既に投資用物件をお持ちの方・不動産投資をこれから始める方の中には、オーナーチェンジ物件に興味を持っている方も多いでしょう。
オーナーチェンジ物件は購入直後から家賃収入を得られるため、不動産投資初心者に適した物件だといえます。
ただし、オーナーチェンジ物件ならではのデメリット・リスクもあるので注意が必要です。
そこで、この記事ではオーナーチェンジ物件を購入するメリット・デメリットや、購入時に確認すべきポイントを解説します。
不安を払拭し、安心して物件を購入するために、ぜひ参考にしてみてください。
本記事を読んでわかること |
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目次
- オーナーチェンジ物件の仕組み
- オーナーチェンジ物件の売却理由は何?経営が不調だけではない
- 1.まとまった現金が必要だから
- 2.他の収益物件を購入するから
- 3.投資戦略に適した時期だから
- 4.減価償却の期間が終わるから
- 5.キャッシュフローが悪化しているから
- オーナーチェンジ物件を購入するメリット
- 1.すぐに家賃収入を得られる
- 2.新築よりも物件価格が安い
- 3.金融機関の融資承認を得やすい
- 4.賃貸経営の実績がある
- 5.築10年以上は家賃の値崩れが穏やか
- 出口戦略で自分が住むならメリットはさらに増える
- 1.相場より安く購入できる
- 2.家賃収入でローン完済できれば他人資本で住宅を得られる
- 3.節税特例を受けることができる
- オーナーチェンジ物件を購入するデメリット
- 1.入居者の属性や情報が分からない
- 2.入居者との契約内容を変更できない
- 3.建物・室内の状況確認ができない
- 4.購入後の修繕リスクが高い
- 5.満室偽装詐欺の可能性がある
- オーナーチェンジ物件は情報収集が鍵!失敗しないための確認事項
- 1.昼夜の現地確認・調査
- 2.ライバル物件との家賃の整合性
- 3.入居者との契約内容
- 4.物件のレントロールにおける実質利回り
- 5.過去の修繕履歴やリフォーム状況
- 6.売主の人柄と売却理由
- 7.家主変更の通知を売主・買主どちらが入居者へ行うか
- 8.仲介に入る不動産会社が信用できるか
- まとめ
オーナーチェンジ物件の仕組み
オーナーチェンジ物件とは、入居者がいるままの状態で売買される収益物件のことを指します。文字通り、入居者はそのままにオーナーが入れ替わるということです。
オーナーチェンジ物件を購入すると、旧オーナー(売主)と入居者の間で結ばれた賃貸契約が、新オーナー(買主)に引き継がれます。
つまり、入居者から賃料を受け取る権利を得られるとともに、入居者が退去する際の敷金返還義務や、物件の管理ルールをを引き継ぐことになります。
賃貸契約書においても、旧オーナーが所有する権利・請け負う義務が、そのまま新オーナーに引き継がれる形です。そのため、新オーナーは契約内容や管理状況を十分に確認し、リスクを把握した上で購入することが重要です。
オーナーチェンジ物件の売却理由は何?経営が不調だけではない
入居者がいる物件を売却するということは、「その物件の経営が不調なのでは?」と考えるかもしれません。
そのケースもありますが、それ以外の理由から入居者がいる状態での物件売却に踏み切るオーナーもいます。また、その理由や背景によっては、購入を踏みとどまった方がいいケースもあるので注意が必要です。
本章では、オーナーチェンジ物件の売却理由としてよくある5つの例について解説します。
1.まとまった現金が必要だから
オーナーの個人的な事情によって、まとまった現金を得るために物件を売却するケースは多くあります。
例えば、高齢のオーナーが老人ホームに入居するための入所資金に充てたり、自身や家族の病気・ケガなどの治療費に充てたりといったケースです。
ローンを完済していれば売却益は全て自身に入ってくるため、オーナーにとっては大きなメリットとなります。
他にも、事業資金の補填や子供の教育費など、生活の中で急に大きな資金が必要になる場面は少なくありません。
2.他の収益物件を購入するから
他の収益物件を購入するという理由から、現在所持している物件をオーナーチェンジ物件として売却するケースがあります。
特に多いのは、区分マンションを売却して一棟アパートを購入するなど、収益物件の規模を大きくしたいという理由です。
より高い収益性が見込める物件への買い替えは、不動産投資においてはよくあるケースです。
