合は以下のようになっています。
所得階級 | 人数 | 割合 |
100万円以下 | 56,000人 | 5.2% |
100万円~200万円 | 199,000人 | 18.8% |
200万円~300万円 | 180,000人 | 17.0% |
300万円~500万円 | 254,000人 | 24.0% |
500万円~1,000万円 | 246,000人 | 23.2% |
1,000万円~2,000万円 | 92,000人 | 8.7% |
2,000万円~5,000万円 | 26,000人 | 2.4% |
2,000万円~1憶円 | 3,000人 | 0.2% |
1億円以上 | 1,000人 | 0.09% |
合計 | 1,057,000人 | 100% |
不動産所得が300万円以下の方も全体の41%おり、その方々はおそらくアパート経営以外の収入口もあると考えられます。
言い方を変えれば「家賃収入だけで生活しているわけではない」ということです。
そのため、アパート経営だけで生活していきたいと考えているのであれば、物件選びを含めた運営計画をしっかり立てる必要があります。
アパート経営における基本収入
「アパート経営=家賃収入」とイメージするかもしれませんが、実は収入の種類はそれだけではありません。
この章では、アパート経営における5つの基本収入について解説します。
1.家賃
家賃は、アパート経営のメインの収入源となります。
入居者がいる限り毎月一定の収入を得ることができ、アパート経営者の年収を左右する大きな要素です。
家賃の金額は、運営するアパートの立地条件・築年数・間取り・周辺の家賃相場などによって幅があります。
また、空き部屋があるとその分の家賃収入は得られないため、そのエリアの需要は十分に把握しておかなくてはなりません。
2.管理費・共益費
家賃と併せて、毎月一定の収入を得られるのが管理費・共益費です。
管理費 | 物件全体の維持・管理費用 物件の管理を外注する場合は、その人件費に充てられる |
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共益費 | 物件の共用部分の維持・管理費用 廊下の電球交換や、外壁の塗装費用など |
管理費・共益費には上記のような違いがあるものの、ほとんどの場合は同じ意味合いで使われます。
それぞれを分けて金額を設定する場合もあれば、どちらか片方にまとめる場合、家賃に含める場合などさまざまです。
ただ、家賃と管理費・共益費を分けて設定することで、アパート経営者にとっては「家賃が安く見え、入居者を集めやすい」というメリットがあります。
また、入居者にとってはその分敷金・礼金や家賃保証料、また契約更新料が下がることがメリットとなることがあるため、基本的には家賃とは別のものとして捉えた方がいいでしょう。
3.駐車場の賃料
敷地内にアパートと駐車場を併設すれば、毎月一定の駐車場賃料を得られます。
とはいえ、駐車場を用意するか否かは、土地の面積や地形の問題もありますので、そのエリアの需要を考慮したうえでよく検討した方がいいでしょう。
都心などの交通の便が良いエリアの場合は駐車場需要が低く、利用者を集められないかもしれません。
ただし、駐車場はアパートの入居者以外の方に貸すことも可能です。
その場合は、住民とのトラブルが起きないよう、騒音や敷地内のポイ捨てなど違う問題にも注意しなくてはなりません。
4.礼金
礼金とは、入居者が物件を契約する際に、オーナーに対して支払うお礼金のことです。
不動産会社と分配する必要はなく、全額がオーナーの収入になります。
礼金の金額は、家賃の1~2ヶ月分が相場です。
同じく、入居者が物件を契約する際に支払うものとして敷金がありますが、こちらはオーナーの収入にはなりません。
入居者が退去する際に家賃の滞納分・物件の原状回復費用の一部を差し引いて返還する必要があり、敷金は賃貸契約の担保債務として預かるものです。
また、昨今は敷金・礼金ゼロで入居者を募集する物件も増えており、これらを徴収することで入居付けが不調になる物件も見られます。
特に礼金は、近隣エリアの傾向を参考にして、徴収するか否かを検討した方がいいでしょう。
5.更新料
更新料とは、満了を迎えた賃貸契約を更新する際に、入居者から支払われるお金のことです。
賃貸契約は2年単位で結ぶのが一般的で、更新料は家賃1カ月分ほどの金額が相場となります。
ただ、西日本の一部地域では、更新料を徴収する文化が根付いていないエリアもあります。
大阪・兵庫は特にその傾向が強くなっていますが、同じ関西でも京都は例外で、家賃2~3ヶ月分ほどの更新料を徴収するところも多いようです。
更新料の徴収は、法的に定められている制度ではありません。
徴収するか否かは、敷金・礼金と同様に近隣エリアの傾向を考慮した方がいいでしょう。
アパート経営における8つの基本支出
冒頭の章で紹介したアパート経営の平均年収は、収入から経費を差し引いた所得金額をもとに算出されています。
この章では、アパート経営における8つの基本支出について解説します。
1.ローン返済費
多くの場合、アパート経営を始める際の初期投資は、自己資金だけでは足りない分を金融機関から融資を受けて賄います。
