賃貸契約中に夜逃げされた場合の対処方法|大家さんがすべきこと一覧

あなたは今、「家賃を滞納され連絡もつかないため、物件に行ってみたら人が住んでいる気配がない…夜逃げかもしれない!」このように焦り、途方に暮れているのではないでしょうか。

本当に夜逃げであれば、早期解決のためすぐに動きだす必要がありますが、まずは「本当に夜逃げなのか」を確認する必要があります。

しかし、自分の物件だからといって賃貸契約を解除していない物件内に立ち入ると、不法侵入になる可能性があるため、適切に法的手段を取らなければなりません。また、そのほかにも残置物の処分方法などの注意点があるので、大家さんがすべきことの流れを理解してから動きだしましょう

夜逃げかもしれない場合は、以下の手順で解決に向けて進めます。

【大家さんがやるべきことの手順】

  1. 夜逃げかを確かめる
  2. 家賃の督促と賃貸契約解除の催告をおこなう
  3. 賃貸契約を解除する
  4. 強制執行の申立てをする

この記事では、夜逃げかもしれない場合に大家さんがやるべきことや、法的手続きについて詳しく解説しています。法に触れないように物件を明け渡してもらえるように、ぜひこの記事を参考に進めてみてください。

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1. まず確認!「本当に夜逃げか」を確かめる方法

最初にすべきなのは、本当に夜逃げなのかを確かめることです。

以下のような状態では、まだ「夜逃げ」と断定はできません。

  • 入居者が家賃を滞納しており、連絡も取れない
  • 物件を訪ねても常に留守

もしかしたら、入院などで連絡が取れないような状況にあるかもしれないため、まずは「夜逃げである」ことを確定させる必要があります。

夜逃げかどうかの判断方法は以下の通りです。

  • 夜逃げの可能性を室外から判断する
  • 入居者の家族や保証人に連絡する
  • 警察と一緒に室内に入って確認する

では、これらの判断方法について解説します。

1-1. 夜逃げの可能性を室外から判断する

まず、室外からの判断方法です。

入居者と何日も連絡が取れず、室外が以下のような状態の場合は夜逃げの可能性が高い状態であると言えます。

  • 長期間部屋に出入りした形跡がない
  • 郵便物が溜まっている
  • 電気のメーターがとまっている

とくに、電気メーターはコンセントが挿さっているだけでも計測するため、ブレーカーを落としていない限り、ほとんどの場合は回っています。ただし、夜逃げの場合は電気の契約を切っているケースが多いため、完全に止まっているのであれば、夜逃げの可能性が高いと言えます。

上記のような状態である場合は、さらに夜逃げの可能性を確定させるために、以下の2つのどちらかの方法で確認しましょう。

1-2. 入居者の家族や保証人に連絡する

夜逃げの可能性が濃厚であることがわかったら、入居者の家族や保証人に連絡してみましょう。本人と連絡が取れず、困っていることを伝えてみてください。

万が一入院などで連絡が取れない状態であれば、家族や保証人からその事実が判明することもあります。

もし、保証人や入居者の家族から連絡が取れるのであれば、連絡をしてもらうように伝えましょう。

1-3. 警察と一緒に室内に入って確認する

保証人がいない場合や、保証人・家族と連絡が取れない場合は、室内に入って夜逃げかを確認しましょう。

ただし、冒頭でもお伝えしたように、無断で立ち入るのは不法侵入になってしまいます。そのため、警察に同行してもらいましょう

「夜逃げされたかもしれない」では動いてもらえない可能性があります。そのため、「入居者と連絡が取れず安否がわからないため、確認したい」と警察に相談しましょう。

こうすることで、警察同伴で室内を確認できるため、不法侵入にはならなくなるのです。

室内に立ち入った場合、以下のポイントに注目してみましょう。

  • 残置物がほとんどない
  • 残置物はあるが、テレビやパソコンなどの主要家電や、スマートフォンの充電器がない
  • 冷蔵庫内の食品の消費期限が過ぎているものが多い
  • ドアノブなどよく触れる場所にほこりが積もっている