また、資産の分散を図り、リスクヘッジとして複数のエリアに物件を保有するために売却を行うオーナーも少なくありません。
3.投資戦略に適した時期だから
オーナーが物件購入当初に投資計画を立てた頃から、ある時期での物件の売却を戦略として立てていた場合もあります。
例えば「〇〇円の老後資金が溜まったら売却する」「不動産価格が値上がり傾向になったタイミングで売却する」といったケースです。
前述した他の投資物件への買い替えも、投資戦略の1つだといえます。
4.減価償却の期間が終わるから
物件購入時の初期費用の減価償却期間が終わるのをきっかけに、物件の売却に踏み切るオーナーもいます。減価償却とは、建物などの資産価値が時間とともに減少することを会計上反映し、その分を経費として計上できる制度です。
減価償却期間が終わると、確定申告で計上する経費が大幅に少なくなるため、税金が高くなってしまいます。
オーナーにとって、不動産物件を所有するメリットが薄れるため、物件の売却を決意するのです。
5.キャッシュフローが悪化しているから
物件の運営を続けていく中で、キャッシュフローが悪化し始めたことを理由に物件を売却するオーナーもいます。つまり、手元に残る現金が以前よりも少なくなってきたということです。
キャッシュフローが悪化する要因は「空室が埋まりにくくなった」「突発的な修繕が重なって支出が増えた」など、さまざまあるでしょう。このような物件には注意が必要です。
オーナーチェンジ物件を購入するメリット
オーナーチェンジ物件の購入は、初心者におすすめできる不動産投資の形の1つです。既に入居者がいるため、空室リスクを避けられる点も初心者にとって安心材料となります。
その理由として、オーナーチェンジ物件を購入する5つのメリットを解説します。
1.すぐに家賃収入を得られる
オーナーチェンジ物件には既に入居者がいるため、物件購入後すぐに家賃収入を得られます。逆に、空室物件は入居者を募集することから始める必要があり、その広告費用などもかります。
また、家賃についても自身で設定する必要があり、適切な賃料を設定するにはそれなりにノウハウが必要です。
オーナーチェンジ物件ならすぐに家賃収入を得られるため、「収益を得られなかったらどうしよう」といった不安も軽減されるでしょう。
2.新築よりも物件価格が安い
オーナーチェンジ物件はほとんどの場合、築後数年が経過しているため、新築物件よりも安く購入できます。
また、中古の空室物件は購入後にリフォームを行わなければならないケースがありますが、オーナーチェンジ物件なら購入直後のリフォームは必要ありません。
初期費用を抑えて不動産投資を始められることは、オーナーチェンジ物件を購入する大きなメリットだといえます。
3.金融機関の融資承認を得やすい
オーナーチェンジ物件は、新築物件・中古の空室物件よりも金融機関からの融資承認を得やすい傾向にあります。物件自体の価格が安く、既に入居者がいて収益が見込めるためです。
不動産投資を始めようにも、金融機関からの融資を受けられないとそこから先に進めません。
オーナーチェンジ物件なら金融機関の融資承認を得やすいため、予定通りのスケジュールで不動産投資をしやすくなります。
4.賃貸経営の実績がある
既に入居者がいるということは、その物件には賃貸経営の実績があるということです。
不動産投資をする際は収支のシミュレーションを立てる必要がありますが、新築物件の場合は計画どおりに入居者を集められるとは限りません。
その点、賃貸経営の実績があるオーナーチェンジ物件では、現実的な投資計画を立てやすく、リスク軽減できる投資用物件ともいえます。
5.築10年以上は家賃の値崩れが穏やか
築10年以上が経過したオーナーチェンジ物件は、以降の家賃の値崩れが穏やかです。不動産は新築からの10年間が資産価値の下降が大きく、築10年程度から落ち着き始めます。
よって、同じ家賃をキープしたままで経営していける可能性が高くなります。
築3年~10年ほどの物件は、周囲の新築物件と比較されやすく、賃料に大きな下げ圧力がかかりやすい傾向にあります。
出口戦略で自分が住むならメリットはさらに増える
オーナーチェンジ物件を購入するメリットをさらに高めるなら、出口戦略として自身がそこに住むことを検討しましょう。
出口戦略とは、リスクや損害を最小限に抑えて撤退(終了)までを視野に入れた戦略のことを指します。
オーナーチェンジ物件に自身が住むことで得られるメリットとして、以下の3点が挙げられます。
1.相場より安く購入できる