家賃や共益費・管理費として得た収入の中から、金融機関へのローン返済費に当てなくてはなりません。
家賃収入のローン返済費の比率は、40~50%程度が適切だとされています。
しかし、仮に空き部屋がある状態では収入内でローン返済費が占める比率が上がってしまい、返済が苦しくなってしまうので注意が必要です。
とはいえ、空き部屋リスクを考慮して月々の返済額を低く設定すると、当然返済にかかる機関が長くなってしまいます。
そうなると、物件の劣化が進んでしまい、多額の修繕費用がかかったり、入居者が集まりづらくなったりする可能性もあるでしょう。
そのため、アパート経営におけるローン返済費は、金額・返済にかかる期間を考慮して無理のない返済計画を立てる必要があります。
2.管理委託料
アパートの管理業務を外注する場合は、管理委託料が発生し、総家賃収入の5%ほどが相場です。
電灯を始めとした備品の購入費用も、一般的には管理費に該当します。
管理業務を自身でおこなう場合は委託費用はかかりませんが、その分入退去募集時に交通費・電話代などのさまざまな費用が発生します。
もちろん、管理業務に時間を割く必要があることも考慮し、天秤にかけなければなりません。
3.建物共用部の清掃費
建物の共用部の清掃を業者に委託する際の費用も、アパート経営の基本支出の中の1つです。
管理業務を外注する場合も、基本的には管理会社が外部の清掃会社へ発注します。
そのため、管理委託料と清掃費は別で設定するのが一般的です。
4.修繕費
修繕費は毎月かかるわけではありませんが、アパート経営における支出の中でも金額が大きいものです。
退去者が出た際には部屋の原状回復費用がかかり、台風などの災害によって、突発的に修繕が必要になる場合もあるでしょう。
自然災害で発生した修繕コストは、火災保険によって補填できる可能性がありますが、10~15年ほどに1度は外壁塗装や屋根などの大規模な修繕をおこなう必要があります。
このような建物修繕費は、全てオーナーが負担することになります。
5.メンテナンス費
長きに渡ってアパート経営を行っていくには、建物のメンテナンスに費用を割く必要があります。
例えば、消防点検や、木造アパートの防蟻工事などがこれに該当します。
修繕費と同様に毎月発生するわけではありませんが、あらかじめそのスパンを考慮したうえで収支計画を立てることが大切です。
6.仲介手数料/広告料
不動産会社を経由して入居者を募集した場合、入居者との契約が成立すると同時に不動産会社に仲介手数料を支払う必要があります。
仲介手数料の金額は、借主・貸主の双方合計で家賃1ヶ月分が上限であることが法律で定められています。
そのため、入居者が支払えばオーナーは免除されると思う方も多いかもしれません。
しかし、実際の現場では仲介手数料を入居者から徴収し、営業にかかった費用を「広告料」という名目で別途オーナーが負担するケースが多いので、理解しておいてください。広告料の相場は、家賃の1~2ヶ月程度です。
また、不動産会社から物件を購入する際には、不動産売買契約における仲介手数料が発生します。
物件購入時は、物件の購入費用だけではなく、仲介手数料も考慮して検討しなくてはいけません。
7.保険料
アパート経営の安心・安全を担保するために、さまざまな保険契約を結ばなくてはなりません。
例えば、火災保険・地震保険・賠償責任保険などがそれに該当します。
保険会社によって、金額・特約・保証範囲などに違いがあるため、複数の保険会社の情報を調べたうえで検討することが大切です。
また、保険加入の際には、ハザードマップを十分確認するようにしてください。
保険料の期間は定期的に見直しがあり、近年は「自然災害の急増・激甚化」と「住宅修繕費の高騰」により、値上げが続いています。
8.税金
アパート経営においては、以下のようにさまざまな税金を収める必要があります。
所有する不動産そのものに対する税金 |
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毎年の不動産所得にかかる税金 |
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税金の徴収は、毎年2/15~3/16の間におこなう確定申告にあわせて行われます。
申告を怠ったり、期限に遅れたりしてしまうと、ペナルティとして追徴課税されてしまうので注意してください。
アパート経営で年収500万円を稼ぐには
アパート経営で年収500万円を稼ぐことができれば、それだけで生活していくことは可能でしょう。
この章では、アパート経営で年収500万円を達成するための具体的な収支の例を紹介します。
頭金次第では1棟だけで年収500万円は可能
アパート経営での収入を増やす手段の1つとして、「運用する不動産の数を増やす」という方法があります。
しかし、頭金次第ではアパート1棟だけでも年収500万円を稼ぐことは十分可能です。
物件購入時に最初に支払うお金のことを頭金というケースもありますが、基本的にはその内の自己資金分のみが頭金に該当します。
頭金の割合が少ないと、その後のローンの返済額が大きくなり、場合によっては年収500万円を稼ぐことは難しくなるでしょう。