このような状態であれば、夜逃げと判断できます。次章の大家さんが対応すべき夜逃げの対処手順に移りましょう。

【夜逃げの判断で大家さんがやってはいけないこと】

夜逃げを判断する際に、以下のことは絶対にやってはいけません。

  • 警察を伴わずに室内に立ち入る
  • 残置物を勝手に処分する

なぜなら、これらをおこなうと、入居者が万が一戻ってきた際に損害賠償請求をされる可能性があるからです。

また、賃貸契約時に「緊急時は事前通告なしに室内へ立入可能」とする特約を付けていた場合でも、不法侵入になる可能性があるため、勝手な立ち入りのはやめましょう。

たとえば、勝手に立ち入ったあとに入居者が戻ってきて、「貴重品がなくなった」と主張した場合、それが嘘であることを証明するのは困難だからです。


2. 賃貸で夜逃げされた場合の対処フロー

夜逃げだと判断できたら、夜逃げした入居者から家賃を回収し、退去してもらうために動き出しましょう。

対処する際には、以下のフローに沿って進めてください。

【夜逃げへの対処フロー】

STEP1:家賃の督促と賃貸契約解除の催告をおこなう
STEP2:賃貸契約を解除する
STEP3:強制執行の申立てをする

上記すべてを必ずやらなければいけないというわけではなく、途中で入居者と連絡が取れて和解できる可能性もあります。しかし、確実に法的手続きなどの対処を進めていくのであれば、上記のフロー通りにおこなっていくことが大切です。

目安となる期間は、次の通りです。

 

このように、強制執行までおこなった場合、家賃滞納発生から解決まで約6~9ヵ月かかる可能性があります。そのため、早急に行動をはじめることが大切です。

では、夜逃げへの対処方法について、次章から詳しく解説してゆきます。


3. STEP1|賃貸契約解除の催告をおこなう

まずは、賃貸契約解除の催告をおこないます。

できるだけ早く賃貸契約を解除して、次の入居者を見つけたいところですが、訴訟を起こすためには「家賃の支払いや退去を求めた」ことを裁判所に示さなければなりません。そのためには催告をしておく必要があるのです。

【催告とは】

契約や債務に関して、相手に特定の行動を求める通知のことです。今回の場合は、滞納している家賃の支払いを期限までにおこなわなければ、賃貸契約を解除したり、法的手段を取ったりすることを通知するために用います。

また、民事訴訟を起こすには、入居者側の債務不履行によって信頼関係が破壊されたという「正当な理由」が必要です。信頼関係が破壊された状態とは、「家賃滞納が3ヵ月以上ある」ことが目安として挙げられます。家賃滞納が3ヵ月以上の場合は、すぐにでも民事訴訟のために動き出しましょう。

しかし、夜逃げされた場合は住所がわからない状態でしょう。
そこで、以下の方法で住所を確認するか、入居者と連絡が取れないか試みてみましょう。

  • 住民票を確認して催告書を発送する
  • 勤務先に電話する

では、これらの方法について詳しく解説します。

3-1. 住民票を確認して催告書を発送する

まず、試したいのが「入居者の住民票の取得」です。「住民基本台帳法12条の3第1項」によって、債権(滞納家賃)回収のためであれば、第三者であっても債務者(家賃滞納者)の住民票を取得することが認められています

住民票を取得する際には、賃貸借契約書の原本を役所に提示しましょう。

入居者が賃貸契約を結んでいる物件の市区外に転出している場合もあるでしょう。その場合は、物件住所の管轄となる自治体では住民票を取得できません。

しかし、役所で転出先の住所を教えてくれるので、改めて転出先の自治体で住民票を取得してください。

住所がわかったら、内容証明郵便で催告書を発送しましょう。内容証明郵便の送り方については日本郵便株式会社の「内容証明」を参考にしてください。

ただし、住民票が夜逃げした物件のままの場合は、この方法では入居者の新たな住所を特定することはできませんので、次の方法を試してみましょう。

3-2. 勤務先に電話する

入居者が申告していた勤務先にまだ勤めているか、電話で確認しましょう。入居者が在籍しているかを確認し、在籍している場合は電話を代わってもらいましょう。

もし、入居者が不在などで出られない場合は、こちらの名前と電話番号を伝えて折り返し電話してもらえるように伝えておきましょう。もしかしたら、入居者と連絡が取れることで解決できるかもしれないからです。