通常、収益物件は居住用物件の7~8割程度の価格帯で取引されるため、はじめから自宅用として購入するよりも安く購入できる可能性が高いです。
前述したように、オーナーチェンジ物件を売却する理由は人それぞれあり、「手早く現金を得たい」などの事情から相場より安く売りに出しているケースも多くあります。
自身の持ち家を相場より安く購入できることは、あなたにとって大きなメリットとなるでしょう。
2.家賃収入でローン完済できれば他人資本で住宅を得られる
物件購入後に得た家賃収入でローンを完済すれば、他人の資本で自身の住宅を購入したのと同じです。「不労所得で住宅を購入する」という、夢のような状態を実現できます。
一般的に目標や夢として語られることが多い持ち家の購入ですが、オーナーチェンジ物件を購入すれば他人の資本だけで実現できる可能性があります。
3.節税特例を受けることができる
自身が住むオーナーチェンジ物件を将来的に売却する際は、節税特例という制度を受けることができます。収益物件を売却する際は、その金額に応じて譲渡所得税が課税されます。
しかし、自身が住む物件を売却する場合は、節税特例によって3,000万円の特別控除が適用され、譲渡所得税が大幅に軽減されます。
オーナーチェンジ物件を購入するデメリット
ここまで解説してきたように、オーナーチェンジ物件の購入には多くのメリットがあります。
一方で、購入前に注意すべき点やリスクも存在し、慎重に検討することが求められます。
そのため、以下の5つのデメリットを把握しておいてください。
1.入居者の属性や情報が分からない
オーナーチェンジ物件を購入する際、入居者の属性や情報を事前に把握するのは難しいのが実情です。
よって、自身がオーナーの立場だったら審査で落とすような属性の人物が入居している可能性もあります。
また、中には旧オーナーと入居者との間でトラブルが発生したことが原因で、オーナーがその物件を売却するケースもあるので注意が必要です。
2.入居者との契約内容を変更できない
オーナーチェンジ物件の経営を引き継ぐ際は、基本的に旧オーナーと入居者が締結した契約内容の変更はできません。
あくまでも、入居者は旧オーナーが提示した条件を了承したうえで契約しているためです。
よって、自身にとって不利な契約条件を締結されている場合は、入居者が入れ替わるタイミングまで条件変更を待つ必要があるでしょう。
3.建物・室内の状況確認ができない
オーナーチェンジ物件は入居者がいるため、建物や室内の状況確認はできないのが一般的です。そのため、外観や書類の記載内容で、物件の良し悪しを判断することになります。
いざ蓋を開けてみると設備が古かったり、既存入居者がゴミ屋敷にしていたりなど、物件の価値が毀損されている状態になっているケースもあるので注意が必要です。
4.購入後の修繕リスクが高い
オーナーチェンジ物件は購入前に建物の状況を把握するのが難しいため、物件購入後に修繕が必要になるリスクがあります。
場合によっては、想定外の高額修繕が必要になるケースもあるかもしれません。そうなると、購入前に立てた収支計画が崩れてしまう可能性があります。
特に築年数が古い物件の場合、配管や設備の劣化が見過ごされることもあり、予期せぬ修繕費が発生することも少なくありません。
5.満室偽装詐欺の可能性がある
オーナーチェンジ物件はサクラの入居者を立てているケースがあり、満室を偽装している可能性があります。
満室偽装詐欺をされていた場合は、物件購入後すぐに空室ができてしまうことになります。
また、サクラの入居者には高額な賃料を設定しておき、それに付随して建物の売却価格を高く設定しているケースもあるので注意が必要です。
オーナーチェンジ物件は情報収集が鍵!失敗しないための確認事項
悪質な、もしくは収益が見込めないオーナーチェンジ物件を購入してしまわないために、購入前に入念な情報収集を行う必要があります。
その際に確認すべき8つの事項のポイントを解説します。
1.昼夜の現地確認・調査
物件の状況を正しく把握するために、昼夜両方の時間帯で現地確認・調査を行いましょう。昼の時間帯は問題がないようにみえても、夜の治安に問題がある場合もあります。
逆に、夜の時間帯は問題がないようにみえても、明るい時間帯にみると外観の問題点が見つかるケースもあるかもしれません。
何物件も所有する投資家の中には、購入前に5回以上現地確認をする方もいます。また、物件から最寄り駅までを実際に往復し、入居希望者にとって魅力的な物件であることを確認することも大切です。
2.ライバル物件との家賃の整合性
既存入居者の契約条件や家賃が、周囲のライバル物件との整合性が取れているか否かについても確認が必要です。