物件購入時に十分な自己資金を用意しておけば、その後ローンを返済しながらでも年収500万円を達成することは可能です。
アパート経営で年収500万円達成シミュレーション例
仮定条件 |
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収入想定 |
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上記の仮定条件で、毎月家賃79,000円、管理費(共益費)収入を5,000円だったと想定すると、以下のようになります。
- 年間の家賃収入:79,000円×10部屋×12カ月=948万円
- 年間の管理費(共益費)収入:5,000円×10部屋×12カ月=60万円
- 諸経費:家賃収入の17%(管理や清掃5%+修繕費用7%+広告費5%)=161万1,600円
- 実質利回り:(948万円-161万1,600円)÷8,453万円×100=9.3%
- 想定家賃収入=79,000円/月×10室
- 想定管理費・共益費収入=5,000円/月×10室
年間の総収入(満室時) | 1,080万円 |
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年間支出 | 280万3,152円 ※毎月のローン返済(23万3,596円×12ヵ月)+修繕費(161万1,600円) |
年間収入 | 566万5,248円 |
あくまでも一例ですが、頭金の金額次第で年間500万円以上の不動産所得を得ることは可能です。
このように、家賃収入や諸経費の想定・ローンの返済計画をもとに、収支のシミュレーションをおこなうことが、アパート経営を成功させるための重要なポイントになります。
アパート経営で年収を最大化させる5つの対策
アパート経営をしながら安定した収入を稼いでいくには、それ相応の対策を打ちながら運営を続けていく必要があります。
そうすることで、年収500万円と言わずにに、物件が持つポテンシャルを最大限に発揮し、年収を最大化できるはずです。
最後に、アパート経営で年収を最大化させる対策として、5つの方法をお伝えします。
1.空室対策を強化する
アパートに空室ができると、その分の家賃収入が減ってしまいます。
さらに、退去時の原状復帰費用や、次の入居者が決まるまでの管理費用などのコストがかかるため、空室対策を強化することが大切です。
空室対策の具体的な方法としては、以下のものが挙げられます。
- 敷金・礼金・更新料の見直しや廃止
- 募集資料の見直しをし、内見を増やす
- 宅配BOX・無料Wi-Fiなどの設備導入
- 共用部分の清掃
- 水回りなどの部分的なリフォーム
このような空室対策は、管理会社や不動産会社に相談してアイデアを出し合うことが大切です。
場合によっては、管理会社・不動産会社を変更することも空室対策になります。
2.質の高い入居者の選定
アパート経営で年収を最大化させるためには、入居者の質を見極めることも大切です。
質の高い入居者なら家賃滞納のリスクがないのはもちろん、原状回復時の修繕費も抑えられます。
なお、入居者の家賃未払い対策として、家賃保証会社への加入はマストです。
オーナー側の負担はなく契約を結べる会社も多くあり、こちら側の不利益はなしで滞納リスクを抑えられます。
3.賃料の見直しをする
空室が出た際や契約更新のタイミングは、賃料を見直しするいい機会です。
近年の物価上昇に付随して、家賃相場も値上がり傾向にあります。
ただし、既存入居者に対する賃料の値上げは、相手側から了承を得る必要があります。
賃料を上げ過ぎて退去されてしまっては元も子もないので、情勢も鑑みてバランスをとることが大切です。
4.固定費の削減
アパート経営の年収を上げるために、固定費を削減できないか検討するのも1つの手段です。
固定費とは、月や年単位で同じ金額が出ていく費用のことで、管理会社への委託費用や保険料、ローンの返済などがこれに当たります。
例えば、管理会社や保険会社を切り替えれば、現状よりも固定費が下がるかもしれません。
また、ローンの借り換えをおこなうことで、月々の返済が楽になる場合もあります。
5.節税対策をする
アパート経営における支出の大部分を占めるものである税金は、節税対策をおこなうことで負担を軽減できるケースがあります。
例えば、給与収入との損益通算をおこなったり、税優遇制度を利用したりなどが有効です。
また、不動産所得が900万円以上になったら法人化を検討することも、節税対策の1つとなります。
まとめ
アパート経営をしているオーナーの平均年収は、令和4年度の国税庁のデータでは542.5万円です。
しかし、中には不動産所得が300万円以下の方が多くいる実情もあり、平均給与ほどの年収を稼ぐにはそれなりの計画・対策が必要になります。
区分所有や戸建て投資では難しいですが、「一棟アパート経営」は十分な自己資金を頭金として用意しておけば、不動産ローンを返済しながらでも年収500万円を達成することは十分可能です。
空室対策や節税、固定費の削減などを日々検討しながら、アパート経営における年収の最大化を目指していきましょう。
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