なお、勤務先に家賃を滞納していることは伝えないように気を付けましょう。勤務先に家賃滞納や夜逃げしたことがばれることで、入居者が会社に居づらくなって退職してしまい、家賃回収が困難になるだけでなく、入居者とのトラブルに発展する可能性があるからです。

「消防の検査があるのですが、連絡が取れず心配しております」といったように、不審に思われない理由を伝えて電話を代わってもらえば、穏便に進められます。

電話を取り次いでもらえたら、家賃の支払いや契約解除、残置物の処分について話したいことを伝えましょう。入居者が不在や電話に出られない場合は、折り返し電話してもらうように伝えてください。

これらの方法で入居者の住所がわからない場合でも、民事訴訟を起こすことは可能です。詳しくは、後述の「4-2-2.相手の住所がわからない場合の民事訴訟の起こし方」で解説しています。

【保証人がいる場合】

保証人とは連絡が取れるものの、保証人から入居者に連絡しても捕まらないというケースもあるでしょう。そのような場合は、保証人に対して家賃の支払いを求めてください。

ただし、家賃を支払ってもらえた場合であっても、保証人は賃貸契約の解除ができません。そのため、賃貸契約の解除は民事訴訟の判決で認められる必要があります。


4. STEP2|賃貸契約を解除する

内容証明郵便で催告をおこなったにも関わらず、入居者から連絡が来なければ、それ以上個人的に交渉や和解の話し合いは難しくなります。そのため、「賃貸契約の解除」と「建物明渡請求」の訴訟を起こしましょう。

賃貸契約解除の訴訟
  • 家賃の未払いや夜逃げなど、賃貸借契約上の債務不履行がある場合に賃貸契約の解除を目的に起こす訴訟のこと
  • 下記「建物明渡請求の訴訟」をおこなう上で必要となる
建物明渡請求の訴訟
  • 賃貸契約上の債務不履行がある入居者を退去させるために起こす訴訟のこと
  • 賃貸契約が解除できても強制的に本人を退去させたり勝手に残置物を処分したりすることはできないため、後述する「強制執行」をするためにもこの訴訟が必要となる

この2つの訴訟は同時に進められます。

並行しておこなうことで、賃貸契約の解除と同時に、物件の明渡しを命じる判決が得られます。そのため、時間を短縮して費用を抑えることが可能です。

家賃滞納分が60万円以下の場合は、「少額訴訟」を起こします。訴状の提出先は、物件の所在地を管轄する簡易裁判所です。万が一滞納額が60万円を超える場合でも、140万円までなら「通常訴訟」として簡易裁判所で裁判をおこなうことが可能です。

【少額訴訟と通常訴訟の違い】

少額訴訟
通常訴訟
請求金額の上限60万円以下60万円超え140万円以下
判決までのスピード原則として1回の審理で判決が下される複数回の審理が行われることがある
費用通常訴訟よりも安く抑えられる少額訴訟よりも費用がかかる
判決への異議申立て異議申立てがあれば通常訴訟に移行異議申立てがあれば地方裁判所に控訴

家賃の金額にもよりますが、滞納が3ヵ月程度であれば少額訴訟になるケースがほとんどでしょう。長期的に滞納されていた場合などは、通常訴訟になることもあります。

金額によって起こす訴訟が異なることを覚えておきましょう。

なお、訴状の提出から賃貸契約の解除が認められるまで、3~4ヵ月ほどかかることを理解しておきましょう

では、相手の住所がわかる場合と所在不明の場合の2パターンに分けて、民事訴訟の起こし方について解説します。

4-1. 通常の民事訴訟の起こし方

民事訴訟を起こすには、まず訴状を裁判所に提出します。提出された訴状を裁判所から被告人(入居者)に送付し、相手方が受け取ると訴訟開始になります。

民事訴訟の流れは以下を参考にしてください。

【民事訴訟の一般的な流れ】

4-2. 相手の住所がわからない場合の民事訴訟の起こし方

手を尽くしたものの、夜逃げした入居者の住所がわからないケースもあるでしょう。そのような場合でも民事訴訟は起こせるので安心しましょう。

その方法として、「公示送達」という手続きがあります。

公示送達とは、公示送達文書を裁判所に一定期間掲示することで、被告に送達したとみなされる手続きのことです。裁判所内の掲示板に訴訟内容が掲示されてから、約2週間で送達されたことになり、裁判が開始されます