ライバル物件よりも明らかに悪条件な契約内容となっている場合、次の入居者を探す際に家賃を下げなくてはならなくなる可能性があります。
そうなると、事前の計画どおりの収益をあげることができなくなってしまうでしょう。
3.入居者との契約内容
オーナーチェンジ物件を購入する際は、入居者との契約内容を必ず確認してください。
家賃の金額はもちろん、その支払い方法・契約期間・更新規定・禁止事項などを一通り把握しておく必要があります。
それらの確認を怠ってしまうと、入居者との間でトラブルを起こしてしまう可能性もあるので注意してください。
引き継がれる権利
入居者との契約内容を確認する際は、具体的にどんな権利・義務を引き継がれるのかを確認しましょう。
例えば、旧オーナーは入居者から預かった敷金を預かっていることがあります。仮に入居者が家賃の不払いを起こしていた場合、敷金から不払い分を充足しているケースもあります。
その辺りの引き継ぎ関連の確認を怠ってしまうと、自身が不利益を被る可能性があるので注意してください。
引き継がれない権利
入居者が家賃の不払いを起こしている場合、その債権は旧オーナーが所持したままになるので注意してください。新オーナーは、過去の未払い分について請求する権利がないため、購入前に確認を怠ると損失を被る可能性があります。
その権利も引き継がれたものだと思い込んで入居者への請求を行ってしまうと、トラブルにつながる恐れがあります。
4.物件のレントロールにおける実質利回り
賃貸物件には、入居者との契約内容を一覧できるレントロールという資料があります。レントロールには賃料・契約期間・契約始期などが記載されており、実質の利回りを確認できます。
また、入居者の退去時期や空室リスクを考慮に入れて、将来の収益見通しも把握しておくことが重要です。実質の利回りが事前の計画と相違がないか確認したうえで、物件の購入を検討しましょう。
5.過去の修繕履歴やリフォーム状況
オーナーチェンジ物件を購入する際は、必ず過去の修繕履歴・リフォーム状況を確認してください。
特に、多額の費用がかかる大規模修繕を行っているか否かは、建物の資産価値の上下に直結します。定期的なメンテナンスや修繕が行われているか確認することで、将来的な修繕リスクを予測しやすくなります。
耐震性・防水性などの向上に繋がる予防保全が行われていないと、建物の寿命が短くなるので注意してください。
6.売主の人柄と売却理由
オーナーチェンジ物件を購入する際は、旧オーナーがその物件を売却する理由を必ず確認しましょう。
仮に売却理由や建物の状態、入居者の状況などに偽りがあった場合は、契約不適合責任によって修繕や損害賠償の要求ができます。
引き渡し後の不具合に誠実に対処してくれるか否かという視点で、売主の人柄を確認することも大切です。
なお、契約不適合責任が適用される期間については、売主・買主の相談によって決められます。
7.家主変更の通知を売主・買主どちらが入居者へ行うか
オーナーチェンジ、すなわち家主の変更をする際は、入居者へ通知を行う義務があります。ただし、入居者から了承を得る必要はありません。
入居者へ通知をするのを忘れ、不信感を与えてしまわないよう、家主変更の通知をどちらが通知を行うかを事前に取り決めすることが大切です。
入居者への通知には、家賃の振込先・連絡先などの必要事項を記載しましょう。
8.仲介に入る不動産会社が信用できるか
オーナーチェンジ物件を購入する際は、仲介に入る不動産会社の信頼性についても確認してください。
売主と癒着関係にあり、買主にとって不利な条件を提示する悪質な不動産会社も存在します。担当者と話した際の印象はもちろん、ネットで口コミを確認することも大切です。
また、過去の取引実績や評判を調べることで、信頼できる会社かどうかをしっかり見極める必要があります。
まとめ
オーナーチェンジ物件の購入は、初心者が手を出しやすい不動産投資の形の1つです。
相場よりも安く物件を購入できる可能性が高く、入居者がいるため購入直後から家賃収入を得られます。また、家賃収入がすでにあることで、キャッシュフローを予測しやすい点も大きな魅力です。
ただし、建物の状況確認ができない点、修繕リスクが高い点など、デメリットも複数あるので注意が必要です。
入念な調査・十分なシミュレーションをおこなったうえで物件を購入し、不動産投資をスタートさせましょう。
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