5. STEP3|強制執行の申立てをする

判決が確定し、賃貸契約の解除と建物明渡請求が認められたら、残置物を処分するための強制執行の申立ておこないます。

建物明渡請求が認められたとしても、残置物は入居者の所有物であるため、勝手に処分すれば違法になります。そのため、強制執行によって残置物を処分する必要があるのです。

申立て先は物件がある地域を管轄する地方裁判所です。強制執行の申立てには金額の制限がないため、上限金額がある簡易裁判所ではなく、物件の所在地を管轄する地方裁判所でおこなう必要があります。

強制執行の申立て後の主な流れは以下の通りです。

  1. 執行補助者を選ぶ
  2. 執行官によって入居者に明渡催告が行われる
  3. 明渡の断行

強制執行や残置物の処分方法については、下記記事で詳しく解説していますので、参考にしてください。

夜逃げの残置物は勝手に処分できない!処分までの流れや費用を解説


6. 賃貸経営で夜逃げのリスクに備える方法

夜逃げをされてしまうと、大家さんは非常に大変な上に、解決まで時間もかかります。そのため、対応に時間を割かなければならないだけでなく、精神的にも疲弊してしまうかもしれません。

夜逃げするような人を入居させないためには、入居審査を厳しくする方法がありますが、確実に防げるわけではありません。

また、保証人をつけても滞納された家賃の支払いは求められますが、以下のような懸念点があります。

  • 保証人と連絡がつかない
  • 保証人が支払いを拒否する
  • 保証人に滞納分を支払えるような資産がない
  • 保証人では契約解除や残置物の処分はできない

このように、保証人は付けた方がいいものの、完全に備えられるわけではないのです。

夜逃げリスクに対して十分に備えたいのであれば、管理会社の利用を検討するのもひとつの手です。

なぜなら、管理会社の中には、以下のような保証を提供しているケースもあるからです。

  • 家賃保証
  • 明渡訴訟費用保証
  • 残置物の処分費用保証(原状回復保証)

これらの保証があれば、滞納された家賃は管理会社から支払われ、民事訴訟・強制執行にかかる費用や残置物の処分費用など、夜逃げされたことによる損害を最小限に抑えられます

私たちルーム・スタイルでは、これらの保障すべてを含む、「6つの安心保証」が標準完備された管理プランを提供しています。

※6つの安全保障は、ルーム・スタイルの総合管理プランのみでご利用いただけます。

賃貸経営中は、いつどんなトラブルが発生するか予想できません。だからこそ、予期せぬリスクが起こっても、オーナー様を守るためにサポートいたします。

夜逃げをされると、労力だけでなく多大な費用がかかります。そのため、あらかじめ保証によって備えておくことが大切です。

家賃滞納や夜逃げに関する保証をご検討中の方は、ぜひ一度ルーム・スタイルにご相談ください。


7. まとめ

この記事では、夜逃げされたかもしれない場合に大家さんがやるべきことについて解説しました。最後にまとめをご覧ください。

【夜逃げかを確かめる方法】

  • 夜逃げの可能性を室外から判断する
  • 入居者の家族や保証人に連絡する
  • 警察と一緒に室内に入って確認する

​​​​​【夜逃げされた場合の対処フロー】

STEP1:賃貸契約解除の催告をおこなう
STEP2:賃貸契約を解除する
STEP3:強制執行の申立てをする

夜逃げされてしまうと、解決までに時間もお金もかかります。長引くほどに損失が大きなものになってしまうため、備えが大切です。

夜逃げに対して十分に備えるのであれば、保証が充実した管理会社の利用も検討しましょう。

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